変える未来 第5話
これは何とした事?!
妖の撃退を目指すコハルでしたが。
その後に訪れる人の事を忘却していたのでした!
今度こそは・・・しくじりません!
堕神の娘、大魔王の姫御子コハルとして、二度の失敗は許されません。
対峙する妖に向けて言い放ったのです。
「このまま闇に還るのなら許してあげる。だけど手向かいするなら覚悟しなさい!」
素手のまま、少女の姿のままで睨んであげます。
襲い掛かろうとした闇の魔法使い達に、姫御子の目になった瞳で。
「小童に何が出来ようか?我等はイシュタルの民ぞ?!」
「よくぞ見破ったと褒めてやるが、それまでの話だぞ!」
壁に隠れていた妖が姿を見せます。
これでどうやら美晴に取り付くのを防げたみたいです。
「少女だからって、姿だけで判断したらいけないわよ?」
魔獣剣の感覚を手の中に取り出し、その時が来るのを待ちます。
「ほほぅ?どう判断すれば良いと言うのか?
お前如き小童に怯えろとでも言うのじゃあるまいな?」
小馬鹿にされるのは蒼ニャンで沢山です。
所詮、不意打ちでしか戦えない程度の闇の者とでも言っておきましょう。
「怯えるよりも、平伏せたらどうかしら?あなた達なんかじゃ役不足でしかないわ」
妖の者に後れを取ったのは、本当らしいですけど。
二度と失敗なんてしませんから。
憑代であるアクァさんの魔法力が足りませんが、今相対している妖には十分でしょう。
「最後に言っておくわよ妖。手向かいすれば地獄に送ってあげることになるからね」
瞳を姫御子の色に染めた状態で、二つの陰に言ってやりました。
「うわっはっはっは!それは見ものだな。
どうやって我等に対抗できるのか、見せて貰おうか?」
まだ・・・気付かないみたいですね。
姫御子だって事に・・・格段の異能を放っているのに。
「二度とは言いませんからね妖。手向かうのなら覚悟しなさい」
言い切っておきました。
一応人間モドキなのでしょうから、魂が地獄に呑まれるのは可哀想です。
「馬鹿は休み休みに言え!小童に滅ぼせれると思うのか!」
だからぁ・・・もう言いませんよ。
歯向かう気がありありです。
しょうがありませんね、困ったちゃんは地獄で反省して貰う他ないようです。
「どちらから?それとも二人同時?どちらにしたって助からないよ?」
右手に姫御子の魔力で呼び出した剣が形成されて行きます。
紅き魔獣剣が半月型に伸びていきます。
普通の魔法使い如きには、絶対使用不能な高位の魔剣が形造られました。
「さぁ・・・かかって来たら?」
異形の妖にも、剣が尋常では無いのが判ったようです。
大魔王の姫御子に相対しているとは考えてないみたいですけどね。
「貴様?!その剣をどうやって出したのだ?!」
「うぬぅ・・・小童だと舐めておったわ!」
今更・・・何をほざいているのです?
こっちは既に戦闘可能ですよ?
前後を執って襲いかからんとしていた妖でしたが、私の魔獣剣に驚いたみたいです。
驚いただけで、考えを正さなかったのが運の尽き。
「こうなったら傷めつけて抵抗出来なくしてから連れて行ってやるぞ!」
駄目ですよぉ、痛みつけるなんて言葉を吐いたら。
ちらりと美晴の抱くグラン君に目を遣ります。
紅く燃え立つような縫いぐるみの瞳に、私は自重してと微笑んだのでした。
私を想うグラン君がいきり立っているのを感じるから・・・
「そう?じゃあ・・・墜ちなさい!」
月夜に浮かぶ片方の妖は、既に射程範囲に入っています。
剣を下段に構える私に向かって、妖が魔砲を放とうとしているのが判るのです。
つまり先制攻撃を掛けようとしている・・・専守防衛者に対してです。
攻撃されれば防御するのは当たり前。
魔砲を撃とうとする者が居たら、反撃しても良いでしょう?
「魔獣剣よ、我に仇名す者を斬り裂け!」
少しばかり・・・本気の術でしたかね?
アクァさんに宿っているからどれ位の魔力を使えるのかが判りませんでしたから。
腰だめに構えた剣を薙ぎ払いました。
ほんの少しでしたが、加減したんですよこれでも。
ブワッサァッ!!
猛烈な旋風を巻き起こし、剣波が澱んだ影を吹き払いました。
大魔王の剣戟には程遠かったみたいですけど、生身の魔法使いには強過ぎたみたいです。
唯の一撃で跡形もなくなるなんて・・・やり過ぎちゃいました。
「あらら・・・問答無用だったね?」
妖は放とうとしていた魔砲共々、粉微塵になって散りました。
「なっ?!なんだとぉっ?!」
驚いたのは消えた当人より、もう一人の方。
「どんな魔法を使えばあんなことになるのだ?!」
そう言われても・・・魔法使いに向けて使ったのも初めてでしたから。
「地獄送りにすると言ったのは、消し飛ばすという事だったのか?」
いいえ。しっかり地獄の門に放り込みましたよ!
「どうするの?あなたも消し飛ばされたいかしら?」
片目で妖を睨みながら言っておきました。
これ以上歯向かうのならば、同じ運命をたどる事になりますって。
「くっ?!その剣に異能が有るようだな!ならば・・・」
まだ?諦めが悪いですね。
妖が次にとる手を考えつつ、構え直しておきました。
「次に会う時まで精々大事にとっておけ!」
あらら・・・逃げ帰ってくれるのですね?
妖は城壁の陰に身を翻しました。
逃げ帰ってくれるみたいですね、無益な殺生をしなくて済みました。
陰の中に身を潜めた妖の気配が、完全に感じ取れなくなります。
「どうやら護り切ったわ」
魔女さんの魂も、美晴の身も・・・です。
「失敗は繰り返さずに済みました」
ほっと一息。
後は・・・美晴の中に居る昔の私をどうするべきか。
妖との闘いを観ていた美晴に、どう知らしておけばいいのかですね。
一心地ついた私が美晴に視線を向けたんです・・・が。
「ありゃりゃ?!」
なんてことでしょう!
「気絶しちゃってる?!」
目を廻した美晴が、倒れ込んでいました・・・意識を失って。
「なんてことなのっ?!グラン君っ、どういう言事なのよ!」
しっかり記憶しておいてって言っておいたというのに・・・ですよ。
思わずグラン君に掴みかかって捲し立てちゃいます。
「「姫君・・・申し訳もございません。憑代である美晴が気絶してしまったようです」」
なんて・・・損な話なんでしょうか?!
「「これじゃあ、折角姫御子として過去まで来た意味が、半減してしまうわ!」」
折角蒼ニャンが取計ってくれたというのに・・・です。
「「責任は美晴にあると申しましょうか・・・無念なり」」
グラン君もがっくりして肩を落としているようです。
「「そ、損なぁっ?!もう一度やり直さなきゃいけないじゃないの!」」
お馬鹿な話ですよね・・・こんな事を繰り返すなんて。
「「がっかり・・・・」」
「「同じく・・・・」」
主従揃って肩を落としました・・・(;´д`)トホホ
風向きが変わったのを感じます。
闇の中に輝が近寄って来るのを感じたのです。
しかも・・・物凄い力を感じました。
これは・・・・
「「いけないっ!忘れていた!
此処に来るのは闇だけじゃなかったんだわ!」」
そうでした。
聖なる者の存在を忘れていたのです!
「「姫君!お急ぎこの場から離れてください」」
グラン君が警報を鳴らします。
言われるまでもありません、もしも見つかりでもしたら?!
「「赤鞘の剣で斬り伏せられてしまいますぞ!」」
「「ミユキお祖母ちゃんの剣?!ってことは・・・」」
フェアリアに居た頃、聖なる者の剣はあの方に委ねられていたのでした。
「ルナリィーン姫?!」
月夜に舞うのは、女神を宿す聖者。
月夜の陰に潜むのは闇・・・
相対するのは輝と闇。
未来を変えた者は、新たなる力に目覚める・・・・
次回は・・・
きゃぁー?!
本物のリーンがぁっ?!
・・・・オリジナルミハルも卒倒。
遂にフェアリア以来のお姿が現れたのでした!
オリジンミハル「ああ~~っ!御主人様にゃぁ~~」
残念ですが蒼ニャン。君は逢う事は叶わないようだよ?
オリジンミハル「あにゃぁ~んとぉっ?!(内心ほっとした)」
次回 変える未来 第6話
審判の女神リーン現る!そしてコハルに審判が下される?どういう真実が語られるのか?