表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
162/219

時を手繰る少女 第1話

挿絵(By みてみん)


テーマパークから帰って来たミハルでしたが・・・

蒼ニャンは唯ひたすら・・・待っていたのです。


何を?


それは、ミハルが帰って来るのをです。


テーマパークで何が起きたのも知らず気に・・・・





「生殺しだわ・・・こんなの・・・」


蒼ニャンがブツブツ文句を垂れている訳は?


「遅いわねぇ、コハルちゃん達は」


傍にいるミユキお祖母ちゃんも心配顔で待っています。


「・・・黒ニャンめ、人間界に干渉してなきゃ良いけど」


蒼ニャンは自分が促したのを忘れたかのように愚痴ています。


姫御子コハルの帰りを待つミユキお祖母ちゃんに止められた蒼ニャンは、生唾を飲み込んで飯台の上にある山盛りのおはぎを観ていました。


「ミハル・・・さっき食べたでしょう?」


今にもかぶりつきそうになっている蒼ニャンを嗜めるミユキお祖母ちゃん。


「それに帰って来るのが遅くなるには、きっと理由があるに決まっているわよ?」


勘の鋭いミユキお祖母ちゃんが、コハルの身に何かが起きたのではないのかと心配しているのですが。


「そうかな~っ?今の処差し迫った危機は感じられていないんだけど。

 この辺りには大魔王の姫御子に手を出せる程の奴が居るとは思えないんだけど?」


蒼ニャンはおはぎから眼を離さず、


「あの子にはグランや臣下の者達が寄り添っているんだよ?

 並みの魔物達なんかに手の出しようもない筈じゃない?」


姫御子を守護する者達が居ればこそ、自分はここで待つ事にしたのだと答えるのですが。


美春みはる・・・私はあの子に危険が迫って遅くなっているとは考えていないのよ?

 他に何か遅くなる理由があるんじゃないかと思っただけよ」


蒼ニャンとなった娘に応えるミユキお祖母ちゃんが言いたいのは?


「姫御子としてじゃなくて、一人の女の子として目覚めたのかしらね?

 一度は味わってみたかった人の楽しさに、やっと触れられたんじゃないのかしらね?」


少しだけ微笑んだミユキお祖母ちゃんに、蒼ニャンは眼を伏せて頷きました。


「そう・・・それが私の願いでもあったんだよ、お母さん」


頷いた蒼ニャンは、コハルを人間界に放った理由を話し始めます。


「コハルちゃんは悲しみに打ち勝たねばならない。

 宿命に縛り付けられた姫御子じゃなく、神と大天使の娘として目覚めなきゃならない。

 コハルちゃんは本来の姿を取り戻さなきゃならないの、ルシファーが願う通りに」


姫御子コハルの真実を垣間見たのか。

本当の姿を知っているとでもいうのでしょうか?


「ルシちゃんが闇の世界に閉じこもっているのはね、ミハエルさんを探し出す為。

 人間だった筈なのに神に戻った訳はね、この世界に居る闇の正体を暴き出す為なんだよ。

 私が居なくなった世界を闇から護ろうとした・・・戻ってくるまでの時を稼ぐ為」


「そう・・・コハルちゃんを託された時に分かっていたわ。

 美春みはるの生まれ変わりとして位置づけられた美晴ミハルを抱き上げた時にね」


答えたミユキお祖母ちゃんこそ、本当の運命の娘としてこの世界に生み出されたから。

1000年周期に起きた審判の御子として月の住人に選ばれた娘だったのですから。


「マモルの娘は美晴ミハル

 堕神ルシファーと堕天使ミハエルの娘として降臨した小春神コハルは別の人格。

 幼き間だけでも人として育てて欲しいと願ったのはミハエルの意志。

 そうする事によって人類に希望が残せると考えた二人が私達に頼んだのよ」


ミユキの言葉に頷く蒼ニャンは、


「私が戻る前の間に、何が起きたのかは知らない。

 だけど、これからは何が起きようとも護り抜いてみせるからね。

 それが<彼>との約束でもあり、二度と過ちを繰り返さない誓いなんだから」


1000年前に飛ばしてまで自分を消滅から救った<彼>の話を母に教えた。


「彼・・・ねぇ。

 その<彼>は、また動き始めるの?」


ミユキお祖母ちゃんは娘に訊いてみた。


「もし、必要ならば。

 <彼>はその時が来るのを予見していたんだと思う」


「<最終破壊兵器ケラウノス>として?

 それとも地上人類の味方になって?」


蒼ニャンの答えに、ミユキお祖母ちゃんが問い直すと。


「その時にならなきゃ分からないよ」


理の女神<ミハル>が、母へと返したのでした。



コハルの帰りを待つ間、二人の運命の娘は嘗ての世界に想いを馳せていました。








「・・・すぅ・・・すぅ・・・」



余程楽しかったのか、帰って来るなり眠り込んでしまった。



「お母様には電話しておいたわ」


「そうかい?何て言ってた?」


起さないように小声で話すのはミハルの両親マモルとルマ。

リビングのソファーで眠り込んだミハルを横目で見て、話し合っていました。


「疲れているのなら、今日はこのまま寝かしておきなさいって」


「そうか・・・じゃあ、また明日でも良いか」


上着を脱いだマモルが、鞄から封筒を取り出してルマに手渡すと。


「これが辞令書だよ、転任のね」


日ノ本国防省の印が着いている封筒をルマに手渡したマモルが。


「来年の春には転勤する事になったんだ・・・」


妻であるルマに封を切るように促して教えたのです。


封筒から書類を取り出して一読したルマの表情が曇りました。


「マモル・・・これって?」


「ああ、海軍の仕事に近いよな。

 だけど親爺と一緒に行く事になったんだ」


マモルは父であるマコトも同道するというのですが。


「深海調査船・・・ミリアさんの夫の行方が掴めそうなのね?」


ルマはフェアリア公使ミリアの夫が失踪中なのを告げて、マモルが調査に向かうのかと問う。


「そう言う事だよルマ。

 親爺が新しく開発した深海用の魔鋼機械が出来上がったみたいなんだ。

 完熟訓練を終えたら、出向する手筈になったんだよ」


マモルから知らされたルマは、停めるでもなく聞き入っていたのですが。


「でも・・・どの海を探すというの?」


日ノ本近海から忽然と消えたミリアの夫が乗船していた巡洋艦。

その位置ならば大体調査は終えられていたし、発見できてもいなかった。


だから捜索範囲を広げることも検討されていたのですが・・・



「ルマ・・・口外するなよ。

 あの海に行く事になるんだ・・・暗黒大陸が沈んだ海にね」


「マモル?!どうしてそんな海に行くの?!」


驚いた声を上げたルマに、マモルは口に指を添えて。


「ミハルが起きちゃうだろ?

 どうしてかは親爺から聞けばいいし、僕にも分からないんだから」


魔鋼少女隊を率いる司令官に過ぎないマモルに、事件に関する情報は齎されてはいない。

だが、父が政府の参議を務め、尚且つ探索の全責任者でもあったから。


「日ノ本の威信をかけて探すんだと息巻いているお偉い方にも、教えていないようなんだ」


「そ・・・そうなんだ。じゃあ、お母様も知らないの?」


父と同道すると言ったマモルへ訊き直したルマでしたが。


「多分ね。親爺の事だから言っていないんじゃないかな?」


まことお父様らしいって言えばそうだけど・・・」


あっさりと肯定されてしまったようです。


「だからルマ。転勤の話だけに留めておいてくれないか、母さんに話すのは」


「・・・わかったわ」


二人は傍で寝息を立てているミハルを観て話し終えたのでした。






「「・・・聴いちゃった。どうしようかな?」」



ミハルに宿ったままのコハルが考え込んでしまいました。


眠ってしまっているミハルの中で、姫御子コハルが考えを巡らせていると。



「「姫様、ここはそっとしておいてやった方が宜しいのでは?」」


狒狒爺やが姫御子コハルに進言してきました。


「「そうかな?黙っていてもいつかは知る事になるんだよ?」」


両親との別れの辛さを知るコハルならではの問いでしたが。


「「両親共親心で話さないというのであれば、黙っておいてやるのが筋でしょう」」


「「・・・そんなものなのかな?」」


爺やの勧めに納得しきれないのか、コハルは手を拱いて考え込んでしまうのでした。


「「まぁ、分かる時に話してあげれば良いか。

  それよりこっちの話に戻そうよ爺。お母さまの手紙は何処にあるの?」」


闇の結界に忍んで部屋の中を物色するコハルに、狒狒爺が戸棚を指差して教えました。


「「あそこでございます。戸棚の中に光が漏れ出ておりますでしょう?」」


光は魔力を放ち続ける手紙がある事を示していた。

人間界に出て来た本来の目的の一つ・・・手紙の奪取。


「「そうね、確かにあそこにあるみたいね」」


姫御子コハルの眼にも、その光が意味する事が分かったようです。


「「後は・・・マモル君達が寝静まるのを待つだけね」」


手紙の奪取をバレたくないから、コハルは知らさずに終えようと考えたのです。


「「しかし姫様。女神の弟君おとうとぎみに話された方が後に憂いがないのでは?」」


コハルがどうして内密に事を運ぶのか訝しむ狒狒爺が訊ねるのですが。


「「・・・爺やには分からないのよ、好きな人に今の姿を晒したくないのが」」


ふぃっと横を向いてしまうコハルに、臣下最側近でさえも小首を傾げてしまうのでした。


「「闇の姿なんて・・・マモル君には見られたくない。

  親子だった頃とは違うんだから・・・今の私なんて・・・」」


紅き瞳を伏せて、大魔王の姫御子の黒き姿を恥じていたのです。


「「でも・・・マモル君やマコトお爺ちゃんが向かうと言っていた海には何があるのだろう?」」


大魔王の姫御子であるコハルにも、マモルの言っていた真相が分かっていないみたいでした。


「「ねぇ爺や?そこには何があるのか知ってる?」」


急に話を振られた狒狒爺は、少しだけ考えてから首を振るのでした。


「「そっか・・・そうだよね。この世界には謎が多過ぎるものね」」


爺やが知らないと思い込んだコハルが、自分に言い聞かせるように呟くのでしたが。


「「今は・・・何も話せないのです。お許し下され姫様」」


言葉には出さずに狒狒爺が詫びたのでした。





何も知らずに眠るミハル。


夢の中では何が観えているのでしょう?

遊び疲れて眠る少女の夢路は、どんな世界を観ていたのでしょう?


昼間に出逢ったアクァの事か?

それとも女神ミハルを紹介してリィーン人形を手に出来た幸せを感じているのか?



穏やかな寝顔をみせるミハル・・・


何も知らされていない、まだ大魔王の姫御子であるコハル・・・



新たな運命の糸が繋がったのを、感じてはいなかったのです。





蒼ニャンは待ちぼうけだったみたいですねW


帰って来たミハルでしたが、遊び疲れて眠ってしまったようです。

と?

いう事は?

姫御子コハルは行動に移すのです?


次回 時を手繰る少女 第2話

ああ、時は巡り・・・再び逢える時が来たのです・・・好きだった彼に。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ