決闘!ゴットランド 第10話
やっとテーマパークに平和が訪れたようですね。
宿ったコハルはミハルに頼んでみました。
何を?
危険が去ったのでコハルが身体をミハルに返した後・・・
ダックマンの着ぐるみを手にしたアクァが、別れる前に再会を約束したミハルへ差し出して来ました。
「じゃぁ、ここ迄連絡してくれるかな?
ここに書いた電話番号を介してしか連絡の取りようがないから」
アクァから受け取った名刺に書かれてあったのは。
「えっ?!ちょ、ちょっと?!これってフェアリア公使館じゃない?
アクァさんはミリア公使直属の衛士扱いじゃないの?!」
表に書かれた身分は<フェアリア大使館嘱託衛士・アクァ・ルナナイト>と明記されてある。
自分と同じ年頃なのに、アクァはもう職に就いているのか?
しかもミリア公使の嘱託とはいえ公務員なのかと、二度びっくりしたのですが。
「これにはここのオーナーでありお父さんの上司であるラミル女史が、特別の計らいで送り込んでくれたんだよ」
「ほぇぇ~っ?!アクァさんってまるで諜報員みたいだねぇ?」
どう言って良いのかも分からず、ミハルは驚嘆の声を上げるしかなかったようです。
「兎に角、私はお父さんやお母さんの願いを叶えてあげたいんだ。
本来なら<光と闇を抱く者>によって宿った魔女が目覚める筈だったのに、
いつまで経っても起きないのは何故なのかを問わなきゃならないんだよ」
「なるほどねぇ・・・いい加減な処があるからなぁ伯母ちゃんは」
ふむ・・・と、頷くミハルに、アクァは小首を傾げて訊き直します。
「オバちゃん?知ってる人はやはり年嵩なんだね?」
オバちゃんと聴いて、アクァは探しているのが未だに人だと思っているようです。
「そ!物凄い年嵩な伯母ちゃんだよ!」
ミハルもどうやら勘違いしているようですね。
「そっか・・・だよね。お父さん達と同世代なんだから」
アクァは何やら心配気な顔になってしまいました。
何故なら、両親たちが魔法を使えなくなってしまったからのようです。
「あなたが紹介してくれる人って・・・まだ魔法が使えるの?」
「えっ?!勿論使えるよ?」
問われたミハルは蒼ニャンが女神だとは言っていないのを忘れているようです。
「そう?!だったら是非とも会わせて欲しい。
なんとしてもあなたの知ってるミハルさんに会えるように取計って!」
何も実情を知らないアクァが、真剣に頼んできて。
「うん、リィーン様人形がかかってるって言ったらきっと会うことを承諾すると思うよ!」
安請け合いするミハルでした。
「それじゃあ、連絡が来るのを待ってるからね」
アクァは軽く手を挙げて、アトラクションの方に歩き出します。
「うん!なるべく早く連絡するから、待っててね」
答えるミハルも、3人が待ってる観衆達の方に向かうのでした。
「おいっミハル!ダックマンと何を話してたんや?」
いの一番にマリアが訊いて来るのを、ミハルが笑って応えると。
「リィーン様人形をくれるんだって」
端折って答えると、ローラやノーラがびっくり顔で。
「本当?!やったねミハル」
「やりよりましたノラ!」
褒め称えて手を挿し出してハイタッチを求めます。
「えへへ~っ!凄いでしょ!」
タッチを交わして微笑むミハル達に、マリアだけが怪訝そうな顔をして質すのです。
「なにか密約でもしたんか?あの金髪の子に変な約束でも交わされたんじゃないやろーな?」
「密約じゃないよ、会いたい人がいるから紹介してあげるだけだよ」
やっぱり変な約束してるやないか・・・と、マリアは額を押さえるのですが。
訊かれたミハルの方が先にマリアに訊いて来たのです。
「それよりマリアちゃん。
フェアリアは公使館に中学生くらいの子を嘱託として衛士にする事があるの?
アクァさんの名刺にはこんな肩書が書いてあるんだけど?」
さっき渡されたばかりの名刺を差し出して問いかけました。
「ほぅ?!確かにこれは正式な公使館の名刺やが。
ルナナイト・アクァなんて娘はいなかった筈なんやけどな?」
「え?!マリアちゃんでも知らないの?ミリアお母さんも公認してるはずなのに?」
正式な名刺に名を書かれてあるのに、公使の娘であるマリアは知らないという。
「益々もって訳の分からない子だっちゅーことやな?」
剣裁きは人一倍優れ、日の本人でもないアクァが居ることにマリアは考えをつけかねて。
「そないなことはウチがオカンに訊いてみるわ。
今直ぐに約束を果たさなくっても、ええんやろミハル?」
「うん、アタシも伯母ちゃんに許可を貰わないと話にもならないから」
リィーン様人形を今すぐにでも欲しいミハルにしては、随分妥協してるなとマリアは受け止めたようです。
「そやったら。今日はこのまま存分にアトラクションを満喫するんやな!
折角の休みなんやし、閉園まで遊びつくそうやないか!」
「賛成っ!マリアちゃんに賛同します!」
闘いが終わり観衆達が囲みを解いた中、4人は遊び尽そうと気勢を上げるのでした。
「じゃぁ!次はあのコースターに乗ろう!」
いの一番にノーラが指差しました。
「あれがラミルカンパニーが誇る、<史上最悪の大回転コースター>だよっ!ノラ」
指差されたミハルが大回転ループに入っているコースターに目を向けますと・・・
「嘘・・・何よアレは?!」
ハンガーだけで支えられた剥き出しの乗客が観えました。
ぞぞぉ~っ
ミハルの身の毛がヨダチます。
はっし!
ノーラの手が・・・ミハルを掴んで放しません。
「行くノラ!」
「ひぃっ?!いやいや、無理無理!」
引き摺られて行くミハルを、マリアとローラも背中を押して。
「大丈夫やってミハル、ちょこっと眼を瞑ってたらええんや」
「そうですよミハルさん、ものは試しっていうじゃないですか?」
3人がかりで連れて行く。
「ひぃやぁ~っ?!やだよぉ、もう無理だってばぁ!」
拒絶するミハルが、前に乗ったジェットコースターを思い出して泣き叫んだ時。
「「あのぉ、ミハル?ちょっとだけ身体を明け渡してくれないニャ?」」
まだ闇に帰っていなかった黒ニャンコハルが頼んで来たのです。
「「一度だけで良いから、乗ってみたいのニャ」」
「えっ?!コハルちゃんが?」
どうやら折角人間界に出て来たのだから、遊んでみたくなったみたいなのです。
「「そう!こんな機会は二度とないかも知れないから。ねぇお願いニャ?」」
ニャ語で頼まれても・・・とは言えず。
闇の中に居るだけのコハルを想ってか、それとも本気でコースターが嫌だったのか。
「そう言う事なら!良いよ代わっても」
即座にチェンジを認めてしまうミハルでした。
「「ありがとぉー!じゃぁ早速ね!」」
本当は強制的にでも代ろうと思っていたのか、コハルが瞬時に入れ替わったようです。
ぐいっ!
「おやぁ?!急に乗り気になったねぇノラッ?!」
嫌がっていたミハルが、急にのめり出して3人を引き摺るように駆け出したのをノーラが揶揄しました。
「そう!折角だからっ全部に乗りたくなったの!」
「ほぇっ?!全部って・・・マジか?ノラ?!」
ぐいぐい引っ張るミハルに、ノーラも気勢を削がれたのか。
「ミハルパワーなのか・・・これが?!」
驚き半分、ミリアとノーラを振り返ると。
「じゃぁ!全制覇するのら!」
勢いを取り戻してコハルになったミハルの伴をすると言い切ったのでした。
「「あああ・・・コハルちゃんってば。
コースターの怖さを知れば、そんな事言えなくなるのに・・・」」
憑代になったミハルが頭を抱えてコハルに忠告したのでしたが。
「闇の中じゃぁ怖さなんて無いんだから。
恐怖を教えてもらえるなら、乗る価値があるんだからね!」
物怖じしない積極さが、コハルの良い処でもあり悪い処でもあるのです。
「「ま、気が済んだら教えてねぇ~」」
直ぐに音をあげると踏んだミハルが様子見を構えました。
・・・・で?!
「はぁ・・・ひぃ・・・なんちゅぅ奴なんやミハルは?」
マリアがひぃひぃ喘いで黒髪のミハルを観て言いました。
「朝の怖がり方が嘘のようですね」
ローラがジェットコースターで騒いでいたミハルの背を観て頷いています。
「もはや・・・追従不能だ・・・ノラ」
目を廻したノーラが絶句しています。
「「・・・・・死ぬ」」
憑代ミハルも絶句・・・って?!
「はぁ・・・楽しかった!人間界って、やっぱり良いものだよね」
独りご満悦なコハルが、日が暮れた中で呟いていました。
一日中燥ぎ回れたことに感謝して、人間界に連れ出してくれた蒼ニャンにお礼を告げて。
「きっと・・・女神様は、私に教えようとしてくれたんだ。
この世界にある楽しさや大切さを・・・光溢れる人間界を教えてくれたんだ」
夕日が落ちたテーマパークに、大魔王の姫御子が佇んでいるのです。
「きっと・・・ミハエルお母様も教えたかった筈なんだ。
人間界がどれほど楽しいか、どんなに大切なのかっていうことを。
産まれた時からミハルの中に封じたのは、きっと教えておきたかったからなんだ」
あの手紙に忍ばせたメッセージ。
闇の力を持つコハルには読み取れた。
大魔王の異能で封じてあったのは、ミハエルの想い。
「ミハエルお母様は、私に人の愛を教えていた。
大天使であり神に名を刻んだお母様は、やがて来る闇を知っていたから。
私達にメッセージを残してくれたんだよ、この世界を救うために」
呟くコハルは誰に向けて?
誰にミハエルの手紙に書かれたメッセージを教えるのか。
「きっと間も無く闇が蠢き始める。
その時、人間界を護れるのは・・・私達なんだよ?」
憑代ミハルへなのか?それとも?
「その日が来る前に・・・目覚めなきゃならない。
全ての魂が、解放の時を待っているのだから・・・」
浮かび上がった月を見上げて、コハルが諭したのは。
「輝と闇を抱く者になるには、あなたの目覚めが必要なのよ」
左目が赤く月の光を反射している。
黒髪のコハルの想いが実現するのはいつの日か。
「もう直ぐ・・・時が満ちようとしているの。
女神様はきっと、私達が為すべき事を知っている筈だから・・・」
月明かりに照らされたコハルの想いは、憑代ミハルに届いたでしょうか?
「「ニャァ~・・・目が回るニャ」」
聞こえているのかも定かじゃなさそうです・・・Orz
大魔王の姫御子として運命に向き合うコハル。
ですが、一方のミハルは目覚める気配さえ見せません。
一時の安息を終えれたコハルに、何が待つというのでしょう?
・・・あ。
その前に蒼ニャンはどうしているのでしょうか?
さて?!
次回 時を手繰る少女 第1話
とぉーきぃーおぉ~っかけるしょぉじょぉ~(^^♪・・・てか?