決闘!ゴットランド 第7話
そう言えば忘れてましたね。
蒼ニャンはコハルを送り込んで何をしているのでしょうW
テーマパーク<ゴットランド>で、異能バトルが繰り広げられている時・・・
・・・こそこそ・・・
黒ニャンの姿が忽然と消えてしまったミユキお祖母ちゃんの家では、蒼ニャンがこっそり餡ころ餅に近寄って来ていました。
「しめしめ・・・お母さんもコハルちゃんを探しに行ったし、誰も居ないわね」
・・・やっぱり。こんな事だろうと思いましたよ。
宝珠から瞬間転移して来た蒼ニャンが摘まみ食いを図っています。
蒼ニャンの目の前数十センチには、山盛りの餡ころ餅が・・・
「コハルちゃんにだけ食べさせるなんて・・・出来っこないじゃない」
言い切った者勝ちですかい?
「一つや二つくらい食べても分かりっこないわよね?」
蒼ニャンはコハルを出汁に、また良からぬ事を画策したのです。
姪っ子ミハル達に任せっきりにしておいて、女神の務めを放棄したのでしょうか?
「ふふふっ!姪っ子と姫御子が同化しているのなら、大概は大丈夫。
例え闇の者が襲って来たとしても、グラン達がカバーする筈だから」
・・・そこまで読んでいた?しかしそうとは言えどもほったらかしにしておいて良いの?
「二つくらい味わってから様子を観に行けば、問題無し子よね!」
・・・蒼ニャン、問題あると思うんだけど?ものすっごく!
餡ころ餅に目を輝かせた蒼ニャン。
目の前に山積みされた餡ころ餅に気が取られ過ぎていた・・・ら。
「ほほぅ?黒ニャンコダマにでも化けてる気なのミハルは?」
あ・・・
むんず!
またしても・・・猫掴みされる蒼ニャン。
ぷら~~ん
「シクシク・・・・」
もはや覚悟完了状態の蒼ニャン。
摘まみ上げたミユキお祖母ちゃんが言いました。
「コハルちゃんを唆しておいて、摘まみ食いするとは!
1000年間何をして来たのよ、理の女神ミハルは!」
「・・・シクシク・・・」
言い返せない蒼ニャンに、ミユキお祖母ちゃんが説教します。
「大天使ミハエルさんも、ずっと気にしていたんですからね。
戻って来るミハルが、永い時の間に変わってしまわないかって。
永き時を経て、貴女が一番大切にしていた想いを忘れてしまわないかってね」
滾々と説くミユキに、蒼ニャンはしょげかえっています。
ケモ耳を垂らし、紅いリボンも力なく折れ曲がり。
「そもそも、女神になっている事も忘れるくらい甘えちゃって。
帰れたのが嬉しいのは分かるし、私も嬉しいのよ?
でも、だからと言って大切な想いを放擲するのはどうかと思うのよ?」
実の娘であり、ハルマゲドンで一度は消えた女神だからとはいえ、最近の言動が如何にもおかしいと諭している。
心配するミユキの言葉が、女神を打ち据える。
「お母さん・・・・」
しょげかえっていた蒼ニャンが、母であるミユキに。
「私・・・甘えていたかっただけなの。
今だけでも良いから、お母さんに怒られていたかった、笑って欲しかった。
本当は女神なんて続けていたくないって逃げていたの」
悲し気に応え、最期に付け加えた。
「もう直ぐ闇よりも恐ろしい敵がやって来るんでしょう?
私にも分かるから、その日が近付いて来たのが・・・」
蒼ニャンがミユキの表情を観ながら訊いた。
「そうね・・・女神には隠せないとは思っていたわ。
私も蒼乃も・・・やっと本当に来ると分った処よ」
「日ノ本の皇家には伝えられ続けて来たんだよね。
だから蒼乃殿下はお母さんに託した。
運命の子であるミユキお母さんに・・・蒼き宝珠を」
ミユキから受け継いだ蒼き宝珠を指す蒼ニャンが、
「月の住人が造った機械を停めれる珠を・・・
MIHARUシステムが眠っていた珠を、お母さんに託したんだよね。
世界を終焉から救えるようにって・・・」
永き時を亘って、女神は知った。
1000年周期で行われた終末の審判というものを。
そして自分が喰い止めた筈の審判は、とある目覚めを呼んでしまったのだと。
人間が機械に勝った事実。
人間が漸く地球を取り戻せた・・・今居るこの世界。
「だから・・・彼女達が戻ろうとしている。
MIHARU計画に基づき、月の住人だけが生きる世界を求めて」
蒼ニャンが打ち明けた。
1000年間に調べ上げて来た、この世界の事実を。
「嘗ての戦闘なんてお遊びになる。
私達、神たる者が総力で挑んだって守れないかもしれない。
その日が・・・もうそこ迄来てしまったのよね?」
そうだったのか・・・蒼ニャンはその事実をひた隠して?
「ミハル・・・終末戦争になるというのね?今度こそ」
「うん・・・ルシちゃんもミハエルさんも。
みんなが気付いたんだよ・・・だからその日の為に備え始めているんだよ」
真実なら、この世界の終末がもうそこまで来てしまった。
女神の言う終末戦争で人類は、元々の人類に消されてしまうのか?
「今私達の居る世界以前、前の1000年期の話だけど。
月の住人達の一部が降り立ったらしいの、この日ノ本とフェアリアに。
お母さんも薄々気づいているだろうけど。
リーンとお母さん、それにマコトお父さん・・・他にも数名居るけど。
遺伝子から生み出された月の住人・・・本当は月の子なんだよ?」
蒼ニャンが教えてきたが、ミユキは少しも驚かず。
「そう・・・その通りよミハル。
あの日、ミハル達が新たな時代を切り開いてくれた後だったわ。
ミハルが旅立って行った後、ケラウノスのチップが見つかった。
マコトが何年もかけて解読したの、そこに隠されてあった歴史を。
人類が最初に消滅した5000年前の事も、月に逃げた人類が居るのも。
そして・・・彼等がいつの日にか帰る為に目覚めようとしているのもね」
既にマコトはその日の為を考えて行動しているのだと分かる。
蒼乃もその日が近付いているのを感じていた。
そして、ミユキは自らの宿命を果そうとしている。
「ミハル、安心して。
みんな、あなた達だけを闘わせようなんて思ってはいないの。
マコトもマモルも、ルマにミリアも・・・みんなが秘密裏に備えようとしているのよ?」
その為の魔鋼。防衛する為には超科学力が必要だから。
「それにね、今度はあれも味方になってくれる筈よ」
ミユキの眼は遥か彼方、フェアリアの沖合に沈んでいる島を観ていた。
「そう・・・なんだね?
ケラウノスが地上の人達に味方してくれるのは有難いけど。
それを邪魔する者達がいるんだよね?」
「そうよ、イシュタルの民とかいう秘密結社がね。」
蒼ニャンは、姪っ子達が闘う相手を想う。
「後・・・どれぐらいの時間が残されているんだろう?
もし、迎え撃つのが間に合わなかったら・・・」
残された限られた時間で、月の住人達から地上の人々を護れるのか。
世界を再び戦争の闇が覆う時までの残された時間はどれくらいあるのかと、眼を伏せて考えていた。
「理の女神でも分からないのね、どうなるかなんて。
だから、ミハルは名残惜しむ代わりに甘えん坊さんになったのね?」
「ごめんなさいミユキお母さん」
ふっと息を吐いたミユキは、娘である蒼ニャンをそっと餡ころ餅の上に置いてやるのでした・・・
ダックマンは黒髪の少女を見下ろし、剣を構え直した。
「言っておくぞ!闇の者なんかじゃぁ無いのだと。
確かに闇の属性があるのかもしれないが、魔女は閉じ込められたままなんだ!」
「魔女?!どういうことなのよ?」
コハルが訊き返した時、新たに分かった事があった。
何かの魔力が秘められている事と、それが発動していないのが。
ダックマンの右手から溢れている蒼き魔法は、魔女のモノではない。
古から受け継がれた魔法には変りないようだが、魔女が宿っている形跡がないのが判った。
ー 右手に何かを着けている・・・感じられた違和感の正体がそれ。
そこから出た魔法で何かを変えたんだな?
憑代ミハルは見抜いた。
右手に着けられた物によって、何かを変えたのだと。
「うん、そうみたいねミハル。
着ぐるみの魔法を封じるしか勝利は掴めそうにないね」
コハルにも何かの魔法を使ったのは判る。
だが、闇の魔法だとばかりは言い切れなかった。
「私の闇の力にも反応しないし、何が起きたのかさえ分からない。
でも、確実に着ぐるみは何かを放った、そして嘲笑っている」
コハルは姫御子として闘うべきかを思案し出した。
「周りにいる人達を巻き込む恐れがあるから、結界は張れないわね。
でも、このままじゃぁ時間ばかりが過ぎ去っちゃうなぁ」
コハルが勝負をつける方法を考えて、つい呟いてしまった。
「「うん、時間が勿体ないね。
折角のお休みなのに・・・遊ぶ時間が無くなっちゃうよ」」
コハルは<闘うのに割く時間が>と言ったのに、ミハルは遊べる時間を答えて来る。
「ミハル・・・少しは真剣に考えてよ?」
「「もうこうなったら、魔砲を使っちゃおうか?!」」
コハルに窘められても、返したのは強硬策。
でも、コハルはミハルの何気ない一言で思いついたのです。
「そっか!魔砲って手があったんだった。
一撃で着ぐるみの魔法を使えなく出来るかも知れないわ!」
何を思いついたと言うのでしょうか姫御子は?
「ミハル!ダックマンの剣を封じるわよ!」
だから・・・どうやって?
「もう一度闇の力を使うけど、今度はミハルの輝も放ってよね!」
どうするというのでしょう?
ダックマンとの決闘は、コハルの思惑通りに運ぶでしょうか?
着ぐるみダックマンを仰ぎ見て、コハルが右手を突き出して構えたのです。
深い訳があるようですね蒼ニャンには。
それが分かるのは今しばらく後かと。
一方コハルに身を託しているミハルですが。
ダックマンとの真剣勝負に勝てるのでしょうか?
まぁ、チートな2人がタッグを組んでますからね・・・
次回 決闘!ゴットランド 第8話
意外な事が発生しそうです!もしや・・・ミハルが負けるのか?負けないのか?!どっちやねん?!