ミハルの秘密?!第8話
蒼ニャン
黒ニャン・・・
ニャンコダマは2匹になった?!
なんてこった・・・・・
もしあなたが眼にする事が出来たのなら。
縫いぐるみ達がぞろぞろ進む光景は、異様としか言いようが無いでしょうね。
その先鋒を進むのは、二匹のニャンコダマだとしたら余計に・・・ね。
「さぁ、ここからは二人だけで行くから。
グラン達は暫く待ってくれないかしら?」
蒼毛玉のニャンコダマが、黒毛玉を誘って現実世界の門を開く。
「はい~っ、手紙の件をお忘れなく~」
姫御子を女神に預けるのは気がひけたが、ミハルに任せておけば大丈夫だろうとグランは信じていた。
「おい、グランよ。あの女神を信用して良いモノかのぅ?」
狒狒爺やは、心配そうに黒毛玉になったコハルを案じるのだが。
「心配ご無用。あれでも女神は人一倍優しいんですよ」
「そうかのぅ?さっき陰でニヤリと笑いおったのが、気になるんじゃが?」
どちらが正しいとも言えない・・・二匹の臣下は口を噤んで二人を見送った。
「・・・心配じゃのぅ」
「・・・確かに」
グランもどうやら心が揺れてしまったようだ。
二匹の魔獣が心配しているのを余所に。
「コハルちゃん、もう直ぐ懐かしい人の元に行けるわよ」
「はい!ミユキお婆ちゃんに逢えるのね!」
涙さえ浮かべるコハル・・・もとい、黒ニャンコダマ。
一方蒼ニャンコダマは心がチクリと・・・も、しない。
「そうそう!先ずはご挨拶からだけど。ここであなたにはっきりと伝えておくわね。
ミユキお母さんに今迄の事を訊かれても<何も>答えてはいけない。
今、闇の世界に居る事もよ!あなたは光を纏う事も出来ているってだけ教えれば良いの」
「ええ~っ?!お祖母ちゃんに嘘を吐けと言うんですか?」
黒ニャンコダマは蒼ニャンコダマに聞き返す。
だって、本当は光なんて掴めていないのだから。
「ふふふっ、嘘は方便って云うじゃない。
ミユキお母さんに余計な心配をさせたくはないでしょ?」
「そ、そう言われると・・・はい、分かりました」
少し悲しくなってしまったコハルの心に陰が差す。
「それと、もう一つ。
姪っ子に見つかったら逃げるわよ。あの子には内緒で人間界に来たのだから」
「えっ?!あ・・・そうですよね」
まだ覚醒していないミハルに逢えば、それだけでも闇に染まる虞があったから。
ここは人間が支配する世界なのだから、大魔王の姫御子が現れてはいけない場所なのだから。
「よろしい。それでは参りましょう」
蒼毛玉はそっと門を開く。
「ミィハルぅっ?!」
門を潜り抜けたら・・・ミユキが仁王立ちして待っていた。
「ひぃっ?!にゃぁっ?!」
いきなり猫掴みされた蒼ニャンコダマ。
ぶら~んっと、揺れるニャンコダマにミユキが質して来た。
「ミハルっ!あなたね、御菓子をつまみ食いしていたのわっ!」
「ひっ?!ひいぃっ?にゃっ、にゃんのこと?!」
すっとぼけた蒼ニャンコダマが冷や汗を垂れ流す。
「ちゃんとコハルちゃんに聞いたわよ!
晩御飯の後に時々ミハルが魔法石から居なくなるって。
その日に限ってお菓子が消えるのは、どう言う事なの?
説明しなさいっ!言い訳なんて聞きませんからね!」
「ひにゃぁっ?!(ちぃっ、姪っ子め。垂れ込んだか!)」
摘ままれたまま、蒼ニャンコダマは口を歪める。
二人の様子を門の陰から観ていた黒ニャンコダマは、ミユキを観て涙ぐむ・・・のではなく呆れてしまっていた。
ー ミユキおばぁちゃん・・・変わらないなぁ
ほっと溜息。
で、フェアリアで良く抱いてくれていたのを思い出して。
ー 私も摘ままれ・・・じゃない。抱いて欲しいなぁ・・・
いつ出て行こうか、どうやって話しかけようかと悩んでいたら。
「私は無実よ!居なくなったのは偶然重なっただけなんだから。
どこに私が盗み食いしたって証拠があるの?」
蒼ニャンコダマは門に隠れている黒ニャンコダマにウインクして来た。
「もしかして、お母さんは毛玉を観たって言うんじゃないでしょうね?
それなら私独りが毛玉じゃない事をみせてあげるわ!」
(・・・おい、ミハル。まさかお前・・・)
蒼ニャンコダマに促された黒ニャンコダマがオズオズとゲートから出て、ミユキの前に姿を現した。
「あら?!もう一匹?!ミハルみたいなのが・・・」
黒ニャンコダマが恥ずかしそうに、もじもじしながら現れ出た。
「ミユキお祖母ちゃん・・・聴こえる?」
コハルの声で話してみた。
ミユキの前に進み出た黒い毛玉・・・が。
「まさか・・・コハルちゃん?コハルちゃんなのね?!」
一発で誰なのかを悟ったミユキ。(さすがです!お祖母ちゃん)
「うん・・・うんっ!おばぁちゃん・・・逢いたかったよぉ!」
ポィッ!・・・・ぼてっ
蒼ニャンコダマは放り出されて床とキスさせられた。(イイザマ)
「お祖母ちゃん!ミユキお祖母ちゃん!」
黒ニャンコダマは堰を切ったようにミユキの元に駆け寄る。
「ああ、コハルちゃん。私も一日として忘れたことわないわ!」
蒼ニャンコダマとは大違い。
ミユキお祖母ちゃんは黒ニャンコダマを押し抱いた。
「フェアリアで突然孫の躰から消えちゃうから心配していたのよ。
王宮で魔法玉を渡された翌日に居なくなったときは、本当に心配したのよ?」
・・・ちょっと待って?それはどう言う事なんですか?
蒼ニャンコダマも詳しくは知らない事実。
リーンの手から授けられた蒼い宝珠は、コハルに渡されたと言うのか?
「それって・・・リーンが闇の者に手渡したって事なの?」
余計な口出しは怪我の元。
「ミハルは黙ってなさいっ!」
何処から出したのかは分からないが、ミユキはピンポンのラケットで蒼ニャンコダマをぶっ飛ばした。
メキョ・・・ボコッ!
壁にめり込む蒼ニャンコダマ・・・確実に黙らされたようです。
「コハルちゃんはあの当時、ちゃんとした人間だったのよ。
魂の転移・・・あなたも知っている術を使われてね」
・・・おお、懐かしや。(詳しくは「魔鋼騎戦記フェアリア」を読んで)
壁にめり込んでいる蒼ニャンコダマが聞いていると思ったか、ミユキお祖母ちゃんが説明してくれた。
「コハルちゃんは産まれた時からミハエルさんがルシファーさんに頼んで転移させたの。
私達夫婦に頭を下げて頼みに来たわ、女神の母に頼るしかないってね。
闇に染められるのを防ぐ為と、少しだけでも良いから人の温もりを与えて欲しいと・・・ね」
なるほど・・・だからミユキお祖母ちゃんはコハルを慈しんでいたのか。
・・・この辺りの描写は「魔鋼騎戦記フェアリア」ラストエピソードをご覧ください。
「尤も、孫の魂はその間眠り続けていたんじゃないの。
コハルちゃんが人間世界に居る間の記憶は引き継がれていた。
但し、自分が神々の子であることは伏せられていたのよ」
ー あ・・・それは。まだ言っては駄目なんじゃないの?
蒼ニャンコダマは止めれなかった。
壁にめり込んだ状態では。
「え?!私が・・・神々の子?お父様は確かに堕神だけど大魔王でもある筈だったよね?」
そう。
コハルは自分が早春神だとは知らない。
闇の姫御子としての存在だとしか覚醒出来ていないから。
「あ、あら?
お祖母ちゃんにとってはコハルちゃんは女神よりも尊い孫よ」
ー お母さん・・・誤魔化すのが下手すぎ・・・
蒼ニャンコダマは心で毒吐くのだが・・・自分で壁から出られなくなっている。
残念過ぎる母娘に、黒ニャンコダマは。
「そうかぁ~っ、ありがとうミユキお祖母ちゃん。
私を神々の子だなんて思ってくれて・・・嬉しいよ」
ー あ・・・誤魔化されやがんの・・・コハルちゃんも損な子だったのね・・・
(いや、アンタ達よりは真面だと思ったんだがな?)
黒ニャンコダマを押し抱いたミユキお祖母ちゃんが、じろりと蒼ニャンコダマを一瞥してから。
「折角人間界に出て来れたのに、おやつが食べられちゃったのよ口の悪い娘の所為で。
だから今直ぐ餡ころ餅を造りましょうね、コハルちゃんの大好物だったわよね?」
「えっ?!お祖母ちゃん・・・覚えてくれてたの?」
黒ニャンコダマの眼が輝く。
「当たり前よ、フェアリアで居なくなった日からずっと陰膳して来たんだから。
コハルちゃんの誕生日には決まってぼた餅を造って来たんだから」
そうだったのか!ミユキが牡丹餅をやたらと造っていたのは、その為だったのか!
「ミユキおばぁちゃん・・・嬉しい」
黒ニャンコダマとミユキおばあちゃんは、連れ立って台所に行ってしまった。
残されたのは壁にめり込んで出られなくなっている蒼ニャンコダマ。
ー 酷い・・・こんな扱いって・・・
シクシク泣く蒼ニャンコダマ。
しかし、自業自得の結末だとは・・・思っていないんだろうなぁ・・・
「えっ?!こんなに・・・入ってる?!」
一方その頃。
「しぃ~っ!ルマに聞こえちゃうじゃないかミハル」
ポチ袋を開けてみれば、そこには不相応にも見えるお札が。
「親爺・・・マコトお爺ちゃんから預かって来たのと、ボクからのお小遣い。
それだけあればゴットランドに行っても不自由しないだろ?」
マモルがウィンクして、驚くミハルに教えた。
「行けるいけないじゃないよ。テーマパークにこんな大金使わないよ!」
マコトからのポチ袋には<3萬円もの>お札が入っている。
つい最近買ったノートが一冊80円だったから、3万円もあれば大抵のモノが買える。
ついでにマモルからも軍資金が貰えて、ミハルはウハウハ・・・
「お爺ちゃんから頂いたお金は、大事にしまっておくよ。
マモル君からのお金で十分だよ!」
「そうかい?お爺ちゃん悲しむんじゃない?」
マモルは悪びれてないが、ミハルはしっかり者の性分を見せつける。
「駄目!このお金は大事な時に使うんだから。
お爺ちゃんだって遊びに使うより、そっちの方が喜んでくれるよ!」
「ミハルはしっかり者の、善いお嫁さんになるんだろうなぁ」
瞼をパチクリしたミハルの髪を撫で、感慨無量の顔を向けて来るマモル。
「あのねぇマモル君。話が飛躍し過ぎ」
呆れてため息を漏らすミハルが、ポチ袋をマモルに返すと。
「兎に角、このお金はマモル君からルマままに渡して。
ちゃんと銀行に預けて貰わないといけないんだからね?」
親に向かって説教を垂れた。
「はいはい。じゃあ、ボクからのお小遣いで足りるんだね?」
ポケットに受け取ったポチ袋を仕舞い、心配気にマモルが質して来た。
「うん、みんなお小遣いをやりくりしてるんだもん。
マモル君から貰った金額で十分楽しんで来れるよ!」
「ミハルは本当に節約家だなぁ・・・お婿さんが思いやられるよ」
さっきとは真逆な一言を、冗談として返すマモルに。
「そうかな・・・嫌われちゃう?」
真に受けたミハルが、心配そうにマモルに訊くと。
「大丈夫。もしミハルに婿が来なかっても、僕が貰ってあげるよ」
真面目な顔で父親から言われてしまった・・・ら。
「はぁ・・・どうしてマモル君って男はこうなんだろ?」
溜息を吐いてマモルの傍から離れてしまうミハル。
「ツンなぁ~っ」
マモルはカンバーックと手を伸ばしていたが、ミハルが階段を上っていくとにっこりと笑うのだった。
それは週末にテーマパーク<ゴットランド>へ出かける前の団欒の一コマだった。
日ノ本に出来た外資のテーマパーク。
双頭の獅子が描かれた青い旗が昇っている。
外資の本国を表す旗・・・
出資していたのは<フェアリア国>の総合レジャー企業<ラミルカンパニー>。
豪勇を広めた女性社長の名を冠した、とんでもないテーマパークだった。