ミハルの秘密?!第1話
冬・・・それは動物の活動も鈍る。
まだ明けやらぬ冬の朝、動き回れるのは・・・
「ミハル!寒稽古の時間よ!」
寝ぼけ眼のルマが二階の部屋をノックする。
「義母お祖母ちゃんと約束してるんでしょう?!」
ノックすれども返事がない。
そこで母たる者の務めを果たす。
ドアを開けて娘を叩き起こそうとしたルマの眼に飛び込んだのは・・・
「あら?!やる時はやる子だわねぇ?」
きちんとベットが整えられ、出かけた後のようだった。
「ミハルも少しは自覚したのかしらね?」
パジャマ姿のルマが、もぬけの殻の部屋でクスリと笑った。
「宜しい、今日の朝稽古はこれでお終いよ」
パンっと、手を叩いて合図を下す。
朝日が昇る前。
闇の静寂が替えられる前の一時。
「どうやら二の太刀を習得する段階まで漕ぎつけたわね?」
白い道場着を纏ったミユキが微笑んでいる。
「ま・・だ。まだだよ、お祖母ちゃん。アタシはそこまで上達出来て無いから」
道場の床にひっくり返ったミハルが、はぁはぁ息を吐いて首を振る。
「だって・・・お祖母ちゃんに一回も触れられないんだもん」
師範の免状を貰っているミハルであったが、宗匠のミユキには太刀打ちも叶わなかった。
なんど稽古を即けて貰っても、木刀にミユキの袖さえも触れることが出来なかったから。
「あらあら・・・コハルちゃんは上達したわよ。
いつも真面目で一生懸命に修行しているから・・・」
木刀を桟にかけて、ミユキが労うのだが。
「一生懸命だって、巧くならなきゃ意味ないもん」
まだ中学生のミハルが、何を急いでいるのか。
なぜ上達する事に拘るのか?
「二の太刀を覚えてみるのも良いかもしれないわよ?
それで何かのヒントになるかも知れないのだから・・・ね?」
ミユキはそう諭すのだが、自分の剣に納得していないミハルは。
「そうかなぁ・・・じゃあ、もう少しだけ待って。
この冬が明けるまで・・・冬稽古が終えられるまで。
春には新しい剣を覚えるから・・・」
振り上げた右手に光る<蒼き宝珠>を見上げて、ミハルははやる心を抑え込んでいた。
クンカ クンカ・・・
机に向かった瞬間。
「ぎゃぁっ?!何するのよノーラちゃん!」
悲鳴をあげたミハルが振り向くと、そこには・・・
「良いにほぃー!太陽の匂いがするーのら!」
首筋の匂いを嗅いでいるノーラの姿が。
「良い匂いって・・・ありがと。 じゃぁないっ!」
怒るミハルがノーラに叫ぶ・・・が。
「ミハルんは、どうしてこうもヘロモンを振り撒くノラか?」
ー ・・・ヘロモン?フェロモンやろーに?
ジト目のマリアが、心でノーラに毒づく。
マリアの前に居るミハルとノーラ。
先の誘拐事件が落着を観た後、ローラとノーラ姉弟(?)は見事に同じクラスになった。
どうみても年上だったノーラは、呪いが解けた後姿が変わっていた。
目の前でミハルに絡んでいるのは、別人にも見える程幼く見えていた。
「ミハルんは、もはやアタシに身をゆだねるしかないのよぉーノラッ!」
「にゃんでぇーっ?!アタシがノーラさんの物にならなきゃならないのよぉ?!」
逃げ惑うミハル、追うノーラ・・・
「はぁ・・・これがつい先週まで盗賊ノーラだったとは・・・」
額を押さえるマリアには、新たな悩みの種になるのか?
あれだけ白銀色に染まっていた髪も、いつの間にか日の本人ポイ黒髪に。
あれ程魔力が籠っていた瞳さえもが、まるで黒い真珠の様に輝いている・・・
「それにしてもやな・・・ウチの勝ちや」
マリアはふんぬと胸を逸らした。
「これでまた、クラストップやな!」
・・・なにが?マリアたん?
「姿形が幼くなるって、誰も想像つかなかったでしょ?」
傍からローラが、割って入って来た。
「うん?!そりゃそうやで。誰が若返るなんて・・・って、ローラか?!」
声を見返ったマリアが、ほんのり上気した顔を向けて来るローラに気が付く。
「そうだよねぇ、呪いが解けたら元に戻る・・・それが当たり前。
でも、どうした事かノーラ姉さんは逆に若返り過ぎなんだよねぇ?」
答えられたマリアがもう一度ノーラを観る。
肩下まで伸ばした黒髪。細めの眉に長い睫毛。
キラキラ光る黒い瞳に、ほんのりピンクで薄めの唇。
「美少女になりたいって言ってた事があるんだけど・・・元々とは違うんだよ」
弟で今は少女なローラ君が、頬に指を宛てて答える。
「それにぃ、どーして背まで低くなってるのか?まるで化けてるみたいだよ?」
確かに・・・と、マリアはミハルを追っかけてる美少女ノーラに納得した。
頭の先からつま先まで。これでもかって言うくらいに、<美少女化>しているのだから。
「ローラに一つだけ訊きたいんやが。
元々、あんな子じゃなかってんだよな?」
「そう、僕の知る限りはね。あれはノーラ姉さんじゃない、断言する!」
・・・・
じゃあ、どうしてノーラだと言い切れる?
「ノーラ姉さんと一緒に住めるようになって、母さんが言ったんだ。
僕は女の子のままで居なさいと。姉さんにはもっと無邪気に戻りなさいって・・・」
「その結果がこうなんか?!ノーラは無邪気を通り越してるようなんやけど?!」
幼児化してるんじゃねぇのかと、マリアはツッコミを入れたくなった。
「まぁね、それがノーラ姉さんの良い処・・・って、思っておいてよ」
ー 無理やろ・・・
逃げ回るミハルと、匂いフェチのノーラをそのままにして。
ローラにも突っ込みたくなるマリアちゃんでした・・・
「助けんかぃっ!」
逆にミハルが突っ込んでますが・・・ほっておきたまえ。
ペダルを漕いで、もう幾年・・・じゃぁなかった。
ここは闇の中。
しかもミハル達が居る日の本から、とおぉーくっ離れた闇の世界。
「「失敗は赦さんのだ!」」
「そぉんなぁー!ムチャヨォ!」
「相手にならなかったんですよぉ!」
「ボク達は悪くないんだよぉ?!」
3匹が震えあがっている・・・
誰かって?そりゃぁ・・・
「「ほぉ~れぇ、オシオキタァーイムゥ!」」
「ぴぃやあぁっ?!」
「お助けぇー?!」
「新大魔王のオタンコナース!」
損な魔王3匹が、大魔王級の魔法で<クチョンくちょん>に吹っ飛ばされたのであった。
「「くくくっ!愚かな者達だ。
我に謀られているとも知らず・・・」」
新大魔王と呼ばれた影が、3匹を嘲笑っていた。
「「異種・・・イシュー・・・イシューよ。
そなた等はどう思う?」」
新大魔王の影が問う。
影の中の陰に。
「「まだ早い・・・まだ時は満ちてはおらぬ」」
地の底から聞こえて来るような声が、新大魔王に答えた。
「「ならば、いつまで遊ばせておくと言うのか?
最早人間は過ちを冒したというのに?」」
問い直す新大魔王へ陰が言った。
「「我等異種たる者が判断を下す。
世界を元に戻すかの判断を。
その時には、地表の全てをあるべき元へ還すのみ」」
影の中の陰が言い切った。
「「良かろう・・・では、それまでの間、遊び続ける事にしようではないか」」
新大魔王は陰に頷く。
「「光が虚ろになるまで。
光を掲げる者達に絶望を与え続けるのみだ・・・」」
嘯く新大魔王の影は、時が満ちるのを待つと言う。
闇の中で。
日ノ本から遠く離れた闇の中で・・・・
それぞれ・・・いろいろとね?
闇に策動する陰。
何を狙い、何をしようとしているのか?
秘密といえば、一番してる人達が居ますよねぇ?
寛ぎながら話しましょうか?
次回 ミハルの秘密?!第2話
「「みなさーんっ!ミハルですぅ。ええ、ニャンコダマなんかじゃありませんよ?!
今話から始る秘密への追求って、物語に関係ありますカァ?」」
「もごもごもご・・・・」←口を封じられてる姪っ子ミハル
「「本人もナニも言わないから。私が主人公張りますねぇ!」」
「シクシク・・・・・」←泣く姪っ子ミハル
「「V!」」企むのはニャンコダマ!!