闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第11話
漸く・・・中ボス戦もお終いです。
やっと、騒がしかった闇との間にも別れの時が?
何が起きたのかも分からない。
突然襲った頭痛に、気を失っていたから。
「あ・・・あたたたぁっ」
頭を抱えて痛みに耐える・・・何が起きたかも分からずに。
「どうしちゃったんだろう?
コハルちゃんを待っていた筈・・・だったのに?」
消えたモニターを回復させようと、予備電源を知れべている時だった。
頭に衝撃を受けた感じがしたと思ったら、気を失っていた・・・
「まるで・・・誰かに殴り倒されたみたい・・・痛たたぁ」
たん瘤を押さえて、ミハルが蹲っていると。
「「あら・・・お目覚めのようね姪っ子ちゃん」」
頭上からニャンコダマの声が落ちて来た。
「あ、伯母ちゃん?!あたし・・・どうしたのかな?」
気を失う覚えが皆目わからないと訴えてみたら、頭上の女神が言うには。
「「どうもこうも無いわ。姪っ子には観なくても良いってこと」」
「はぁ?!意味・・・判んないんですけど?」
いや、待て。
「あのぉ?!その言い方だと・・・伯母ちゃんが?」
「「・・・黙秘権を行使します・・・」」
怪しい・・・いや、確信犯か?!
どうやらニャンコダマが怪しいと睨んだミハルだったが、どうして気絶させたのかを先に考えた。
ー アタシに観るなって・・・知られないように?
それって、コハルちゃんの身になにかがあったの?
結論を導き出す前に訊いてしまう。
「ねぇ伯母ちゃん?!コハルちゃんはどうなったの?
まだ戻って来ていないんだけど・・・何があったのか知らない?」
「「・・・とうに・・・帰ったわよ。闇の世界へ、ね」」
今度はあっさりと答えられた。
「えっ?!どうして?アタシには何も言わずに?」
さっきまで。気を失う前まではそこに居た筈のコハルが?
「どうしてアタシを気絶させたの?!
コハルちゃんには、もっと聞きたい事があったのに?
もっと一杯知りたい事があったのに、教えて欲しかったのに?!」
「「・・・だから・・・よ」」
ニャンコダマが目の前まで降りて来て、ミハルの問いに答えた。
「「あの娘は姪っ子と対する力を宿している。
堕神の娘なのに、大魔王の姫御子・・・強力な闇の力を使う者。
姪っ子ミハルには強力過ぎる闇を纏っているの。
いくら<光と闇を抱く者>だからって、大魔王級の闇に浸蝕されかねないわ」」
友達として、同じ姿をする者として接していたミハルに忠告し、
「「あれ以上闇の力に触れていれば、あなたも同じ者となる。
いいえ、あの子の力を観てしまえば、それを求めてしまい兼ねない。
自分にも姫御子の力を手にしたくなってしまう・・・今では無くても」」
躰に宿らせていれば、お互いが求めあう事になりかねないと。
「そんな・・・だからって。
あたしが欲しがるとは限らないじゃない?!」
観ても居ない姫御子の圧倒的魔力に、ミハルは言い返すのだが。
「「観なくて良かったのよ。
もしも、ソレを観てしまったのなら。
あなたはきっとあの娘を懼れ、やがて力を欲しがる筈・・・
姫御子と同じ・・・闇の魔力というものをね」」
ニャンコダマはコハルへ、警告ともとれる注意を与えるのだが。
「あの娘は・・・コハルちゃんは?
お別れを言ってくれなかったの?」
はぐらかす様にミハルが訊いた。
本当はいつまででも一緒に居たかったのに。
「「お別れ?誰と?お別れを告げる必要があるのかな?
コハルはいつでも傍に居るし、いつだって現れるわ。
姪っ子が強くなれればね・・・
姫御子に勝るとも劣らないぐらい強くなれたらね」」
心の内を読んだのか、ニャンコダマがくるりと背を向けて教えて来た。
「強く?アタシにもっともっと強くなれって?」
紅いリボンを揺らすニャンコダマを見上げて、ミハルが訊ね返すと。
「「そう。それがあの子の願いでもあるのだから」」
背を向けたままの女神が、はっきりと言い切った。
「強くなれ・・・そう言ってくれたんだ、コハルちゃんは」
頷くミハル。その願いは、幼き日と同じだと思えた。
「「・・・ちょろいわね・・・」」
ぼそっと・・・ニャンコダマが溢す。
背を向けているからミハルには分からないが、ニャンコダマは細く笑んでいた(←悪い顔)。
何かを感じ取っているミハルは、殴り倒された事を忘れているようだ・・・
超望遠のレンズに映るのは・・・
「漸く・・・決着をみたようだね、ルマ」
「うん、あの子達にも感謝しないと。それに義父様にもね」
衝撃砲の座席に凭れ掛かったルマが微笑んでいた。
「まぁね。まさか、あの子を導入してくるなんて。
僕達の想定外の人選をしてくるんだからなぁ、マコトって親爺は」
リンクされている左側のモニターに映された少年をちらりと眼にして。
「今回だけは感謝しておくよ」
凭れ掛かるルマの手を取った。
蒼い<輝騎>・・・<2号機>がトレーラに戻っていた。
「御苦労シキ君、実機の具合はどうだったかね?」
マイク越しに慰労を告げたマコトへ、モニターに映る少年がマスクを脱いだ。
紫の髪、紅い瞳が涼やかな、端正な顔立ちの少年が映っている。
「「はい、もう少し調整が必要かと思います」」
あれだけの攻撃力を見せたのに、シキは十分ではないと答えて来る。
「ふむ。パイロットが感じたのなら、まだ実戦には出せぬな」
腕を組んだマコトが、モニターの少年に答える。
「「ええ、ミハルが乗るには力不足でしょうね」」
目元まで垂れていた髪を掻き揚げて、シキが笑った。
<2号機>の収容を終えたトレーラーが、幹線道路を戻っていく。
秘密の工場へ、秘密の部隊へと・・・
「くっそっ!動力が足りないやんけ!こんのぉっ!」
当たり散らすマリアが、無線機に吠える。
「まだ予備電池は届かへんのか?!」
つい、地が出てしまう。
苛立つ心を押さえられなくなっていた。
「ミハルはまだ闘こうてるっちゅーのに!」
もう待てない、こうなれば無理やりにでも・・・
「司令!ウチ、脱出してミハルの元へ行きます!」
辛うじて無線機は<大鳳>と繋がっている。
電力が無くなった<1号機>で、マリアが吠えると。
「「脱出の必要は無いわ、マリア」」
猫田2尉が、停めて来た。
「なんでですねん?ミハルを助けんとアカンでしょうに?!」
苛立ちが声を荒げさせてしまう。
「「落ち着きなさいマリア。もう何もかもが終わったのよ」」
「・・・はぁ?終わった・・・って?!」
モニターも映らないから。
マリアには何が何やら分からないだけ。
「「もう直ぐ回収車両が着くわ。
それで本艦まで戻れば良いの・・・分かりましたね?」」
「・・・マジ・・・でっか??」
口をあんぐり開けたマリアが、腰が抜けたように座り込んでしまった。
自分の知らない内に、ミハルが片付けてしまったのかと。
「ミッハルゥー!やるやんけ!」
何も知らない・・・マリアが、ミハルの手柄だとばかり思い込んで喝采を叫んでいた。
「良かった・・・良かったねローラ君」
緊急脱出ハッチに腰かけたミハルが、二人の抱負を眺めている。
ニャンコダマに頼んでから僅かの内に、ローラが駆けつけて来ていた。
「どうやら。マモル君達は知っていたんだな。
コハルちゃんが救い出してくれていたのを・・・」
蒼き宝珠の中には、ニャンコダマの気配は戻ってなかった。
「ノーラ君のお母さん、法子さんだったっけ。
やっと解放されて、無事に帰れて良かったね」
蒼い<翔騎>ユニホームを着たローラと抱き合う母の姿に、ミハルはほっと一息吐いていた、
「うほほーいっ!ミハルぅ、ようやったなぁ!」
「げ。マリアちゃんだ・・・」
振り向くと、回収車に乗せられた<1号機>とマリアがそこに居た。
「キャプテンとして褒めてとらす!でかしたでミハル!」
「あ・・・あはははっ。ありがとン」
笑うマリアに、口を濁すミハル。
「しっかし・・・派手にやったなぁ。
これ・・・どう結末がつけられるんやろなぁ?」
マリアが周りを見回して訊いて来たのだが。
「そーだねぇー・・・竜巻が来たって事で・・・ないか」
ちょっと考えたふりをして、いい加減な理屈を捏ねてみせたが。
「んな訳で通るかいな。辺り一面穴ぼこだらけやで?」
ふんっと鼻息荒くマリアが制して来ると。
「だっねぇー?」
まるで他人事のようにミハルは笑って見せるのだった。
それから丸2日が経っていた・・・
「えええええーっ?!どうしてっ?!」
驚愕にミハルが叫び声をあげていた。
「どうも・・・こうもないわな」
片肘を着けているマリアがそっぽを向いていた。
教壇の前に立つ姿を見せられて。
「あ、あのぉ・・・宜しくお願いだ・・・ぼそ(ノラ)」
白銀色の髪、青味を帯びている瞳。
すらりとした体躯、それに纏われた・・・
「ローラ君・・・じゃなかったノーラさんっ?!」
横に座る弟・・・モトイ、妹と同じ顔の女の子が?!
「あらま?島田さん、お知り合いなのね?」
太井先生に聞き咎められたミハルが、慌てて首を振ったが。
「ローラさんの双子のお姉さんらしいのよ、仲良くしてあげてね?」
「あ・・・えっ?!ど、ど、どう言う事なんでしょうか?」
ミハルがローラとノーラを見比べて、泡を喰っていたが。
「そー言う事で、宜しくにゃ、ミハル・・・のらっ!」
しっかり面倒をかけられそうに思えるのだが。
「ぎゃぁっ?!マリアちゃん、ローラ君!どうしてこうなったのぉっ?!」
ミハルを細い目で観て来るノーラに、助けを求める損な娘。
「運命って奴やな・・・ご愁傷さんやでミハル」
「ごめんねぇー、どうしても姉さんがここに編入したいって駄々を捏ねたから」
マリアはそっぽを向く、ローラは訳を話すだけ。
そして件のノーラと言えば・・・
「これでもう離さないからな、<光と影の中の人>!」
しっかりとミハルの手を掴んで嗤い掛けて来る。
「それを言うなら<輝と闇を抱く者>だよぉ?!」
涙目のミハルが言い返していた・・・
一件落着?!
大団円・・・には程遠いけど。
ミハルの周りには新たな友が!
そしてローラ達母子にも、シアワセが戻ってきたようですね。
功労者だったミハルには、とんでもないオチでしたが。
平和って・・・いいな
次回 ミハルの秘密 第1話
ミハル・・・損な子にはどんな秘密があるのでしょう?