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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
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闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第9話

現れた

光を纏い現れたのは・・・・

人を表す鐘の音が、闇に染まりし魂に問う。


ーーー汝は人たる者か?汝は邪悪に堕ちし悪魔たるや?---


 

  リリン・・・・リリン・・・



鐘の音が鳴り響く。

迷いし魂を導かんとして・・・



「この鐘の音は?!」


大魔王の姫御子コハルにも、誰が鳴らしているのか分からない。

鐘の音がどこから、そして誰が鳴らしているのかが知りたかった。


鐘の音は、澱む法子に向けて鳴らされているのだけは判るのだが。



 

 リリン・・・リリーン!




徐々に高まって来た鐘の音が、突然途切れた。


鐘の音が途切れた瞬間、光が全てを覆い隠した。

ひかりはコハルも含めた、全ての者を埋め尽くしたのだ。


「あうっ?!眩しいっ!」


何者かが歩んで来る気配を感じる。

誰かが自分達の方に向けて歩んで来る・・・


「あ・・・あなたは?!」


光を通して観えて来た姿に、コハルは絶句してしまう。


「お・・・お父様?!ルシファーお父様なのっ?!」


堕神ルシファーが、神々(こうごう)しい光を伴ってそこに居た。

神の御光を背に、大魔王でもあるルシファーが歩み寄って来たのだ。


「まさか・・・そんな?人間界にお父様が?」


信じられない・・・夢なら冷めないで欲しいと。

眩い光を受けて、コハルは眼を細めながらも<神たる者>に手を指し伸ばす。


「人の子よ。汝は母たる者ぞ?汝は人であらねばならぬ者ぞ?」


ルシファーと思われる神が、法子を誡める。


「罪を背負う勿れ、闇に堕ちるべからず。

 汝は人であらねばならぬ、自ら進んで死を求める勿れ」


御光と鐘の音で粛罪を果させた神が、人である謂れを告げた。


「汝、今を以って人であらん事を標す。

 神の福音を汝にも授けん・・・魂は清浄ルフランされたと悟るが良い」


光の中、ルシファーと思しき神が法子を赦した。


「あ・・・ああああ?!私は・・・救いを授けて頂いたの?」


御光と福音を受けた法子が平伏す。


「私の罪科つみとがを、放免してくだされたのですか?!」


光の中で、法子は涙を零す。


「汝は人の子。光も闇も、その身の中にあるべきもの。

 穢れは己の手で祓い清めなければならない、生きている間に」


神の声が悟らせる。


「喩え闇に生きる者だとて、ひかりを抱けば穢れは祓える。

 ましてや汝は人の子なり。光も闇も抱くのならば、正しく生き抜かねばならぬのだ」


感謝に泣く法子へ、神の教えを説いた。

生きていく間に、何を為すべきかを。


「あ、ありがとうございます」


法子は平伏し、感謝の涙を溢れさせて泣くだけだった。




「「姫、姫様・・・お早く!」」


狒狒に勧められるまでコハルは動く事も出来ずにいた。

高鳴る胸、涙で曇る瞳で見詰めるだけ。


「「姫、姫御子様。さぁ、お早くお声を!」」


光の中心にいる神へ向けて、皆の声がコハルを後押しする。


「あ・・・うん!」


やっと神に縋り付こうと、一歩を踏み出す。


「お父様?ルシファーお父様なのですね?!」


法子の前で罪の穢れを祓い終えた神が、ゆるゆるとコハルに振り向いた。


「闇の御子よ、そなたもだぞ。

 未だに輝を掴めぬのか?まだ闇の中で苦しんでおるのか?」


振り向きながら駆けて来られた声に、コハルの手が停まる。


「お、お父様?!どういう意味なのでしょうか?」


近寄り難く、辿り着けないと感じた。


「闇に住まう娘よ。

 その手に光は掴めておるのか?闇の中だけでは光は掴めぬぞ?」


光を纏った神に縋れば、今の自分は滅ぶかもしれない。

大魔王の姫御子は、人間界で神に触れてはならなかったのだ。


立ち止まったコハルに、神はこうも言う。


「人の子と同じと思うが良い。

 そなたは邪悪には染まってはおらん。

 その魂に光を齎せられれば、神にも等しい者となれる。

 時が満ちるまでに、果たさねばならぬと心せよ」


教えようとしてくれているのが、痛い程感じ取れる。

慈愛に満ちた声が、何よりの証拠なのだと思えた。


「お父様・・・まだ。

 まだ私には、堕神ルシファーに縋るまでには至っていないのだと?

 為すべき事が果たせていないのだと、仰られるのですね?」


「・・・・」


届いた問いに、神は答えようとはしなかった。

しかし、光に揺蕩う神の瞳が教えていた。

大魔王の姫御子ではなく、<光と闇を抱く者>に成れれば良いのだと。


「わたしにも・・・成れるでしょうか?」


答えを求めた訳じゃあない。

答えが返って来るとも思ってはいない。


だけどもコハルは、今この瞬間でも抱き着いてしまいたい欲に駆られていた。

目の前に居る、神の御姿で現れたルシファーに。


「闇の姫御子よ。

 そなたに掴める時が来るのを、心待ちにしておるぞ」


光が薄れ、鐘の音が鳴り始めた。

神が、元ある世界へ帰って行くのだ。


「お父様・・・また。また逢えますよね?」


か細く話すコハルへ、今度は即座に応えられた。


「そなたが光を掴めた時には。闇だけに染まらぬ力を持てたのならば。

 その時こそ、目覚めを果すだろう・・・本当のプロセ女神ルピナとして」


「え?!私・・・が・・・女神に?!」


動揺が奔る。

傅く者達も、告げられたコハルも。


「「姫様が?!女神に昇華される?」」


「「それなら、我等も?我等も天使となれるのか?」」


守護する者達が、コハルを振り仰ぐ。


「私が・・・神に?成れるというのですか?」


消え去る神に、問いかけるコハルだったが。


「それは、そなた次第の事。

 光を掴めるか、掴めぬままかはそなた次第」


声だけを残して消え去る神が、コハルに残したのは。


「私が・・・神に成れるかは、光を掴めるか次第なんだ。

 光を掴めって言われても、どうすれば善いのかも分からないのに・・・」


光が消えた部屋の中に居るのは、泣きじゃくる法子と大魔王の姫御子であるコハル。

それに傅く者・・・今は縫いぐるみに姿を堕としている臣下だけだった。


「姫、もはやこの場には居られませぬぞ。

 人間も闇を捨て去れたようですし、長居は無用と存じます」


狒狒爺が、コハルに忠心から勧めて来る。


「そうね。闇の力で染めちゃう虞があるものね?」


助けられた魂は、在処に戻り生きていけるだろう。

もう、この場から離れて帰らねばならないのだ。


「爺、帰る前に一つ正しておかねばならないの。

 あそこに居る者達の処罰を、どうすれば良いのかしらね?」


何かを吹っ切ったように、コハルが笑った。


「ほらね爺。私が言った通りでしょう?

 グラン君独りだけで十分だって・・・ね?!」


巨大な姫御子の結界の中で、グランが3匹の魔王を相手に闘っていたのだったが。

結果はコハルの言った通り。


「如何にも。この狒狒めにも、分かっておりましたですじゃぞ!」


微笑みを浮かべるコハルの傍で、爺やである狒狒は涙を払う。

この姫を、いつまでも護り通して見せますぞと。

主君でもある堕神ルシファーの思いやりと、それを知った姫を観た今は。


彼奴等きゃつらの処分ですがのぅ姫。

 斯様にされては如何ですじゃのぅ?」


拭った涙を知らせずに、狒狒爺が耳打ちして来た。

ぼそぼそと耳打ちした爺やに、コハルはにっこりと笑みを浮かべて頷いた。





大魔王の姫御子が、そこに立っていた。

闇の力を背に、どうする事も出来ず。

それを観ていた女神が発動させた・・・召喚術を。


「ねぇねぇ、ルシちゃん。ちょっとだけで良いから起きてよ?」


ミハルの首筋に刻まれた痣に、呼びかけたのは。


「なんだ・・・無理やり起こすなと、言っておいただろうミハル?」


ニャンコダマに術を使われて無理やり引き出されたのは。



 ぽんっ



痣から紅い毛玉が飛び出して来る。


「おっひさ~っ!ルシちゃん。ようこそ人間界へ!」


「おいおいミハル。言っておいただろう?

 余は永き眠りに就かねばならんのだと・・・」


紅い毛玉と蒼いニャンコダマが向き合う・・・


「それがねぇ、困った事に。

 女神になりそこなった娘が困っているんだよねぇ、責任者でしょルシちゃんは?!」


成り損なったとは辛らつな。

しかし、それが誰を指しているのかは直ぐに判った。


「余の娘が?どうしたというのだ?

 あの子には復活までの間、隠れておかせたのだが?」


「そうよ、ルシちゃんの心配を余所にね。

 シャシャリ出させちゃったのよねぇ、御免メンチャ!」


拝むニャンコダマに、呆れるルシちゃん。


「なんて事をしてくれたんだミハルはっ!」


「いやぁ~っ、なかなかに出来たさんで。

 おばさんとしては褒めるしかないわよ、おほほほほーっ!」


しらばっくれるニャンコダマ。

呆れ果てて、文句を言う気力を奪われる紅い毛玉。


「それで?余を無理やり連れだしたのには訳があるんだな?」


「もっ、もっちろーん!手出しするだけには留めておけないからよ。

 ここはボーナスとして、ルシちゃんに出馬を願おうと思ってね」


にやにや笑うニャンコダマに、辟易する紅い毛玉。


「余に?何をさせようというのだ?

 光の力ならミハルも持っているだろうに?」


訝むルシちゃんに、ニャンコダマがグルングルンと飛び回り。


「ボーナスって言ったじゃない!

 あの子に与えてあげるんだよ、これからどうしたら良いのかを。

 コハルと名乗ってる姫御子に、<女神>になるにはどうしたら良いかってね!」


えっへんと、咳払いをして後。


「そ~れぇとぉ、私ってば一応<あいの女神>なんだよねぇ。

 と、言う訳でして・・・逢ってきてあげなさい!」


びしっと、ルシちゃん目掛けて魔砲をぶっ放す。


「うわぁっ?!こらっミハル!断りもなしに吹き飛ばすなぁ?!」


堕神ルシファーを宿るミハルから吹き飛ばして、


「じゃぁねぇ~っ!私は姪っ子を叩き起こすから」


<零号機>のコックピットで眼を廻して伸びているミハルを見下ろして笑うのだった。


・・・えっ?!

さっきまでコハルの事を心配して待っていた筈なのに?


嗤うニャンコダマの下で、頭にたんこぶを腫らせたミハルが眼を廻していますが?


・・・見なかった事にしよう・・・

ニャンコダマよ・・・・


オイタが過ぎるっ!

哀れ主人公ミハル・・・痛かった?

気絶するほど殴り倒されたのか?!


どうやら事件は解決するみたいですね?ね??


次回 闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第10話

その体には光が宿ると知っているのか?それより3匹の魔王・・・やっぱりあれかW

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― 新着の感想 ―
[一言] いや~、そうなのか。 ヴィーナス(女神)にもなれるのか。 いろいろあったけど結局、支えてくれる仲間がいて絆があってこそ、試練を乗り越えることができるのだ。 そう思ったのであった。 それに…
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