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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
139/219

闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第7話

コハル・・・姫御子。

大魔王の姫御子・・・それは決して邪なる者とは限らない。


コハルに求められている本当の姿とは?

転送されて来たデータを解析し終えた。


「「司令!艦長代理!解析値ですっ!」」


モニター右端に映る猫田2尉から送られて来た画像が、正面照準装置に重なる。


「照準よし!衝撃砲射撃準備よし!」


照準器のレクチルに捉えた。

16倍望遠照準器に表示された中心点に、データ通りの鋼鉄板を捕捉した。


「射撃する!トリガーと<零号機>との通信をリンクさせろ!」


猫田2尉へ命じるルマが、マモルに頷くと。


「あの子達はきっとやり通してくれるさ、ルマ」


照準器を睨んだままのマモルが応えた。


「ええ、コハルが必ず。魔王級の異能ちからで取り戻してくれるわね」


「信じよう、僕達に授けられた佐保姫さほひめの力を」


作者注)佐保姫とは、春の神を表しています。俳句などの季語にも使われています。

    因みに農耕の女神かみとの呼ばれています。


    ↓イメージです


挿絵(By みてみん)






トリガーにかかったマモルの指先に、力が籠められていく。


「「<零号機>との回線クリア!繋がっています!」」


猫田2尉から、疎通したとの報告が入る。


「マモル・・・あなた。ミユキ義母おかあさんも此処に居られるから!」


マモルの背に<紅鞘>を添えて、力づけるルマ。

軽く頷いたマモルが、願いを込めて引き絞った。


「いくよ!ミハル姉っ、あの子達に力を貸して!」


女神を呼んだマモルにより、魂の帰還が始められた。




 シュワアァンッ!



<大鳳>から超音波の弾が飛び出た。

衝撃砲弾は、目標目掛けて音速の速さで飛んだ。









「来た!」



叫ぶが早いか、ミハルは<翔騎>を飛び立たせた。

<零号機>のバーニアが炎を吹き出し、目標の鋼の部屋まで駆け跳んだ。


「衝撃弾で壁を打ち壊した瞬間だよね?!」


音速の弾が装甲を破壊する一瞬に、間に合わせなければならない。

それより早ければ衝撃が<零号機>に襲い掛かる。

タイミングが遅ければ中に居る法子には届けられない。


「任された限り、やるしかないっ!」


超音波の弾は、自分より後方から放たれた。

射撃タイミングをリンクしてくれていなければ、無理だと思った。


でも、流石は親子。

何も作戦の意志を通じ合えなくても、やることが分っていたのだろう。


ピンポイント射撃をかけた父マモルの心を読んだ。


ー アタシが何をすべきなのかが解っているんだ。

  ここにコハルちゃんが居るって感じ取ってるのかな?


目の前に現れた装甲を見詰めて、一瞬考えたミハルだった。


ー コハルちゃんとマモル君・・・どんな仲だったのかな?


さっき、幼きコハルの記憶で訊いた。


ー アタシよりって。マモル君はコハルちゃんにどんな気持ちを抱いていたんだろう?


親子としてなのか、それとも別の意味でなのか。


ー 答えは二人だけしか分からないだろうな・・・・


知りたいけど、知ったからと言って自分にはなにも言えやしないな・・・そう思うミハルだった。


考えを巡らせていたのは、<零号機>を飛び立たせた一瞬だけ。

目の前に迫った装甲板と、飛び来る衝撃弾との間合いを執っていた合間だけの話。


「コハルちゃん!タイミングを併せて!」


目の前に迫った装甲板へ、右腕を伸ばす。


ー 分かってるよ!ミハルに併せる!


機械を操るミハルの掛け声に答える姫御子コハル。


「いくよぉっ!・・・せぇのぉーっ!」


衝撃弾が背後から追い越した。


装甲に突き当たる瞬間を狙う<零号機>。


「いっけぇええええっ!」


コックピットで右手を突き出す。

装甲板へ衝撃弾が命中する同じ場所に、同じ瞬間に。


「全力全開!エクセリオ・ブレイカー!!」


魔砲の力を叩きつけた。





<零号機>から放たれた魔砲。

<大鳳>から届けられた衝撃砲の波動。


戦艦の装甲板にも相当する、厚さ30センチもの<そうこう>を突き破る。


突き破った威力は、内部にまで破壊を齎す。

鋼の部屋に居る者を薙ぎ払うくらいの・・・・


ー ここからは。これからは私に任せて!


憑代ミハルの右手から大魔王の姫御子が飛び出した。

繋がった闇の中へと、邪なる者が貼った結界に。


ー 姫御子様を御守りするのが我等の務め!


それまで<零号機>の魔鋼機械に力を与えていた縫いぐるみ姿の臣下達も、コハルの後を追いかけていく。


ー みんな?!ミハルを護ってあげてっ!


ー 我等は、我が君コハル様に付き従うのが望み。

  優しき我が君を独りにするなど、臣下の者が執る道ならずですぞ!


狒狒が真っ先駆けてコハルを追い抜き、守護を司る。


ー 我等も!姫御子様に仇名す者から御守りいたします!


数十の縫いぐるみ達が本来の姿に戻る。

狗、猿、鳳凰、白馬・・・皆それぞれが古から神に仕える姿へと。


決して邪なる姿ではない。

闇に属しているにしても、本来は神の使い・・・天の使い。


ー みんな・・・ありがとう!


数十の下僕に囲まれて。

大魔王の姫御子としての務めを果たそうとするコハル。


もし、傍から観れるのならば。

その行列は<百鬼夜行>にも見えたかもしれない。


しかし、目を凝らせば分かるだろう。

彼等の足元に注意を払ったのなら。


金色の礫が舞い上がり、異形の者達が進むのを。

その中心に位置してるのは、白馬に跨る気高き娘だと。



 シャン・・・シャン  シャンシャン



天界の鐘の音が聞こえる。

闇の者に教える様に・・・福音の鐘が鳴る。




「「往ったみたいね・・・ルシファーの娘が。

  いいえ、あの娘はまだ本当の自分に気付いてはいないか」」



ふわりと蒼毛玉が浮いていた。


「「姪っ子に気付かせる策謀も、ここまでは順調にいったけど。

  もう一人の神子は、仮初めの己にしか気付いていないようね」」


ニャンコダマが瞬間転送して戻って来ているのも気付かず、ミハルは消えたモニターに願いを込めていた。


「コハルちゃん・・・がんばってね!

 ローラ君のお母さんを助け出してあげて!」


今度こそ、完全に活動を停止してしまった<零号機>の中から出るでもなく。

祈りを捧げて、コハルが戻って来るのを待っているミハルを観るニャンコダマ。


「「残念だけど姪っ子。姫御子コハルは戻っては来ないわよ」」


気付いていないミハルに向けて、女神ニャンコダマは口には出さなかった。


「「このまま・・・闇に還ってしまうでしょう。

  マモルやお父さんに姿を見せることはないから・・・」」


瞳を閉じたニャンコダマは、嘗て自分も放った術を思い出していた。

魔王の力を身に纏っていた昔の自分と、コハルを重ね合わせて・・・





「観えたわ!あの人が・・・栗林くりばやし 法子のりこさんね?!」


魔鋼機械に魂を囚われていた人間の姿が、おぼろげな光の下に浮かんでいた。


「よしっ!元の在処に戻ってください!」


大魔王の姫御子として維持して来た魂を、その身体目掛けて注ぎ込む。


「リバース!魂よ、我の力を以って在るべき元へ!」


強大なる魔力・・・魂をも左右できる程の。

それが姫御子となっているコハルに授けられた異能ちから

神とは正反対の闇の力で、人間の魂を抜き差しできる禁断の魔力。


ローラの母の元へ帰還させるべく放たれた、魂を戻すという魔法スペルに因って。


コハルの内なる場所から肉体へと、法子の魂が戻らされた。


「さぁ、これであなたは自由です。

 人間として生きる道を取り戻せたのですよ。

 邪悪なる者から解放されたのです、人として戻れるのですから」


金色の粒が揺蕩う中で、姫御子としての義務を果たせたと思っていた。

法子の魂を救えたと、安心していた。


魂が肉体に戻った法子の眼が開き始める。


「良かった・・・これで全てが丸く収まるんだわ」


邪なる者が企てた機械への転移は、これでどうやら元の鞘に収まった。

法子の眼が開き始めて、女神の依頼も終えられたのだ。


・・・だとばかり。


「うっ・・・うううっ?!」


突然苦しみ出した、法子の声を聞く迄は。


「誰が・・・誰が元に戻せと頼んだ?

 二人の子に合わせる顔が無いというのに・・・なぜ殺さなかった?!」


醜く歪む顔をコハルに向けて来た。

苦悶・・・そして求めて来るのは。


「私が生きていては、あの子達にどれだけ迷惑を掛けるのかを考えたの?!」


助けられる事に因り、齎される災禍があると。


「なぜ?!なぜ・・・消し去ってくれなかった?!」


呪う様に睨んで来る法子に、コハルは声を呑むしかなかった・・・



春の女神。

平城宮の西にある佐保野山に因んでそう呼ばれた農耕の神を指します。


コハルの本当の姿?

コハルの由来?


それを知る者は数少ない。


さぁ、いよいよ。

ニャンコダマの策謀が紐解かれるのか?


次回 闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第8話

助けたつもりが・・・戸惑うコハルに近寄る光が?!

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― 新着の感想 ―
[一言] 目と目で通じあう、そう言う仲なのね。親子って。 息ぴったり~!(^^)! おお、いろんなキャラが協力してくれてめでたしめでたしかと思いきや、ノリコ!! 気持ちはわかるが、そんなこと言うでな…
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