闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第5話
ナニを企むニャンコダマ?!
いつのまにそんな妖しい者になったんだ?
一方のコハル達は?
蒼く揺らめく魂の灯り。
コハルが仮初めの憑代に選んだのは、姫御子である自分だった。
「そうよねミハルの言う通り。
マコトお爺ちゃん、栗林法子さんって人の居るのは?」
モニターには相変わらずマコトの姿は映らない。
一目でも会いたいと願っていたが、今は魂の救出が優先だった。
「「コハルが居る場所から遠くは無いが、辿り着く迄には時間がかかるぞ?」」
返って来たマコトからの答えに、コハルが眉を顰める。
「どれくらい遠いの?お爺ちゃん?!」
それでもやらねばならないから。
仮初めに宿らせた状態は、魂にどう作用するのか分からない。
大魔王の姫御子であるコハルに宿っているのだから。
「「遠いのではないよコハル。
分厚い装甲が邪魔しているのだよ。
流石の<零号機>でも、破るのは時間がかかるという意味なんだよ」」
告げられたコハルがミハルに問い質す。
「ねぇ?この機械で破れるのかな?」
ー い、いやぁ、現物を観ない事には。判断がつかないよ?
二人がどうすべきかを相談しようとしたら、
「「にょーっほほっほっ!あらあら、二人共。
ここに女神様が居る事を忘れてるでしょう?」」
マコトとの間に割って入って来たニャンコダマに言われてしまった。
「あ・・・しっかり。すっかり忘れ去ってました」
「「むっ?!存在感無し子ぉっ?!失礼な娘ねぇ。
この理の女神様を足蹴にするとは・・・覚えておきなさいよ!」」
・・・コハルも憑代のミハルも。声を詰まらせて呆れてしまう。
「で?女神様には破る方法でもあるのですか?」
気を取り直したコハルが、慎重に言葉を選んで訊ねると。
「「手抜かりなんかが女神様にあると思うの?
もう既に打っておいたわよ、こうなると分ってたから!」」
自信たっぷりに答えられた。
ー ・・・うにゅぅ・・・伯母ちゃんのことだから。心配だよねぇ?
顔をヒクつかせるコハルの中で、ミハルはさもありなんと腕を組む。
ー でも?どうしてこうなると分っていたのかな?
もしかして・・・伯母ちゃんが何かを企んで掻きまわしているの?
どうやら、ミハルの勘が冴えて来たようだ。
女神の伯母が、分かっていて手を下して来ないという事は?
ー コハルちゃん、ここは素直に言う事を聞いておこうよ。
きっとミハル伯母ちゃんには謀があるに違いないから!
「そ、そうなの?
そう言えば闇の中に来て、私をミハルに宿らせるように謀ったんだっけ?」
思い出したコハルが、ミハルの意見を採択する。
「じゃあ、女神様に一存しますから。
その方法ってもので打開してみてください」
「「承りぃ~~っ!」」
ニャンコダマがマコトの前でくるっと回転すると、マコトにウィンクを見せて。
「お父さん、座標をマモルに知らせて。
準備は滞りなく済ませてあるから、お願い!」
サングラス越しに見詰めるマコトの眼に、ニャンコダマが消え去るのが映った。
「忙しい娘になったなぁミハルは・・・」
苦笑いを浮かべたマコトが、通信士官に命じる。
「目標を<大鳳>にリンクしろ!急げ!」
消えた娘を想いつつ、
「コハル!直ぐに切り開かせるから。用意しておくんだよ?」
孫娘に優しく呼びかけるのだった。
「お爺ちゃん!また後でね?!」
次に回線を繋いだ時には、一目で良いから顔を観たい見せたいと願いながら。
女神の打つ手に備えようと、闇の結界に放ったグランを呼ぶのだった。
ー そう言えば?ライオン君はどうなったの?
グランを縫いぐるみ名で訊くミハルに。
「どうもこうも。グランがあの3匹に負ける筈なんてないわよ?」
余裕の返事で応えられる。
ー そんなに強いの?!
「言った筈よ?グランは臣下髄一の猛者だって」
ー 猛者・・・・って、何?
「・・・強い人って意味。グランに勝てるのは真の魔王ぐらいじゃないのかな?」
どれ程コハルが信頼を置いているのかが、答えに表れていた。
「だって・・・私を護り抜けるだけの異能者だから、グランは」
遠い目になったコハルの中で、グランに対する想いが伝わって来た。
ー コハルちゃんはグラン君を信頼してるんだねぇ?
「うん、一番最初に話しかけてくれたから・・・
私が始りを迎える事になった時に護ってもくれたんだ・・・」
コハルが胸の中にある想いを悟られまいと、語尾を燻ぶらせる。
覚られまいとしたのが、却って過去の記憶が呼び出されてしまう。
それと同時に過去の記憶も、ミハルに流れ込んで来た。
ー え?!ここって・・・アタシの記憶にもある?!
幼い時の記憶。
当時はまだフェアリアに住んで居た。
両親と祖母祖父と。
ー ここは?!アタシの部屋?ううん、ちょっと違う。
アタシの部屋にはこんな沢山の縫いぐるみなんて無かった筈?
記憶の中にある部屋には、ものすごい数の縫いぐるみ達が。
ー あ・・・もしかして?君達なの?
沢山の縫いぐるみに、見覚えのあるライオンの姿があった。
ー 彼なのかな?グラン君・・・だよね?
記憶の中だというのに手が届いた。
指し伸ばした手に取ってみる・・・だけどそれは縫いぐるみでしかない。
ー なんだぁ、只の縫いぐるみだよね?
ベットの周りをずらりと囲む縫いぐるみ。
狒狒も居れば白馬も、いろんな姿の縫いぐるみ全てが自分に目を向けているみたいに思えた。
ー ホントーに?縫いぐるみだよね?
考えが纏まらない。ずっと佇んでいると、次第に日が陰り始める。
ざわ ざわ ざわ
陽が陰り部屋が闇に包まれ始めると、何者かのざわめきが聞こえる。
ざわざわざわざわざわっ!
縫いぐるみ達が蠢き、何かを求める様に手を指し出して来た。
ー わぁっ?!やっぱりみんなじゃないの?!
大声で呼んだつもりだが、部屋に自分の声は響かなかった。
「姫・・・姫はいずこ?」
狒狒の縫いぐるみが呼んだ。
「御守りせねば・・・この剣にかけても」
グランと思われるライオンが、ゆるゆると宙に浮かび上がる。
ー これが・・・みんな闇の下僕?!
ざわざわざわざわっ
動き始めた縫いぐるみ。部屋の中を探し回る異様な光景。
そこに・・・光が差し込まれた。
ドアを開けて入って来たのは。
― あっ?!
「ぐすんっ、ぐすんっ。寂しいよぉ・・・」
涙を溜めた瞳で、ベットに転げ込んで来たのは。
ー アタシ?!じゃないっ、この娘は?!
幼いころの自分にそっくりだった。
てっきり自分だとばかり思ったが、そうじゃないと気付かされる。
ー この子は誰?!この紫の髪は・・・もしかして?!
ベットに転げ込みライオンの縫いぐるみを抱きしめた少女。
ー コハルちゃん?!
フェアリアに住んで居た頃の部屋で。
ミハル自身も知らない過去の物語とは?!
コハル「ねぇグラン君、誰かが覗いてるんじゃないの?」
グラン「そうですねぇ姫。損な女の子がもう一人・・・」
ミハル「そ?!損?」
挿絵が考え付かなかったので・・・・こんな感じの女の子ですW
記憶・・・それは誰の?
フェアリアの部屋で見たモノとは?!
次回 闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第6話
君が見る姿。それは果して自分なのか?其処に集う者に訊け!