闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第3話
コハル・・・大魔王の姫御子。
その魔力は並みの魔王を凌駕していた・・・
結界が貼られた。
それは創造した者の異能を反映している。
巨大なる結界には、逆五芒星が天空に印されている。
その意味する者とは・・・
「まさかっ?!またもやあの娘っ?!
新大魔王様に楯突く堕神ルシファーの娘が邪魔するというんだねぇっ?!」
ポーチは自分独りの力では対抗出来ないと悟っていた。
「しかも、今度は悪い事に本気を出されちゃってますよねぇ?」
ついこの前は、こちら側の結界に現れたから逃げれたが。
「この結界を破るには、向こうが破棄するか倒さないと駄目なんでしょぉ?!」
ポーチの頭には、ついこの間見てしまった姫御子の姿が過ぎって行った。
「まさか・・・本気を出してくるなんて」
強力なバリアーとでもいう方が良いのか、逃げ出すには相手が許してくれない限りは破れないと。
それならば、足掻くしかないと悟ったのだ。
「一蓮托生よ!こうなりゃぁ3人がかりで対抗してやるんだ!」
じりじりと圧力を感じ取っていたポーチの打つ手とは?
「出て来なさい、リュック!おいで、ランド!」
魔王3人組で対抗する手を執ったようだ。
魔王トライアングルとでも云おうか。
3匹の魔王がこの場に勢ぞろいする。
「なんだよポーチ?」
「呼んだぁ?姉さんポーチ?」
緊迫感のない二人が姿を結界に浮かばせた・・・が。
「って?!なんだよ?ここは?!」
「おい、ポーチ?ふざけるなよ?」
現れた瞬間に、自分達が置かれた状況を悟った様だ。
自分達に貼れる結界の倍以上もある空間に、ヤバさが伝わったから。
「聖なる者を取り込むんじゃなかったのかよ?!」
「聴いてないよぉっ?!こんな馬鹿でかい闇空間なんて?!」
呼びつけたポーチも、悪態を吐く仲間に閉口する。
「何言ってんだい!お前達を呼んだのもこの所為なんだからね!
これを貼った奴を倒さなきゃ、こっちが滅ばされるんだよ!」
ポーチの言ったセリフに、二人の顔が引き攣った。
「お前・・・俺達も巻き込んだのかよ?」
「やだやだ!絶対無理だよぉ?!」
太刀打ち不可能・・・そう言いたげだ。
「何言ってるんだい!こっちが許して貰うなんざぁ、土台無理なんだよ!」
キレタポーチに、二人が涙目で見返している。
「逃げ出す事より、あそこに居る娘子を奪取する方法を考えな!」
どうにも頼りにならない仲間に、ハッパを掛けるポーチ。
「あ~あっ、これはもう覚悟しなきゃぁなぁ?」
「姉さんよぉ、新大魔王様にお仕置きされるよね?ねぇ?」
黒髪の二人が傍に居るもう一人の黒い者に話しかける・・・
・・・・
・・・・・・
え?!もう一人?!
「戯言はもうお終いか?」
その黒い者が訊いて来た。
「のおぉわあぁっ?!」
跳び退る魔王3人衆。
「だっ?!誰だ?」
「お前っ?誰だよ、どうして此処に居る?」
「お前も闇の者なのか?私等に何の用だ?」
リュックとランドとポーチが目を丸くして訊いたのだが。
「俺か?俺は大魔王ルシファーが臣下。
古の堕神ルシファーが忠臣、魔獣剣士って奴だ」
黒髪を靡かせ、紅い瞳で3馬鹿魔王に言って聞かす。
「な・・・なんだ。ご同業者か・・・って。ルシファーの臣下?!」
リュックがグランの背に背負われた魔鋼剣に気が付く。
グランの剣に描かれた紋章に眼を剥いているのだ。
「お前って、まさかとは思うが。魔獣剣士とかいう奴か?」
そうとは知らないランドが、魔王より組み下と思い込んで上から目線で問う。
「如何にも・・・俺は魔獣剣士だ。
だが、言っておくが。俺は堕神配下髄一の剣技を誇る者だ」
揺蕩う黒髪、燃えるような紅き瞳。
魔法衣は黒く、魔鋼の剣は漆黒。
姿からは想像しようもない程の、魔王とても看過出来ない威圧感が醸し出されている。
「臣下髄一?剣士如きが魔王に歯向かえるとでも思い上がったか?」
だから・・・ランドよ、鈍感に過ぎないか?
流石にリュックは見抜いていたようで、ランドを強く引っ張ると小声で教えた。
「おいランド。こいつはヤバそうだぜ?」
「ええぇ~っ?なんでだよ。たかが剣術馬鹿じゃねぇのか?」
力任せのリュックに咎められて、男の娘のランドが悪態を吐くと。
「判らねぇのか?こいつの剣を観てみろ。
あの紋章は大魔王の印だぜ?つまり・・・」
ランドがグランに聞こえないように小声で喋っていたというのに。
「俺の剣は、畏れ多くも姫御子から授けられし魔鋼剣。
格下の魔王ならば、易々とたたっ斬る事が出来るが・・・文句でもあるのか?」
聞こえていたようですが・・・なにか?
「にゃっ?!にゃんだってぇっ?!」
「マジですか?」
驚いたランドの猫耳がそっくり返る。
聞かれたリュックが脱帽する。
「ど、ど、ど。どうするんだよぉポーチぃっ?!」
ランドが泡を喰って振り替える先には、ポーチの白くなった顔が。
「こ、こうなったら!やっておしまい(棒)!」
棒読みの返事しか返って来なかった・・・魔王の端くれからは。
「でもよぉ、こいつってば・・・怖い目で観てるよ?」
やれって言われても、滅ぼされるのは嫌だから。
及び腰のランドが、リュックの背後に隠れて言い返す。
「あの剣さえ使えなくすれば良いんだよ!考えて攻めな!」
自棄になったポーチからは、何とも答えようのない命令が。
「俺の剣が怖いって言うのか?ならば、素手で相手してやろうか?」
聞き咎めたグランからの声に、リュックが顔を輝かせる。
「おうおう!舐めた真似してくれるじゃねぇか!
その剣を使わずに俺達と対等に戦えるなんて思うなよ?!」
「やったぁ!こいつマジで馬鹿じゃねぇの?!」
驚喜した二人に、グランは言って聞かせる。
「馬鹿呼ばわりは、その身で思い知る事になる」
ポツンと一言。
それが合図となった・・・
結界に現れ出た二人連れの魔王。
そこへ剣士グランが近寄り、戦闘前の名乗り合いでもしてるのかと思った。
ー ねぇねぇコハルちゃん。黙って観てるだけで良いの?
3対1だし、相手は紛いなりにも魔王だから。
心配するミハルを余所に、コハルは明後日の方を向いている。
「良いのよ、どうせグランは手を抜くだけだもん」
ー いやそれ・・・相手を買い被ってません?
「大丈夫って言うか。
グランは昔、女神と干戈を交えた事もあったらしいの。
半端な魔王如きに手古摺る筈もないと思うから・・・」
ー はぁ?!そうなんだぁーって。ホントぉっ?
コクンと頷かれてしまった。
魔獣剣士でありながら、女神と闘える程の魔力を有していたのかと。
改めてミハルはグランを思い出そうとしたが。
「さぁ!こっちは邪魔者が居なくなったわよ!さっさと助け出しましょう!」
記憶を辿る前に、コハルからの申し出に頷いてしまう。
ー そうだった!ローラ君のお母さんを助け出さないと!
今自分達がやらねばならないのは、救出する事だと思い直したミハルが。
ー お願いコハルちゃん!ローラ君のお母さんの魂を救い出して!
「勿論!そうするつもりだから。
ミハルにも手伝って貰うからね!」
待っ正面に<八岐大蛇>を捉まえた<零号機>。
「あの機械を破壊してミハル!魂の拠り所の機械をこの剣で!」
― え・・・?!
魔鋼剣を振りかざし、コハルは<零号機>を飛び立たせる。
胴体中央内部に光る、魔鋼機械目指して。
3馬鹿魔王・・・対グラン魔獣剣士モード。
勝負は火を見るより明らか。
なので・・・省略します。
だって、殲滅の女神でさえ倒すのに苦労したんだから・・・あ。
この件が知りたければ、「魔鋼騎戦記フェアリア」を参照してね?
さて・・・コハルに頼まれたミハルですが?
法子の魂は救出できるのか?
次回 闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第4話
君は最強の魔鋼少女へと昇華出来るだろうか?