だって 女の子だもん 第12話
コハルもミハルも。
2人共女の子ですからねぇ・・・見えないかもですが?!
蒼い光は空間を奔った。
手を下しかねている弟の元へと。
「「ねぇマモル?」」
姿を見せる前に呼びかけてみる。
結界を貼らなくても、弟なら声が届く筈。
自分と同じ異能の子であるのなら。
「わっ?!ミハル姉!」
ニャンコダマに容を取る前に、応えてくれた。
弟には声だけで分かって貰えたのに、女神は微笑みを浮かべる。
目の前に蒼い光の揺らめきが現れると、蒼毛玉状態の女神が姿を見せる。
砲手席に座り、娘と<八岐大蛇>を観測していたマモルの前にニャンコダマが現れたのだ。
「「マモル、心配しなくて良いんだよ。
あの子を呼び寄せておいたからね・・・大丈夫だからね」」
人間界で姿を見せれるのは、魔鋼力を持つ者だけ。
若しくは結界が貼られた中でだけなのだが、マモル達一部の縁が深いモノには見えるようだ。
尤も、真盛や美雪は別格者ではあるのだが。
「大丈夫って言ったって、姉さん。
奴の背後には、強力な異能を持つ奴が控えてるんじゃないのかい?」
モニターに映る邪操機兵の爆焔を観て、心配顔のマモルが訊く。
「「ええ、そうね。確かに闇の異能を誇る輩が居るみたいだけど。
あの子も別格、そして控える者達も並みじゃないから。
ちょっとやそっとでは負けたりしないわよ?」」
闘いの場からマモルの元へ飛んで来た女神は、衝撃砲の砲座を見渡すと。
「「それよりマモル、やって貰いたい事があるのよ。
理の女神として・・・いいえ。
殲滅の魔神としてやって貰いたい事があるの」」
照準器に目を充ててから、マモルに振り向くニャンコダマ。
「ミハル姉さんが?僕に何をお願いするのさ?」
女神なら、自分の異能で叩き伏せられると思うのに、どうして人の力を欲するのかと。
怪訝な面持ちで、何を頼むのかと訊ねるマモルへ。
「「マモルじゃなきゃ駄目なんだよ?
私の代わりに討ち果たせる技量を持つ者は、この辺りには居ないから」」
ニヤリと嗤うニャンコダマに、マモルは気付いた。
「そうか・・・そう言う事だねミハル姉?!」
モニターの中で対峙している者達を観て、気付かされたマモルが。
「装填は終わっているよ。いつでも直接照準で撃てるから」
ニャンコダマにそう言ってから、艦橋への通信を開くと。
「ルマ!大至急砲座まで母さんの<紅鞘>を持って来てくれ!
ミハル姉が来てくれているから、触媒が必要なんだ。急いで!」
もしもの為に持参して来た母の御神刀を、届ける様に頼んだのだった。
魔王ポーチは焦っていた。
繰り出した邪操機兵は新式で、しかも4機も招聘したのに。
「「モノの1分も保てずに壊滅させられるとは?!
まるで蒼い悪魔じゃないか!赦せんっ赦さんぞぉっ!」」
焦りと怒りの感情が入り混じり、混乱が魔王を支配する。
「「こうなれば!人の魂など宛てには出来ん。
我が自ら宿って・・・滅ぼしてみせようぞ!」」
<八岐大蛇>に宿らされている法子の魂を揉み千切らんとする魔王の力。
人間界に結界を貼らずに現れ出る方法は、何かに宿るしかない。
魔王ポーチは闇の中から現実世界へと干渉しようと蠢き出した。
「それって・・・自滅したいだけじゃないの?」
呆れたような顔でコハルが呟く。
ー ほえぇ?!コハルちゃん・・・誰の事を指してるの?
ミハルには状況がまるで分らない。
人の子だから、闇の中が見える筈もなく・・・
「訊きたいんだけどミハル?
あの機械に宿らされた人の魂の事なんだけど。
助けたいよね?その為に闘ってたんだよね?」
ー もっ、勿論だよコハルちゃん!
ローラ君のお母さんなんだから、助けたいに決まってるよ!
大魔王の姫御子コハルから訊かれたミハルが即答する。
「でしょうね。
だったら、ここからは私の出番。
闇の中で邪な奴から助け出すには、私の方が適任だから」
コハルがポニーテールに結ったリボンに手を伸ばす。
「お願いがあるの、ミハル。
この邪気を払うリボンを外して欲しいんだ。
私が勝手に外す訳にはいかないから・・・承諾して貰いたいんだ」
触れる直前、コハルが頼んで来た。
ー えっ?!どうして外さなきゃいけないの?
そのリボンはミユキお祖母ちゃんが闘いの時には外しちゃ駄目だって・・・
「知っているわ。だから、頼んでいるのよ」
戸惑うミハルは、頼まれた意味を考える。
ー ミユキお祖母ちゃんが言っていたんだ。
アタシが光を掴むまでは、紅いリボンを外して闘っちゃ駄目だって。
邪な者が邪魔するからって・・・邪魔しに現れるからって。
・・・って、一体何を邪魔するというんだろう?
輝を掴むって・・・希望の事じゃなかったの?
リボンを手渡された時には考えもしていなかった。
自分は光を夢や希望だとばかり思っていたのに、コハルに言われてから違う様な気がしてきた。
ー コハルちゃんが言った<輝を掴むまで>って。
<覚醒>する時までって、言った・・・
じゃあ何を?何に目覚めればいいというんだろう?
光を掴む?<輝と闇を抱く者>?
それって・・・聖なる力と闇の力?・・・分からない。
悩むミハルが、きっかけを求めてコハルに訊いた。
ー ねぇコハルちゃん?闇の力って、光と同じじゃないの?
光と影が無かったら、どんな物でも存在出来ないんじゃないのかな?
びくんっ!
訊かれたコハルが跳ね上がる。
眼を見開き、心の内を見透かされた様に。
「そうね・・・人の世界ではその通りかもしれないわね」
答えはミハルの想った通りだった。
闇の力を持つコハルが、此処に居られる訳。
そしてリボンを解くのを願った訳も、ここが人の世だから。
ー 判ったよコハルちゃん。
アタシと私が居る訳が。二人に課せられた宿命も。
ここが人の世界だから、闇の力が使えないんだよねリボンの所為で。
救えないんだよね人の力では、闇の中に囚われた魂は!
見開いたまま、ミハルの声を聴いていた。
心の中にある聖なる輝きを、見透かされたようだった。
ー アタシ・・・信じるよ、もう一人の私を。
コハルちゃんの中にある希望は、決して邪にはならないって!
「あ・・・ああっ?!」
宿り、身体を支配していた筈なのに。
指先が意図せずリボンを掴んだ。
シュルッ
リボンが解ける。
紅い邪気祓いの呪いが解ける・・・
ー 往こうコハルちゃん。アタシも一緒に!
ぶわぁっ!
髪が解けて舞い、毛先から色が変わる。
「ええ、ミハル!私達で換えてみせましょう!」
赤紫の髪へと。
紅い瞳には、神が宿るかのように金色が揺蕩う。
<輝と闇を纏う者>
それは決して邪なる色ではない。
陽の青と黄昏の紅を纏う紫色の髪が揺蕩う姿は、邪なる者とは違った。
「魔王が歯向かうというのなら、大魔王の姫御子として黙っていられない!
人の世界に仇為すというのなら、私の力で喰い止めるだけ!」
大魔王の姫御子コハル。
先の<八岐大蛇>に宿った邪念を滅ぼした時より二年が経た今。
「今度は違う。今は違う!
だって私は光と共に在るのだから!
だってミハルと共に闘えるのよ、邪なる者と!」
姫御子コハルは闘いの前に微笑む。
光を纏い、闇の力で救えると知って。
自分にも<輝>があるのだから。
ー そうだよねコハルちゃん。
アタシ達は同じ時の中で生まれたんだから。
同じ世界に生きているんだから。
光は影と、影は光と共に在るんだから!
正反対の世界で生きる二人。
でも、心は共に在るべきと・・・魂は共鳴していた。
「私も今判った事があるの!
どれだけ運命に翻弄されても、諦めちゃ駄目なんだって!
宿命からは逃れられなくても、共に立ち向かう事は出来るんだって!」
コハルの瞳に輝が燈る。
ー そうだよ!コハルちゃんにはアタシがついてるんだもん。
一緒に切り開こうよ、未来を!
諦めたりしなければ、きっと願いは叶えさせれるんだから!
ミハルは言う。
<願いは叶う>じゃなくて、<願いは叶えさせるもの>だと。
ー それが乙女の心意気だよ!
手を指し伸ばして誓い合う。
二人なら、きっとどんな壁だって越えてみせれると。
「そうだよね!アタシの言う通りだね!
だって・・・私達って、<女の子>だもんね!」
大魔王の姫御子と女神の姪っ子の手が繋がる。
ー そう!私達は、女の子だもん!
二人の輝は世界を照らす・・・
白い<翔騎>から、金色の輝きが溢れ出した・・・
だって・・・女の子だもん。(涙が出ちゃう)
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これが分かる人!あなたは相当な昭和人ですっ(断言)
今話で区切り目ですね。
次回からは中ボス戦の架橋部分に突入(まだやるのか?!)。
ミハルはコハル達と法子を救えるか?
そしてコハルとの縁が・・・
段々と物語の本質部分に迫って行きます・・・かな?
次回 闇を振り撒く者と輝ける魂<悪魔と神の狭間>第1話
大魔王の姫御子って言ってもね、元は・・・コハルが唇に人差し指を当ててますんで「内緒」