だって 女の子だもん 第11話
あの歌が聞こえる・・・
まるで皇国に咲く華の様に・・・
蒼い光が闇を斬る!
邪操機兵4機が、完全に姿を現世へと曝け出した。
鋼色の機体は装備を改修された新型だった。
つい先ごろまでノーラと共に現れ出ていた旧式とは違う。
鋼色の機体。
両腕に装備された鍵爪は、軽度の装甲なら簡単に引き裂けるだろう。
脚部も太くなり、足下のバーニアで移動出来るみたいだ。
紅い単眼レンズが獲物を狙う。
4機の邪操機兵の眼に、活動を停めた<白い翔騎>が映り込んでいた。
ジャキンッ!
ジャキジャキンッ!
音をたてて鍵爪を伸ばす。
目標が定まったのか、4機が一斉に動き始めた。
ボォゥワァアアァッ
足下のバーニアから排出される炎で、機体が浮き上がらせる。
4機の邪操機兵は、紅いレンズを鈍く光らせて襲撃を開始する。
そう・・・ミハルの乗る<零号機>へと。
ドッシャァンッ!
蒼い稲妻が、崩れ果てた研究所に降り立った。
まるで・・・神が雷を放ったように。
蒼い何かが落ちて来た。
正体に気が付かず、落下した後に立ち上る砂煙に隠された者を探る単眼レンズ。
砂煙の中で何かが閃く。
それも2つ・・・輝いた物は<蒼き何か>が放ったようだ。
光る物を認識して、バーニアで浮き上がった邪操機兵に動揺が奔る。
やがて砂煙が落ち着いて行くと、その中から現れたモノは?
「「ミハル、どうやらお仲間さんみたいよ?」」
コハルが険しい顔を緩ませて教える。
「「それに貴女の守護神も来てくれたようね?」」
大魔王の姫御子コハルが示したのは?
ー あれは?!新しい<翔騎>?!
モニターに現れた勇姿を観て、ミハルが叫んだ。
蒼き機体。
蒼き輝・・・聖浄なる者の証。
新型<翔騎>は機体をブルーに染め抜かれ、3個のレンズで敵を睨みつけている。
両上腕部には、魔鋼剣が備えられている。
2本の魔鋼剣を振りかざした蒼き<翔騎>の姿に、邪操機兵は戸惑っているようだ。
同じく闇に居る魔王ポーチも。
「「なんじゃぁ?私の邪魔をする気?!
ええぃぃっ!構わぬ、やっておしまい!」」
混乱したポーチは、敵の力も探ろうともせずに命じてしまった。
己が力を過信し、人の力を馬鹿にして。
4機の邪操機兵と、9本の首をのたうたせる<八岐大蛇>を前に。
「悪を蹴散らして、正義を示す!
光速の魔鋼団っ推参!」
蒼き<翔騎>のパイロットが吠える。
2本の魔鋼剣を振りかざした姿。
それは剣豪たる証なのか?!
魔王の命令を受けた新型邪操機兵にも臆することなく、立ちはだかる<翔騎>。
鍵爪を振り上げて挑みかかった邪操機兵2機に。
「はああぁっ!」
居合と共に魔鋼剣を薙ぎ払う。
右の1機は一撃のもとに頭部と胴体を斬り分けられて。
ガッバァアアァンッ!
衝撃音も残さず爆発して果てる。
左から迫った邪操機兵に対して、剣先が触れたか触れないかも判らなかったが。
ギャギンッ!
胴体を真っ二つに切り裂かれた。
ドガッ!
割かれて後に、爆発が邪操機兵を見舞う。
作者注)画像にある機体番号が03と表示されてあるのは、ミハルの<零号機>が01であるからです。
2号機は3体目の機体であるので03と標示されているのです。
あっという間に2機が潰え去ると、残された2機は散開する。
「無駄だ!動きは読んでいるぞ!」
吠えるパイロットは剣を構えさせると。
「跳べ!2号機!」
背部に備えられたバーニアを噴き上げさせて飛び上がらせた。
突然飛び上がった蒼い機体に、邪操機兵は対処不能になる。
逃げるでもなく攻撃するでもなく・・・
バーニアを噴き、勢いを保ったままで両腕に装備された魔鋼剣をクロスさせる。
「喰らえ!滅却斬!」
両刀を同時に斬り開く。
クロスの剣戟が邪操機兵に叩きつけられた。
衝撃波で機体を4つに斬り分けられた邪操機兵は堪らず爆発して果てる。
「最期の一機!」
機体を左回転させた2号機は、両腕を斜めに揃えて。
「残破斬!」
最期の1機を捉える。
少々離れていたから剣など届かぬと安心でもしていたのか、邪操機兵は構えていなかった。
そこへ、蒼き翔騎からの魔砲が届いた。
そう、剣先から放たれたのは<魔砲>!
蒼い光の刃が、邪操機兵を薙ぎ払った。
キンッ!
輝が闇を打ち砕く。
邪なる機械は、光によって撃破された。
光の魔砲は、爆発も起こさせずに邪操機兵を闇へと返す。
「敵撃譲!完遂っ!」
パイロットは誰に聞かせるでもなく勝利を告げた。
「「ばっ?!馬鹿な?新型だったのに?!
モノの数秒で?・・・化け物か?!あの蒼い奴は?」」
自分が魔王なのに、ポーチは化け物を観る目で呟いた。
「「畜生めぇ!こうなれば<八岐大蛇>で潰してやる!」」
残された手段は、虜にした魂を以ってしてあたる事。
「「姫御子諸共、アヤツを葬るのよ!」」
<八岐大蛇>に命じるポーチは、もう一つの失敗を冒そうとしていた。
あの蒼い<翔騎>に、誰が乗っているのかも知らずに命じたのだ。
「「ミハル、お見事だったわね彼」」
ー 彼?!知っているのコハルちゃんは?
モニターには機体が映されているが、搭乗員までは分からない。
なのに、コハルには見えているのか?
「「勿論よ、ミハル。私達にとってはとても大切な人達だもん。
さっきも言ったじゃない、守護神だって・・・」」
緩ませた頬のまま、コハルが教えて来る。
ー ガーディアン?!神・・・そっか、ミハル伯母ちゃんだね?
そう答えてコハルの顔色を伺うと。
ー え?!違うの?半ば合ってるような・・・そんな顔だけど?
苦笑いを浮かべるコハルの顔に、ミハルは不思議に思った。
ー じゃあ、誰を指したのよ?
「「彼って・・・言った。
女神様は男子じゃないわよ?」」
蒼い<翔騎>を観るコハルが答えに含みを持たせた。
ー 男子?!ますます分かんないよぉっ?
思い当たる面影は?
ミハルの記憶に居る男子は・・・
ー まさか?!
彼は此処には来ない筈だった。
その男はまだ現れてはいけない人だった・・・
「4機だけで良かったのですか?」
紫の髪を靡かせたパイロットが、直接訊いた。
「「ええ、これで良いの。貴男の仕事は此処までよ」」
モニター前に浮かぶ蒼い毛玉が答える。
「あれも叩かなくて良かったのですか、女神様?」
未だに蠢く<八岐大蛇>を指して、パイロットが訊いた。
紫の髪、瞳の色は・・・
「「いいのよ、後はあの子達に任せておきなさい。
貴男とミハルは気心が触れ合っているみたいね。
助けたい気持ちは良く解るけど、バレたらことでしょ?」」
ニャンコダマが振り返る。
そこに居る、顔をマスクで半ば隠した男子に。
「ええ、約束でしたからね。
光を掴むまでは顔を見せないって。
僕もコハル・・・いや、今はミハルを名乗っているんでしたね?」
眼をマスクで隠した男子からの答えに頷いた女神が。
「「そうよね・・・貴男もだけど。
あの子達には輝を掴んで貰いたいものだわ。
なるべく早くに・・・世界が闇に向かう前にはね」」
白い<零号機>に乗っている二人の娘に向けて願った。
「それでは、事が済むまで待機しますね?」
マスクの男子が女神に告げて、二号機を一端場外へと離れさせる。
「「それで宜しい・・・後はあの子達に任せましょう」」
答えた蒼きニャンコダマは姿を消すと、どこかへと向かった。
まるで何かを追い求める様に・・・
「「私は理の女神・・・邪悪を赦さない殲滅の女神・・・・」」
蒼き光は、彼の元へ飛んで行った。
出ましたね!ようやく!
どこに行ったかと思えば、マコトのところでしたか?!
そしてまんまと美味しい処を掻っ攫う!
ニャンコダマよ・・・ナニを企むんだ?!
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2人は心を一つに!彼女たちこそ<乙女>!