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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第2編 <魔鋼学園>
123/219

だって 女の子だもん 第3話

地下道を迷っていたミハルとマリア。


やがて二人の前に現れたのは?!

道魔重工業開発部の敷地内には、数か所の排水溝がある。


排水溝と云っても、そこは武器製造を手掛ける工場だけにまるで下水処理場並みに巨大な管がひかれていた。


数か所もある排水溝の中でも、とりわけ大きいのは武器弾薬を製造している部門。

社外には秘匿されている開発部の屋内から延びていた。


その地下、数十メートルでは・・・




「ほわわっ?!この上だよね?」


白い<翔騎>を操縦しているミハルが上部モニターを見上げる。


「そうらしいで?何とか時間内に辿り着けたな」


ピンクの一号機を操るマリアが、射撃管制装置を作動させて準備に掛る。


2機の<翔騎>が辿り着いたのは、ローラの母が捕らえられているとされる秘密部門の地下。

大きな排水溝からは、轟々と滝のように汚濁水が流れ落ちていた。


「この流れを突き破って飛び上がれば、もう待ったなしになるで。

 準備はええか?増設電池を廃棄する用意にかかるんや!」



この作戦の為に、予備の電池を増設してきた。

通常なら僅かに5分しか作動できない<翔騎>だが、予備電源によって、倍の10分間もの行動が出来ていたのだ。


「これでも初期型よりかは行動限界時間も伸びてるんやけど。

 ・・・兎に角、間に合ぅて良かったわ」


予備電池の寿命も後幾許かも無かったから。

二人が時間を気にしていたのは、こうした理由もあったのだ。



「作戦は第2段階に入るで!<零号機>増設電池を外すんや!」


マリアの<一号機>が、カノン砲を目標に向けた。


「うん!電源を切り替えるっ、予備電池切断!」


モニターに映っていた予備電源のイエローマークが遮断されて消滅する。


電源が切り替わり、本体内に装備されてある電池からの供給が始った。


「切り替え完了!残り時間5分・・・」


残り時間を指す緑の枠内には、カウントダウンされる秒時が表示された。


「作戦っ・・・スタートォ!」


予め照準を絞っていたマリアの指が、トリガーを引き絞った。



 ドムッ!


75ミリ砲弾が排出口に飛び・・・



 バガァアァンッ!


爆焔と共に開口部を拡げた。


「飛べ!<翔騎>!」


<零号機>がファイアーバーナーを牽き、水柱の中に飛び上がる。


「往け!一号機も!」


砲撃したマリアの<一号機>も、ピンクの機体をジャンプさせた。





「司令!<翔騎>の反応が出ました!」


<大鳳>の指令室・・・艦橋で待っていた、この時を。


「よしっ!電探レーダー射撃の準備に掛れ!」


地上へと飛び上がった<翔騎>の魔鋼反応を検知した<大鳳>で。

マモル達が次なる手を打ち始める。


「もしも魔鋼騎隊が手を出し兼ねたら、ショックカノンを発射する!」


マモルが猫田2尉に準備を急がせる。

ショックカノンと呼ばれる衝撃砲は、魔鋼の弾を打ち出せる秘密兵装だった。


<大鳳>上部に装備された単砲身の砲塔が、目標に目掛けて回転を始めた。


「目標を捕捉次第、直ちに射撃態勢を執れ!」


艦長でもあるマモルにより、次々と攻撃準備が執られた。


「マモル・・・あの子達に被害が及ばないようにしてね?」


傍に控えるルマが、少しだけ心配そうに訊いた。


「大丈夫さ、ルマ。

 射撃なんて必要もないだろうし、撃つにしても当てたりはしないから二人には」


天井モニターを見上げたまま、マモルが言い切った。


「そう・・・それなら良いけど」


まだ、心配気な声でルマが頷いた。


二人が見上げる艦橋の天井には、まだ何の変化も見せない開発部建物が映されていた。






突然の衝撃音に、研究者達は驚きの声を上げた。


衝撃はやがて侵入者が齎したのだと判る。



「あれは?!機械兵?!」


白色の魔鋼機械兵が水柱から飛び出して来た。

見知らぬロボットは、工場内部に降りたって来る。


「2機も?!」


白い機械兵が室内装備を踏みつぶして降りたつのと同時に、ピンク色のもう一機が水の中から飛び出して来たのだ。


「警報を鳴らすんだ!急げ!」


研究者達の責任者らしい男が、緊急事態を知らせるベルを鳴らせと叫んだが。


 ドシュンッ!


ピンクの機体が、左腕に装備された迫撃弾で警報ボタンを叩き壊した。


「ぎゃっ?!」


衝撃で倒された、白衣の研究者が悲鳴をあげる。


「駄目だ!このままでは研究所ラボを破壊されてしまう!」


自分達が何を創ったのかをも忘れて、責任者は咄嗟の判断を下した。


「一か八か・・・ここを壊されるくらいなら!」


男は押さなくても良いボタンに指をかけた。




「「私達はここに囚われている女性の解放を求めます!」」



ピンクの機体から、少女の声が流れ出た。


「「ここに囚われ、人体実験に処せられている女性を引き渡して貰います!」」


スピーカーからの声は、明らかに秘密の実験を知っていると判った。


「「素直に引き渡して貰えなければ、ここの破壊を企てます!」」


ピンクの機体に装備されたカノン砲が、研究者達目掛けて向けられる。


「なにを言うんだ?!そんな女性が此処に居るなんて、どうして言い切れるんだ?!」


一人の研究者が、白衣を脱ぎ捨てて言い返した。


「「私達は道魔重工業開発部に囚われたと、調べ上げています。

  あなた方のスポンサーでもある道魔会長が、白状したのですよ?」」


スピーカーからの声に、言い返した男が後退る。


「「もう観念された方がいいですよ?!

  いずれこの実験自体を消滅させる事になるのですから」」


<一号機>の中で、マリアが勝ち誇った。


「なんだと?!我々の研究を無にするというのか?」


「「当たり前です!人を実験に使うだなんて。

  それに魔鋼の技術は<戦術兵器を越えてはならない>と法律で決められたではありませんか?」」



新たな世界になり、新たに法が決められた。

以前の様に無選別な武器を造る事を禁じ、魔法の力を戦争へと使う事を制限する法律が決められた。


「「憲法でも<魔鋼不拡散条約に準拠するものとする>と、記されたじゃぁないですか!」」


新しく日の本国となって、現在の憲法に改められた。

その中にはっきりと記されたのは、当時は誰の眼にも必要とは思えなかった魔法についての一文。


セカンド・ブレイクを越えた後にさえも、以前の魔鋼大国になった後ろめたさからの一条文が記された。


憲法として、平和国家を標榜する国として・・・



「「私達は女性の解放を求めます。

  無事に解放されたのなら、この研究所の処理はあなた方に委ねる所存です。

  罪を認めて研究を放棄するのならば、刑事訴追は行わないと約束しましょう」」


これがマモル達が採った解放作戦。

敵の虚を突き、懐柔するはかりごと。


圧倒する魔鋼機械を見せつけて、抵抗心を奪い去る。

そして自らの罪を認めさせ、無事に解放されるように企てたのだ。


「そ・・・それは本当なんだろうな?

 人体実験の罪も、法に抵触する武器を造っていた事も?」


「「人質の解放と研究の破棄が条件です」」


2機の<翔騎>に立ち塞がれて、殆どの研究者は懐柔策に同意していたのだが。


「馬鹿なことを言うな!

 我々の研究した事が闇に葬られるなど!断じて認めんぞ!」


独り、責任者の男だけは反抗して来た。


「今迄の苦労が水泡に帰すなど、断じて私は認めん!

 これからの戦争には、私の理想が・・・私の野望によって成り立つのだ!

 私こそが新たな世界の・・・創造主になるのだからな!」


男は髪を逆立てて、2機の<翔騎>を睨むのだった。


「「アンタ・・・闇に冒されてるんとちゃうんか?」」


マリアの声が、今迄とは全く違う辛辣さを加えた。


「「その瞳の色・・・紅き闇に冒されてるんやろ?」」


懐柔を拒んだ研究者の姿は、悪魔に魅入られた者の様に荒んでみえる。


「悪魔だと?!馬鹿も休み休みに言え。

 私こそは悪魔をも配下にする、新たなる救世主。

 いいや、全世界を跪かせる王となるのだ!」


すでにこの男には、悪魔が宿っていた。

邪悪な欲望に悪魔がつけ入り、その結果。


「私の邪魔をする者達よ!

 お前達は、新たな世界の力を知るが良い!

 魔鋼の力により、私という絶対者に跪くが良い!」


邪悪な意志により、研究責任者は魔道へと堕ちた。


悪魔の意志は、突き動かしてしまった。

人類が再び染めてはならない悪魔の機械に、命を与えてしまった。


「「やめて!そのボタンを押しちゃぁ駄目ぇっ!」」


白い<翔騎>が叫んだ時には。


「わぁーっはっはっ!みんな私に跪くが良い!」


入力される悪意の命令。

キーボードに打ち込まれたのは、邪悪そのものの命令。


<<妨げる者全ての排除・殲滅>>


紅い作動ボタンを、悪魔に堕ちた男が押し込んでしまった。




 ブブーゥッ!



悲鳴にも似たサイレンが鳴り響く。


「わぁーはっはっはっ!これで私の思い通りになるのだ!」


男は紅く染まった瞳で、それを見詰める。



 ガシャッガシャッガシャッ


 ガラガラガラッ バリバリッ


崩れ去る研究所。

崩壊して果てる建物の中から。



 バキバキバキッ


巨大なる兵器が姿を現し始めた。



 ズドォオンッ



脚部が床を踏み壊す。



 バガァアアンッ


数本あるアームが床を掴み、頂部を地下最下層から覗かせた。


まるで地の底から現れ出た様な異様な姿に、見る者全てが言葉を呑んだ。


「あれは・・・まさか?!」


モニターを観ていたマリアが絶句する。


「また・・・とんでもないのが出て来やがったな?!」


映し出された画像は、<大鳳>にもリークされていた。


「まさかとは思ったが・・・」


「本当に造り上げてしまっていたのね?!」


マモルとルマの眼に映っている巨体。

九本のアームの先には、龍の頭部にも似たあぎとが。

崩れ去る床から現れた魔鋼機兵の姿とは。


「まただ。

 あの悪夢が蘇る・・・2年前と同じ。

 <九龍の邪龍>が・・・蘇ったんだ」


邪悪な姿に、マリアは引き攣った声を絞り出した。


「まただ・・・また。

 あの日の惨劇が繰り返されようとしているんだ・・・」


蒼き瞳になっているミハルが、悪魔の姿を見上げていた。


挿絵(By みてみん)

現れましたね、中ボスさんが。

この章の始めから語られてきた<九龍の珠>に纏わる相手。

それがミハルの前に立ち塞がったのです。


どうして甦った?いいや、作り直された?


どちらにしても闘うしかない!

やっと戦闘なんですかね?!


次回 だって 女の子だもん 第4話

ローラは母を感じ取れるのか?!どうする活動限界も近付いているぞ?!

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― 新着の感想 ―
[一言] いよいよロボットがバリバリ活躍し始めたのですな(*´∀)ノ 人体実験なんて、あってはならないことです。 まさに悪魔の諸行……。 中ボスあらわる。 いよいよ戦闘かぁ。 やっぱり押しちゃい…
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