だって 女の子だもん 第2話
画策するミハル・・・女神の。
コハルは女神抱かれて・・・
<翔騎>を操縦するミハルの魔法石。
蒼き宝珠の中から抜け出た女神は、闇の中でコハルを抱きしめていた。
「闇の中だって言うのに、私を束縛しようともしなかった。
光の女神を敵視しなかった・・・あなた達は」
大魔王の姫御子コハルは、女神に抗いもしない。
抱かれているのが、さも嬉しそうにも見える。
「コハル・・・もうしばらくの我慢よ。
きっとルシちゃんが、お母様を迎えに行ってくれるからね?」
女神の言葉に頷いたコハルが、
「お母さんの匂い。
大天使ミハエルお母様の匂いがする・・・」
甘えるようにしがみ付いて来る。
「コハル・・・甘えて良いよ。このまま暫く抱いていてあげる」
髪を撫でる女神が、コハルを慰める周りには無数の縫いぐるみ達が揺蕩っていた。
新しくポニーテールに結い上げたミハルのリボン。
祖母から貰った紅いリボンには、邪なる者を寄せ付けない呪いがかけられていた。
それを結んでいれば、闇からの影響を極力避けれる。
光と闇を抱く者の暗黒面を調和する意味も、紅いリボンには秘められていた。
「ミハルぅ、そっちはどないや?」
「うう~ん、どうもこうもないよぉ!行き止まりだよ」
周波数を限定した2機だけに繋がる無線で、二人は迷路を抜け出そう連絡し合っていた。
地下道は迷路のように入り組み、元からあった地図には無い穴に遭遇してしまったのだ。
目的の道魔重工業開発部に辿り着くには、時間通りにいかなくなりそうだった。
「困ったなぁ、方位は間違ぉてへんのやけど。
どう進めばいいのやら・・・道に迷うてもうたな」
「そうだねぇ、こんなことならローラちゃんを連れて来れば良かったねぇ?」
2機の<翔騎>は手当たり次第に道を探したが、目的地点に辿り着く事は困難を極めていた。
「あまり遅れるんだったら、折角の陽動作戦が不意になっちゃうよ?」
ミハルの心配は、地上の者達に悟られはしないかという事に尽きた。
「そうやなぁ、もう間も無く消火も終わってしまうかも。
そうなったら強硬手段に出るしかないのかも知れへんな」
マリアは坑道の天井を見上げて考える。
坑道の天井を火砲でぶち破り地上に出る・・・折角の陽動作戦が不意になるが。
「陽動作戦だってばれたら。そうするしかないかもね?」
坑道の地図を見直して、ミハルもそうするしかないと思い詰めた。
大戦前に描かれた地図に無い枝道が、二人を迷わせた。
汚濁水を流す坑道は、忍び込むには最適と判断されたのだが、
まさかこんなにまでも拡げられていたとは、立案した時は思いもしなかった。
「本部もイライラしてるやろな。
いつまでたっても返事せぇへんのやから・・・」
坑道を抜け出て目的地に着いたら、一番初めに無線の封鎖を解除する手筈だった。
それが一向に連絡出来ないのだから・・・
「大丈夫だよマリアちゃん。
マモル君達は信じて待ってくれてるよ。ローラちゃんだって・・・」
「すまんなぁローラ。ウチが方向音痴なばかりに・・・」
母の救出を待つローラへ、マリアが謝る。
「方向音痴って言ったって。みんな同じような道なんだもん、仕方がないよ」
モニターに映るのは数本にも枝分かれした坑道。
地下である事も災いし、砲磁石も巧く作動してくれないのが致命的だった。
「せめて魔法力を検知出来たら。ローラちゃんが乗っていたらなぁ」
ミハルも天を仰ぐ。
もはや残り時間は、幾許も無かった。
周りに居た縫いぐるみ達は、コハルに遠慮したのか姿を消していた。
女神に抱かれていたコハルが、やっと落ち着きを取り戻したのか。
「ありがとうミハル伯母ちゃん。
お母様に抱かれていたみたいで嬉しかった・・・」
顔を挙げて微笑んだ眼には、涙の痕が着いている。
「もし。
もしまた辛くなったら・・・そっちにお願いしても良い?」
コハルが言う<そっち>とは。
「ええ、勿論。ミハエルさんが戻るまでならいつでも。
姪っ子の意識を奪ってもね、コハルが悲しむのをほっては措けないから」
人間界に再び現れても良いかと問うたのだ。
「でもね。
お母さんが帰って来たら、姪っ子には宿っちゃ駄目よ?
光を授けられたコハルが宿っちゃったら、私の居場所がなくなっちゃうからね?!」
「あはは、そうですよね。
ミハルと同じ輝と闇を抱けるのなら、もう宿る必要がなくなるんですよね?」
大魔王の姫御子からの転生。
輝と闇を抱く者になれたのなら、それが意味するのは。
「コハルがミハエルさんに輝を貰えたら。
きっと、姪っ子と同じ人に成れるのよね。
それが叶えば、ルシちゃんだって闇の仲間達だって取り戻せるのよ。
あるべき姿に・・・この世界に居られる、人の姿を掴めるんだよね」
女神がコハルと同じ目線になって教えた。
「そうなりたいな。
ミハルと一緒にこの世界を歩いてみたい。
ミユキお祖母ちゃんのおはぎを、二人で食べたいな!」
「あらまぁ、血は争えないわね。
どうしてそんなところまで似ちゃったのかしらねぇ」
ぷっと吹き出し笑う女神。
「お祖母ちゃんのおはぎは、どこの世界だって一番なんだよ!」
「ホント!その通り!」
あははっと、笑い合う女神と大魔王の姫御子。
「コハルが輝を掴める時を待ってる。
理の女神としてじゃなく、同じ星の元に産まれた者として。
あなたとミハルが、同じ世界を歩んでいける日を」
女神が錫杖を天に翳し、闇の中で誓約を印す。
闇に魔法陣が描かれ、大魔王の姫御子に降り注いだ。
「ミハル伯母ちゃん、ありがとう!」
悲しく辛い想いを軽減させる、碧の魔法陣。
闇の中でも異端の力で祝福する、女神の理。
母への想いを募らせた姫御子へ、理の女神が贈った。
「ふぅ・・・コハルは良い子だから。
伯母ちゃんも奮発しちゃったわ。これで暫く寂しくなんて思わずに済むかしらね?」
魔法陣にはミハエルの記憶が封じられていた。
大天使ミハエルの優しさが、母の想いが印されていた。
「寂しくなったら呼んでごらんなさい。
辛くなったら話しかけてごらん。
きっとミハエルさんは答えてくれるから」
笑う女神から与えられた魔法陣。
「うん!ミハル伯母ちゃんありがとう!」
ぽあぁっ と、顔が花開く。
笑う姫御子は、幼き日の美春と同じ顔をみせていた。
「私に贈り物をくれる為に呼びだしたんじゃないでしょ、ミハル伯母ちゃん?」
魔法陣を身体に収めたコハルが、思い出したように訊いて来た。
「確かにコハルちゃんに贈るだけじゃないんだよ。
今日はお願い事があって来たの、とても大事な要件なのよ?」
女神が大魔王の姫御子としてのコハルに頼みごとがあると教えて。
「あなたにしか頼めないの。
ルシちゃんが出張ったら、とんでもない事になっちゃうからね」
「お父様じゃいけない事?」
うん、と頷いた女神が。
「そう、堕神に闇の力を使わせちゃぁ駄目だから。
大魔王として力を使えば、闇に戻っちゃうかもしれないからね。
ここはコハルに手伝って貰いたいんだ」
コハルが大魔王の姫御子である事に、一体どんな関係があるというのか。
「うん良いよ!ミハル伯母ちゃんのお願いなら、私に出来る事ならなんだってする!」
「ありがとうコハル。
お願いと云うのはね、姪っ子の力になって貰いたいんだよ?」
人間である光と闇を抱く者に手を貸せと、女神は頼んで来たのだが。
「ミハルに?!どうかしたの、あの子?」
コハルは聖なる力と闇の力を放てるミハルならば、手助けなんて必要ないのではないかと思ったらしい。
「いいえ、あの子では無理なの。
いくら光と闇を抱く者だって言っても、今はまだ覚醒してる訳じゃないから」
「あ・・・そうか。私に借りたいっていうのは?」
察しが早いコハルに、女神が微笑むと。
「そう・・・貴女の力を貸して貰いたいの」
蒼き瞳で大魔王の姫御子へと託したのだった。
そして女神はコハルにナニをさせようと言うのか?
ニャンコダマが大魔王の娘に託すのは?
一方、本家ミハルはその頃・・・道に迷ったまま?!
いいえ、闘いは突然に。
次回 だって 女の子だもん 第3話
戦闘用意っ!飛び上がれ魔鋼少女!・・・だってさ?!