母と子 その想いは 第11話
いよいよ!
<大鳳>に戻った魔鋼少女達に、出撃命令が!
ただ、気になるのはローラの母。
どうやって救い出すのか?
大型バンに揺られる事20分。
ルマの運転するバンは、茂みの中に入って姿を晦ませる。
その向こうには、迷彩色を施されている巨大な物体が見え隠れしていた。
「司令帰還!これより本艦は臨戦態勢となる」
艦橋に陣取る先任士官、猫田2尉の声がスピーカーから流れ出る。
「フェアリア公使補ルマ参議もご一緒に。
艦橋までお越し願えますか?」
バンに設えられた無線機からも、猫田2尉の招く声が流れた。
「了解しました。島田司令と艦橋に向かいますね」
無線機に返答したルマが、後部座席に振り返ると。
「ほらほら、あなた達もよ?!」
マリアが揺すって起こしているローラとミハルに、到着したのだからと教えた。
「ローラ!ミハル!起きるんやってば!」
熟睡していたミハルが、ポワンと顔を挙げ。
「朝ごはん~っ?!」
ボケる。
「・・・マリアちゃん。赦す!」
親として、恥ずかし過ぎる娘に喝を入れて・・・と。
ぼかっ!
阿吽の呼吸か・・・拳骨がミハルを叩き起こす。
「ひにゃぁ~っ?!暴力反対にゃぁ~っ?!」
目覚めたようだ・・・にゃ語がそれを標している。
「じゃあ、艦橋まで。みんな行くわよ?」
3人の娘を伴い、先に行ったマモルを追うルマ。
バンを飲み込んだ開口部。
それは航宙揚陸艦<大鳳>の揚陸ゲートだった。
内部には2機の<翔騎>が整備を終えられていた。
白い機体の<零号機>と、ピンクの<一号機>が、完全武装状態で待機している。
高切断力を持つ、魔鋼剣を左腰部に装備した白い零号機にはミハルが。
右肩上部に高火力75ミリ連射砲を装備したピンクの一号機にはマリアが、それぞれ搭乗する事になっている。
邪操機兵を倒す為に造られた<翔騎>。
その魔鋼機械が、人間を相手に戦おうとしていた。
・・・嘗ての世界と同じように。
「島田司令、参議官から出撃命令が発せられました」
猫田2尉が、艦橋に入って来たマモルへ知らせる。
「目標は、道魔重工業開発部。
そこに所在する魔鋼の機械を排除、若しくは撃滅せよと。
どうやら秘密裏に、闇機械を開発していたようですね」
送られて来た情報を携えて、猫田2尉が迎える。
「そうか、やはり。
道魔重工業開発部には政令違反が適応されたんだな?」
魔鋼技術には制限がかけられていたのだが、開発チームは侵してはならない部分に手を染めたらしい。
書類に目を通したマモルの眉が跳ね上がる。
そこに書かれてあったのは・・・
「ミハル姉・・・見てくれよ。
また、アレが造られてしまったみたいだよ?」
ミハルの魔法石に宿っている女神を呼んだ。
「フェアリアでミハル姉が閉じ込められそうになった・・・あの悪魔の技術。
それを再び目覚めさせようとしているみたいなんだ」
マコトから送られて来た情報には、魔法使いの魂に纏わるモノが書かれてあった。
「「そのようねマモル。
今の私には取り戻せないからね、昔とは違って」」
蒼い猫毛玉になってしまったから?
女神だというのに、何が取り戻せないというのか?
「姉さんは輝の力しかないからね。
神の力じゃあ、闇の力は使えないもんね・・・」
艦長席に座ったマモルの傍に、ニャンコダマが寄り添う。
「「そう。
お母さんやマジカさん、それにリンちゃんを救えた時とは違って。
今の私には、闇の異能はないからね」」
腕を組んで考え込むマモルの傍で、蒼毛玉が答える。
「「でもマモル。もう一人のミハルだったら?
あの子が力に目覚め、聖なる心で解き放ったとしたら?
魔王級の力で助け出せるんじゃないの?」」
意味有り気に微笑むニャンコダマ。
「姉さんは、お気楽に言うけど。
あの子を目覚めさせたら、下手をするととんでもない事にならない?」
姉があまりに軽く言うから。
マモルはリスクを考えて躊躇する。
「「あらま。
昔の弟は、そんな心配性じゃなかったわよ?
どちらかと言えば私の方が引っ込み思案だったのにねぇ」」
「姉さんはもうっ!あの子が邪悪に染まったら大変じゃないか?」
ふわふわと浮くニャンコダマから、笑い声と一緒に返って来たのは。
「「あらら?マモルは<もう一人のミハル>が居るのを知っていたみたいね。
とうに目覚めている闇の御子の存在を知っていたんだね?」」
「ミハル姉、ボクは美晴の父親だよ?
分からない訳がないじゃないか。自分の娘が変わったのに!」
ブスッとマモルが呟いた。
嘗て世界を救った姉弟には、光と闇の存在が知られていたのだ。
一人の少女に重ね合わせられた異能の存在が。
「「マモルがそんなに心配するのなら。
ルマに了解を取って、あの子に直接当たってみたって良いのよ?」」
「どういう意味だよ姉さん?コハルに何かをするというのかい?」
眉を跳ね上げたマモルが問う。
「「簡単な事ヨ。
輝の御子から出て行くように諭すだけだもん」」
「コハルをかい?あの子を闇に追い返すって?」
「「どうかな?そうしたいのマモルは?」」
くるっと後ろを向いたニャンコダマ。
まるで悪戯っ子みたいににやにや笑い・・・
「「悪いようになんてしないわよ!私に任せておきなさいマモル君?!」」
振り向いたニャンコダマの瞳は、姉だった頃の優しさを湛えているように観えた。
「あ、あの?!島田司令?」
突然固まったような司令に、猫田2尉が訊ねる。
「うん?いやなに。こっちの話だよ」
マモルとニャンコダマの会話は、猫田2尉には覚られなかったみたいだ。
「はぁ?!で、作戦ですけど?」
正面モニターに移された道魔重工業開発部を指した猫田2尉が。
「周辺の民家に、被害が及ぶ危険がありますが?」
敵の抵抗如何によっては、秘密行動とはいかなくなると警告した。
「それはやむを得ないだろう。
敵も我々も望まないが、流れ弾の危険も拭い去れないのだからな」
それではどうやって?
猫田2尉が詳細を詰めようとしていると。
「魔鋼少女には、新たな仲間が誕生したのをお忘れかしら?」
艦橋に昇って来たルマが割って入る。
「魔法の存在が探知できる子が、新たに加わったのよ?」
ルマの言っている新たな魔鋼少女とは?
「ノーラ君には無くなったみたいだけど、あの子には残ったみたいね?」
ウィンク一つ。
ルマが二人に贈って、ローラの存在を知らせた。
「はっくしょーんっ!」
「おいおいローラ?風邪かいな?」
搭乗員控室で。
汚れた服を着替えている3人。
着替え終えたローラがクシャミしたのを咎めて。
「違うよ・・・誰かが噂してるんだろうなぁ」
ローラがボサボサの髪を掻いて、マリアに答えると。
「クシャミ一つは良い噂だよね!」
黒髪を束ねるミハルが、人差し指を立てて笑い掛けた。
「そやな?
で、ミハルよ?イメチェンかいな?」
束ねた髪をポニーテールに結い上げているミハルに。
「そのリボン・・・どっから出したんや?」
サイドポニーの時とは違って、大幅な紅いリボンを結っているミハル。
「そういえば、ミユキお祖母ちゃんも同じ幅のリボンを結い上げていたよなぁ?」
見詰めている前でミハルの髪が決まった。
「そう?ミユキお祖母ちゃんに習ったんだ。
決戦という時にはさぁ、サイドより後ろで結いなさいって・・・ね」
振り返ったミハルが、髪を靡かせてマリアへ寄ると。
「どうかな?可笑しくない?」
フリフリと豊かな髪を左右に揺らしてみせた。
「可笑しいなんて。きちんと決まってるよミハルさん」
ローラがニコリと笑い掛けた。
「そやで?!ミハルにはどちらでも似合うけどな。
ウチはポニーの方が好きやな・・・(モフモフ出来そうやし)・・・」
「そっかぁ!マリアちゃんはアタシの髪型を気に入ってくれたんだぁ!」
マリアの内なる心も知らず、ミハルは目を輝かせて喜んだ。
「そうそう!ローラも着替え終わったみたいやし・・・・え?!」
「うん!ローラ君も着替え・・・・はうぁああああっ?!」
だらだら冷や汗を掻く2人の前で、ポワンと小首を傾げるローラ君。
「ひいいいぃっ?!ローラぁっ?」
「どうして女子更衣室で着替えたの?!元々男の子でしょうがぁ?」
引き攣る女子に、ポンと手を打ったのはローラさん。
「あっそっか!長い間女の子だったから。すっかり馴染んでいたよ」
「はうぁあっ?!」×2
どーしてこうなった?
「それにぃ・・・戻れないんだよ。
女の子から・・・ほらっこれみてよ?!」
ユニホームも女子用に。
胸も強調されて・・・完全に女の子状態。
「にゃんとっ?!ローラが完全体になった?!」
マリアが揉み手でローラを観る。
「マリアひゃん・・・目がニャンコ状態にゃ?」
ドン引きしたミハルがツッコミを入れる。
「本当に・・・どうなっちゃうのかなボク。
このまま女の子に成っちゃうんじゃないかなぁ?」
心配するローラ君に、思いっきり手を振ったマリアが。
「おいでませ!禁断の世界に!」
何を思ったのか?驚喜しているのだが?
「やぁ~めぇ~なぁ~よぉ~(棒)」
棒読みするミハルがジト目でマリアを観ていた。
良いのか?!こんな終わりで?!
マリア「いいやろー次回からは、ちゃんと闘うんやからぁ~」
・・・本当だろうな?
ミハル「・・・期待できない・・・」
いや・・・あのね?
間違いなく戦闘になるんですってば!
ただし、相手は・・・
これで<母と子 その想いは>は終了です。
次回からは・・・
次回 だって 女の子だもん 第1話
・・・・なんだよ、この副題は?!戦闘にならないのか?!なるのか?
どっちやねん?・・・・・・・なる!