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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
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蒼き光の子 Act5

登校したら、一番に言うんだ・・・おはようって。


元気善く、何も見なかったみたいに・・・


朝日を浴びて駆けるコハルの願は?

駈ける、駆け続ける。


一直線に。


校門まで後少し。


ー  教室に飛び込んだら。マリアさんの顔を観たら。

   お婆ちゃんの言ってたみたいに大きな声で言うんだ!

   <おはよう>って。何も観なかったみたいに、何も知らないみたいに!


駆けるコハルは決めていた。

折角仲良くなれそうだったマリアと、気不味くなるのが怖かった。


ー お友達になれそうなのに・・・フェアリアのお話しだって出来そうなのに・・・


周りに居る人達とは違う。

マリアも自分も・・・特別な環境で育って来たから。

異国から来たというだけなのに、自分達に注がれる視線は余所余所しく感じられたから。


「きっとマリアさんだって・・・アタシを気にしてくれてる筈だもん!」


昨晩観てしまった出来事を黙っていれば、何もなかったように接してくれると願いを込めた。


校門が観えて来る。

そこには数人が集まって誰かを遠巻きに見ているのが判った。


「あ・・・」


思わず足が鈍る。


「マリアさん・・・」


校門に背を凭れさせ、腕を組んで待ち構えているマリアが観えた。


瞬間、コハルの頭の中に出鼻を挫かれてしまった想いと、戸惑いの想いが重なった。


もう、目の前にまで迫った校門。

判断が着けられないまま、ゆっくりと歩み寄る。

出来る事なら、自分の考えた最悪のシナリオにはならないでと俯いて。


「おい、コハル。今日の放課後・・・つら、貸してーな?」


コハルに向けて、重くのしかかる声が掛けられてしまった。


「ええな?約束したで?」


挿絵(By みてみん)


伸し掛かる一言を吐いたマリアが、踵を返して校舎へと向かっていく。


コハルは血の気が退く思いで、立ち尽くしてしまった。

周りに居た生徒がひそひそと噂話をひろめていくのも、耳に入らず。


「お婆ちゃん・・・どうしたら良いの?」


出鼻を挫かれ、失意に朦朧とする頭で助けを求めていた・・・






「島田さん?!なに呆っとしてるの?」


後ろの席に座るマリアの事が気になって、授業に身が入らないコハル。

太井先生が気に懸けて訊ねたのも耳に入らず・・・


「島田さんっ!訊いてるのっ?!」


大声で叱られて漸く顔を上げた。


「は・・・い・・・なんですか?」


虚ろな瞳で立ち上がるコハルに。


「う~んっ、これは重症ね。保健室に誰か連れて行ってあげて?」


太井先生がコハルの異状を風邪と判断したようで。


「じゃあ、ウチが連れて行きますわ」


マリアが手を挙げて保健室に向かうと言った、


「そう?じゃぁ頼むわね?」


編入されてからまだ日も浅いマリアが付き添うと言ったので、少々驚いたようだが。


「マリアさんって面倒見が良いみたいね、感心だわ」


経緯を何も知らない太井先生が、単純に褒めるのだが。


「嫌やなぁ、先生。当然の事や、ないですか」


コハルの手を掴んでさっさと教室を後にした。


コハルはどうしてマリアが手を挙げたのか、

どうして保健室に連れて行くのかを考えて気持ちが暗くなる。


「島田はん、早うしぃーや?」


何もなかったみたいなマリア。

今朝、校門で睨んでいた子とは別人のようなマリア。


「マリアさん、あの・・・どうして?」


コハルは今朝の言葉の意味を聞いたのだが。


「当然なんやって、後ろに居たんやから分るて。考え事し過ぎちゃうんか?」


保健室に連れて行く話と取り違えられた。


「あ・・・そうじゃなくて。

 今朝の校門での話なの・・・」


コハルが訊いた瞬間、マリアの足が停まる。


「その件か。言った通りや、他に何もあらへん・・・」


放課後・・・どんな話があるというのか?

その話とは・・・昨晩観てしまった事についてなのか?


「あ・・・あの。ごめんなさい・・・アタシ・・・」


つい、観てしまったのだと溢しそうになるのを。


「ほらっ、保健室や。さっさと横になるんや!」


連れ立って保健室のドアを開けると、授業中という事もあり保険医の姿は見えなかった。


「なんや、誰もおらへんのかいな?

 そやったら、島田はんを置いて教室へは還れへんなぁ」


太井先生の言った面倒見が良いというのは、あながち間違ってはいないという事だろう。


「ほなら、島田はん。横になりよしな」


ベットに横にならせるマリア。


「いいよもう、自分で横になってるから」


布団をきちんとコハルに懸けてやりながら、気にしなさんなと手を振るマリア。


「ええから、大人しゅう寝とき」


傍に腰かけたマリアがコハルの寝顔を見ながら話す。


「島田はん、なんか勘違いしとるやろ?

 放課後面貸してって言った意味を取り違えてるんとちゃうか?」


不意にマリアが今朝の件を話し始めた。


「か・・・勘違い?」


「そや。ちょうど誰も居らへんから、この場で話す事にするわ」


マリアの言葉に霞んでいた気持ちが少しだけ晴れて来る。


「コハル・・・昨日の件や。

 昨晩観てたんやろ?ウチと闇の者とが対峙してたのを?」


ズバリと言い切られてしまい、返す言葉を失う。


「分かっておったんやで?木陰から覗いてたんを。

 後を着けて来たんやろ?帰れって言うたのに・・・なんで?」


マリアの方から次々に問いかけられて。


「なんでって・・・気になったから。

 どうしてなんて・・・分からないよ。

 マリアさんの身に何かが起きたらって、心配しちゃったから」


マリアに顔を向けられず、布団の中に半分顔を隠して答えた。


「そっかぁ・・・心配してくれたんやな?」


コハルはマリアの声にハッとして、見上げてみた。

その顔には、いつものジトっとした目ではない微笑みが浮かんでいる。


「せやけどな、危ないのはコハルの方なんやで?

 ウチが来るなって言うたんは、まかり間違ってコハルに危険が迫るんを防ぎたかったんや」


ニヤリと笑った。

笑顔を始めてみせて貰ったと思った。

その笑顔には、とても大事な意味が潜んでいるのだとも。


「コハルはん、今回だけやで?もう危ない事に首を突っ込んだらあかへん。

 ウチと一緒に居ったら、巻き込まれてしまうかも知れへんのや。

 せやから・・・ウチを構わんといて欲しいんや」


言葉の意味が解るまで、数秒間・・・思考が停止した。

マリアの言っているのは、自分から離れろと突け放す言葉。


でも・・・さっき聞いたのは。観た微笑みは・・・


「なぜ?!どうしてマリアさん?

 お友達になってはいけないって言うの?

 そんなの嫌だよ、折角判り合えると思ったのに・・・」


布団から起き上がってマリアに掴みかかる。


「分かってるやろコハルはん。

 ウチは魔砲使い、異能ちからを持つ者なんやで?

 闇の者を討伐するだけにやって来たんや・・・直ぐに居らんようになるかもしれんのや」


マリアがコハルの視線から逃れるように顔を背ける。

確かにマリアは通常では考えられないタイミングで編入してきた。

しかも、フェアリア人だというのに、日の本に来ている素性の知れない娘だった。


「そうだとしたら・・・尚の事だよ!

 いつ居なくなるか解らないのなら、今直ぐお友達になろうよ?!

 離れ離れになっても忘れる事が出来ない位、仲良しになろうよ!」


コハルの声にマリアの方が驚かされる。


「な、なに言うテンねんな?

 そないなこと・・・悲しいだけやろ?」


マリアはコハルが首を振るのを見続ける。


「違うっ、違うよマリアさん。

 遠く離れたとしても、同じ思いなら忘れないよ?

 大切なお友達を忘れるなんて出来っこないよ?」


マリアの両肩を掴んで、コハルが願った。


「お願いマリアさん、今からお友達になって?

 マリアさんとアタシ・・・コハルはお友達だって言い切って!」


涙を浮かべたコハルが頼んで来る。


マリアはこんな真剣な顔で友になってと言われた事が無かった。

いや、本当はいつも願っていたんだ・・・この想いを。


「・・・アカン。あかんのや・・・願ったら・・・アカン」


ポツリと溢す。


「ウチはいつ居らんようになるかも判らへん魔砲使いなんや。

 人並みに友達を作るなんて、望んだらあかんのや・・・」


今迄、何回そう思い、何度願ったか。

その度に、友を造る事が叶わなかったか。

離れて行くのは自分。

引き離されてしまうのは希望ねがい


・・・だというのに。


「せやのに・・・コハルを特別に思えてしまうんはなんでやろう?

 コハルとは別れとぉないのはなんでなんや?」


俯いて肩を掴んでくる、コハルを観る。

黒髪を纏めた紅いリボンが揺れる。


「お願い・・・友達だって・・・言ってよ?」


コハルの声が求める。

黒髪の少女が必死に求めて来る・・・


「この光景・・・どこかで観た気がする・・・」


それは何処で?

それはいつの事?


「ウチの中に宿る異能ちからが、そう思わせるんか?」


魔砲と呼ぶ魔法の力。

それだけではない・・・何かが教えている。


「ウチは・・・ウチは・・・」


「お友達。ミハルの大切な人だよ?」


コハルが本当の名を告げる。

普段とは違う・・・心に宿る声で。


蒼き魔法石が密やかに燈る。

コハルのネックレスが、魔砲使いに教える。


ー あなたと私は友。悠久の時を越えた友・・・


マリアの心に届くのは、コハルの想い、ミハルの声。


「アカン・・・言うたらアカンのや!

 友達になるんなら、条件がある!」


急にマリアがコハルを引き剥がす。


「条件?!」


「せや!ウチの友達になるんやったら、条件を呑んでもらわにゃアカンのや!」


コハルの顔を見詰める蒼い目のマリア。

その口から零れるのは?


「コハルを危険な目に遭わせとぉない。

 せやから・・・ウチが帰れというたら、素直に帰る事!」


眼をパチクリと瞬いた。

マリアは友達だと思えばこそ、自分を突き放すような事を言ったのだと。

初めから友達になりたいと思っていたのだと、やっと解った。


「嫌。

 絶対に嫌。

 友達が危険な目に遭うと分っていながら逃げ帰るなんて、出来っこないから!」


拒絶の証に、思いっきり首を振った。

涙を湛えた目で訴えながら。


「ふっ・・・ふぅ~んっ、そないな子は親友って言うんやで?

 単に友達なんかやない、絆を交わした親友って奴やで?」


コハルから視線を逸らしたマリアが嘯いた。


「?!親友!そうだね、親友なんだよね?!」


パアッと顔を華やかせたコハル。

喜びの表情でマリアに抱き着くと。


「善かった・・・マリアさんに認めて貰えた」


「ば、馬鹿やな・・・泣く奴があるか!」


マリアに抱き着き、喜びの感情を溢れさせるコハル。


「ば、馬鹿って言ったなぁ!そうですよコハルは馬鹿ですから!

 馬鹿な親友を持ったマリアさんも同じでしょ?!」


「違う・・・コハル。ウチの事は呼び捨てでええんや」


はっと顔を上げてマリアを観る。

そこには朗らかに笑う赤毛の少女がはにかんでいる。


「呼び捨て?じゃあ・・・マリア・・・で、良いの?!」


「そや!ウチもコハルって呼んでるやろ?」


嬉しくて嬉しくて・・・涙が溢れた。


「なぁ・・・コハル。泣くか笑うか、どっちかにしぃーや?」


くちゃくちゃになった顔でマリアを観ていたら、恥ずかしそうに言われた。


「泣き笑いって、言葉があるでしょ!」


笑う少女、微笑み返す少女。

友になり、親友を名乗った二人。




始まりは喧嘩相手。

そののち、二人は・・・


「コハル、頼むさかいにひっつくな!」


「良いでしょー?!」


保健室から戻って来た二人を、クラスメートは小首を傾げて見つめるだけだった。

 



やっと。

友達が出来た。

心から繋がれる人に回り逢えた。


歓喜の瞬間、それは一つの絆を産んだ。


だが、喜びは闇を呼んでしまうのか?

闇は絆を引き剥がそうとするのか?!

その時、蒼き光が現れる。

永き時を越えた力が甦る!



次回 蒼き光の子 Act6


君は蒼き光の中で逢えるだろう。この世界に存在してはならない子に逢えるだろう。


ミハル「存在してはならないの、現れるのは結界の中でだけ。そう・・・私は女神ミハル・・・」


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