魔王 襲来 第5話
現れ出るのは?
闇に囚われたミハルに助けは現れるのか?!
彼は、必ず甦ると約束していたから・・・
彼が・・・闇の中に蘇る。
堕神・・・ルシファー。
いいや、闇の中で息衝くのは?
蒼き光を纏う者。
闇に在りて光をも纏う者。
全能の神ユピテルに貶められた墜神ルシファーは、闇の力を纏う神として蘇る。
ずおおおおおおぉっ
巨大なる魔法陣を背に、忌み嫌われる死神達を率いて。
黒き影が永久の中から帰って来た。
「「我が愛しき者に手を下さん輩には制裁を。
我が名を穢す者には殲滅の裁きを・・・与えんものなり」」
紅き瞳が闇を貫く。
金色の髪が靡く時、死神達は恐懼する。
「「我が名は堕神ルシファー。蘇りしは護らんが為・・・」」
進み来る堕神の足元には、黒き影が纏わり着いている。
その影には、幾千万の醜き妖魔が呻いている。
堕神により踏みつぶされる苦悶に、身を悶えさせているように。
「「我が名は堕神ルシファー。人を愛し、人の世の為に神に闘いを挑んだ者なり」」
ずざざざざざぁっ
魔族が怯え、悪魔達が平伏す。
堕神とは。
堕ちた神とは・・・
「「大魔王ルシファー様が戻られる・・・世は人の世となれり!」」
人類を守り、人類の為に神世から舞い降りた<大魔王ルシファー>。
付き従うは、志を同じくした魔王達とその配下。
その数・・・数千万。
「じゃあ・・・姪っ子ちゃん。後は任せたわよ?」
ニャンコダマになっている女神が、ノーラを咥えながら頼んで来る。
「うん、ノーラちゃんを宜しくね伯母ちゃん」
やや苦しげな声でミハルが答える。
「分かったわ。それじゃあ行くから、ルシちゃんに会ったら宜しく言っておいてね?」
それとなく。
何気なく、女神がその名を言った。
方や理を司り、殲滅の女神にもなれるミハル。
方割れの堕神は、闇に潜む者。
普通なら相容れない対極の二人なのに、いつ知り合えたのか?
どう言う関係なのか・・・姪っ子ミハルには教えて貰えていない。
「伯母ちゃん、アタシに宿る堕ち神さんって?
どういった経緯があったの?」
それとなく・・・それとなく訊いたつもりだったが。
「ふふ~ん、教えない!」
ニャンコダマはウィンクを返し、ノーラを咥えたまま消え始める。
「ちぇっ・・・けちんぼ!
それじゃぁ・・・ルシファー叔父さんに直接訊いちゃうんだから!」
冗談のつもりだったが、女神は消えながらこう叫んだ。
「やぁ~めぇ~てぇ~っ!そんなことしちゃ駄目ぇ~にゃぁ~っ!」
消えろ・・・大人しく。
「・・・嘘に決まってるのに」
半ば呆れてミハルが呟いた時には。
ニャンコダマとノーラが消えた。
つまり、結界から脱出できたという事。
どくん・・・
さっきからずっと響いてた心臓の音が、女神が居なくなると一段と激しくなる。
「もう・・・耐えられないかも。
チェンジするのなら、早くしてよルシちゃん」
目の前が段々と暗くなっていく。
何度も経験した事のあるトリップ状態に、ミハルは墜ちていった。
目の前で有り得ない事が起きた。
ミハルから蒼い何かが湧いて出たと思ったら、途端に結界を破られてしまったのだ。
「なっ?!なんだとぉ?」
逃げ去られたかと思ったが、目の前にはミハルが居る。
但し、虜にしていたノーラが消えていなくなってはいたのだが。
「まぁ・・・用無しが居なくなっただけなら・・・良いか?」
睨みつけたミハルには、女神の魔力が消えているのが分かる。
「ふんっ?!女神のヤツ、勝ち目がないから宿り主を置き去りにしたのか」
勝手な憶測でモノを言う魔王ランドだったが。
「それなら。手始めにこいつを玩具にして遊ぶとするか」
一言呟くと、右手の先に紅い魔法リングを形成する。
「おい!そこの黒髪女!
今からお前をこうやってくちょんくちょんにしてやるからな!」
小馬鹿にしたランドが右手のリングを後ろに放り投げた。
「着弾したら・・・こうなるんだぞ!」
リングが地表に落ちると。
カッ!
物凄い閃光が奔り。
グワッ!
爆裂が起き。
ズッダダァアアアアァンッ
クレーターを穿ち、爆発した。
直径50メートルほどのクレーターが出来上がり、猛烈な煙が舞い上がる。
「そらそら?どうしたんだ?
怖気付いたのか?黙っていないで何とか言ったらどうなんだい?」
勝手に舞い上がっているランドの前で、確かにミハルは動きを停めていた。
眼も、口も・・・爆風を浴びる髪の毛も・・・動かない。
風に髪が動かない?
それが意味している事とは?
魂が、その姿を観ていた。
黒い影がそっと近寄ってきて、ミハルへ話しかけて来るのを。
「「私のコハル。久しぶりだね?」」
懐かし気に話して来る影が、ミハルの魂に近寄って来た。
「「二年ぶりかな?人間の世界では・・・」」
光と闇を持ったミハルの魂に照らされて、現れ出でた者の姿が模られた。
「「少しの間に見違えるくらい成長したようだね、コハル?」」
微笑みかけて来る金髪で紅き瞳の・・・
「ルシちゃん、やっと逢えたね?<九龍の珠>事件以来かな?」
「「ああ、そうだよ。あの頃はまだ幼さの残った少女だったのに。
もう、コハルって呼んだらいけないのかな?」」
優し気に想い出を語るルシファーに、ミハルは首を振ってこう答えた。
「ううん、ルシちゃんには、コハルって呼んで貰いたいの。
ミハル伯母さんに悪いから・・・それに、アタシはアタシだけのルシちゃんで居て欲しいから」
両手を拡げてミハルが走り寄る。
幾度となく命を救って貰った・・・堕神に。
大魔王としてミハルの元に現れたルシファー。
闇の中では神の力は縮小されるから。
光と闇を知る彼は、魔王として結界に訪れたのだ。
悪魔の力を身に纏い、悪しき闇を滅ぼす為に。
ミハルはルシファーと共に闘うのか?!
宿りし大魔王に身を任すというのか?
さぁ、闘いはこれから始まるのだ!
次回 魔王 襲来 第6話
君は悪魔と神の間に居た・・・が、君こそが人間なのだ!と、彼が教えてくれたから・・・