魔王 襲来 第2話
潜入したミハル達だったが。
敵は既に察知していた!
道魔理事長率いる待ち伏せ部隊が動き出す?!
魔鋼少女の闘いが始るのだった・・・
階段を駆け下りて来る靴の響き。
隠れ潜む者を炙り出す必要も感じていないのか。
真一文字に駆けつけて来た・・・
「どうやら侵入したのがバレてたみたいですね?」
積み上げられた段ボールの陰で、傍らに立つノーラへ小声で話しかける。
「そうなのら?それなら隠れていても無駄なのら!」
物音を察知したノーラが、ミハルと共に隠れたのだが。
「奴等にバレているのなら強硬手段を執るしかないのら!」
やって来る相手から隠れていても仕方がないと、打って出ることを仄めかしたが。
ミハルはノーラを掴んで首を振った。
「何故なのら?!隠れていても話は前に進まないのだのら!」
侵入した校舎の地下へ向けて、進むべきだとノーラは言い張る。
「進まないとは言ってませんよ。
ここは敢えて相手の出方を観る必要があると思うんです。
本当にアタシ達を捕捉しているのか、それとも単に探しているだけなのかを。
そうじゃないとこれから先、どう行動していいのかも分かりませんからね」
「うむむっ?!そ、そう言われればそうだのらな・・・」
靴音から察して、数人が向かって来ている。
相手が銃火器を持っていたのなら、侮れない相手になる。
盗賊としての勘は危険だとは告げていないが、ここはミハルの意見に従わざるを得なくなる。
「それに。
アタシ達の後を追って階上から来たのなら。
後詰めのグループが来るかも知れませんからね?」
「なるほど。様子見が正解だという事なのら。
急がば廻れって諺もあるからな・・・のら」
身を隠して相手の出方を観るのに、ノーラも納得した。
「まぁ、相手の出方次第ですけど。
上に向かう手筈のマリアちゃん達に警告を伝えておきます」
首元に装備している金色のボタンを指で押し込み、無線で連絡を執る。
「マリアちゃん、侵入したのがバレてるみたい。注意してね!」
小声で侵入した事がバレていると注意を促したミハルに、ノーラが肘でつついてくる。
「来たのら!」
階段を駆け下りて来た影に気付き、黙るように促して来たノーラに目で応えるミハル。
隠れ潜む二人の前に現れたのは、屈強そうな男達。
この階に潜んでいるのが解っているのか、躊躇なく手にした得物で威嚇している。
「銃を持っているのら・・・学校関係者とは思えないのら・・・」
オートマチック拳銃を持った男二人が、段ボールに隠れた二人へと迫る。
「それに、あの隙のない動き。アイツ等はプロなのら」
言われるまでも無くプロというのは、それ相応の訓練を受けた者と云う意味。
銃を握る手元を見れば、どんな訓練を受けて来たのかが分かる。
「軍関係者か、それとも闇の世界に生きる者か。
どちらにせよ手加減なしでいかないと・・・いけませんね?」
ここに居る事が、相手には知れていると踏んで間違いは無さそうだった。
「そうだのら。発砲される前に叩きのめさないといけないのら!」
ノーラは警棒を伸ばして身構える。
それを横目で観たミハルが押し留めると。
「ノーラさん!ここはアタシに任せて貰えませんか?」
独りで二人を無力化すると言い切る。
びっくりしているノーラの前で、ミハルが右手の宝珠に魔法力を注ぎ込む。
「これがアタシの魔鋼力なんです。
この魔鋼剣を出せるのも魔法の一つなんですよ?」
右手に現れた木刀を見せて、ノーラに笑い掛けた。
「魔鋼剣?!どうみても只の木刀ではないのら?」
魔法で出現した木刀を観て、ノーラが怪訝な顔を向けて来る。
「そうですね、見た目は。
でも、この剣は普通じゃないですから・・・観ててください」
鍔の部分に蒼い石が嵌っている剣を一振りしたミハルが、迫る男達を睨みつける。
「あ、ああ。判ったのら」
気迫に押されたノーラが、ミハルに託すと。
「まだ他に居ないか、ノーラさんは見張っててくださいね?」
二人の男の隙を伺い、ノーラに注意を促して・・・
「いきます!」
男二人の視線が一瞬逸れたのを観たミハルが飛び出して行く。
剣を下段に構え、走り寄ったミハルに男が銃を向ける前に。
「はあぁぁぁーっ!」
気合一閃。
目にも留まらぬ速さで一人目の男に、剣を振り上げる。
ガッキンッ!
手応えを確認する前に身体を捩り、傍らに立つ男目掛けて振り下ろす。
ガキッ!
二つの衝撃音が鳴った。
「な・・・何が?!起きたのら?!」
ずっと観ていたノーラにも、目の前で起きた剣術が良くは分からない程だった。
確かに剣が2旋されたようだが。
飛び出したミハルが男に迫り、剣を突き上げ男の顎を打った。
続けざまに体を半回転させ、もう一人の後頭部に一撃を放ったようだが。
相手の反応を確かめたのか、ミハルが暫く剣を突きつけていたが。
どさっ ドサッ!
男達は声もたてずに崩れ去る。
「み、見事。お見事なのらっ!」
褒めるほかない剣術に、ノーラは眼を丸くしていた。
「ノーラさん、今は一刻も早くお母様の元へ急ぎましょう!」
褒め称えられたミハルは意にも介さず、救出を急ごうと促して来る。
「そ、そうだのらな!」
促したミハルの眼を観たノーラが、声を呑んでしまう。
蒼き瞳と化したミハルの眼、そしてその異能の根源に気付いたから。
「さぁ、急ぎましょう!この人達の代わりが来るかも知れませんよ?」
気絶した男達には目もくれず、ミハルは先に立って階段へと向かう。
「よ、よし。急ぐのら!」
階段に向かうミハルの後。段ボールの陰から飛び出たノーラだったが。
「こいつも頂いておくのら」
倒れた男から拳銃を取り上げると、ベルトの腰に突っ込んだ。
ミハルからは目にすることの出来なくなってからの事だったが・・・
「何してたんですか?置いて行きますよ?!」
階段を駆け下りる途中でミハルが訊て来たが、ノーラはしらばっくれて。
「この先に何かを感じてたのら。下の階に魔法を放つ何かがあるのら」
適当な言い訳を答えた。
「魔法?!それじゃあ、きっと何かのヒントかも知れないですね!」
そんなこととは露とも思わないミハルが嬉々として答えるのを。
「剣術は凄いけど、脳天気なのらな・・・」
ぼそりと嫌味を呟くのだった。
だが、ノーラのいい加減な嘘だったが。
「なんと?!あそこに掛けられてあるのは・・・」
「魔法の・・・鍵ですか?」
やや広まった空間に出た時、向こう側の壁に掛けられた鍵が観えた。
「当然。それを護っているんですよね?あの人達は」
二人は階段の陰から、広間に居る男達を観て呟き合う。
「そうとしか考えられ無いノラ!」
「でしょうね!魔法の鍵なんですから!」
やっと救出の<鍵>が現れたのだとミハルは喜んでいたが。
ー 魔法の鍵って思ってるのら・・・困った事に魔法は感じられない。
だが!しかし!・・・教えなかったらバレ無いノラ!
嘘を吐き通すつもり満点のノーラだった。
「それにしても何に必要な鍵なんでしょうね?
どこかに入る為の鍵か、何かを開ける為の鍵か・・・」
少し考えこんだミハルに、あっけらかんとノーラが答える。
「それを教えて貰うのら!アイツ等の一人だけ喋れる状態で残せば良いノラ!」
「・・・ご都合主義ってことですか?」
にひひっと笑うノーラに、ジト目で応えたミハルだったが。
「急いでいるから。
今回はノーラさんに同意しますよ。強行作戦でいきますから!」
魔鋼剣を構えたミハルが、
「今度はノーラさんの出番ですからね!
あの鍵の確保・・・お頼みします!」
鍵の奪取を任せ、自分は男達を熨すと作戦を伝える。
「任せるのら!盗賊の力を見せつけてやるのら!」
胸をポンと打って、ノーラが応える。
「じゃあ・・・いきますよ!」
相手がそれほど警戒していないと観たミハルが、速攻を選ぶ。
「よっしゃっ!行くのら!」
走り出すミハルの後から、ノーラが続いた!
鍵・・・
それがナニを意味するのか。
怪しげな鍵を手にした時。
思わぬ展開が待ち構えていた!
次回 魔王 襲来 第3話
勝手な行動は慎まないといけません!だってここは敵の根城だから。
その時、嘗ての闘いが甦る。闇の中、逃げ出せない空間での死闘が思い出される・・・