皇都(インペリアルパレス)I魔鋼(マギメタ)M戦闘団(ストライカーズ)S 第6話
目的地上空まで残り100キロ。
到着時間は予定通り、払暁5時。
搭乗員配置にあった3人も、仮眠を取るように勧められてシートに身を沈めたのだが。
「ミハル達はひと眠り出来たのか?」
艦橋で当直士官に訊いてみた。
「ええ、まだ中学生ですからね。僅かの時間ですがぐっすりと・・・」
振り返らずモニターを見詰める士官がマモル司令に答える。
「・・・その中学生に闘わせるのが良いことなのか?
ボク達大人がもっとしっかりしなきゃいけないのにな」
ミハル達の年代が、最も魔鋼力を持つ者としては高学年だった。
まだ15歳にも満たない少年少女が、魔鋼の機械を操り闘わねばならない。
「嫌な世界と化したものだなぁ。
僕達が魔鋼の力を取り戻せたら、あの子達に闘わす事も無いというのに」
ため息を吐きそうになるマモルの声に、当直士官の女性が振り向き。
「それはそうですが。
今我々の直面している状況を看過する事は出来ません。
相手が戦術兵器として魔鋼力を使うのなら、我々も対抗するしかないのですよ?」
鳶色の瞳をマモルへに向える、長い髪をポニーテールに結った2尉が返して来た。
「・・・いつもながら、猫田2尉は手厳しいな」
魔鋼戦闘団(IMS)の司令にズバズバ意見を言って来る士官に、マモルが笑い掛ける。
「いいえ、島田司令。
私が言ったのは、単なる事実に過ぎませんから」
紫色の髪留めで結い上げた後ろ髪を靡かせ、猫田2尉はモニターへと視線を戻した。
その画面には、安らかに微睡み続けているミハルの寝顔が映っていた。
「おい、おお~い!ミハル3尉。起きてくれないかなぁ?」
受け持ち整備員の古畑が、髭面をミハルの寝顔に寄せて起こしている。
「そんなんじゃミハルは起きへんで!
ウチに任せときなはれ!」
先に起きていたマリアが<零号機>のコックピットに這い上がると、古畑の横で深呼吸し。
「あーっ!おはぎの山がぁっ!」
ミハルの前で大声をあげた。
ぽんっ!
魔法石から蒼毛玉がミハルより先に飛び出して来た。
「「にゃぁ~っ?!どこにゃー?どこにおはぎの山が?」」
・・・
・・・・・
「ミハル・・・おきんかいぃっ!起きへんから女神様が飛び出しちゃったやあらへんか!」
ぼこっ!
とばっちりだ。
すやすや寝ていたミハルに拳骨が堕ちたのだから。
「「あ・・・もう一回寝たふりしとこ・・・」」
女神はミハルにバレない内にと、とんずらを決め込んだ。
「あひゃぁ・・・どうしてマリアちゃんはぶつのぉ?!」
頭を押さえて、どうにかミハルが起きて来た。
「なんもあらへん。そこにミハルの頭があるからや!」
ぷいっと顔を逸らしたマリアを観て、古畑もローラもくすくす笑いを必死に隠していた。
「損な・・・理不尽過ぎ・・・」
とか言っても、マリアに促されたミハルもコックピットから這い出して。
「再集合でもかけられたんだね?」
戦地に向かう途中だったのを思い出したか、作戦の打ち合わせが始るのかと訊いた。
「そやろ。それに敵がどう出て来るかの予想も必要やろうしな?」
<翔騎>に乗り、航宙揚陸艦に搭載させられて。
ローラに基本的操縦法を教えた後、3人には休養を与えられた。
パイロットは、いついかなる時でも休養を取らればならない。
魔法の力で動く魔鋼騎なら、体力が削がれれば実力も発揮できない恐れがあるから。
パイロットはインテリジェンスな職業といわれる。
魔鋼少女でも、それは同じとも言えるのだろうか?
3人は揃って艦橋へと昇るエレベーターに乗り込んだ。
未だ夢の中状態のミハル。新任務に責任感を燃やすマリア。初めての実践と救出作戦に緊張しているローラ。
押し黙ってエレベーターが開くのを待つ。
ガシャッ
あっという間だった。ドアが開き、目の前に見慣れぬモニターが並んだ空間が開いた。
「来たな3人共。
ようこそ<大鳳>艦橋へ」
「いらっしゃい、緊張しなくても良いのよ?」
マモルと猫田2尉が迎える。
「マリア魔鋼2尉以下2名。出頭しました!」
マリアが敬礼をマモル達に捧げる。
それを観てミハルとローラも・・・
「ほら、ローラちゃん。こうしなきゃ・・・ね?」
自分の様に敬礼をするんだよってミハルが右手を指し示す。
ミハルに教えられたローラが怪訝な顔をしていたが、やっと意味が分かったのか敬礼を真似る。
「うん、宜しい。
間も無く目的地上空に到達する。そこで・・・作戦だが」
敬礼を返したマモルが、横目で猫田に詳細を求めた。
それに頷いて猫田2尉が計器盤のスイッチを押し込む。
「正面メインモニターを観てください。
これから作戦のあらましを表示していきますので」
モニターの前に進み出た猫田が、パネルカッションを始めだした。
「先ず、我々の目標を一つに絞らねばなりません。
ローラ姉妹の母の救出。これを阻害して来る敵の撃滅、並びに捕縛。
敵には闇の機兵が存在すると思って、まず間違いないでしょう。
敵がどれ程の規模で迎え撃って来るのか、奇襲で事が運べれば良いのですが・・・」
そこで一区切り入れた猫田の指が映像を切り替える。
映し出されたのは山の頂に映る城のような物。
「ここが。
帝国学校の魔鋼技術部がある校舎に当たります」
目の前に映し出された城に、ミハルが感嘆の声を漏らす。
「まるで・・・中世のお城みたい・・・フェアリアで観た事がある・・・」
ポカンと見ているミハルの足を、マリアが蹴り付け黙らせる。
「ごほん・・・続けるわよ?
ここに囚われていると観て間違いない筈。
内閣情報員により探索された道魔重工業には、それらしい人物は囚われてはいなかったから。
残りはこの学園のどこかに秘匿されたとみて間違いないと思われるの」
まさか、学校に捕らえられているとは。
そんなことが出来るのは、理事長だからか?
「そこでだ。
先ずは無事に人質を釈放させねばならない。
無理強いをして危害が及ばぬようにもせねばならない。
勿論、関係のない教師や生徒達の保護も絶対条件の一つだ」
3人の横からマモルが補足する。
「君のお母様は魔法力を持っていないと言ったね?
でも、君の異能で発見できないものだろうか?
直ぐ近くまで潜み寄れれば、どこに居るのか分からないものかな?」
ローラの魔法は魔力を持つ物を観れる特殊能力。
「そ、それは。やってみないと・・・今は言えません」
「それでは、ローラ君は拒まないんだね?」
能力を使うのを躊躇わないとローラは頷く。
「宜しい。二人に護衛を任すから。
ローラ君は発見する事だけに集中しなさい。
お母様を救い出せるかの鍵は、君に懸かっているんだ」
コクンと頷くローラに、ミハルが眼でやれるよと合図して来る。
「ミハル、マリア君。君達はローラ君の邪魔をする相手を寄せ付けない事。
言っておくけど、今回の任務は、人質の救出に全力を尽くす。
道魔理事長の訴追は関知しない事・・・いいね?」
「了解っ!」
敵の出方が今の処不明だった。
もし、仮にローラの母を盾に使うのなら、その時は・・・
「言っておくが、救出作戦に阻害するのなら。
司令官としてこうも言っておくよ。
道魔理事長が直接妨害するのなら、それを排除するのも止む無し・・・とね?」
マモルは暗に、敵の首領を叩くのを認めたようだ。
「了解しました司令官!」
マリアよりミハルの方が元気よく父に敬礼して応えた。
右手の宝珠の中で、女神も弟に頷き返していたのは此処だけの話。
「それじゃあ・・・侵入経路について。
我々の入手した図面で示していくわね?」
猫田2尉が、大写しされた見取り図をモニターへ映して話し始めた・・・
後描き。
これで漸く100話目です。
中座してたから、こんなにかかっちゃった。
魔鋼少女となったミハル(旧呼び名コハル)。
秘密部隊員になってどれだけになるのかは、また外伝にて御紹介しましょう。
今日はミハル達のユニフォームについて。
ミハル達魔鋼機械乗りが搭乗員服と呼んでいるアレですが。
素材は魔法が復活したので、ミスリルから造られております。
したがって、少々の熱や衝撃それと魔砲に耐久性があります。
上着の襟部分が広いのは・・・趣味です(笑)
色分けは赤と蒼、それと黄色ですかね。本文中にも紹介されてある通り、属性に因って異なります。
ところで、魔女っ子ミハルも中学生。
魔鋼の能力は並ではなく、低級魔族になら対抗可能な程。
ですから、魔鋼の防御力を上げると、この後に出てくる手強いヤツラとも闘いぬけるでしょう。
そ こ で !
ミハルに強力な魔鋼服を与えてみました!
・・・・いかが?!堅そうでしょ!強そうでショー!
ミハル「やぁ~だぁ~っ!」
泣いてミハルが逃げて行きました・・・
今話で連載も100回を記録しました!
これもひとえにお読み頂いている皆様のおかげ!
本当にありがとうございます!
引き続きのご愛読、応援を切に希望いたします。
どうかこれからも宜しくお願いします。
次回 皇都I魔鋼M戦闘団S 第7話
発進!空飛べ魔鋼の少女!さぁ、いよいよ作戦開始だぞ!




