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魔鋼少女<マギメタガール>ミハル・Shining!  作者: さば・ノーブ
第1編<輝け!魔鋼の少女>
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蒼き光の子 Act3

闇は突然姿を見せる。


怪異は闇より出でる。


ほんの一瞬だったが、声も瞳の色も変わって見えた。

目の前居るマリアが別人に見えた。


「マリアさん?」


家に帰るように言われたコハルが、戸惑いの眼で観直した時には・・・


「早よ帰りーな、ウチはコッチやさかいに」


指で背後の山の方を指し示した、元のマリアが居た。


「あ、あれれ?!マリアさん?」


目の錯覚でも観ていたのか。

背中を向けたマリアの声は普段と変わらなかった。


「じゃあな、コハルはん!」


片手を挙げたマリアがイキナリ走り出した。


「あ・・・えっと。バイバイ・・・」


ポツンと残されたコハルも手を挙げてさよならを返す。


「あ・・・もう観えなくなっちゃった」


一瞬で掻き消えたように姿が見えなくなる。

呆然と見送ったコハルは、指し示された道をとぼとぼと歩き始めた。


「なんだったのかな?一瞬だけど・・・違うマリアさんに観えた」


確かに観たと思った。

声も、瞳の色も・・・別の人にも思えた。


「あれはなんだったんだろう?確かに観えたと思ったのに。

 夕日で彩られたのかなぁ?髪も薄いピンク色に観えたのになぁ・・・」


呟いた自分の声にハッとする。


「え?!待ってよ・・・そんな事がある訳ない。

 夕日に染まるのなら瞳も赤に染められる筈だもん?!

 さっき見たのはマリンブルー・・・蒼い瞳?!」


マリアが消えた方角に振り返る。


走り去った方向には山と森が観えるだけ。

人家があるようには観えない。


(( ドキン ))


心臓が鳴る。

何かを告げるように、心臓が脈打っている。


(( キィーン ))


胸に下げたネックレスが、共鳴するように何かを発した気がした。



「なんだろう、この感覚。

 ネックレスが何かを話したがってる・・・何かを教えようとしている?」


じっと山の方を見詰める。

夕日が傾き、山の斜面に陰ができ始めていた。


「やだな・・・なんだか気が滅入る。

 ほっとけない気分になる・・・マリアさんの事が」


このまま帰る事に気が進まなくなり、立ち止まって暗くなっていく斜面を観ていた。


(( ポゥッ ))


紅い光が瞬いた気がした。


「?!あれは・・・なに?」


紅い光が一瞬現れ、また観えなくなる。


「え?!消えた・・・」


紅い光が瞬いた。


「あ、また?!観えた!」


今度は目の錯覚なんかじゃないと確信できる。

なぜなら・・・


「あっ?!紅い光の傍に・・・蒼い光が?!」


青と赤。

二つの輝きが近づいて行くのが分かったから。


「あれって・・・お祭りの練習・・・なんかじゃないよね?」


ミユキお婆ちゃんの家で観た、二つの光にも似ていた。

でも、ここはお婆ちゃんの家から遠く離れた山際。


近くに神社ややしろなんかがあるようにも観えない。


「やだ・・・やだ!何かが迫って来るみたい。

 危ない・・・危ない・・・闇が来るよ・・・マリアさん」


胸のネックレスから送られてくる何かが、コハルを突き動かす。


「マリアさんが!マリアさんに何かが襲い来たのかもしれない!」


気付いた時には元来た道を駆けていた。

マリアが向かった森へ、山の中へと。


「急がなきゃ!マリアさんにもしもの事があったら!」


走る間に脳裏を掠めたのは、公園で遭遇した怪異。

夢だと思い込んだ恐怖の出来事。

でも、あれが本当に夢だったのか・・・悪夢だったのか。


もしかすると、また・・・観てしまうのかもしれない。


走るコハルは、悪夢の再来がマリアに訪れていない事を祈った。






__________







闇は突然姿を見せる。

怪異は闇より出でる。


「いい加減にしたらどうなのよ。さっさと白状したら?」


ピンクの髪が揺れる。

シルバーブルーのロッドを突き出し、碧き瞳で言い渡した。


「最初の闇はどこに居るのよ?

 お前達の期待の子はどこに居るのかと、訊いたんだけど?」


ロッドに力を込め、相手を睨みつける。


「話す事も出来ないの?いい加減、苛つく奴ね?!」


真っ黒なフードを被った怪しげな者と対峙していた。

身体中を薄汚れた包帯でくるんだ姿。

怪異は自分の周りまで澱んだ黒い霞を振り撒いている。


「話せないのならしょうがない。

 話したくなるまで傷めつけてやるから!」


ロッドを怪異に向けて、飛び退く。


((ザシッ))


足元に怪異から延びた鍵爪が喰い込んだ。


「そう・・・やる気なのね?

 なら・・・こっちからも放ってやるわ!


態勢を整える間も惜しんで、ロッドを怪異にポイントすると。


「これが私達の新たな魔砲!

 闇を撃ち抜く魔砲の力!我らが魔鋼!」


ロッドに魔砲力を込める。

シルバーブルーのロッドの中で、魔鋼機械が作動を始めた。

小型機械の中に納められた水晶を通して、魔砲の力がカートリッジを装填する。


「「スタンバイ」」


ロッドがあるじに告げる。

ロッドを両手で構える少女が叫ぶ。


魔鋼マギカメタル砲シュートォッ!」


同時に、ロッドに着いたトリガーを引き絞る。


 ((ビシュッ))


ブルーメタルの魔鋼弾が闇の者に放たれる。


怪異が少女だと侮っていたのかは分からないが。


「!!!」


魔鋼弾から逃れようと闇に姿をけすのだったが・・・


「無駄よ!」


怪異は声もたてず、闇の中へ逃げ込もうとしたのだが、

ブルーメタルの弾は逃げる的の後を追い縋り・・・


「一旦、標的ポイントと認識したら、逃げても追いかけるんだから!」


闇の中に逃げ込む瞬間、魔鋼弾ブルーメタルが捉えた。


((バフッ))


怪異は闇と共に消え去った。


「ちっ?!また・・・逃げるだけか。

 奴等から情報は、得られないのかもしれないな」


ピンクの髪を掻き揚げた少女が呟いた。


「そうなれば・・・あの子に訊くしかないのかもしれないな」


流し目を、森の中に向ける魔砲の少女が、


「必ず・・・掴んでみせるから・・・ファースト」


ニヤリと口元を歪ませた。


((ガサッ))


横目で見た森から何かが聞こえた。

誰かが覗いていた・・・間違いなく。


「ふふっ、観てしまったようね・・・」


逃げ去ったのを感じて、魔砲少女が変身を解く。

ロッドが紅い魔法石に戻り、身体を包んでいた魔法のスーツも元の制服へと戻る。


「しょうがないやっちゃなぁ・・・素直に帰れば良いのに。

 ウチの魔法衣姿を観たんやからなぁ、タダじゃ済まさへんでコハル!」


ニマリと笑うのはマリア。


逃げ出したのがコハルだと分かっていたマリア。


「ウチから逃げようったって・・・無理なんや・・・コハル!あはははっ!」


嘲るようにマリアは笑う・・・





茂みの中から覗き込んでしまった。


マリアの事が心配だったから。


でも、観てしまったのは異能なる者達の姿。


「あ・・・れは、なに?」


ミリアだった少女が、瞬く間に光に包まれたと思ったら。


「白い・・・いいえ。

 ピンクの服に替わったし、ピンクの髪に染まってるし・・・」


呆然と成り行きを見つめるより他、なかった。

目の前で黒い物体が人の形になると、いきなりミリアだった人に襲い掛かった。


が。


あっさりと避けたミリアが、碧く光る得物を振りかざした。


「なに?あれは?」


青色の光が得物から放たれると、怪異が霧の中に消えた。


「なに?何が一体?!」


訳が分り様がない。

観た事も聞いた事も無い・・・目の前で起きている事が。


「マリアさん?本当にマリアさんなの?」


茂みの中で呟いてしまう。


挿絵(By みてみん)


コハルの呟く声が聞こえる筈もないのに、目の前に居る魔法使いが横目で見た・・・


と、思った。


「わっ?!」


思わず仰け反った時。茂みが揺れて音をたててしまった。


「どうしよう・・・どうしよう・・・」


後退るコハルの頭の中は、混乱と戸惑いで揉みくちゃになっていた。

観てはならないモノを観てしまった・・・そう感じて。


「帰らなきゃ・・・帰らないと・・・家に?

 もし追いかけて来られたらどうしよう・・・どうすればいいの?」


助けを呼びたかった。

誰かに助けて貰いたかった・・・


「そうだ!おばあちゃんの家に走ろう!ここから近かった筈だもん!」


そう決めた時には走り始めていた。

後ろも向かずに・・・逃げる事しか考えずに。


「お婆ちゃんミユキお婆ちゃん!助けてっ、助けてよぉ!」


恐怖に涙が零れ出る。

後ろから追いかけてくるような錯覚に、コハルは必死に走った。


「こんなの嫌だよぉ!こんなの夢だって言ってよぉ!」


夕闇迫る紅魔ヶこうまがときにコハルの涙が舞う。

知ってしまった、観てしまったと後悔して。


闇と闘う者が存在している事に、気が付いてしまったと・・・


闇は振り払われる。

その一部始終を見た・・・観てしまったコハル。


しかもマリアに見つかってしまった?!

逃げるコハルは祖母を頼る。


次回 蒼き光の子 Act4

君の観た少女と闇の闘いは本当の事なのか?夢ではないのか?


ミハル「知ってしまった、観てしまった。そして、気付かれてしまった・・・魔砲の少女に」

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