茉莉花の挑戦
私、南沢茉莉花は悩んでいます。
その原因はこの男、皐月蒼です。
この男、私がパーティーメンバーに誘わせようとしているのに、全く成功しないのです。
それは昼休みに一緒にご飯を食べた翌週のことでした。
先週はもしかしたら蒼くんから誘ってくれるのかな…っと期待してたのですがそんなことはありませんでした。
悲しいです。
そして、自分から誘わせるように誘導する作戦に出たのです。
4月16日
蒼くんはいつもチャイム同時に教室に来ていたけど、もしかしたら早く来るかもしれないと思って早く来てしまったのです。
けど、そんなことはあるはずがありません。
さすがに一週間見てれば分かります。
「あっ、茉莉花っちだー。おはよー。」
手を振って話しかけてきたのは、私の前の席に座っている女の子です。
席が近いこともあって毎日一緒に昼ごはんを食べる仲になっています。(蒼くんと食べた日以外)
高校で一番最初にできた大切な友達です。
名前は、朝比奈麻紗美です。
いつも元気があって、周りを明るくさせる人です。
見た目は可愛くて、スタイルもよくて羨ましいなー。
胸なんか私よりも一回りは大きいし。
私小さくは無いんだけどなー…。
「おはよー。麻紗美。」
私は自分の席に座ると、麻紗美は椅子を180°回転させて私と体を向かい合わせた。
「茉莉花っち今日学校来るの早いね。この時間帯に来てるのいつも私しかいないのに。」
今の時間は7時半。
授業が始まるのは8時半からなので一時間も早く教室に来ています。
「麻紗美はいつもこの時間帯なの?」
麻紗美は首を横にふる。
「今日はたまたまなんだけどね。家庭事情っていうやつでね…。」
どうやら家でいろいろあったらしい。
「よかったら相談乗るけど。」
「いいよ。ぜんぜん。別に大したことないしね。ところでまりかっちはなんで早く来たの?今言ってた感じだといつも早く来てるわけではないよね。」
ここで私は気づいてしまったのです。
「なんて言えばいいのだろう。」っと…。
「蒼くんと話したかったから来た」って言うと、「皐月っていつも来るの遅くね?」ってなってしまう。
そしたら、蒼くんに話すのを待ちきれなくて来てしまったと思われるよー…。
そんなの恥ずかしいよー…。
頭をフル回転して考えていると
「どうせ皐月っちでしょ?」
「えっ……。」
図星だっため思わず驚きの声を出してしまった。
どう言い訳しようかな…。
「茉莉花っちー。この際言っておくけど、もうバレバレだよー。先週ずっと皐月っちに話しかけようとしてたしねー。皐月に気があるのー?」
「嘘っ。そんなに蒼くんのこと見てた?」
「無意識とはやるねー。気がある証拠だよ。顔赤くなってるよー。」
麻紗美は大声で笑う。
私は恥ずかしくなって顔を合わせられなくなった。
私は頑張って声を出した。
「別に気があるとかそんなんじゃないのっ!。ただ、話したいことがあったけど、話しかけれなかったっていうだけなのっ!」
本当は話しかけられるのを待っていたのだが、それをいうともっと恥ずかしいため、嘘を言った。
「わかったわかった。けど皐月っちに話しかけようとはしたんだねー。」
「もぅ…。」
麻紗美はクスクスと笑う。
「手伝ってあげよっか?『皐月っち』に話しかけること。」
「ほっといてっ。自分で何とかするから!皐月だけ強調していわないでねっ!」
「はいはーい。」
話している間に教室にクラスメイトが入って来た。
麻紗美は椅子をもとに戻してした。
そして私は、どうやって誘わせるのか作戦を練り始めた。
今日は蒼くんが来たのはチャイムと同時じゃなくて一分早かった。
麻紗美が私たちの回りの席の人たちを麻紗美自身のグループに誘って、回りに人をいなくさせてくれた。
麻紗美の方を見て目線が会うと親指を突き立てて微笑んだ。
私は麻紗美の気持ちに答えようと決意しました。
私は蒼くんが教室に早く来た一分を見逃さないのです。
「おはよう。蒼くん。」
「あぁ。おはよう。茉莉花。」
そう言って蒼くんは私の右の席に座るのです。
蒼くんは時計を見て自分にしか聞こえない声で言いました。
「一分早かったか。」
やはり、チャイムと同時に来ようとしています。
そんなことは無視して、すぐに私は自分の椅子と机を蒼くんの席に少し近づけるのです。
そして、身を屈めて上目遣い戦法を使うのです。
回りに私たちの声が聞こえる人はいない。
これで異世界のことを聞かれる心配はない。
これで準備は整った!
けど、蒼くんを見ると体が少し引きぎみになっているのです。
近づき過ぎたのかな?
「蒼くんはパーティーメンバーどうするつもりなの?」
よし、言えたぞ私!
これで「そうだったなー。茉莉花がいいのなら一緒に組まない?」って照れ臭そうに言うに決まっているのです。
そうすれば私も「しょうがないなー。一緒に組んでもいいよ♡」って言えるのです。
そして、期待の眼差しを蒼くんに向けるのです。
少し悩んだ顔をしているのです。
さあ言うんだ。今すぐ。ここで。答えを出すんだー!
「そうだなー。適当に組むとするよ。そこまで難しい課題じゃないし。」
「………。」
「茉莉花さーん?」
ふと意識が戻る。
こいつ、何て言った?
適当って何?適当って?
なんで素直に言えないのよ!
絶対悩んでたとき私と組もうか考えてたでしょ。
考えてもいなかったら絶対許さない!
あーもう。なんなのこいつ。
「なんなの?」
飽きれ半分、怒り半分の気持ちで言った。
「俺、何かしましたか?」
「ふんっ。知らないっ。」
私は、机と椅子を元の位置に戻すのです。
そして、左側を向いて、外の景色を見ながら思うのです。
「むかつく!」
その後、私は麻紗美に「ごめん」と謝るのであった。
麻紗美は「話しかけれたのになんで謝るの?」っと不思議そうにしていた。