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六話

 失敗を言い訳して。

 間違いを誤魔化して。

 悪いところを、直そうともしませんでした。


 そんな僕がどれほど成長できましょうか。

 できるはずがありません。


 いつも人の顔色ばかりを窺って、自分に甘えて、自分の鍛錬を疎かにしているのに。

 ただでさえ、僕は学ぶことが遅いというのに。

 当時、僕は自分の遅さが、病気とさえ疑いました。


 働くようになってから、いえ、あるいはもう学生のいつからか察していたのかもしていませんが、僕は、一つのことに時間をかけすぎるようなのです。

 要領よくやりなさい、とはよく言われていました。

 もっと考えてやりなさい、とはよく言われていました。

 だから、考えて、何度もやり直してようやくできるようになっていました。みんな、こんなものなのだろうと思っていました。

 けれど、ふと顔を上げて見たら、みんなの背中はさらに先を行っていたのです。


 当時の僕は疑問に思いながらも、彼らを追いかけていくのです。このときに、気づくべきでした。僕という人間は、他の人間より、一歩が小さく、また踏み出す足の速度も遅いのを。


 幼い僕でしたら、その純真さで、きっと今の僕よりはやり方を模索していたはずです。

 今気づいたら、今変えればいい。

 ただそれだけのことなのですが、積み上げてきた甘えが、また誰かに助けを請うのです。

 結局、変われずに引きずるのです。


 遅い。

 遅い。

 遅い。


 僕は一を学び終えたとき、すでにみんなは五を終えたところでした。

 僕が十を学んでいるとき、彼らは僕の理解を超えたところを歩いていました。


 誰が悪いのでしょうか。

 誰が原因なのでしょうか。

 僕という身体が、すべての原因なのでしょうか。


 考えて、悩んで。

 結局また甘えているのを自覚することに戻るのです。

 本当に愚かな生き物に成り果ててしまいました。


 自己の改善もせず。

 自己の反省もせず。

 ただ後悔して。

 ただ助けを請うて。

 何もせず、無力に泣くのです。


 これを愚かと言わずして、いったい何と表せばいいのでしょうか。


 僕は生きています。

 もはやそれだけです。


 楽しんでもいません。

 ただ、苦しいことから逃げた結果、残ったものにすがりついているだけなのです。


 決して、楽しくなんて、ありません。


 笑っている顔がいつしか仮面のようで、剥ぎ取れないか試してみたことさえあります。

 こんなところに立っている僕が場違いのようで、まるで世界が別の何かに見えていたことさえあります。


 僕は、いったい何なのでしょう。

 生まれてきた意味を問うているわけではありません。

 自分の形が、わからなくなってしまっていました。

続きます。

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