四話
バイトを始める一年前。
僕は外で散歩するようになってました。時々です。自分がニートだと自覚していたので、顔を上げて歩けませんでした。
久しぶりに友達から連絡が来ました。
今何をしているのか。どんなことをしているのか。
僕はどう答えたらいいのかわかりませんでした。
同じ趣味を持つ同志とも呼べる人でしたが、僕より数段頭がよく、さらに人としても先を行く人でした。僕が今の現状をどんなに取り繕ったところで、彼には到底及ばず、ゴミ同然だと笑われても仕方のないほど、落ちぶれたのを、僕はわかっていました。
彼は話してくれます。
どんな企画をしていて。
どんなプロジェクトに関わっているのか。
僕は、ずっと凄いしか言えませんでした。心からの言葉でした。
友人との電話は、三十分くらいで終わりました。
しばらく受話器を握りしめて、僕は立ち尽くしてました。
いっそ、蔑んでくれさえしてくれれば、僕がどんなに救われたことか。
そんな自分こそが許せなくて、泣きながら部屋に戻りました。
どこかで、近所で同じ小学校の女の子が結婚したらしいです。
小学校の時、仲の良かった友達も所帯をもったそうです。
同窓会も毎年あっていたそうです。
これらは、ぜんぶ、友人から聞かされたことです。
当の友人は、故郷から離れていました。なので、同窓会は不参加。かつてのクラスメイトの結婚も、あまり興味もなさそうではありましたが、僕との会話のために話してくれたのだと思います。
僕は…………。
そうなんだ。
と、答えました。
どんな誘いもありませんでした。
誰が結婚したかなんて、初めて聞きました。
彼女とは同じ地区住んでいるのに、何も聞かされていませんでした。母親は気を使って、教えてくれなかっただけでしょう。
そうか、今は、もう、みんな、そんなことをやっているのか。
まるで同じ世界の住人とは思えません。
ずきり、と胸が痛みました。
しかし、どこか他人事でした。
本心はどうでもよかったのかもしれません。
だけど、僕はやはり泣いていました。
今日も、布団の中で、身体を丸めて泣きました。
ただただ、今も、過去も、哀しくて、哀しかったのです。
続きます。




