最終話
結局の話になりますが、買ってきた縄は使いませんでした。
カッターも使いませんでした。痛いのは、嫌です。
そんな勇気すらないのはわかっていました。
何をするにしても、僕は本当に弱いのです。
また、自分に負けて、現実で立ち尽くしています。
疲れて、僕は、いつもの場所に帰りました。
僕の部屋。
僕の居場所。
僕の理想の箱。
僕の夢の模造。
せっせと、丹精込めて、一生懸命に作り上げたのは。
くだらないガラクタでした。
このガラクタの中で、僕は身体を丸めます。
もはや、それしかできることはなくなっていました。
ここは僕だけの世界。
世界を知らず、生き方もわからないまま育ってしまった僕の、最後の居場所。
それは―――。
僕の死に場所。
理想だと幻想していた、最終地点。
一生涯で造り立てた、墓標。
僕だけのための……。
――――僕の、棺桶。
ああ。僕は、ここで、死ぬのか、な……。
いかがでしたでしょうか。
夢を、夢見てばかりいた、少年のままの幻想から抜け出すことを恐れた、男の話でした。
彼のこれからは、読者の想像に任せます。
取るに足らない単純で、実にくだらない物語になるかもしれませんね。実際、私は、この先を、書く必要がないと思えるほどでした。
物語すらならない、飾り物にもならないでしょう。
結局のところの話になりますが。
彼は、最後まで自分の理想を、身を削ってまで追い求めるようなことすらしませんでした。
臆病が、何も悪いことではありません。
彼の悪いところは、有りもしない永遠を求めて、何もしなかったところです。
理想を持っていいです。
夢を追い続けてよかったのです。
他人と比べて遅くても。
誰かと比べて、みすぼらしくても。
自分の足で歩いて行けばよかったのです。
そんなことすらしなかったのだから、彼の顛末は、相応といえるものでしょう。
そんな彼に訪れるのは、たった一人の、死に場所でした。
皆さんはどうでしょうか。
生きていますか。
笑っていますか。
自分の理想を持っていますか。
そこに価値を見出せていますか。
理想へ、歩けていますか。
彼は、最後まで、歩くことはなかったのです。
現実でも。
理想でも。
最後まで、歩けませんでした。
結局の話にまりますが。
現実を恐れ、理想にすらも邁進しなかった彼は、自分だけの幸福を夢見て、終わるのです。
夢を見たのならば、そこへ歩けば、それだけでよかったのですが。
それができないからこそ、彼なのでしょう。
生きるというのは、とても、難しいですね。




