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テンプレ異世界環境

 

 家の問題は新たな権利によるリベート獲得の結果で解決した。


 トイレが12パーセントに増額になったのと、魔導バイクが15パーセントの報酬になったぐらいか。

 1台ごとの収益なので、これもかなりの儲けになるだろう。

 ボッチ気質じゃなかったら、スラムの連中を雇っての独自生産も可能だっただけに、ちょっと残念な気持ちもある。

 そのスラムの連中は今では、広場でのたこ焼き……オクトン焼きとしての売り子の仕事を頑張っている。

 皿は調子が悪いので、串にいくつか刺しての売りになったらしい。


 物珍しさに食べた者は、オクトンの意外な美味さに驚いたとか。


 今では冒険者とかにも受けているようで、串5本セットなんてのもやっているらしい。

 紙が高いからと、スバロ菜に包んで出すらしく、使い捨てにしては安価だと、かつて食っていた野菜の扱いがちょっと酷い。

 まあそれだけ嫌だったんだなと分かるけど、それも食えよ冒険者。


 MOTTAINAI


 ソースは串肉に付ける漬け汁を工夫して使っているらしく、だからオレが作ったのよりは少し、肉の旨味が足りない。

 そういう微妙な違いは分からないのか、同じに作れたと言っていた。

 やはり旨味に関しては日本人の舌とは違うのかも知れない。


 さて、今度はお好み焼きにするか。


 ◇


 この町で一番安い肉、それは羊の肉だ。


 毛を取るのが目的の羊なので、年寄りになったら屠殺するんだけど、それがまた不味いらしいな。

 そのまま焼いたんじゃとても食えたものじゃないらしく、だからスラムの連中も味の無いオクトンのほうがましだと、羊の肉には手を出さないという、そんな猫またぎな肉。

 普通は塩漬けにして保存食に使うらしいが、生肉も一応は売っている。


 今回はそれに目を付けた。


 ワインに漬けたらましになるんじゃないかと思ったんだ。

 なのでワインをツボで買い、羊の肉も買って漬け込んだ。

 ツボに半分のワインに羊の肉で満杯になった、ワイン漬け羊の肉。

 これから数ヶ月寝かせる予定だけど、腐ったらどうしよう。


 うろ覚えだから成功率は不明瞭でござる。


 後はワインだけど、蒸留してブランデーにしてみようとも思った。

 技術は決して太古じゃないのに、ポットスチルすらも無いのかよ。

 もしかしたら他の国にはあるのかも知れないが、今この町に無いのなら作ろうじゃないか。


 実は魔法だけど、既に生活魔法は使えるんだ。

 種火と灯りとそよ風と穴あけの4種類。


 種火はそのまま着火が目的。

 灯りも夜の闇を照らすのが目的。

 そよ風は夏の暑い盛りの気休めに。

 穴あけは野営でのゴミ捨てに使うらしい。


 それでもイメージなので、カスタマイズは効くようで、オレの種火は青白い炎だ。

 つまりはガラスも溶かせる高温なのだ。

 確かに魔力は余計に食うけど、ガラス加工には高温の炎がどうしても必要になる。

 ガラスパイプは回復薬の容器にする過程で作られるらしく、だからそこまで高くない。

 容器にする前のガラスパイプを入手して、ポットスチルを作ってみようと言うのが今回のお仕事だ。


 幸いにも現物を見た事がある。


 それもガラス製の現物を知っているので、それとそっくりに作れば良いだけだ。

 かつて北海道旅行に行った時、ある街でお試しガラス細工をやった事がある。

 まあそれぐらいの力量しかないが、材料はたくさんあるんだし、試行錯誤をしてみますかね。


 ◇


 どうしてこうなった。


 ブランデーのつもりが濃縮アルコール溶液になったんだけど、何が悪かったのかな。

 やはりエールを使ったのが拙かったのか。

 いやね、ワインは漬け込んだから試験中に品切れになってさ、仕方が無いからエールで試していたんだ。

 そうしたら何とかポットスチルは完成したんだけど、何度か蒸留しているうちに透明度の高い、やたら強い液体になったんだ。


 これってエチルアルコールだよね。


 まあ、何かに使えるだろうと回復薬の容器に入れて、今は冷暗所に置いてます。

 明日はワインを買って、改めてブランデーに挑戦してみるとして、今日のところはこれで終わりにするか。


 夕食はまたしても宿で食い、また工房に戻って魔導バイクにまたがる。


『ポピー』


 ううむ、良い音だ。


 これにはかなり拘って、かつて聞いたあの音そっくりになるまで吟味したんだ。


 何処で聞いたって? 山口県だ。


 シュッシュシュッシュと魔導バイクは快適に街を走る。

 燃料は魔石なので、時々交換しないといけないけど、楽しいのが一番さ。


 前方に人を発見……ポピー……避けたな。


 いや、悪いな。


 ある程度は避けるんだけど、冒険者とか道一杯に広がって歩いてたりするから、ああやって警笛が必要になる。

 それでもたまに逆ギレされたりもするんだけど、こちとら無力なんだから刃物は止めてくれよな。


 そういや、武器が何か欲しいな。


 魔導バイクに武器搭載すれば、町から出ても運用できると思うんだ。

 もちろん、本人も武装の必要があるけど、前方の敵ぐらいはバイクの武装で倒したい。

 そうしたらいちいち降りなくても走り去れるからさ。


 魔杖搭載、魔導バイク。


 単一の魔法しか使えないけど、それなりに威力のある魔法が使える魔杖。

 これはかなり高額だけど、今のオレなら買える品だ。

 そいつをバイクの前に設置して、サーボみたいな細工をして、指先レバーで左右に少しずつ方向が変えられるようにする工夫。

 指先で方向を決定して、反対の指先で発動する。


 コンセプトは決まったので、早速作成開始だ。


 ◇


 調子に乗りました。

 左右と上に動きます。


 鳥の魔物にも対応する、攻撃魔法付き魔導バイクの完成です。

 徹夜で作業していたので、かなり眠い中、顔を洗って宿に朝食を食いにいく。

 戻ったら眠い目をこすりながら運転し、家の車庫にバイクを入れてしっかりと戸締り。


 昼夜逆転とか何年振りかな。


 実はこの家だけど、オレの寝室は2階なのだ。

 1階はそのままケインの住まいになっていて、領主様からの拝領だから住まないといけないから仕方なくとケインに伝え、2階で寝るからそのまま使えと言ったんだ。

 ケインもそう言う事なら出ようかと言ったけど、構わないからとそのまま使わせている。


 だって快適そうなんだもん。


 今では若い連中のまとめ役になっているんだし、それぐらいの役得はあっても構わないさ。

 だから家に戻る時には小銭の袋を持ち帰り、そのままケインに渡すようになっている。

 毎回は悪いと言うんだけど、無くなったら終わりだからと毎回渡している。

 それでも仕事が出来た今なら、そろそろ止めても構わないかも知れないな。


 ちなみに大人の連中は、冒険者の手伝いの仕事があるとか。


 早い話が獲物の解体とか、荷物持ちとかの簡単な仕事のようで、力の強い人はそのまま冒険者に連れられて仮のメンバーになったりもしているとか。

 そう言う事のやれない子供達が支援の対象だったんだけど、それらも今ではオクトン焼きの売り子になっているんだし、支援もそろそろ終わりかと思う次第だ。


 ああ、宿のベッドが懐かしい。


 ◇


 宿に赴くと見かねたのか、契約更改をしてくれた。


 領主拝領で寝れなくなった宿だけど、財産のせいで止められない事情を知られていて、そういう事ならと、物置部屋みたいなところに貴重品ボックスが置かれた、いわゆる倉庫に使っていた部屋に変えたらどうかと勧められたんだ。

 その代わり料金はかなり下げるから、荷物置きに使うならそうしなさいと言われ、晴れてその契約になった。


 気になるお値段は?


 1ヶ月契約で1月銀貨5枚ってかなりリーズナブルだね。

 円換算だとざっと5万ってところだから。

 普通の部屋だと1日銀貨1枚なので、これはかなりお得と言える。

 その代わり、宿の道具なんかが中にあり、その中に貴重品ボックスが置かれている。

 実はこのボックスは予備らしく、何かの要因で壊れた時の保険に買ってあるんだとか。


 高いはずなのに、宿って儲かるのかな。


 ◇


 工房のトイレの横に風呂を作りました。


 拘りのトイレのせいでお湯やら水やらの供給があり、時々としか使わないのにお尻洗いの温水がもったいないと思い、何かに流用出来ないかと思っているうちに、それなら風呂にしちまえと、そのまま隣に作る運びとなった訳で。


 作業員に分岐してもらいました。


 幸いにも石鹸の在庫はまだたくさんあるので、そのままここで使う事にした。

 かつて石鹸の販売員だったんだし、自分で使っても構わないよな。

 浴槽は特殊陶器作成のついでに、発注して拵えてもらいました。

 彼はその手の作成に長けた方らしく、領主様の屋敷の陶器製の道具もあれこれと作っているらしい。

 現地で作ると言われて不思議だったんだけど、魔法のある世界ならではの話だった。


 つまりだね、現地で形成して魔法で焼くんだね。


 熱が漏れない工夫の魔法とか、創意工夫が見て取れる。

 そうして一気に焼き上げて、上薬を塗ってまた焼いて。


 1日で完成したバスタブ。


 その慣れた手腕はさすがと思わせる腕前で、領主様御用達も分かるって話だけど、それだけにお高い作成料な訳で、代金はトイレに付けたのは内緒です。

 拘りのトイレなのでまだ作成中なので、色々な物の代金をそれに付けるんです。


 例えば魔導バイクとか。


 ◇


 旅ゆけば~カダセの町に~湯の香り~


 快適です。


 港町カダセでは港近くに簡易風呂があり、そこを皆が利用しているんだけど、はっきり言ってシャワールームな感じなのよね。

 しかも水が供給されているだけなので、冬は不人気なその施設。

 後は東門から北に少し歩いた場所に騎士団の詰め所があって、そこにも簡易風呂がある。


 有料だけど市民にも開放されていて、町の半数はそこを利用している。


 中央部には上流向けの風呂があり、市民も利用は出来るけどかなり高いんだ。

 オレも時々そこを使っていたけど、1回の入浴に銀貨1枚だからなぁ。

 中にはシャワーと小さなバスタブがいくつかあって、お湯は浄化魔導具を経て綺麗になっている。

 もちろん追い炊き魔導具も設置されていて、少し冷めたと思ったら追い炊きもやれる。

 特殊陶器もさすがに大浴場は無理なのと、お貴族様の場合は他の人と一緒に入るなど考えられないので、個室風の風呂が並んでいる今の方式は必須なのだとか。


 そんなホテルの風呂みたいな施設なのに、円換算1万は高いよな。


 確かにオレの工房の風呂もそんな大きさだけど、バスタブだけは領主様のと同サイズなのだ。

 それでも横がトイレなので、広義で言えばホテルの様式と似たようなものだ。


 香りも良いし泡立ちも良いし、後はサッパリするこの石鹸だけど、小さいぐらいでどうして売れなくなったんだろう。

 もしかしたらライバル会社が同じようなので大きいのを開発したのかな。

 お値段据え置きならお得だからと、契約を切られたのかも知れないな。


 でも聞いたところだと、あれは薄利多売になっていたはずで、大きくして値段据え置きは無理だと言っていたんだ。

 だから何かの原料のグレードを下げたか、何かをケチった可能性もある。

 でもそれで困るのは買った奴らなので、契約を変更した挙句に不評を食らったとしても、それは自業自得だと思うんだ。

 うちの契約を切ったあのホテルグループって、評判はどうだったんだろう。

 潰れてるといいなと、そんな負の心がざわめく。


 もう違う世界の話なのに、何時まで引きずってんだか。

 

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