表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/11

テンプレ異世界知識

 

 工房がやっと完成して、看板には凧のマークを入れた。


 そうして木材の木っ端を安く買い集め、凧を1つ作ってみる。

 トレードマークの凧なので、見本というか、装飾品の代わりにしようと思ったのだ。

 どのみち、飛ばすとヤバいらしいので、置いておくだけだけど。

 凧を作った後、残った木材で積み木なんかを作ってみたりしたんだけど。


 誰も来ないな。


 まあ、何を売っているって訳でもないから、客など来るはずも無いのだが。

 工房での日々も一段落し、世間の事を色々と学ぼうと、今日は図書館へやって来ました。

 不思議な事に、知らない文字なのに何故か読めるので、これもテンプレチートと思っています。

 そんな訳で、読めるに任せて図書館では、様々な情報を入手していたのですが、見つけました。


 魔法です。


 いやぁ、やっぱりあるんだな、そういうの。

 実にテンプレだけど、ここは覚える流れでしょ。

 そうするとやっぱりテンプレのままに、魔法はイメージってよくあるバターンだよな。


 それでも魔力探知と魔力操作は大事らしく、まずはそれから始めようと思う。


 ◇


 他にも地理とか歴史とかも見ていくが、地理はでかい大陸に国がいくつかあるという、いかにもなパターンだった。

 この国は大陸の国の中でも比較的小さいながら、海に面しているので塩が特産品になっている。


 少し縦長な国土のせいで、海岸線が長いんだ。


 だから他の国には面積では負けていても、海岸線では負けていないと、そんな感じになっている。

 しかもその海岸線の所々に港がある他は、塩田がつらつらと並んでいるらしく、大々的に塩を生産している国なのだと分かる。

 塩作りは天日干しで作られているようで、かなり効率が悪そうだ。

 少し濃度が増したら雨でおじゃんになる事も多いらしく、施設の割りには生産量はそこまでの事も無い様子。


 これは改良の余地がありそうだ。


 となるとやっぱり笹に海水を流して乾燥させる手が使えそうだけど、ここで問題なのは海水を上に上げる方法だ。

 やぐらを組んで井戸みたいにして汲み上げるってのが一番思い付き易いんだけど、人力でやるのは大変だよな。


 実は井戸のポンプなんだけど、作り方は知らないものの、使用方法だけは知っているんだ。

 呼び水を最初に入れて、ガポガポやっているとそのうち水が出るんだよな。

 あれって入れた水をパッキン代わりにして、地下からの水を吸い上げるんだと思うんだ。

 何か法則が何かあったと思うけど、細い管にする事で一度の動作でたくさん吸い上げて、下ろす動作で戻る水の量を少なくする工夫がどうのこうので、だから呼び水を入れるところは広い代わりに、水管は細いのが仕様だったはずだ。


 遥か昔に習ったはずの法則だけど、そんなの覚えてないぞ。


 それはともかく、そのポンプを使えば海水を地上高く上げられるから、それで吸い上げて上から撒けばやれそうだ。

 そうして笹みたいな物を据えてそれに当てて風を当てれば、日光と風で効率が高くなる。


 とまあ、こういうのも思い付くんだけど、これも権力と資金の構図だな。

 テンプレで言うところの領主の三男とかって立ち位置じゃないと、おいそれとはやれないだろう。


 そりゃ今から頑張ってそんな地位を目指すのもアリだけど、オレはそこまでの気力はない。

 工房は据えたもののスローライフが望みなので、何かしら思い付いてまったりと工作するぐらいか。


 まあ、魔力を感じながら、今日ものんびりと過ごそうか。


 ◇


 朝食の後、恒例の散歩はスラム街。


 宿の貴重品ボックスには小銀貨が50枚入った小さな袋がいくつか入れてあり、散歩のたびに持っていくようにしているんだ。


 そうして行けば必ずあいつが対応する。

 もしかしたら、そういう役目なのかも知れないな。


「ケイン、これ、配っといて」

「いつもありがとよ」


 少年達のグループは総勢20人ぐらいなので、1人2枚と少しになる。

 それで皆はメシを食い、余ったのはケインが管理して生活用品なんかにしているらしい。

 さすがに全員は無理なので、手の届く範囲の援助をしている。


 本当は領主がすべき事とは思うが、棒を1本立てて終わりな領主なので、期待は出来そうに無い。

 税金を取らないだけありがたく思えの方針ならば、そこから先は有志でやればいいさ。

 大体さ、高い石鹸を買うぐらいなら、少しぐらい援助しても良いとは思うんだけど、そうすると市民が不満を持つのかも知れないな。


 非課税の癖にとか、ありそうな話だ。


 以前の金とは別に領主に直接500個売れて、単価大銀貨2枚で500個なので1000枚分の大金貨1枚になった。

 次からも500個ずつ持って来るように言われ、そのたびに大金貨を1枚ずつくれるらしい。

 それでも月に1度までにしてくれと言われているので、来月までお預けになる。


 大金貨1枚はそのまま貴重品ボックス行きとなり、ギルドに少し売って小銭を確保する。

 とは言うものの、大銀貨1枚に据え置きにする代わり、小銀貨50枚入りの小袋での取引にしてもらっている。

 つまりは両替手数料込みで、小袋の代金と分ける手間なんかも込みでの価格だ。


 石鹸1個から袋が2つなので、100個売れば200袋になる。

 毎月30袋を最大消費として、ギルドには50個ずつ売っている。

 そうして残りは貴重品ボックス行きになるので、もうかなり貯まっている。


 食事はカードでするので、金を持たずに動けるのがいい。


 そういえば石鹸は他の町にも運ばれているらしく、王都ではかなりの人気になっているとか。

 もしかしたらもっと高く売られている可能性もある訳で、その気があるなら王都に移転する方法もある。

 だけどもう工房も据えた事だし、このままでも構わないとも思っている。


 それにしても、袋に50枚は多過ぎたかなぁ。


 ◇


 今日も今日とてスラムに配達。


 小袋の中の小銀貨はちゃんと皆に分配されているんだろうな。

 そこいらの子供に聞くと、食べ物の配給になっているようで、現金分配じゃないみたいだ。

 まあ、ケインにも欲があるだろうし、将来の目標もあるだろう。

 だから余分目に確保するのも才覚だろうし、独り占めしなければ構わないさ。


「なぁなぁ、あんちゃんの家って盾の店だろ」

「あれは凧だ」

「タコって何? 」


 ううむ、やはり知らないか。


「あのな、糸を付けると空を飛ぶ玩具だ」

「凄い」

「だけど山のほうに魔物が居るからさ、飛ばすと勘違いされて騒ぎになるからやれないんだ」

「見てみたかった」

「そうだな。そのうち許可を取って飛ばしてみるか」

「見たい、見たい」

「ああ、その時は教えてやるさ」

「やったー」


 これは本当に許可をもらわないといけなさそうだけど、そうなると凧も商品になる可能性もある訳で、在庫を言われても1枚しかない関係上、それを売れと言われるか。


 実はさ、空を飛ぶ魔物対策に凧って考えていたんだ。


 つまりさ、空を飛ぶ魔物の討伐は中々大変だろ。

 そこで凧を飛ばしておびき寄せるんだ。

 段々と糸をたぐれば地上に下りて来るんだし、そうして注意を凧に向けさせたまま、魔法か何かで退治すると。


 やれそうだろ。


 馬か何かで引いてやれば、そのまま誘導もやれそうだし、どのみち凧の材料費なんかは知れているから、壊されても問題無い。

 後は何度かやって凧に慣れた後は、凧に魔法陣か何かで接触発動みたいなのがやれたら武器になるよな。


 凧を襲って爆発とかさ。


 魔法はイメージなら何だってやれそうでもある。

 まあ、それはともかく、まずは凧の大量生産だな。


 ◇


 木っ端を仕入れて凧の材料にしていく。


 細いひごなんかは無いみたいで、手作りしか無いのは残念だけど、そこはスラムにお任せだ。

 木っ端からひごをたくさん作ってもらい、それを組み合わせて凧にする。

 紙を貼りたいが紙が高いからと、何かの代用を考える。


 スライムの皮が薄くて丈夫らしい。


 まさに凧の為の素材と言うべきか、本当に薄いんだ。

 まるでビニールのような皮を使い、ニカワで貼り付けていく。


 糸は丈夫な代物を購入。


 スライムの皮もあんまり安くは無いので、糸と合わせてちょっと消費がでかい。

 それでも冒険者の備品としたら安価なほうだろうけど。

 月初めにまたぞろ石鹸を売りに行き、その時に凧の許可をもらう。


「空を飛ばせる玩具とな」

「もちろん、空を飛ぶ魔物の誘導にも使えますよ」

「ほお、それは興味深い。ふむ、試しに明日、飛ばせてみよ」

「許可をいただけるので? 」

「連日は困るが、明日1度ならば構わぬ」

「分かりました。それでは明日の朝に南門の外で飛ばします」

「あい分かった」


 恒例の大金貨を1枚受け取り、その足でスラムに向かう。

 そうして明日の朝、南門の外で飛ばす事になったと告げ、皆を誘って見に行くと答えた。


 ◇


 念の為に冒険者ギルドにも報告し、興味を持った冒険者も集う事になる。


 それと言うのも、空を飛ぶ魔物にちょっかいを出して、誘導する事も可能じゃないかって話をしたからで、魔法や弓が届かない高さじゃ何も出来ないので、誘導して下がってくれれば何とかなるとかで、それに使えればとか、そういう目論みもあるようだ。

 もちろん、うっかり魔物が誘導されたら、退治してもらうのは言うまでもないが。

 海端なので朝と夕方には風が吹くのはこちらも同じようで、海風に乗って凧は速やかに昇っていく。


「おおお、飛んだ飛んだ」

「すげぇ、飛んでるよ」


 本当に無かったんだな、凧って代物は。

 海からの風なので自然と凧は山のほうに運ばれていき、釣られたのか小さな黒い点が……


「あれ、魔物じゃない? 」

「ああ、そうかもな。よし、誘導してくれ」


 凧に向かって一直線に移動している黒い点。

 壊されたら嫌なので糸をひたすら巻き戻していけば、それに釣られたのかこちらにやって来る。


「ほおお、確かに誘導されているな」


 領主様も気になった様子。


「うむ、これなれば町から離れずに狩りがやれよう」


 もしかして、ご購入の流れになるのかな。


「来た来た、もうチョイ、もうチョイ」

「構えぇぇぇぇ」


 弓隊と魔法使いが身構えて、降りて来た凧に釣られた魔物は憐れ……


「撃てぇぇぇぇ」


 ハリネズミになった挙句、燃やされたり水をかけられたりと散々でした。


「今回はたまたま近くに居たようで、毎回は無理かと」

「うむうむ、分かっておる。それにしても、あっさりと誘導されたものよ」

「使えそうですかね」

「充分じゃ」


 お気に召したようで、後日売りに来いと言われた。

 スラムの連中も、町の近くでの狩りに興奮したようで、面白かった、びっくりしたと、様々な感想を述べた。


 ちなみに魔物はボロボロになったものの、多少なりとも素材が取れるらしく、くれると言ったけど冒険者の方々の酒代にカンパしておきました。

 どうやら凧を名物にしたいという希望もあるようで、商人の人達からの視線が熱い。


 狩りにも使える玩具ってか。


「他にも使えそうだな」

「そうですね、糸の途中に糸を付けた肉でも垂らせば、陸上の群れの誘導もやれそうですね」

「ああそうか、確かにやれそうだな。よし、売りに出したら言ってくれ、買うからよ」

「そういや、故郷では凧を使った魚釣りなんかもあったようです」

「ほお、そりゃ面白いな。海は魔物が居るからおいそれと釣り船も出せないが、凧で釣れるならありがたいぞ」

「糸に魚が引っかかったら凧から外れる仕組みが必要そうですね」

「そうだな、使い捨てはさすがにもったいないか」


 話しているうちに、アイデアはいくつか出てきたので、宣伝の意味で話しておきました。


 だけど本当にやれるかなんて、オレに分かるかよ。


 試行錯誤は消費者にお任せと、手持ちの材料でスライム凧を作りまくろうと、帰りにまたスライムの皮の買占めをする。


 ああ、こりゃ値上がりしそうだな。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ