ANGEL -imitation
その誠実さを踏み躙られたものを、
父は赦された。
人の誠実さを踏み躙っておいて、
君は赦せと嘆くのか。
その平穏はあくまで、君が望んだだけだった。君はいつからか、望んだのだから叶えてくれて当然であるかのような顔をし始めた。
不完全な僕は、無償の愛を注ぐほどの神聖さまでは持ち合わせていなかった。しかしながら我が身を汚すことは好まなかったし、払える犠牲は払ってきたのだった。
ある冬の日に僕を襲った病は、この痩せた土地に根を張り、僕のリソースを消費し続けていた。それは今も変わらず、もはや彼を枯らせるために薬を撒き、余計に土地を劣化させることでしか、対処しきれないのだ。
今思えば、我が身の潔白を保とうとした僕の過ちだったのかも知れない。
既に薬漬けとなり、「頑張れ」という言葉ですら受け付けられないほどに自然さを失くしていた僕が今更汚れたくないなどとのたまったのが、間違っていたのかもしれない。
そしてこのように考え、すべての悪行を自分のせいにしようという精神活動さえ病のせいであるとするならば、三次元で説明がつかないほどに歪な泥のごとき僕に人を愛するなど、不明瞭なことこの上ないのかもしれない。
だから僕は、自然さと慈悲とを捨てなければならなくなったのだ。
僕は天使であろうとしたのだ。
澱んだ欲求と欺瞞の重油に塗れた君の手を振りほどき、それをその眼前に突きつけた。その意味を理解するより先にに僕の病を鏡写しにして見せつけた君を、「だから何だ」と嘲笑した。君の揺るぎないさまざまの欲は何ひとつとして歪んではいなかったが、僕が歪んでいたがために君とは相容れないとして一方的に追放した。
後ろ手にナイフを携え、不純な動機で祈りを捧げ続ける君の罪は僕の目にすべてはっきりとしていた。
君の目に映る僕の罪はといえば、君の願いを聞き入れながら叶えられなかったことくらいだ。
天使を汚さんとする者に絶望を。
祈るだけで全て叶うと都合のいい解釈ばかりする者に深淵を。
空の眼を持つ者に祝福を。
天の国に幸福を。
なにもかもすべてさよならだ。