現状:進化と現状把握でした!
仕事が多くて、書くペースが落ちてしまいました。
次回も一週間以内に上げます。
不規則にその様相を変える。
そこには多元の世界が広がっていた
榊 武人の魂の回廊は今や一本の道が出来上がりつつある。不規則に変化する多様な道の中には力強く光る一本の道がしっかりと見て取れる。
意志の器に注ぎ込まれる膨大な情報の中から、数多の選定が行われる。
しかし、その中のどれも彼の能力には見合わない。
今の彼にはどの系譜も当て嵌らない。だからこそ、彼はオリジナルの系譜を築き上げる。どの枠組みにも当て嵌らない多元の世界の王へと至る階段を彼は一歩一歩踏みしめる。
“グリーンスライムの存在発展を確認。進化の系譜の選択を容認。”
榊 武人の器は、多元の中であってもその存在を無視し得ない程のモノ。
しかし、それはまた世界の困惑を招く災厄を撒く種でもあるということ。
この世界の開闢以来初めての存在。
スライムという枠組みに納まっているのは未だ彼の体の準備が出来上がっていないから・・・。
スライムは無限にして一。
一は無限への礎となる。されど、唯の者にはそれを増幅させることすら許さない絶対の存在。
前世から続く無限の因果の中、数多の英雄と魔王の中から選ばれた一ですら、況やその存在を万全にすることは致し得ない。
嘗て、到った者が世界に齎したものは破壊の連鎖。
その者が振りまく「混沌」は世界に蔓延り、その世界は永久に閉ざされることになった。
世界は憂う。彼は破壊の獣と化すのか、それともこの崩れかけた世界を取り戻す英雄となるのか・・・後者の確率は非常に低い。
されど、彼の器は確率に脅かされることなどない。
変動するはずのない確率を彼は変動させて見せたのだ。
まだ準備は整ってはいない。
彼に与えるのは赤の称号か?
“否:紫炎の称号をかの者に。”
いずれ訪れる災厄の中を彼は進んでいくのだ。
彼の知らない世界の一端を、ゆっくりと知っていくことになるだろう。
手遅れになるのか、抗い立ち向かうのか今は誰も知らない。
“扉への移行を確認。ポイントの振り分けを行って下さい。”
まだ覚醒しきっていない意識の中、声が頭の中に響き渡る。
ディーレの声じゃないのはわかりきっている。この声はナビちゃんだな。
うん。前のように取り乱したりはしないぞ。
何せ隣には水色の球体の中に、目を閉じ、眠っているであろうディーレがいるのだ。
ポイント50×10
グリーンスライム:スライム皇帝(LV20)
覇王LV3
HP:100(MAX110)
MP:100(MAX110)
STR:120(MAX130)
VIT:120(MAX130)
AGL:100(MAX110)
MGI:110(MAX120)
LUC:? → ?
※LUC割り振り不可
位階:C
覇王オーバーロードLV3:全能力+30
英雄:全能力+15
魔導を歩みし者:MP、MGI+60
余裕で極振りできるな。ナビちゃんに任せっきりだけど・・・まぁいいよね。
ナビちゃんお願いします。
“承諾”
残:505
HP:110
MP:110
STR:130
VIT:130
AGL:110
MGI:120
LUC:? → ?
位階:C
“ポイント極振り完了。残り505ポイント。振り分けれるものがありません。続いてディーレの振り分けを行ってください。”
上位精霊:ディーレ (LV?)
精霊力:80(MAX200)
精霊魔法:C (MAX:A)
召喚魔法:D (MAX:B)
位階:上位
“精霊・召喚魔法の異界上昇:E(20)、D(30)、C(50)、B(75)、A(100)のポイントが必要です。”
えぇと、つまり。精霊力に120、精霊魔法に175、召喚魔法に125で・・・合計420。極振り可能だな。
極振りで!!
“承諾”
残:85
精霊力:200
精霊魔法:A
召喚魔法:B
位階:最上位
“ポイント極振り完了。残り85ポイント。振り分けれるものがありません。また「ディーレ」が最上位に到達。これにより契約者に最上位精霊の加護が付与されます”
“称号を獲得。「最上位精霊之加護」、「■炎の■」、「聖水之絶技」”
“ネーム:スライム皇帝 → スライム神”
“称号設定を行ってください”
自分の名前の横に前より多い五つのスロットが現れる。それぞれに壱、弐、参、四、伍と表記されている。
結構称号を取得したし、考えながらやらなきゃダメだな。
一部見えない奴があるな。炎?
壱:「覇王」
弐:「聖水之絶技」
参:「最上位精霊之加護」
四:「魔導を歩みし者」
伍:「■炎の■」
これでいいかな?
ディーレと契約したことで、色々と称号を得ることに成功した。聖水之絶技とは恐らく水の魔法関係のものだろう。
よくわからない「■炎の■」はとりあえず入れておいた。
スライム神とはこれ如何に・・・
カッコ良いような、カッコ悪いような。ただ一言神々しさは微塵も感じないね。
今回の進化・・・発展による自分のステータスの変化は少ないものの、得る物は多かったと言える。
すると、水球の中で眠っているディーレが七色の光に包まれる。
彼女が纏う光は周囲に眩いばかりの閃光を発し、暗い周囲を明るく照らす。
光が収まり、目を開けると、そこには青銀色の髪を、背の高さは170cm位の美女。それも、とてつもなく美しい女性がそこにいた。
出るところは出ており締まるところは締まっている。
背中には六枚、三対の翅が見て取れる。美しく透き通る薄い青は、神秘的な様相を映し出す。
やがて、ディーレがうっすらと目を開け、こちらに視線を向ける。
彼女は顔に微笑みを浮かべ、その端正で美しい顔にほんのりと朱が射す。
やばい・・・。惚れてしまいそうだ。
元居た世界では決してお目にかかる事ができない女性が、自分の目の前にてこちらを凝視しているのだ。しかも、うっすらと朱色に顔を染めていることによって、その破壊力は抜群だ。
“承諾。反映致します。ディーレの称号は自動的に最適化されます。”
“称号付与:「誓約者之刻印」、「伝説之精霊」、「限界を超越せし者」を習得。”
ディーレさんも結構すごい物を手に入れたみたいだ。
“ユニークスキル:「精霊顕現」、精霊魔法:「水の心得」を習得しました。”
俺もユニークスキルの獲得が出来たようでなによりだ。
それにしてもまだわからない。自分がどれほど強いのか、それが分かりさえすれば自分の立ち位置がわかるんだけどなぁ。
この存在発展が終わったら、本格的に自分の力を研究していくとしよう。
“能力の反映を開始します。ステータスの急激な上昇に体に負荷が掛かります。ご注意下さい。”
よし来た!
もう覚悟は出来ている。
『ありがとう』
頬に当たる暖かい感触。それでいてしっとりとして、艶のある声が耳元で囁かれる。
「ミェミェ!?(ウエッ!?)」
“開始”
うん。自分の覚悟は全てが泡となったのだ。
DTのこの俺がそんな不意打ちに勝てるわけがないじゃないか。
そして激痛が体を襲い、目の前が暗くなる。
その時の嬉しそうにククッと頬を緩ませたディーレの横顔は忘れられそうもない。
イテテッ・・・してやられた。
前もそうだったが、これには慣れそうにない。
目を開けてみると、女の娘達が居た場所にいる。
とりあえずは。
「ミミミミ(ステータス)」
“承諾”
レッドスライム:スライム神(LV1)
称号
覇王LV3:全能力+30
聖水之絶技
最上位精霊之加護
魔導を歩みし者:MP、MGI+30
■炎の■
契約精霊
水の守護精霊:ディーレ
HP:110
MP:110
STR:130
VIT:130
AGL:110
MGI:120
LUC:? → ?
位階:C
LV上限:50
うむ。前の存在発展よりは二倍近く強くなってるな。
ディーレ・・・さんいますか?
『えぇ。いるわよ』
ディーレさんの声は前にも増して艶っぽさがある。
意識が途切れる直前に聞いた、脳を蕩けさせるような甘い声。
それが頭の中いっぱいに広がるのだ
『何故敬語なの?気持ちわるいわよ』
いやぁ、扉の中でのあの姿を見てからだと、妙に気張ってしまって、喋りにくいんですよ。
今まで見たこともないくらい綺麗だったから。
『そ、そう?まぁ最上位精霊になったわけだし、私の姿もそれに合ったモノに最適化されただけよ』
ディーレは恥ずかしそうな声を出しながらも嬉しそうだ。
自分の存在発展がディーレにも及んだのだが、ディーレの変わり様は激的だと言える。
自分の内に存在する確かな存在感と、溢れ出る精霊力がからだを満たす。
しかし、嫌悪感はなく、むしろ心地いいとさえ思えてしまう。
『まだ制御できないのよ。私の力が私の力でないみたいなの。それもこれも、全部あなたが私と・・・「誓約』を交わしたせいなのよ。』
ん?「誓約」?
『契約を超えし聖なる楔。可能性が与えし、精霊との結び。それが「誓約」。契約は契約者が念じ、精霊を呼び寄せ交わすもの。誓約は契約者が精霊に永遠を誓う行為なのよ』
どうやら俺は、知らず知らずの内にディーレに「誓約」とやらを立てていたらしい。
今考えてみれば契約をする前に確かに何かが発動した。
存在発展のせいで前後の記憶が少々曖昧なのだが、それだけは覚えている
何はともあれ、俺はディーレに操を立てた。ってことでいいのかな?
『簡単に言えばそうね。だけれど簡単にはできないわよ。誓約は私達に首輪を付けるってことでもある。それをすることは容易ではないわ。だって、自分の力量に会ってなかった場合、力を受け入れられず、精神が崩壊するもの。それをあなたは上位精霊の私に、半ば強制的に首輪をつけたのよ』
うえぇ、そんな危険な行為だったとは知らなかった。
ディーレさんはトロンとした声で惚気てくる。
『あなたが初めてよ。今まで私と誓約を交わそうとした人達は全て。私が上位精霊だと知ると、ある者は畏敬の念を込め、ある者は欲に溺れ、ある者は己に溺れる。あなたは有無を言わさず私の全てを盗ったのよ。私の出来うる限りの力をあなたに貸し与えるわ』
ディーレはすごいすごいとは思っていたが、この世界では圧倒的な存在なのだろう。
一種の神様の様な者なのか。
尚更この世界のことを知らなければいけない。
今の自分は無知すぎる。何が常識で何が非常識か、この世界での様々な物事の基準は何か、この世界は何で成り立っているのかを知る必要がある。
差し当たって今必要な情報は一つ。
「自分について」だ。
今の「自分」について思いつく限りの事を述べて行こう。
自分は
異世界に降り立った転生者である。
元は人だがモンスターになってしまい、現在スライムである。
二度存在発展している。
ユニークスキルやエクストラスキルを所持している。
最初は苦戦していた敵も今では余裕で駆逐できる。
最上級精霊と「誓約」を交わしている。
人との会話は出来ない。
こんな所だ。
次は上記に対する疑問点
転生者は他にもいるのか?
他の転生者がいると仮定し、モンスターになった者はいるのか?
この成長速度は普通なのか?
ユニークスキル、エクストラスキルの所有は普通なのか?
最上級精霊とは具体的にどういった位置づけなのか?
やはり自分は人類に対して忌むべき敵なのか?
うむ。さっぱりわからん。
そういえば、ディーレは俺のことをなんとも思わないのか?
『そうね。あなたは見た目と魂が釣り合ってない。でも、それだけよ。魔族に成り上がった魔物はこの世界のことを何も知らないなんて普通にある。魔族になったといっても、昔の本能に従って動く個体も多いわ。あなたはそれには当てはまらないわね。』
ディーレは淡々と俺の考察を述べる。
それとねとディーレが告げる
『どうも言えませんが、あなたは他の魔族と違う。そう思ったんです。』
ディーレが少し笑いながら言う。
俺と他との違いなんてあるのだろうか、中身は魔物ではないにしろ、人間だ。さっきのあの娘達とほぼ一緒の存在だろうに、なにが違うんだろうか?
やはり、俺はこの世界を理解出来ていない。
力も、知恵もない。現状、情報の把握ができていない時点で詰んでいる。
それを打破するために、この森の情報を集めながら、自分の情報を模索して行こう。
長らく駐在していた泉の辺から移動を開始する。
第一の目標は、「戦力」。故に、敵を探す。ウルフ、スライム辺りを二十匹近く狩ればいいだろう。
移動を開始して、数分。疑問に思ったことを口にする。
「魔物」と「魔族」の違いはなんなんだ?
『そうですわね。簡単に言えば、知恵ある者は魔族、無き者が魔物ですわね』
“補足:一部「神獣」、「魔王」などが存在する”
なるほど。確かに俺は「知恵ある魔物」、よって「魔族」だ。
一部例外に気になるものがある。「魔王」、「神獣」だ。
恐らく、知恵を持った化物なのだろう。
自分の様なスライムには程遠い。
と思っていたのだが、今の俺は分からないのだ。
ウルフを瞬殺し、最上位の精霊と契約を交わした自分。
強いなんて思わない。何度も死にかけたのだ・・・。
チートはないわ、スライムだわ。
最悪な道のりだったのだ。
二度と警戒は怠らない様にしよう。
すると、現れた。
目の前に四体のウルフ。
体から六本の触手を出現させ、硬質な剣へと変化させる。
その触手はウルフ達を切り刻まんと、圧倒的なスピードで眼前に迫る。
ウルフは死んだことすら認識できないだろう速度で、触手は体を貫かんとする。
その体を刺し貫く瞬間。
ウルフが視界から消える。
ッッッッッ!!
何処に行った!周囲掌握では敵はその場から動いていない。
一体何処へ行ったんだ!?
『・・・あら?スライムさん近づいてみなさい』
敵の出方がわからない以上、近づくのは危険。
しかし、危険を承知の上で攻勢に出ることも一つの策だ。
ウルフの反応がある場所へ触手を十本に増やし近づく。
そこでウルフ達が消えた秘密が目に映り込む。
ウルフは仰向けに横たわり、耳をペッタンコにし、背中を丸め、尻尾を後ろ足の間に挟み込み、動きを止め、視線を逸らしている。
そう。本能に従った超光速の「服従」のポーズを彼らは見せたのだ。
ウルフたちはヒュンヒュンと情けない声を出して、精一杯に腹を曝け出す。
・・・うん。恐らく俺が圧倒的な強者だということを理解して服従のポーズを取ったんだろう。
“ウルフが「隷属」を申し出ています。許可しますか?”
うん。
もうペットにしか見えない。
ウルウルとした眼で見つめてくる。
俺と命の奪い合いをした魔物とは思えない程弱々しい動物がそこに居た。
『可愛いわ。非常に。』
ですよね。
隷属を許可する。
“承諾。ウルフの「隷属」を確認。ウルフ達に服従のギフトが主より授与されます。専有贈与スキル「知恵アル隷属」、「■炎之供給」を獲得”
すると、ウルフの体が光に包まれる。
一匹は黒い毛並みに紫のメッシュ、他は黒い毛並みは変わりない。しかし、紫ではなく赤のメッシュが現れる。
服従のポーズを解き、ウルフ達は俺の眼前にお座りする。
「「「「ワレラ、アルジにチュウセイヲ」」」」
おぉ!
言葉を喋れるようになった!
ウルフ達は俺のことをリーダーだと認め、服従した。
結果、俺には手下が増えたわけだ。
『そうよね。あなたはこの南部の森の主。こうならない方が不思議なのよ。』
なるほど。
これで分かった。
俺はこの森の中では結構上位の存在のようだ。
彼らが隷属するくらい強い。
でも、こうなってしまうと俺はこの森の誰も攻撃できないんじゃ・・・
あぁ、ここは南部の森。
つまり。東西南北の森があるということ。
行ってみようか・・・ここではない森へ。
ウルフ達は俺の後ろを付いて来る。
目標は自分の未知を無くす冒険。
俺は面白くなってきた異世界に頬を緩ませた。
榊 武人は気付いていない。
自分が何をしたのかを、彼は最上位の精霊と契約し、この短期間で圧倒的なまでの力を手に入れた。
他種族の魔物を従えるなどこの世界の常識では有り得ない。
彼の強さは、着々と災厄へと近付いているのだ。
なにかの運命に導かれるように。
無双が始まる予感が・・・
書いてるこっちがゾクゾクして来ます。
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想なども気軽にどしどし送ってくださいね!
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