王都:スラムンジャーとサテラ一行でした!
遂にスラムンジャーの正体が!?
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身体を赤、青、緑のローブで身を包み、高らかに叫んだ三人組はボロボロの廃屋を更に破壊する。
けたたましく鳴り響いたガラスの破砕音、足と床とが擦れる音、それらが混ざり合って現れた人物を見れば、どんな人であっても驚く事は間違いない。
異様な出で立ちで現れた、妙な三人組は何れも身長はバラバラで、態度もバラバラだ。
青色のフードを被った人物はかなり大きい・・・けれど、どこかモジモジと居心地が悪そうにしていて、ローブの動きをよく見ていると溜め息を吐いているのが何となくわかる。
緑色のフードを被った人物は微動だにしない。手を頭上に掲げてYの様な形になっている以外は・・・でもどこか面白がっているような気配が漂っている。
そして一際異才を放っているのが赤色のフードを被った人物だ。
ノリノリである。一切の無駄を省いた身のこなし、天へと伸ばされた手からは人差し指が突き立っている。
腰に手を当て天を仰ぐその姿は、一点の曇りもなく達人の剣舞を見たような完璧さだった。
そして、その登場に一番驚いたのは、今まで謎の取引を行っていた12人の者達だろう。
突然の破砕音に全員が驚愕に目を見開き、目の前に立つ三人組へと視線を注ぐ。
そして数秒の後、ゆっくりとポーズを解いた三人組に、ハッと意識を取り戻した護衛達が前へと躍り出る。
それと同時に、三人組も歩みを止め、目の前で殺気を剥き出しにする人物達と相対する。
「何者だテメーら!!」
護衛を勤める一人が、三人組へと怒鳴る。
その顔には未だに消すことができない困惑が見え隠れしている。
赤色のローブを纏った者の、フードから覗く口元が怪しく吊り上がる。
その言葉を待っていたと言わんばかりに、三人組は再び高らかに叫んだ。
「一つ、人の笑顔を守る為・・・」
「二つ、悪しき者に天誅を下す為!」
「三つ、我らの願いを叶える為!!」
三人が再びそれぞれのポーズを取る。
青のローブを着た人物は、中央に陣取る緑色のローブを着た人物の左で腕を横に伸ばし、赤のローブの人物は青のローブの人物とは逆方向で、青のローブの人物とは反対のポーズをとっている。
そして真ん中の緑色のローブを着た人物は、これまた一片の曇りもない動きで、腕を上に突き上げて片足をあげるなんとも珍妙なポーズを取った。
・・・何故か、違和感がある気がする。
「「「我等、スラムの守り人」」」
「スラ・・・」
「ムン!」
「ジャー!!」
そう三人が叫んだ瞬間、耳を擘く爆音と共に、背後から三色の爆煙が建物の中に広がった。
響き渡る爆音に建物は震え、建物の隙間に隠れていた虫達があれよあれよと逃げ出していく。
ある場所では崩壊を始め、窓ガラスは割れ砕け、音の直撃を貰った護衛達は耳を必死に塞ぎどうにか事なきを得ている。
ハルウ達は耳をペタんと折り曲げ、それでも尚響き渡る爆音に顔を顰めている。
ミリエラは何が起きているかわからず、キョロキョロと辺りを見回している・・・たぶん風の精霊が音を消しているのだろう。
「・・・くっそ!? お前ら、殺れ!!」
「ふざけやがって、やっちまえ!!」
護衛の中で恐らくリーダーを努めている男が、他の護衛達に命令を下す。
それと同時に、一斉に己の武器を構えて三人へと突貫する。
爆音で耳がやられているにも関わらず、お互いの護衛達は完璧な連携を見せる。
その事から、このチームはかなり腕のある者達だとわかる。
昨日今日で身に付いた連携ではなく、お互いを知り、信頼しあった動きは、長い間共に行動していたという事が如実に現れている。
最初に襲い掛かったのは、意外にも一番体格の良い青色のローブを纏った者だった。
三人の中でも一番声が小さく遠慮気味だった事から、恐らく一番弱いのではないかと思われたのだろう。
剣を携えた護衛が青色のローブへと迫る。
そして、いよいよ剣の間合い・・・と思われた瞬間、剣をもった護衛は反転し、後ろへと跳び退いた。
その動きに驚いたのか、青色のローブを纏った人物は後ろへと一歩後退った。
そして青色のローブの前に立ちはだかったのは、長い槍を突きだした男だった。
最初に突貫してきた剣の持ち主は囮・・・間合い一歩手前まで接近し、集中させたところで後ろへと飛び退り、槍を突きだした男が現れたのだ。
高速で突きだされた槍は、青いローブを突き破り、反対側から地によって赤く染まった槍が突出する・・・かと思われた。
槍は半ばから叩き折られ、槍を突きだした男は不自然によろけていた。まるで何かに躓た様に、前屈みになって倒れようとしている。
そして、地面が破砕する。
青いローブを纏った人物は、よろけた男の頭部を鷲掴みにして、地面へと叩き付けたのだ。
・・・しかし妙だ。
槍を突きだした男は一流とまではいかずとも、かなりの腕前を有している。それなのに、自分の歩む先を見ずに何かに躓くなんてあり得るだろうか?
だれも魔法を発動したようにも見えないし・・・それに、そんな魔法を発動するくらいなら、確実に息の根を止める魔法を放つはずだ。
青のローブの人物は、地面にめり込んでピクリとも動かなくなった男の側に落ちていた、槍の穂先を握り混んで身体を引き絞る。
直後、空気の唸りと共に、手から投げ放たれた槍の穂先は、剣を持っていた人物の肩口を突き抜け、反対側の壁へと突き刺さる。
「うがあああああぁぁぁぁぁぁ!!」
穂先を投げた人物は、悲鳴をあげる男に何の感情も示す事なく、手をパンパンと叩くと、近くに落ちている手頃な石を拾い、再び護衛へと投擲する。
護衛達も、さすがに一度見たものを食らう筈もなく、避けようと脚に力を込める・・・が、その時には既に男達の身動きは取れなくなっていた。
舗装されていない石の床が、脚に食いついている事に、男達は気付いていなかった。
「な、なんだ!?」
「あ、脚が動かねぇ! どうなってやがる!!」
パニックを引き起こし怒鳴り散らす男達は、しかし、次の瞬間には肩と脚を石で貫かれ、断末魔をあげる。
男達の身動きを取れなくしたのは、恐らく真ん中の緑色のローブを着た人物だろう。
ローブの隙間から覗く手元が淡く光っている。
口元の動きから、魔法の詠唱を行っているのも見てとれる。
後方にいた護衛が弓を構え、矢を番え、緑ローブへと放つ。
一直線に突き進んだ矢は、仲間の護衛達を巧みにすり抜けながら、緑ローブの眉間へと迫る。
しかし、これもまた不自然な軌道を描き、緑ローブへと突き刺さる事なく虚しく床へと落ちていった。
そしてその間に、弓を構えた護衛も石が直撃する。しかし・・・他の者と違ったのは、石に眉間を撃ち抜かれたところだろう。
それを見せつけられた護衛達の顔は一斉に青く染まる。
脳漿を床一面にぶちまけ、赤く淀んだ鮮血を湖の様に広げるその姿は、今しがた強く弓を引き絞っていた者とは思えない。
護衛達の纏め役を努めていた二人は、背を見せて逃げようとその場から逃げ去っていく。
「・・・仲間を置いていくのはどうなんだろうな?」
私の視界から一人消え失せる。
そして、それが次に現れた場所は逃げ去っていく二人の傍らであった。
次の瞬間には、二人は両端の壁へと吹き飛ばされ、強く身体を打ち付け地面へと倒れ込み、意識を刈り取られた。
取引を行っていた二人は、一瞬にして自慢の護衛が無力化された事に驚きを隠せない。
呻き声を漏らす護衛達の中から、自分達の元へと歩み寄る足音が混ざっている事にハッと意識を取り戻す。
青のローブを着用した人物が、一歩一歩ゆっくりと近づき、じっと自分達を見据えていたのだ。
「な、な・・・」
「貴様ら! 我々は『ガデス』の一人だぞ!! こんなことをしておいて・・・!?」
「あぁ、知ってるよ」
二人の男から咄嗟に出た言葉は、自らの組織の強さを振りかざした言葉だった。
これが、ただの恐喝や喧嘩なんかに使われていたならば、効果はあっただろう。
しかし、取引の最中に現れ、全ての護衛を無力化できる戦力を有した者達が、そこいらのスラムの住民な訳がない。
ここにいる全ての者の情報を知り、把握した上で取引を潰しに掛かっているのだ。
「でも、あんたらが何をやろうとしているのかは知らなくてね。唯、何かを企んでいるのは知ってるし・・・『悪魔』を手に入れたのも知ってる」
「喋るわけが!」
「貴方達が喋らないって事もわかっているわ。だから、勿論拷問させてもらうわ・・・考えうる限り一番最悪なものでね」
掠れ、潰れ、ドスを効かせた声で、仄かに身体から漏れだす濃密な殺気を対面する男に叩きつける。
身体の芯から震え上がる程の冷たさが、通路を支配する。
軋む床が、己の心の均衡さえも軋ませる。這い寄る極寒の殺意に身を凍らされ、息をすることさえ忘れさせる。
「喋らなければ・・・殺す事なく一生痛みの牢獄をさ迷うがいい」
そして今まで少しずつ放っていた殺気を一気に解放する。
それの余波を受け、私も一度意識が揺らぎかける。
しかし、私の後ろをモミジが支え、私の前へハルウが立つ。
幾分か殺気の影響が和らいだものの、それでも尚、己の心をゾッとする何かが這い寄っている。
「あれは人間じゃない。匂いもだけど、気配の使い方が魔物に似通っている」
「・・・魔族ってこと?」
「よくはわからないが、恐らくはそれに近しい気配だ」
ハルウによると、あの青のローブをした者は、人間ではないらしい。
確かに人にしては、気配の扱いに長け過ぎている・・・。そして、未だに消すことができない殺気による身の震えが、人にしては尋常ではないレベルで襲い掛かってくる。
そんな殺気を間近で受けている男達は溜まったものではない。
それでもこのスラムで生き抜いてきた者だ。震える足に活を入れて逃げ出そうと背を向けて全力で走り出した。
それを追いかけようと、青フードは足に力を込めるが・・・直後に何かやる気が削がれたのか、へなへなと力が抜けていく。
それに、しめたとばかりに男達は走る足に力を込める。
しかし、私は知っている。青フードが何故力を抜いたのか・・・いや、抜けたのか。
「悪を裁くは正義の定め」
バンッと小さなシルエットが男達の前に立ち塞がっている。
珍妙なポーズで立つその姿は、私なら間違いなく蹴り倒してしまうだろう。
そんな私と青ローブの気持ちはいざ知らず、赤ローブは高説を垂れる。
「正義が最後に決めると言えば・・・」
男達は赤ローブの言葉を最後まで聞いていられる程、悠長ではなかった。
男達はお互いに腰に差していた剣を抜き放ち、赤ローブへと斬り掛かった。
上段から振り下ろされた剣の太刀筋は、ぶれもなく迷いもない。かなりの使い手ではあるが・・・私の見立てではあの赤ローブには勝てない。
あの赤ローブの動きは、私が唯一目で追いきれなかった程だからだ。
男達が振り下ろした剣の先に、串刺しとなった赤ローブ。しかし、そこには当然の如く中身の人間はいない。
男達は素早く前後左右を確認する。しかし、赤ローブの姿を捉えることができない。
どこにいったと油断なく辺りを見回すが・・・まさか上空にいるとは誰も思わないだろう。
離れた場所から見ていた私は、赤ローブが後ろに飛び上がったのを見ている。
空中で何度も無駄に回転し、天井すれすれまで飛び上がっている。
そして、私は赤いローブを羽織っていた者の顔をはっきりと目に焼き付ける。
この王都には珍しい黒と見まがう紺色の髪、一見すれば幼く見えるが、よく見れば整った顔立ちをしている。背は私から見れば大きくもなく小さくもないが、一般的な男性と比べると小さいその体躯。
「ムンジャー・・・」
確信する。
間違いなく、赤ローブは
「キイイイィィィッッック!!」
ユガだ。
ミシミシと音を立てながら天井を手で押し付け、身体が急降下を始める。
勢いそのままに男達の元へと飛び蹴りが放たれる。
助走もつけていないはずなのだけど、身体が前へ行くのは無駄な魔法を使っているに違いない。
すると、赤ローb・・・ユガの背後で大きな爆発が起きる。
ユガの手元が淡く輝いている事から、何かしらの魔法を使って爆発させているのだろう・・・でなければ爆煙が、赤、緑、青の三色になる訳がない。
そして、飛び蹴りが男達へと直撃する。
男達はまるで石ころの様に吹き飛ばされ、壁に激突して止まる。当然、二人の男は意識を失った。
「天誅・・・」
ユガはそう言ってフフンと鼻を鳴らす。
足を拘束され、肩と足を射貫かれた護衛達も、痛みを忘れた様にユガを見てあんぐりと口を開いている。
すると、緑ローブがユガに近付いて告げる。
「ずるいわね。最後を持っていくなんてあんまりね」
「えぇ・・・真ん中譲ったんだから許してよ」
「二人共・・・まだ仕事終わってないんだけど」
そんな三人の姿を捉える。
・・・あぁ、私もう我慢できそうにない。
ハルウの背中の服を掴み、にっこりと嗤う。
その瞬間、空間が一気に軋みをあげ、ハルウ達の身体が小刻みに震える。
ミリエラの肩で休んでいた風の精霊も、口許を引き攣らせながらミリエラの前に飛び出てくる。
額に青筋が幾重にも浮かんでいるのではないかと思わせる程に、身体が熱を持ち始める。
「いいわね?」
「・・・」
ハルウ達は何も言わずにコクコクと首を振る。
自分の気配を隠すこともやめ、通路をゆっくりと歩く。
勿論そんな私に三人が気づかない筈もなく、バッと身構えて臨戦態勢に入る。
緑ローブの手元が怪しく光り、魔法の発動が伺える。
魔力の波動が・・・地面を伝っていることから、恐らくは「土魔法」だろう。
地面から鋭利な土槍が幾本も現れ、私を刺し貫かんと迫る。
しかし、一瞬の後にその土槍はバラバラと粉々に砕け、唯の石塊と化す。
緑ローブは自分の魔法が打ち消された事に動揺したのか、一歩後ろに後退る。
簡単な事だ。
魔法の起点となる部分を投剣で刺しただけだ、魔法の発現場所が塞がれれば、行き場を失った魔力は散らばって霧散する。
普通の者ではできないだろうけど、魔法剣士である私ならば余裕があればできる。
次に進み出たのは青ローブ、先程の様に凄まじい殺気を放ってくるが、今の私は相当頭に来てるのか何も感じない。
・・・非常に不本意ではあるけれど、私もユガ達魔族に毒され始めているらしい。
青ローブは持ち前の豪腕で、私を殴り倒そうと駆け寄る。
・・・まぁ、こういうやからには総じてこの手が有効だ。
自分へと高速で迫る拳を逆方向へと流す。そして、できた隙に攻撃を叩き込むというのが常套だけど、青ローブも手練れそこは理解しているだろう。
案の定直ぐ様蹴りが放たれる。
しかし・・・だ。
青ローブは次の瞬間悶絶に打ち震え、絶叫の雄叫びをあげる。
「う・・・グアアアアアァァァァァ!!」
私の手には剣が握られ、その柄でもって、蹴りの勢いそのままに脚の脛に直撃させた。
これで少しの間、足を襲う痺れから脱することはできないだろう・・・と思ったが、その痛みに耐え抜き、青ローブは再び拳を振り払った。
しかし、それも折り込み済み。
ハルウ達が魔族であると、教えてくれていなかったらやられていただろう。
青ローブは、先程とは違い、ストレートでこちらへと一撃を放つ。それならと、迫る拳をすんでの所で避け、髪を掠っていく豪腕を絡めとる。
そして勢いを利用して、そのまま地面へと投げ飛ばす・・・『一本背負い』だ。
流石にもう意識はないだろうと、投げ飛ばした青ローブに目をやると驚く事に、青ローブは尚も立ち上がろうとしている。
しかし、さすがに身体にダメージが蓄積していたらしく、脚がもつれて立てないでいる。
そして最後に、ユガである。
一本背負いを決める前はかなり余裕だった顔付きが、今では顔面蒼白にまで至っている。
「何をしているの!! 早くいつもみたいに!?」
にっこりと微笑みながら、ユガへと近づく。
ジャリジャリと地面の砂が唸りをあげ、剣の煌めきが薄暗い通路を歩く、私の姿を不気味に照らし出す。
龍の心を乱した馬鹿には一度お灸を据える必要がある。
「逃げ・・・!?」
ガシッと背後から忍び寄ったハルウ達が、目を背けながら拘束する。ミリエラの肩に乗っている風の精霊は、ユガを風の縄で縛り付け、周りにゴウゴウと吹き荒ぶ風の牢獄を張り巡らしている。
ユガがその中でミリエラに何かを叫んでいるが、残念な事に風の牢獄のお陰で声は外に漏れない。
なるほど・・・風の精霊はユガがミリエラに助けを呼ぶことを想定していたみたいだ。
私は風の牢獄を一刀で切り開き、よりいっそう顔に微笑みを浮かべる。
「サ、サテラ・・・さん? あ、あの、えっと」
「大丈夫。何も言わなくていいわ」
そう言って、うすーく目を見開く。
剣は鞘に収め、私の拳にうすーく魔力を張り巡らせる。
「ゆ、許しては・・・」
「・・・・・・・・・」
ユガの目の前まで歩み寄り、私は一言こう告げた。
「天誅」
その後、サテラとスラムンジャーが一悶着を起こした建物は、『狂慌の館』と呼ばれる事となるが、それはまた別のお話。
普通に殴るのがダメなら、魔法で殴ればいいじゃない・・・ブチ切れサテラさん回でした。
ミリエラさん・・・次回こそはミリエラさん視点で癒されよう。
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!
※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。
方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。
わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!




