王都:サテラの憂鬱でした!
サテラさんの憂鬱をご堪能ください。
次話投稿は一週間以内です!
冒険者を始めて二年になる。
その冒険者としての人生を歩んできた中で、危険な依頼を何度も受けた。
危険な魔物を討伐する依頼から、危険な場所に自生する薬草を取りに行ったりもした事がある。
命の危険を感じ、いつも死の恐怖と隣り合わせで依頼をこなしてきた依頼をこなしてきた。
何度も挫けそうになって、何度も家に帰ろうかとも思った。
しかし、冒険者として一年の月日が経とうとしていた頃だ。
その頃には冒険者として大分板についてきており、ゴブリンを倒すくらいなら簡単にこなせるようになっていた。
そんな時、ある依頼を達成した。
何時もの様に依頼を淡々とこなし、いつもの様に報告に向かおうとした。
その時、依頼を出した人に感謝された。
初めて人に感謝されたのだ。
自分の目的を見失いかけていた私に、ありがとうございました、と。
その時の気持ちを、未だに自分は忘れることができない。
依頼をこなす度に少しずつ崩れていた目的が、今ではしっかりと自分の中に存在している。
自分は一歩ずつ、理想の騎士として近づいている・・・と、思っていたのだけど。
「何故、人間に頭を下げなければいけない?私が頭を下げ、腹を見せるのはアルジだけだ」
「そ、そうよ!アルジだけなんだから!!」
「あ、頭が痛い」
何故自分は教師としての道を歩んでいるのだろうか?
おかしい・・・何がどうなってこのようになってしまったのか。
「だから、人の街では自分が悪かったら謝らなければいけないのよ!!」
「相手が道を譲らないというのは宣戦布告だろう?当たったら、その場で戦闘だ」
「あぁ、違いない」
「道を譲らないのは敵だよね?」
「あぁ、もう!!」
この魔族をどうして良いか全くわからない。
常識が全く通用しない。あっちの常識が、こっちの常識と全く噛み合わないのだ。
その脇では私が話している内容を必死に覚えようとしている、親友のエルフの姿がある。
親友は、私の話していることに耳を傾け、しっかりと理解を示している。
だというのに、この魔族連中は全く理解していない。いや、理解できないのであろう。
今まで生きた世界は弱肉強食の世界、主様が決めたことこそがルールとするそんな者達。
人間の常識やマナーと言うモノが、自分達の貫いてきた考え方を覆すモノなのだ。
それを、どうにかしてこの魔族達に教えなくては、後々いざこざに巻き込まれたり、或いは騙されたりと、厄介なことになるのは目に見えている。
モミジちゃんは少し理解しているのだけど、ハルウやナーヴィに押されて、結局は森の考え方を念頭に置いてしまっている。
ユキさんは教えたことを直ぐに理解して、人間の世界に溶け込んでいたのだけど・・・この魔族達はかなり難しい。
もうどうでもいいかな、何て頭に浮かび始めた頃、ミリエラが顎に手を当てて何かを考え始める。
そして、顎から手を離したミリエラは、私に向かってニコッと微笑みかける。
なにか策でもあるのだろうか?
「えっとね、ユガ君に迷惑になっちゃうかもしれないんだよ?」
「むっ・・・」
「人間の人と喧嘩しちゃったら、ユガ君悲しいんじゃないかなぁ?」
「それは・・・」
「ユガ君優しいから、傷ついた皆や人を見たら、泣いちゃうかもしれないよ?」
「あう・・・」
ミリエラがそう言うと、ハルウ達は一斉に黙り込んでしまった。
さすがミリエラだ・・・人を慰めたり、諭したりすることが非常に上手いのだ。
私には出来ないな・・・。
それからもハルウ達に納得のいかない事があると、ミリエラが理解できるように私の説明に補強してくれた。
なんとか常識を教え込むことに成功し、自室に戻って疲れた身体をベッドに投げ出した。
ベッドに突っ伏して大きな溜め息を付いていると、ミリエラが戻ってきた。
「はぁ、ミリエラは凄いね。私じゃあの子達に理解させるのは無理よ」
「あはは、ハルウ君達からしてみれば『人』は敵だったから、どうしてもそう見ちゃうと思うの。だから、ユガ君や森の子達で説明すればわかってもらえたんだよ」
ミリエラは苦笑しながらそう告げる。
そっか・・・ハルウ達からしてみれば人間は敵だったんだ。
すっかり忘れていたけれど、彼等は元々魔物で常に他者から狙われる対象だったのだ。
それなら、私が言う常識を理解できなくても仕方がないか・・
・。それに気がつかない私も、私なんだろうけどな。
まぁ、一応人前にちゃんと出せるレベルまでは教えたし、明日にはここを出て、街の中を見て回ってもいいだろう。
そう考えていると、扉が開いてモミジちゃんが入ってくる。
皆の頼れるお姉さん・・・と自分でいっているが、森ではマスコット的存在として確立しつつあるモミジちゃんだが、なんだキョロキョロしてる?
「アルジがいない・・・」
「え?ユガ君ならさっきまで、窓際で日向ぼっこしてたよ?」
「ディーレ様と話してたのは覚えてるんだけど、今見たらどこにもいなかった」
「トイレ・・・は必要ないものね」
どうやら、ユガがいなくなったらしい。
カナンでは、私達と一緒にいる時は窓際辺りでボーッとしているか、水の上級精霊ディーレと話している事が多かったのだけれど、どうやら見当たらないらしい。
ユガは殆ど勉強を必要としなかった。
と言うのも、ハルウ達は森での生活が長く、人間達の常識を覚えるのに手間取ったのだけど、ユガは殆ど人間について理解していたのだ。
本当に魔物だったのか、魔族なのかが信じられなくなるほどに人間味が強いのだ。
どこか、違う部分もありはしたが、普通に人と接する事に何も問題ないレベルであった。
人間から魔物になったのではないかと、疑ったくらいには人間について知っていた。
人間と商談を始めてしまう時点で、異常なのか・・・あ、いや、もう最初から異常だったのかな?
まぁ、それはさておいて、いったい何処へ行ったのやら。
「ユガ君、外に出ちゃったのかな?」
「ありえるわね・・・また食い道楽してるんじゃないの?」
「ア、アルジがそんな事・・・するかもしれませんね」
私を含めて三人の頭に、王都中の屋台を回っているユガが想像された。
ありえる・・・あり得てしまう。
ユガは、どうしてか食べ物に執着する。
余程森で食べたものが気に入らなかったのか、カナンでは黒翼騒動の後、片っ端から屋台の食べ物を買って回り、食べ回っていた。
私達をおいてけぼりにして、人の間をすり抜けて食べ物を買い漁る姿は、なんだか情けないものが込み上げてきた。
そんなに珍しい食べ物ではないのだが、毎回味わって食べた後は食材についてを私か店の店主に聞いている。
一度料理人を目指しているのかと冗談で聞いてみたが、本人は「食い道楽!!」と言い放っていた。
一部の人は娯楽に飢えると、賭け事や食に走ると聞いた事があるが、まさにそれなのだろう。
今回もそれの可能性は十分にある。
とはいっても、やはり探さなくてはならない。
王都はスラムを除いて、比較的治安は良い方だ。
理由は、騎士が街の警備の為に、巡回しているからだ。
しかし、それでも揉め事が無くなるわけではない。
妙な面倒事に巻き込まれる可能性もあるし、多分大丈夫だろうけれど、スラムなんかに迷い混めば何が起きるかわからない。
幾ら冒険者とはいえ、ユガは『魔族』だ。
面倒事に巻き込まれる可能性は高い。
もう・・・魔族ってこんな自由なのばかりなのかな?なんて事を思い浮かべ、深く溜め息を吐く。
「取り敢えず、皆で探しましょうか」
「大丈夫かな?食べてるだけならいいんだけど・・・」
ミリエラは心配そうに、窓の外に目を向けている。
ユガなら大丈夫だとは思うけれど、やっぱり私も少しは心配なのだ。
はぁ、この調子なら家の問題を解決する前に、私がダウンしちゃいそうなのだけど・・・。
それからハルウ達に説明し、外に出て探している。
狼にならない様にしっかり言い付け、モミジちゃんにしっかりと見張ってもらっている。
お姉さんの仕事だからきっちりやってくれるよね?と言ったら、喜んでやってくれるそうだ。
無垢な子供を騙す様な真似をして、若干罪悪感がやってくるが、揉め事に巻き込まれるよりはましだろう。
そして、私とミリエラは露店で食べ物を売っている場所を転々としているのだが、物の見事に目撃情報が寄せられる。
やれあっちの露店に寄った、こっちの方角へ行った、うちの商品を美味しそうに食べて良い宣伝になった。などなど、隠す気が微塵もない放蕩ぶりを晒している。
私は眉を八の字にして溜め息を吐き、ミリエラは笑いを堪えるので必死なようだ。
やはり、私達の予想通り食い道楽を謳歌していたらしい。
探し始めて日が少し傾いた頃、中心部から少し離れた場所にある露店へと足を進めた。
店には中年のおばさんが立っており、そこからは良い匂いが漂っている・・・うん、ここに寄っただろうな。
「すいません。黒髪・黒目で、背が私くらいの男を見掛けませんでしたか?」
都では黒い髪に、黒い瞳を持っている人は少ない。
いないことはないが、数が少ないだけに顔は覚えられやすい。
「ん?あぁ、見たよ。興味深そうにこれを見てたから、教えてやったよ。あんた達の連れだったのかい?」
良い匂いを放っていた正体は、王都では有名な食べ物、モルラだった。
成る程・・・ユガが文字通り食いつきそうな品である。
「何処に行ったかわかりますか?」
「ん~、確かねぇ・・・」
ここは王都の中心部から外れて、北西部に位置している。
ここらはまだ大丈夫ではあるのだが、一歩間違えば危険な場所なのだ。
通りを外れ、ひっそりと口を開けて待つ脇道に入り込もうものなら、その先は法の恩恵を踏み躙る世界・・・スラムへと誘われる事となる。
脇道からは人の気配が一切なく、澱んだ空気と、肌を走る気配から、そこが唯の脇道でない事を示している。
まぁ、さすがにそんな場所へは入り込んでいないとは思うが、一抹の不安を抱かずにはいられないのだ。
あの場所の凄惨さと悲惨さを知っている者ならば特に・・・。
「あぁ、そういえばダンジョンのある方角へ向かっていったよ」
「ダンジョン?」
「つい最近『豊穣のダンジョン』が北に出来たろう?あっちに向かって行ったと思うよ」
店主のおばさんに礼を言い、その場を後にする。
宿に戻った私達はハルウ達が帰ってくるまで待った。
モミジちゃんが胸を張って、帰ってきたのを適当に誉めると、上機嫌な様子で頷いていた・・・ユガの言っていた通り、誉めると機嫌が良くなるようだ。
宿の一階にある酒場の、一角にある席を取り、私とハルウ、モミジちゃんで話し合う。
端から見れば、異色の二人であり注目を引いてしまうが、慣れというのは怖いものでユガと一緒にいるお陰で、気にならなくなってしまった。
「ハルウとモミジちゃん方はどうだった?」
「アルジの様な人を見たという者は多かったが、有益な情報はあまりない」
「配下一の私達なのに・・・不甲斐ないです」
「こっちも似たようなものだけど、一つだけダンジョンに向かったって言う情報があったわ」
ハルウとモミジはしばし考えた後一度だけ頷く。
その線が高いと同意したのだろう。ここに来る前に、私にダンジョンについてを執拗に聞いていたし、一部の配下達にはダンジョンにウキウキしているユガが目撃されている。
まぁ、つまり。
これも道楽ではないのかと考えたわけだ。
「何かに巻き込まれた可能性は低いと思う。まぁ、例え巻き込まれてもユガなら大丈夫だろうけど」
「ダンジョンも同様だな。アルジがそこいらの魔物風情に遅れをとるはずがない」
「一緒に行きたかったなぁ・・・」
ユガならダンジョンに潜っても、揉め事に巻き込まれても後から何事もなかったようにフラッと現れるだろう。
たった一人でアンデッドベヒーモスを倒せてしまうくらいだし、心配要らないだろう。
でも・・・やっぱり不安だ。
万に一つないとしても、頭の中を最悪の可能性が横切るのだ。
「はぁ・・・もしも今日帰ってこなければ、明日ダンジョンへ向かう」
「今からでもいいんじゃないか?」
「何の準備もなしにダンジョンに潜ることは絶対にしちゃダメ。だから、今日は準備とダンジョンについての勉強です」
「またか・・・」
「ユガ・・・アルジの言いつけでしょ?」
「むぅ」
ダンジョンは非常に危険な場所だ。
数多の冒険者達は夢を求めてダンジョンへと挑む。
しかし、録な知識もないまま、ダンジョンに挑んだ所で、餌にされるのが落ちだ。
しっかりと物資を蓄え、力量は勿論の事、知識もなければ生き残る事を許されない場所・・・それがダンジョンだ。
魔物や罠、アイテムや状態異常、場所によっては人の悪意に飲まれる可能性さえあるのだ。
しかし、ユガに関してはこれらが殆ど大丈夫だと言えるだろう。
・・・非常に納得いかないが、ユガはスライムであるため状態異常を受け付けず、力量も十分、食料も殆ど必要としないから、単身で乗り込んだとしても問題ない。
何故か知らない道のはずなのに迷う事がなかったし、はぐれかけたミリエラを探しだしたこともあった・・・つまり、ダンジョンで迷うこともたぶんない。
罠が少し心配ではあるが・・・まぁ問題ないだろう。
「はぁ・・・」
再び大きな溜め息を吐き、酒の匂いと人の喧騒が充満する酒場へと目を向け、目の前に座る二人に視線を戻す。
もう・・・一体何処へ行ったのよ。
私を助けてくれるんじゃなかったの?
そんな考えが脳裏を掠め、ブンブンと頭を横に振って振り払う。
自分のしでかした事なのだ、本来ならば一人で解決しなければならないといけない所を、ユガ達に手伝ってもらっているのだから。そんな想いを抱くことは間違いなのだ。
普段は飲まない酒を飲み、また一つ溜め息を吐いた。
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一方その頃。
「ぶえっくしぃ!!」
人知れず盛大なくしゃみを放つ影が、スラムの奥へと消えていった。
次回もサテラチームです。
ダンジョン探索を予定していますが、はたしてサテラさんに安らぎは訪れるのでしょうか?
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!
※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。
方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。
わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!




