開拓:黒翼VS傭兵団⑤でした!
久々の一万文字・・・気合入れたので見てやってください!!
次回は、今回の騒動の主人公視点からの導入です・・・(テンポは早めに行かせていただきます。
仕事が忙しく見直しが・・・誤字脱字の報告お願い致します!!
次話投稿は一週間以内です!!
かの魔物の咆哮は空気を震わせ、大地を脈動させ、その場にいるものの身体を竦み上がらせる。
瞳はなく・・・肉もなく・・・命もない・・・あるのは憎しみと腐肉と骨。軋みを上げる骨と肉が擦れ、潰れ合う音。ドロドロと腐肉が地へと崩れ落ち、その度に水晶から齎された光が崩れ落ちた部分に腐肉を供給する。
巨大な足が踏み締める大地は捲れ上がり、超大で鋭利な爪は硬い岩盤を易々と切り裂き、石の礫をそこいらにぶちまける。
続々と増えるアンデッドは湧き出る水もかくやと、地下の空間を埋め尽くし、見渡す限りアンデッドの領域と化した。
カタカタと骨の鳴る音が響き、レイス・ゾンビ達が上げる呻き声が、聴く者に恐怖を刻み付ける。
眼窩に灯る赤き光は、生者を求め彷徨い、ギョロギョロと奇妙な動きを見せる赤い光は、やがて眼前に立つ一匹の生者を見据える。
自分よりも遥かに大きな化物を前にして、それは身動ぎ一つせず、眼前から溢れ出す恐怖の波を、どこ吹く風と受け流す。
ベヒーモス・・・Bランク冒険者のパーティーでさえも討伐は困難を極め、アイテム装備が充実していなければ敵わない相手。それがアンデッドと化し、より凶悪となった魔物を前にして、目を逸らさず真っ直ぐに立ち続ける少年。
そんな浮世離れした光景を前に、呆然とする者と当然とする者、余裕のある者と三者三様の一面を見せている。
増え続けるアンデッドはしかし、その数を減らしてもいるのだ。
ベヒーモスの眼前に立つ少年の一喝で動いた何者か達は、アンデッドなぞものともしないスピードで狩り続けているのだ。
その者達は一級の冒険者達も息を飲む程の領域であり、アンデッドたちが繰り出す攻撃をいとも簡単に避け、例え囲まれていたとしてもそれを一掃し、また新たなアンデッドへと対象を移動させるのだ。
そんな騒然とした空気を孕んだ地下の空間に、二匹は対峙している。
両者動かず、唯隙を見せず、相手の力量を見定める為に息を止めている。畏怖や恐怖といった感情は一切感じられず、あるのは純粋な「憎しみ」と「闘気」。
そんな張り詰めた空気の中、双角を振り乱した女魔族が殴り飛ばしたスケルトンが両者の間へと吹き飛んだ。
ゴシャっと骨が砕ける音が両者の耳に届いた。そして、それが両者の極限にまで高めた警戒心を解き放つ起爆剤となったのだ。
・・・前代未聞のベヒーモスと少年の戦いは唐突に幕を開けた。
GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!
恐ろしいまでに猛り狂った咆声を響かせ、その巨体を左右に揺らしながら少年に突貫するアンデッドベヒーモス。
死の塊が少年へと牙を剥いた・・・眼窩に灯る赤い光はより一層強さを増し、骨が擦れあう音を後に響かせ、大地を抉り取りながら、少年の命を狩らんとする。
それでも少年は動かない。
唯・・・一見すれば少女とも見紛うその幼い顔に備わった小さな口が開かれる。
「んじゃま。始めるか」
そこで少年は一人、時が止まったかの様にゆったりと細い腕を上空へと突き出す。何もない虚空から何かを掴み取るように伸ばされたその手からは、青白く光る御霊が現れる。
ある者は幻視する。
形容し難い程に美しい女神が天空から舞い降りる姿を。蒼き後光を溢れんばかりにばら撒きながら、空中へと現れる。
ゆっくりと瞳が見開かれる。
薄く青い・・・それでいて深海の様に真っ青でもある髪をユラユラと棚引き、芳しい香りを放ち、命ある者達に幸福を、命亡き者に安寧たる死を振りまく。
肌は白く、一度でも触れようと手を伸ばせば、陽炎が如く遠くへと去ってしまう。しなやかな肢体に息を呑み、劣情さえも沸き上がらない呆気にとられる美しさ。
切れ長の目に光る威光に、自分という存在全てを見透かされていると感じてしまう。薄いピンク色を宿した唇に視線は吸い込まれ、口角が少し上がれば感嘆の溜息が漏れ出てしまう。
胸に聳える二つの大きな双丘、触れれば折れてしまいそうな括れ、慎ましやかではあるが決して痩せてはいないと感じさせる臀部、その全てはイヤラシさや蠱惑的な雰囲気を一切感じさせず、彼女には相応しく、合って当然だと感じさせる。
薄く桃色に染まった肌から目を離せずにいると、舞い降りた女神は下々の者達を一瞥する。
周囲へと眼を向け、アンデッドへ、冒険者へ、魔族へ、そして少年へと至るとそこで止まる。
微笑み・・・誰もが魅了されうるであろう、美しき神は・・・少年の掌に渦巻く光へ口付けを落とす。
女神の愛が、女神の威光が、女神の力が、女神の微笑みがその少年に齎された。
女神は消え行き、少年は後に残される。
そんな光景をその場にいた冒険者は幻視する。
果たして幻視だったのだろうかと考える間もなく、少年の体から一切の気配が途切れ、代わりと言わんばかりに膨大な魔力が溢れ始める。
少年の体は青一色に染まる。
その手は形状を変え、青く光り輝く一本の槍へと化す。
「専有スキル:刺し貫く蒼き槍!!」
空中へと上げていた手・・・槍を大地の奥深くへと突き刺し叫ぶ。
ベヒーモスの足場が大きく揺らぎ、罅割れる。
すると、突如として地面から無数の槍が突き出される。
アンデッドベヒーモスは驚きに一瞬身を固めたが、直ぐ様そこから身を翻そうと試みる・・・しかし遅かった。
地面から突き出た幾本もの槍に硬い皮膚などものともせず貫かれ、その身に風穴を開ける。胴体、足、首元、を刺し貫いた槍はそれだけでは終わらない。
「まだまだ終わらねぇぞ」
アンデッドベヒーモスを貫いた槍から、枝のようにまた幾本もの槍が伸びる。
体の中を槍で貫かれたアンデッドベヒーモスは慟哭する。しかし、相手が悪い。
アンデッドを倒すには核・・・コアを破壊しなければならず、アンデッドベヒーモスも例外ではない。
皮膚とは比べ物にならない硬度を持った頭部はそこいらで売っている最高級の鎧や盾にも引けを取らないであろう。
頭部へと直撃した槍は半ばから折れ、砕けた破片はプルプルとしたゼリー状の物体へと変貌し、地面へと吸い込まれていった。
槍は地面へと引き戻され、アンデッドベヒーモスは地へと伏す。
アンデッドには痛覚というものはない。しかし、レイスなどの特殊個体を除いて破壊された体が元に戻ることはない。
しかし・・・地面にて割れた水晶からは未だにオーラが漏れ出している。
アンデッドベヒーモスの体をオーラが取り巻き、槍によって刺し貫かれた体は修復され、より強固な肉体へと生まれ変わってしまった。
OOOOOOOOOOOOoooooooooo!!!!!!!!!!!!!
アンデッドベヒーモスの反撃。
すぐさま体勢を立て直したアンデッドベヒーモスは、巨大な前足を振り翳し横へと薙ぎ払う。
それを悠々と回避する少年であるが、それだけでは終わらない。
口から漏れ出る紫色の火炎が少年へと襲い掛かる。
火炎は大地を焼き、空気を焼き、全てを呪われた液体へと変質させる。少年はこれを横に飛ぶことで回避するが、液体は新たなアンデッドを生成し、周りの生者へと襲い掛かるのだ。
両前足を振り上げ、押し潰さんと少年に繰り出し、これもまた回避されるがそれは読まれていた。
「・・・ッ!?」
少年の真横から剛速で迫り来た尻尾が少年の体へと直撃する。
直前、手を盾へと変え、防御した少年であったが、相手の質量や膂力は少年の倍近くもあるのだ。少年の体は宙へと舞い、壁に打ち付けられる・・・はずであった。
少年の体は吹き飛ぶことなく、余程強く踏みしめたのだろう大地を削り、横へと押されただけだ。
ガガガガと大地が砕ける音が響き、少年の顔へは微笑が浮かぶ。
「うっへぇ、やっぱ強いなぁ」
GUUUUUUUUUUUUUUOooooooooo!!!!!!
アンデッドベヒーモスは怒りに身を震わせ、咆哮を・・・いや、破咆哮を発動させる。
一定のランクまで達した大型モンスターが使うスキルである。直撃した者は「状態異常:恐怖・混乱」やその衝撃波によってダメージを負う。
ベヒーモスの破咆哮の威力は他の魔物と比べてもかなりの威力を誇る。Cランクの冒険者であれば状態異常と浅くないダメージを負うのは間違いない。Dランクの冒険者であれば一撃の下で死んでしまう。
それがアンデッドベヒーモスとなったことでより一層凶悪なものへと昇華する。「状態異常:恐慌・大混乱」、とんでもない衝撃波へと変貌した破咆哮が地下通路へと響き渡る。
この破咆哮を防ぐ方法は、放たれる直前に顎への攻撃、そして専用の魔道具や防護魔法によるものである。
しかし、不意を突いて放たれたこれを防ぐ手立てなど持っている筈がない。
アンデッドベヒーモスの近くにいた、アンデッド達もそれの巻き添えをくらい、スケルトンの骨は粉々に砕け散り、ゾンビ達の体を構成している腐肉は弾け飛ぶ。
額から角を生やした女魔族と魔法使いの少女も手で耳を塞ぎ、眉を潜めている。
いくらアンデッドベヒーモスの重い一撃を受け止められる馬鹿力を持っている少年であっても、アンデッドベヒーモスに一番接近していて、尚且つそれの直撃を受けて平然としていられるはずがない。
眼前に立つ少年は魔道具の装備や防護魔法の援助といった類のモノは一切していないしされていない。恐慌や大混乱、致命傷のダメージが少年を襲った・・・いや、これもまた襲うはずだった。
GUUU!?
アンデッドベヒーモスは驚愕に赤い双眸を強く光らせ、一歩後退する。
破咆哮を間近に受けた少年、けれど少年は全くそれを意に介すことなく、眼前にて咆哮を上げたアンデッドベヒーモスを見据え、顔には笑みを携えたままだった。
「そんなんじゃぁ俺は、倒せないぞ」
そう言って少年は、顔の横で静止しているアンデッドベヒーモスの尻尾を脇に抱え、力任せに引っ張った。
バランスを崩したアンデッドベヒーモスは、それに抗おうと地面に爪を立て踏み締める。しかし、それは少年のとんでもない馬鹿力の前では無駄であった。
引っ張られるままに、ベヒーモスの体は少年へと肉迫し、次の瞬間にはアンデッドベヒーモスの体は宙へと投げ飛ばされる。
超重量の魔物を細身の少年が投げ飛ばす・・・なんとも奇怪な絵がそこに生まれ落ちた。
ドゴンッという地面が割れ砕け散る音が響き、幾体ものアンデッドたちを巻き添えにしながらも少年はまだ止まらない。
そのまま引き摺る様にして、回転させる。やがて遠心力によって宙に浮いたベヒーモスは少年を軸にグルグルと回される。
「ジャイアントォ・・・・・・スイィィィィィング!!」
ブンッと再び投げ飛ばされたアンデッドベヒーモスは、尋常ではない速度で地下通路の壁へと激突させられる。
破砕音と地下の一部が崩れ音が通路いっぱいに響き渡り、少年は清々しい顔でフゥと汗を拭う。
アンデッドベヒーモスが激突した壁からは朦々と煙が立ち込め、アンデッドベヒーモスの姿は見えない。
やがて、煙が落ち着きそろそろ見えてくるだろうと少年が落ち着こうとしたその時、煙の向こうから勢い付けて少年へと突貫するベヒーモスが現れる。
さすがの少年にもそれには対処しきれず、真正面からアンデッドベヒーモスの突進をくらい、反対側の壁へと激突した。
アンデッドベヒーモスの頭部は罅割れ、所々欠け落ちている。しかし、鋭く頭部以上に硬い角には一切罅もなく、欠けてもいない。
痛みや恐怖を感じないアンデッドには、ダメージなんてあってないようなものなのだ。体を破壊しても水晶から絶え間なく漏れ出るオーラが癒してしまう。
恐怖を感じないために命を散らすといったことに全く関心を示さず、無謀にも少年に対し己の角を利用した突撃を敢行した。
それは、少年の不意を突き、少年にダメージが入った。
アンデッドを相手取ったことのない者は、一貫してこういったことが多くなるのだ。
熟練の冒険者ならば油断せず対処できたであろうが、これがアンデッド戦初めての少年にはわからなかったのだ。
「グッ!?」
壁に叩きつけられた少年に、アンデッドベヒーモスは尚も角を突き立てようと駆ける。
壁に叩きつけられた少年は間一髪、横へと身を翻し、壁から距離を取る。
通路の固い壁に角が深々と刺さり、ベヒーモスの自重と相まって壁が粉砕される。もしも、これが少年の体に突き立っていたとしたらさすがの少年にもしっかりとダメージが入っていたであろう。
アンデッドベヒーモスは壁に突き刺さった頭部を引き抜き、少年へと向き直る。
そして再び角を前方に駆け出そうとするが、少年がアンデッドベヒーモスの眼前へと突如飛来した。
両腕で二本の角をガッチリとホールドし、上へと振り上げる。アンデッドベヒーモスの体は空宙へ滞空し、そして、少年は下へと振り下ろす。
アンデッドベヒーモスは地面に叩きつけられ、その巨体を大地にバウンドさせ、大地を大きく削る。
「成る程・・・コアを破壊しなきゃダメなのか、面倒くさいなぁ」
少年はもう一度アンデッドベヒーモスを投げ飛ばし、後ろへと跳躍する。
顔には心底面倒くさいという表情を湛えながら、投げ飛ばしたアンデッドベヒーモスを見やる。
ムクリと体を起こすアンデッドベヒーモスに一連の攻撃が効いているように見えない。傷ついた体は水晶から漏れ出るオーラが見る見る内に回復させてしまう。
完全に傷が癒えたアンデッドベヒーモスはまた次の攻撃へと移行する。
「このままじゃ埓が明かないか。並列移行:龍狐」
少年の身体が突如として不定形のそれへと変わる。スライム・・・少年の身体はドロドロとした粘液質の物へと変質する。
そして再び人型へと形状を変え、青色の粘液だった人型のモノは、人のそれへと姿が変わる。
しかし、頭部に生えたピコピコと動く狐耳、臀部から覗くフワフワの尻尾が人ではないことを如実に語る。
少年は閉じていた目をゆっくりと開く。瞳は縦に割れ、黄金の眼差しがアンデッドベヒーモスを見つめる。
黄金の少年魔族がアンデッドベヒーモスの眼前へと、踊りでる。
「妖術:『雷纏』!!ぶっとべぇぇぇ!!!」
少年の姿は掻き消え、アンデッドベヒーモスの上空へと現れる。
右手へ稲光を纏い、バチバチという残響を棚引かせ、アンデッドベヒーモスへと殴りかかる。
一際大きな破砕音が響き、アンデッドベヒーモスが大地にめり込み、硬い頭部に新たな一筋の罅が入る。
それだけでは終わらない、連撃がアンデッドベヒーモスの頭部を集中的に襲う。骨が軋みを上げ割れ砕け散る。
アンデッドベヒーモスの左目の部分は完全に砕け、中から紫の球体が現れる。
しめたとばかりにそれに拳を突き入れようと試みる。
しかし、アンデッドベヒーモスがそれを許さない。
GOAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!
「ちっくしょ!?」
突如少年の体を衝撃波が襲う。アンデッドベヒーモスの破咆哮が間近で金色の魔族に直撃したのだ。
数メートル吹き飛ばされ、それでもしっかり着地する辺り余裕は垣間見えるが、次の瞬間余裕の笑みが消え失せる。
割れて砕け散った水晶が空中へと浮かび上がる。そこから漏れ出す怨嗟のオーラが突如として吹き荒れる。
それはアンデッドベヒーモスの身体を取り巻き、砕けた骨の隙間に流れ込み、怨嗟の声がより一層強く激しい物へと変わる。
GUUUUUAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!
アンデッドベヒーモスの体が隆起し、腐食した皮膚は赤黒く変色し、高質な色を帯びる。
ベヒーモスの特性はアンデッドベヒーモスへも引き継がれる。『狂獣』の肩書きを違えることなく、その凶悪な存在は更に狂悪な存在へと変貌を遂げる。
角は長く金属の様な光沢を帯びた強大な角を携え、金色の魔族を丸々飲み込んでしまえる程に巨大な口、纏めて三人は踏み潰せるであろう太い足、この街に売られている剣全てよりも、切れ味がある業物と称しても差し支えない牙が生成される。
「やっぱりあるよねぇ。それ・・・」
GYUUUUUUUUUURYUUUUUUOOOOOOOOOOO!!!!!!!
猛り狂った狂獣はその巨体を余す事なく利用した突撃を敢行する。その速度は先程の時よりも格段に早く、瞬き一つの間に金色の魔族の眼前へと迫る。
そこいらの鎧より数倍も硬い前足が連続で振り下ろされる。大地は砕け散り、少年の頬や腹を爪が掠って行く。
すんでの所で躱していくが、金色の魔族の額からは冷や汗が流れ落ちる。
「ステータスが殆ど上回ってるな・・・やっばい」
アンデッドベヒーモスが繰り出す一撃の間を縫って、金色の魔族は反撃に出る。
骨の隙間からコアを破壊しようと拳の乱打を叩き込もうとするが、骨は既に修復しており、より硬いモノへと変わっている。
拳が頭部へと直撃すると、ガインと大凡骨を殴ったとは思えない程硬質な音が鳴り響く。
何十発と叩き込むがアンデッドベヒーモスに応えた様子はない。
「チックショーが!?」
またも繰り出されるアンデッドベヒーモスの爪による斬撃と前足による薙ぎ払い。それに応酬するように金色の魔族も己の拳を乱打するが分が悪い。
アンデッドベヒーモスの厚い装甲を金色の魔族の打撃が突き抜けることはない。
「妖術:『雷纏』!!」
バチン、バチンという雷霆を響かせ、明滅を続ける拳からアンデッドベヒーモスの頭部へと正拳突きが放たれる。
手だけが雷を纏っているわけではない。身体全体を覆う様にして走る稲光は足へと収束する。
アンデッドベヒーモスへと対峙する金色の少年は渾身の回し蹴りを顔面へと放つ。ビシッと骨に亀裂が入るが、それだけでは中に入ったコアを打ち砕く事はできない。
アンデッドベヒーモスは頭部から伸びた角を振るい、金色の魔族へと振り下ろされる。
「これくらいなら・・・」
『ダメ!!!』
「ふえ!?」
小さな妖精が急に肩から現れ、金色の魔族を突き飛ばす。
すると、後ろにあった通路の壁はまるで豆腐かバターの様に軽々と切り裂かれ崩れ落ちる。
まるで硬さなど感じさせないように刺し込まれる角は、金色の魔族を求め、宙を彷徨う。
骨の奥、赤紫色に灯る瞳が金色の魔族を捉える。
もう一度角を振るい、金色の魔族の衣服を切り刻み、肌に薄く傷を付けていく。
それでも金色の魔族は臆することなく拳打を叩き込んでゆく、徐々に蓄積していくダメージ量は圧倒的に金色の魔族である。
しかし、コアを潰されれば一撃で滅されるアンデッドにも、コアを守る頭部に徐々に罅割れが増えていく。
OOOOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!
「ッ!?」
とうとう業を煮やしたアンデッドベヒーモスが動く。
お互い決定打に欠け、ジリ貧の状況でこのまま続くとどちらが負けるのか・・・それは金色魔族に軍配が上がっていただろう。
徐々にダメージが蓄積しているとはいえ、見た目とは裏腹に掠り傷や擦り傷くらいしか貰っていないのだ。
それに反して金色の魔族の拳打は徐々に・・・且つ確実にコアを破壊するための道のりを一歩・・・また一歩と進んでいるのだ。
アンデッドベヒーモスの口の端からは、赤々とした灼熱の炎が漏れる。
口を開いたアンデッドベヒーモスの口内には炎が渦巻き、次の瞬間には口内から炎の塊が放たれる。
それはブレスの様な薙ぎ払いに適したものではなく、一撃のみに重点を置いた炎塊。金色の魔族を一撃のもとに屠らんとする全力の一撃が襲い掛かる。
炎塊は一直線に対象へと飛来する。
空気を焼き焦がし、吐き出された炎塊の直径は5m程、自分を丸々飲み込めるであろうその塊に金色の魔族は瞠目する。
顔を顰め、なんとかそれを回避するが、傍を通り抜ける炎塊にチリチリとした痛みが駆け抜ける。
金色の魔族は一旦アンデッドベヒーモスから距離をとり、ゾンビの頭を踏み砕き、空中へと身を踊らせ、地面へと着地する。
GURURURURURRURURURURURURU・・・
赤紫の双眸をギラギラと輝かせ、金色の魔物へと殺気を放つ。
つかの間の平穏・・・いや不穏が地下空間を支配する。
そして、時はやってきたのだ。
少年が金色の魔物が・・・いや、それに関わったもの全てが計画した時が
キチキチキチキチキチ
「アルジ・・・カンリョウシマシタ。アトワ、アルジノ、ミココロノママニ」
「了解。帰ったらハニーフルーツの山盛りを用意しておこう」
金色の魔族はアンデッドベヒーモスに構えていた姿勢を解く。
その異様な姿に、アンデッドベヒーモスも何かを感じ取ったのか、威嚇の声を上げ通路奥へと立つ金色の魔物へと目を見張る。
「完了したのなら、もう抑えるつもりもない。ってことであばよ」
-------------------------------------------------・・・
「これは夢か?」
「違いない」
化物だ。
その一言に尽きる。
奴の強さは一級の冒険者どころの騒ぎじゃない。英雄級の冒険者・・・つまりはSランクの冒険者である。
あの、アンデッドベヒーモスと一人でやりあってやがる。
それも、年端も行かねぇようなガキが、たった一人で圧倒している。
剣も、防具もない。素手とそこいらで売っている服だけでアンデッドベヒーモスとやりあってやがる。
素手で吹き飛ばし、素手で投げ飛ばし、素手で受け止め、アンデッドベヒーモスを圧倒する。
「おいグリスト、お前あんなん出来んのかよ」
「出来るわけないだろう。・・・ここは現実なのか?俺たちはもう死んじまっているんじゃないのか?」
「奇遇だな、俺もそう思ってたところだ」
グリストの瞳はゆらゆらと揺れており、動揺に身を震わせる。
現実味が帯びない空間の中、ゴガンッという地面の破砕音に現実に引き戻される。
自分達が今置かれている現状を理解できない。いや、理解できうるはずがない。
非常識な世界。常識ではありえない世界。超常の世界。自分の目に広がっているのはそういった部類の光景なのだ。
少年・・・スライムだと思っていた魔族が金色の光を帯びた魔族へと変貌し、アンデッドベヒーモスを更に圧倒し、アンデッドベヒーモスが「狂獣」のスキルを発動したのもわかった。
唯、こうなる理由がわからない。わかろうとしない。いや、何度も繰り返すがわかるはずがない・・・。
普通ならあの少年スライム魔族は一撃で地に伏す如き存在なのだ。それが、人の形を装い、己が手で持ってアンデッドベヒーモスを抑え込む。
雷の尾を後ろに棚引かせ、乱打を繰り出す魔族の姿を焼き付ける。
・・・世の中にはバケモンがいるってこたぁ知ってたさ。王国騎士長、聖都神聖騎士団、帝国七爪。
唯、その姿は見たことがなかった。英雄と呼ばれ詠われるその次元の者達の戦闘を。
すると、突然首元を何者かにグイッと掴まれ引き上げられる。
「何しやがッ」
「えぇっと、大人しくぅ、しててねぇ。主人の命令でぇ、上まで連れ帰らないといけないからぁ」
そう言って、二本角の女魔族はアンデッドが犇めく空間を強行突破する。
一度拳を振れば、何体ものアンデッドが吹き散らされ、直撃を受けたものは粉砕されていく。
こいつらも英雄・・・あれを見た後では英雄などという言葉が見劣りしてしまうかもしれないが、一級の冒険者を優に超えてしまうほどの力量を持っているのは間違いない。
つまり、こいつもアイツと同じ化物なのだ。
「おまえ達は一体・・・」
「主人はぁ、すごいでしょう~!!私達が何人でかかっても勝てないんだぁ」
「ははっ、冗談だろう」
「嘘じゃないよぉ、現に」
俺を脇に抱えた女魔族は不満という顔を浮かべ、やがて困った様に息を吐き出し先の言葉を告げる。
「現にぃ、私達のせいで手加減させちゃってるしぃ」
手加減・・・?
この女魔族は何を言い出すんだと、唖然とする。
あんな化け物級の相手に『手加減』という言葉が出てくる等・・・自分の聞き間違いか?
まいったな、耳までおかしくなりやがったか。
「悔しいよ・・・私達はいつになったら主人の横に並べるの・・・」
フンワリとした顔立ちから一変、その女魔族が纏う雰囲気がガラリと変わる。憂いに満ちた目が、虚空を彷徨う。
艶やかな吐息をつき、眦に少しばかり涙を溜めたその表情からは、ざんばらな髪に見合わない気品のある者へと姿を変える。
「主人の本気はぁ、もうすぐぅ、見れるよぉ」
そう言って、奥に見えてきた階段を駆け上がっていく。
もう俺には抵抗する気力すら残っていない。抵抗する気がしないという方があっているんだろうが・・・。
後ろを見やれば、男の冒険者に担がれたグリストは、もうどうすることもできないとばかりに、力を抜きダランと垂れ下がっている。
やがて見えてきた、開け放たれたドアを潜り、夕焼けが辺りを照らす空間が俺達を包み込んだ。
地下の薄暗い通路からいきなり陽の下へと出されたことで、目が焼けるように痛い。当然と言ってはなんだが、俺達を担いでいる魔族達にそんな様子は一切見受けられない。
目が慣れてきた頃、自分の周囲の状況を確認する。
そこは、いつもとは違って人気がなく、全くと言っていい程、生活感が感じられない廃墟も同然の姿を晒していた。
恐らく、俺達のアジトを叩く為に入念に準備したのだろう・・・もう今となってはどうでもいいが、誰が情報を漏らしたってんだ。
すると、前方に広場が見え、待ち構えていたのだろう、脇から衛兵達が姿を見せる。
後ろを見ると、俺を担いでいる女魔族、グリストを担いでいる男魔族、ブラッハとデイドリッヒはそれぞれフードを被った誰かが運んでいる。その後ろからは女魔法使いとローブをまとった集団が続々と続く。
・・・こんなにいたのかよ!?
ローブを纏っていた者達は一斉にそれを脱ぎ捨て、白日のもとに姿を晒す。
それは
「チクショウ・・・全部魔族かよ」
全てが魔族だった。
それも面構えやちょっとした身のこなしから、全員が一級の冒険者を伺わせる。
広場へ入ると。その者達は女魔法使いに何かを命令され、四方へ散っていく。
俺達を担いでいた者達も同様に、人気がなくなった建物へと駆けていった。
俺達は衛兵に即座に捕縛され、広場へと座らされる。
「あー、一体何だってんだよ・・・クソ」
悪態をついてみせるが、誰も反応しない。
唯、俺達が出てきたアジトの出口をじっと見据え、何かを仕切りに話し合っている。
そして
ドンッ!!!!!!!!!!
街は揺れ、俺達が追先ほど出てきたアジトが爆発する。
大地もそれに合わせて揺れ、周りに居た衛兵達もそれに対処しきれず尻餅をついたり、互いの肩をぶつけ合わせる。
何が起こったのだとアジトの方角へと見やるとそこには・・・
「・・・はぁ、もう何だってんだよぉ!!」
「・・・夢だ」
天に届くまでの水柱が上がり、鮮やかな虹を作り出していた。
次話、主人公視点から描かれる真相の裏側です!!
何が『黒翼』を襲ったのか、何故主人公一行はあれほど余裕だったのか、何故あの子達がいるのか!!
次回もどうぞよろしくお願いします!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!!
※活動報告がどうやったら見れるのかわからなかったと読者様から聞き及びました。
方法は一番上にある?「作者:砂漠谷」の名前を押していただくと、私は左上に出てきました。
わからないことがございましたら、どんな些細なことでも構いませんので質問送ってください!!




