現状:暗雲とエルフでした!
暗雲立ち込める展開です!
次話投稿は一週間以内です!
うーん・・・何だか呆気ない様な。
コボルド達を配下に出来たし、オークを撃退できたし・・・。
若干の死傷者は出てしまったが、あの数とステータス差を見ると大勝といって差し支えないだろう。
まぁ、ここに転生した時の事を考えると随分余裕が出来たもんだな。
スライムにボコボコにされ、ウルフに四苦八苦したあの時の俺・・・成長したもんだ。
普通のウルフよりも遥かに強いオーク相手に俺が無双するなんて思ってもいなかった。
・・・この世界でのスライムはこんなにも強いんだろうか?
このウネウネする触手は、こんにゃくを包丁で切るかのようにオークを撫で斬りにしていった。
うーん。この世界の基準がわからん。
まぁあるゲームでは、スライムにランクもあるし、それが高位であれば終盤のステージに出てきてもおかしくないだろう。
だけど、雑魚を倒してレベル上限に達した上でのランクアップ?だ。
対して強くもないと思ったんだけどなぁ。
コボルド達は残ったオークを狩り尽くし、勝利の雄叫びをあげている。
ある者は抱き合い、ある者は武器を振り上げ、ある者は涙を流しながら。
負傷したコボルドをハルウ達に一箇所に集めてもらい、ディーレの魔法で癒していく。
「女神・・・か」
「ユガに眠る古の女神。そして、戦神スライム様いや・・・魔王様なのか」
「どのような方でも構わない。我らが危機に応えてくださった。それだけでいいのだ」
・・・もうなんでもいいや。神でも魔王でも好きにしてくれ。
だがしかし、再三に渡って言ってきたことだが、俺は一般大学生だ。
おい、もう一度考え直すんだ俺よ!!
何がオーク相手に無双だよ、何がコボルドを配下にだよ!
まぁ、ぶっちゃけ楽しいよ。ゲーム好きだし、こういう展開のラノベとかも読んでたし、素晴らしい異世界に転生したんだろう。
だけど、疲れるんだよ・・・一般人の俺が、神だの魔王だのって。
そりゃ、ハルウ達も可愛いし、ゴブリンやコボルドに慕われるのも悪くはない。
でも、俺は元来リーダーやトップとかには向いていない。
頭も良くないし、これといった才能もあるわけじゃない。オンラインゲームではギルドなどに入らず、ソロや友達とやる程度だったし。
そんな俺にこいつらを背負っていけるんだろうか。
異世界に転生したのを、初めこそパニックになったものの、最近では慣れてしまった。ディーレやハルウ達のおかげなのは間違いないだろう。
でも、そうなってくると不安が出てくる。
俺と誓約を交わしてパートナーになったディーレを、主人と慕ってくれているハルウ達を、俺を信じて付き従うゴブリンやコボルドを養い、守っていけるだろうかと。
今はそれが心配だ。
今回の戦闘でコボルドに死亡者が出た。
こんなステータスで生死が決まる理不尽な異世界だ。これからも死んでしまう仲間達が出るだろう。
俺はその責任を背負うことができるだろうか・・・。
そう思うと・・・疲れるなぁ異世界ライフは。
何はともあれオークには勝てた・・・のかな?
でも何か引っ掛かるんだよな。あの時見たマチェットを持ったオーク。
ジェネラルオークがいなかった。
ディーレもそれに気づいていたようで、未だにキョロキョロと周囲を見渡して訝しげな顔をしている。
ハルウ達もやはり気づいている。特に警戒しているユキは、常に周りに視線を巡らせ異常がないかを確認している。
「前に見たジェネラルオークがいないわね」
「イナイ。デカクテコワイノイナイ」
「そうだな。知らないうちに殺っちゃったてこともないな」
ハイパーサーチによって周囲にある死体を探っているが、ジェネラルオークはいない。
マチェットを持ち、オーク一倍威圧感を持つあれが戦場にいて気づかないわけがないしな。
そうこうしているとコクヨウ達がこちらへと駆け寄ってくる。
何かを喋ろうとしていたけど、先にディーレさんの魔法で怪我を癒す。全員オーク達との戦闘で満身創痍となっていた。
「この度は我らコボルドを配下に加えてくださったこと誠にありがとうございます。つきましては、改めて我らの不手際の謝罪を」
「あぁもういいよ。相手も上手だったし、族長・・・だっけ? それの命令だったんだろ?」
「その通りでございます。しかし、それも我らの」
「あぁもういいって! 過ぎたことは気にしなくていい。以後その件については謝罪禁止。いいか?」
「・・・御意」
このメンバーの中で一番堅いのはやはりソウカイだ。地面に膝を突いて、謝罪の言葉を述べている。平謝りなどではないのは表情や尻尾を見ればわかる。
コクヨウ、ルリ、キクも膝をついて敬服している。
「えっと、聞きたいんだけどさ。マチェットを持ったハイオークよりも大きいオークを見なかったか?」
その言葉に、コクヨウ達は他のコボルド達と顔を見合わせ、首を振る。
誰もそんなオークを見ていないのだろう。誰もがわからないといった顔をしている。
「前にオークの群れを見た時、ジェネラルオークってのがいたはずなんだけどな」
「なんと!?」
「それはほんとですか!?」
ソウカイとコクヨウが驚きに目を見開く。ルリとキクも、眉根を寄せ不安そうな顔を見せる。
コボルド達は終わったはずの戦闘がまだ続くことに耳を折り、落胆している。
「ジェネラルオークって・・・ハイオークなんて比べ物にならないほどの上位個体じゃない・・・」
「アタイ達じゃ束になっても適わない・・・」
コボルド達を暗い雰囲気が覆い出す。
それほどにジェネラルオークという魔物は脅威なのだろう。
ハイオークでさえ、コクヨウ達をあれほどまでに追い込むことができるのだ。それをはるかに凌駕しているとなると、いくら俺の配下になった補正があろうと難しいだろう。
・・・なんだろうな。何かまだ引っ掛かるな。
そういえば、ハイパーサーチでジェネラルオークのステータスを確認した時、知性は低いと出ていたが、この戦闘を見るにそれはありえない。
一体どこへ行ったと言うんだ?
「伝令!! 西からゴブリンの部隊を確認。内一個小隊がこちらへ先行しております」
「・・・了解した。御方、ジェネラルオークについては、まずゴブリンとの合流の後話し合いましょう」
「まぁ、それが一番かな」
ここでの戦闘は終わったが、まだジェネラルオークという懸念が残っているだけに、油断は許されない。
先行しているゴブリンの一個小隊はボス、基いショウゲツが率いている。
ショウゲツ達はオークの死体をかき分けながら、コクヨウ達コボルドの下へと歩み寄る。
配下に加えた時よりなんでかわからないが、体が大きくなっているゴブリンはコボルド達と変わらない体躯になっている。
「同盟を組んでいるにも関わらず、遅くなってしまい申し訳ない」
「いや、此度の件はこちらに非がある。お主らゴブリンに非はない。こちらこそ申し訳なかった」
お互いに頭を下げ、腹を見せる。ちょっと待て、腹を見せるのは種族共通なのか!?
俺も腹を見せ・・・いつも素っ裸だったな俺は。
「お互い御方に仕える身として、共に戦おうぞ」
「そうだな。神様に仕える一番の忠臣として、心身果てるまでお力添えするつもりです!」
「おやおや、一番の忠臣とは言い過ぎじゃな。一番はわしらじゃ」
「「ハハハ冗談がうまいようで・・・・・・あ?」」
会って急にこれかよ!?
ソウカイとショウゲツが合流して数十秒で衝突してるぞ!!
これから一緒に闘っていくんだから仲良くして欲しいんだけど。
コクヨウ達がどうしようかとオロオロしている。
「おっと、ここで言い争ってる暇なんてないんだった。神様にご報告があります」
うむ、よきにはからえ我は神である。
・・・・・・久々に泣きそう。
「我がゴブリン部隊の斥候から情報が寄せられました。ジェネラルオークと思われる個体を発見致しました」
「見つけたのか! で、どこにいるんだ」
「最後に見たジェネラルオーク達は、南下していたとのことです」
ゴブリンの斥候がジェネラルオークを発見していたらしい。
なんでもジェネラルオークは、配下のハイオークを十匹近く、オークを百匹程引き連れているらしい。
やっぱり殺されていなかったらしい。
でも南下か・・・確かユガの森では北部に行くにつれて強くなるんだったよな。
西部と東部に居た、コボルドやゴブリンを倒している所を見るに、今更南部に行く必要なんてあるのだろうか?
レベル上げなら、西部にで行えばいい。領地の拡大・・・なら何故先に攻略し難い西部から襲ったのか?
「ジェネラルオークは恐らく北部からやってきたものだと思います。我々の集落が襲われた時、奴らは北部から襲来しました」
なるほど、なら進路的に西部から南部へ? いや、まず領地拡大ではないと思う。まず、そんなことをする魔物がいるのならこの森のバランスはとっくに壊れているはず。
ならなんだ? オークの行動原理として考えられるのは、力、領地そして・・・。
繁殖なのか?
でも今回戦闘したオークの数からして繁殖は行われている。
なら・・・まだ何かが引っかかるんだよなぁ。
ん? 頭の中に何かが過った。
そういえば昔何かのゲームでやったことがある。
強い個体と強い個体を組み合わせれば、強くなる・・・。
そうすれば「力」も手に入るし、うまくいけば「領地」も「繁殖」もできる。
「一つ聞きたいんだが、繁殖するときに相手が強いと、強い子が生まれたりするか?」
「はいその通りですね。親の性質を強く受けた子が生まれ、種族差なども現れます」
なるほど、やっぱり強くなるみたいだな
でも南部で強い個体なんて・・・
「・・・・・・ッッッ!?」
待てよ。南部、繁殖、強い個体、親の性質を受け継ぐ・・・。
まさか、ヤバイぞ。
今俺の頭の中に浮かんだ事が合っているのなら、最悪の事態が起きかねない。
南部で強い個体といえばあれしかない。
性質的にも優れていて、ディーレさんと出会えた要因でもある一つ。
できれば思いつきたくなかった、いや・・・出会いたくなかった。
「全配下に告ぐ!! 隊列を組み直して、直ぐ様南下するぞ!!」
「どうされましたか神様!?」
「何か合ったのですか?」
「ジェネラルオークの行き先に心当たりがある」
「そ、それはどこなのですか!?」
決まっているひとつしかない。
「エルフだよ!!」
ユガに降り注ぐ繁栄の光を一身に受け、森の木々が風を掴みとりざわめき始める。
ユガに存在する数多くの精霊が、光となって現れ始める。
水の細流に合わせて、精霊は踊る。
そこに住む者達から見れば、それは幻想的であり、生命の象徴だと知る。
そして、そのユガの大地に周りとは一風変わった地が存在する。
その周辺だけに大きな樹が群生している。その樹の枝は太く、人が5人程広がって歩けるくらいの大きさを持っている。
その上には小さめながら、家のような住処が造られていて、それから伸びるように蔦で橋が作られ、様々な木々へと繋がっている
その上を歩くのは耳が長く尖っており、精霊を引き連れ歩く森の住人「エルフ」である。
「エルフ」とは、大地の恵みに身を委ね、森の恩恵に頼り、そして森にそれ相応の対価を支払う。
精霊と共に生き、森と共存する。人と妖精の間に生まれし存在。
言い伝えでは精霊が人を愛し、人の子を身篭った末生まれたのがエルフと言われている。
故にエルフは精霊との交信を容易に行い、精霊魔法も行使できる。
森の中での生活は、精霊魔法を駆使することで衣食住を確保している。
木の葉を精霊魔法により衣服へと変化させ、住処も精霊魔法により森に損害を与えることなく形成している。
エルフは温和な種族ではあるが、戦いの術を持っていないわけではない。
食を得るためには、戦いも必要なのである。森の獣を狩るために、魔法や短剣、弓矢などを使う。森を荒さんとする魔物にはそれを駆使しての戦闘も行われている
別名「森の防人」と呼ばれる彼らエルフは、その名のとおり森に害を齎す者には容赦ない。精霊を介しての魔法で付与、攻撃、回復様々な局面での戦闘を可能としていた。
エルフが用いる精霊魔法は、生活、戦闘、文化と様々な方面でエルフを支えている。
エルフの文化は精霊に対してのモノが多く、食事の際や何かの行事が行われる際には必ず精霊に関した事が成される。
そしてもう一つ。自分達・・・エルフ以外の種族とは関わらないである。
エルフ以外と関わりを絶つのは何百年も昔にあった戦争が関係している。
当時エルフ達が作り出す資源は、魔族と人族を共に潤しており、両者とともに共存していた。
しかし、それは戦争によってあらぬ方向へと用いられるようになってしまった。
人々は精霊魔法によって作られる物を兵器として活用し、魔族は精霊達を要求した。
それを憂い、中立を取ったエルフは、人と魔の両者から聞かぬならと攻撃され、その数を減らしていった。
元々長命であるからして、率先して子孫を残すようなことをあまりしないエルフにとって、それは種族の存亡をかけることとなった。
散り散りになったエルフ達は、森に潜み、精霊達を駆使することによってなんとか滅亡だけは免れた。
しかし、その大戦の終結後、精霊は弱り、自らの力を出し切ったエルフ達は、本来の力を失ってしまった。
そして、人と魔の両方との交流を完全に断ち、関わりを持たないという文化・・・ルールが設けられた。
人魔対戦から何百年も経っている今、確執は徐々に薄れつつあるとはいえ、彼らは未だに外の世界に恐れと恨みを抱いている。
蹂躙され、陥れられ、陵辱され、執拗なまでに攻撃された因縁は、今も深くエルフ達に根付いている。
そして、散り散りになったエルフの内の一つがユガに里を作った。それがここである。
魔物は比較的弱く、森の恵みは多く、精霊も多く存在する。
エルフにとっては一番良い環境であろう。
難点といえば人が住む場所が近いということ、しかしそれも結界を張ってしまえば済む話。里に張られた結界は並みの魔物では通れるはずもなく、平和な日々を過ごしている。
しかしゆっくりと脅威は近づいている。
忍び寄る足音に気づかずエルフは・・・ミリエラはいつも通り森へと発っていた。
次回は久々に「ミリエラ」と「サテラ」の出演です!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想なども気軽にどしどし送ってくださいね!
活動報告(私の雑談場)の方にもコメントどうぞ!