現状:オークへの反撃でした!
主人公乱舞です!
次話投稿は一週間以内です!
・・・ないわー。
今現在自分に猛烈な疎外感を感じている。
厨二モードを使うと大量の精神力を持っていかれるのだ。
言った後の後悔は計り知れないものがある。
自分の発言に身悶えさせながらなんとか立ち直ることができたのはいいけど・・・
次の問題がなぁ。
かっこつけて「我に続け」なんて言ったはいいものの、状況は一切好転していない。
オークの数はコボルドに比べて遥かに多く、怪我を負ったコボルドもいる。ディーレで治すには時間がかかる。
オークにあそこまで追い詰められていたし、その時間を稼ぐのも難しいよなぁ。
俺が参戦したところで何か変わるわけでもないだろう。
ウンウン考えていると、ディーレの魔法で流されて行ったちょっと大きめのオークが体勢を立て直してこちらに襲い掛かってくる。
くっそ、もうちょっと待ってろよ。
オークというのは知能が低いから仕方ないのか・・・。
ディーレさんが魔力を精霊力に変換し終え、片手に待機させる。
先頭を駆ける大きめのオークに呼応するように他のオーク達が怒りを顕にし突撃を仕掛ける。
それはさながら津波にのような怒涛の勢いを思わせた。
大地から立ち昇る土煙がオーク達の突進をより一層際立たせる。
考えが纏まっていない。結構やばいんだけど、取り敢えずは・・・。
「ディーレさん。殺っちゃって下さい」
「行くわ」
ディーレの手に練られていた精霊力が、俺の体へと一気に流し込まれる。
魔力や精霊力というものを初めは無意識で使っていてよくわからなかったが、今では知覚できる。
体の中に人間とは違う、器官があるのだ。どんな器官?と言われるとわからないんだけど・・・。
それを何らかの力で、自分の思い描く物の形にすると、魔法というものが行使できる。
無意識でも発動できたけど、意識してやると威力が強くなった。
ディーレ曰く、それは魔法の真理だという。理解し、行使するには結構苦労するそうだけど、簡単にできてしまった。
それはともかく、ディーレから送り込まれた精霊力を更に練り込み、魔法をイメージする。
精霊魔法「水の心得」はイメージするだけで、水に出来うる現象を引き起こすことができる。その代わり氷にしたり、水蒸気にしたりなど、水を変質させることは出来なかったりする。
精霊力や魔力によって引き起こせる現象は様々である。
今回イメージするのは、圧縮した水の砲弾。膨大な水を、高圧縮するイメージを頭の中に反芻させる。
練り上げた魔力が持って行かれ、眼前に魔力の塊が出現し、渦を巻く。
やがてそれは一つの圧縮された水塊となる。大きさは直径1mくらいで、塊の中で水が荒れ狂っているのが分かる。
通常の魔法は詠唱などがいるそうなんだけど、精霊魔法はいらないという。その点で言えば便利だ。
「「行け!!」」
ディーレと俺の制御によって空中に留まっていた水塊が前方へと射出される。
先頭を走る大きめのオークへと一直線に飛来したそれは、恐ろしいまでの魔力を爆散させる。
高圧縮された魔力を含んだ水が解放され、周囲に水の凶器をばら蒔く。
先頭を走っていた大きめのオークは爆風と水の直撃により爆散。後ろを走っていたオークにも水の脅威が襲い掛かり、その身を爆ぜさせる。
オークの進軍は突然の惨状に終わりを告げる。
最前線を走っていたオークの死をきっかけに、後ろに続いていたオーク達が浮き足立つ。
すると、倒れていたこれまた少し大きめのオークが起き上がる。
そういやさっきコクヨウと戦っていたちょっぴり大きめのオークがいたような・・・適当に触手を刺したから死んでなかったのか。
「御方、ここは俺が引き受けましょう」
「ん? さっき結構やられてたけど大丈夫か?」
「御方に、無様な姿ばかりを晒すわけにもいきません。ここは俺が」
「そ、そうか。んじゃ宜しく」
「は!!」
別になんとも思わないんだけど、まぁいいや。
コクヨウは俺に一礼すると、立ち上がった大きめのオークへと静かに歩み寄る。
後ろ姿しか見えないが、その毛並みは逆立ち、身体からは魔力が漏れ出ている。
さっきまではこんなことなかったし、誰かの配下になると補正が掛かるんだろう。俺のステータスに比例しているのかな?
「御方に我らの忠誠を見届けて頂くために、貴様には贄となってもらうぞ」
コクヨウが腰に下げていた刀を抜き放つ。
薄らと紫の刃紋を浮き上がらせ、蒼いオーラを放つそれをオークへと突きつける。
贄とはこれまた物騒な・・・俺は魔王か何かなのだろうか。
ゆっくりとした動きで刀を構え、オークへと歩み寄る。
その動きは先程までの動きとはまるで違うことが分かる。
“称号「剣豪」を習得”
“並びに、「進化の系譜」最終適応パーセンテージを表示します。適用率「5%」”
“進化の系譜の構築が終了。以後全てに適用されます。”
またナビちゃんが暴走してる。うん、ほとんど理解できない。
剣豪はなんとなくわかるんだが、「進化の系譜」ってなんなのか? まぁいつかわかるだろう。
「参る」
コクヨウが駆け出す。一瞬にしてオーク大の眼前へと迫るコクヨウに、オークが片手に持った斧を振り下ろす。
それにコクヨウは刀を振り上げ、斧を弾き飛ばさんとする。
刀と斧が接触する。たったの一撃、それだけでオーク大が持っている斧が砕け散る。
「俺達の獲物はコボルドの命。心が折れない限り、獲物が折れることはない。そして、貴様に押し勝てたのは・・・俺達コボルドの御方への忠誠の証だ!」
振り上げられた刀を、振り下ろす。
オーク大は咄嗟に後ろへと飛び退くが遅い。
腕を切り飛ばされ、後ろに下がることを読まれていたのか、下がった分だけ詰められた。
「スキル:スラッシュ!!」
刀から漏れ出ている蒼いオーラが勢いを上げ、刀に纏わり付く。
横薙ぎに振られる刀にオーク大は為す術もなく体を両断される。
臓腑が飛び散り、行き場を失ったオーク大の足はその場に崩れ落ちる。
それでもオーク大は死んでいない。下半身を失いながらも、上半身だけで逃げようともがく。
GYURUUAAAAAAA!!!
情けなく悲鳴をあげながら、訪れる死から逃れようとする様をコクヨウは見下ろす。
刀を構え、一切の情けなく振り下ろす。
「死んで我らの同胞に詫びるがいい」
頭を一刀のもとに切り伏せ、脳漿を飛び散らせたオーク大は絶命。
自分の刀を付着した血糊を、刀を強く振り吹き飛ばす。
やべぇ、かっこいい。それに比べ俺の厨二は・・・
「どうされましたか!?」
落ち込んでドロッと体を溶けさせた俺の下へ、コクヨウが飛んで帰ってくる。
尻尾が垂れ下がり、本当に心配しているのが分かる。君のせいだよ・・・。
「大丈夫だよ。よく頑張ったな」
「この程度、御方の配下として当然のこと!!」
「お、おう。そうか・・・」
すごい尻尾振ってる。嬉しいんだろうなぁ。
尻尾のあるやつはどれもこうなのだろうか。ペットみたいで可愛いな。
触手で頭を撫でると、さらに尻尾を激しく振る。
なんだろう、後ろからものすごい冷たい視線が突き刺さるような気がするのだけれど。
ディーレも落ち着かない様子で後ろを見ないようにしている。
「撫でて貰える・・・ヤルしかないわね」
「褒めてもらえる・・・アタイ本気出す」
「忠誠を示せる・・・老骨に鞭を打つかのぅ」
「「「認めて貰える」」」
「ゴホウビモラエル」
・・・あれ? なんかヤバイ気配が背後から漂ってくるんだけど・・・。おい、ハルウ?
「「「突撃」」」
オオオオオォォォォォ!!!!!
全コボルドの咆哮が森の中にこだまする。
己の獲物を抜き放ち、一斉に突撃を仕掛ける。
体から溢れ出る魔力が尾を引き、混ざり合い、一つの本流がオーク達を襲う。
中にもう一体居たオーク大は、ソウカイ、ルリ、キクの三匹に袋叩きにされている。
オーク大の振りかぶった幅広の剣をルリが薙刀で弾き返す。そして逃げられないようにソウカイが小太刀で足を切り刻む。止めとしてキクが正拳を腹部に突き入れる。
体をくの字に折り曲げたオーク大は何匹ものオークを巻き込み、はるか向こうまで吹き飛ばされる。
キクの手には鉄甲が嵌められており、赤いオーラを放っている。
赤いオーラが収まると、そこには紫の線が走った肘まである鉄甲が現れる。
薙刀に紫の刃紋、小太刀にも同じ紫の刃紋が浮き出ている。
俺の配下に加わると、どこかしらに紫や赤の紋様が入る。何かあるのだろうか?
すると、キクが振り返りこちらに駆け寄ってくる。
尻尾をブンブンと振り乱し、キラキラとした目を向けてくる。その態度は何をして欲しいかを雄弁に物語っている。
「アタイやったよ。褒めて」
「あ、あぁ。良くやったね」
喉元をさわさわすると、気持ち良さそうに体を預けてくる。
ペットはこうすると喜ぶんだよなぁ。
「あぁ、ずるい!? 私も頑張った!」
「感情を抑えられないとは・・・まだまだ子供よのぅ」
ルリもこちらへと駆け寄ってくる。同じように喉元をさわさわしてやると、フニャンと顔を蕩けさせる。
ソウカイ・・・尻尾が感情を抑えられていないですよ。
触手を伸ばしてソウカイも撫でてやる。
「・・・」
「ふわ~」
「こ、これしきの。う、うぬぅ」
三匹は至福といった感じに顔を綻ばせる。
キクは無言で体をフルフルと震わせ、ルリは欠伸しながら気持ち良さそうに体を摺り寄せてくる。ソウカイは離れた場所で、体をピクピクさせながら何かに耐えている・・・尻尾は暴れ狂っている。
サボってやがる・・・。
触手を離すと、残念そうな顔をしながら尻尾を垂れ下げる。
さっきまで大ピンチだったのに余裕だなぁ。俺が来て安心したのだろう。
「つ、次はまたな。さぁやるぞ」
「「「仰せのままに!!」」」
またな。という言葉にパッと顔を明るくし、己の武器へと手をかける。
そして、また戦場へと躍り出る。
コボルド達の進撃は止まることを知らず、オークは突如豹変したコボルドの猛攻に耐え切れず瓦解する。
コボルドの目に宿った闘志を持ってオーク達を屠っていく。
剣戟が響き渡り、大地にコボルドの爪痕が刻まれていく。
コクヨウ達四匹が散っていった場所は特に前線が開けていく。
飛び散るオークの残骸が場を埋め尽くしたとき、それが響き渡る。
「後方から多数のオーク発見!! 交戦に入ります!!」
さてと、行くか。ナーヴィ、ユキ、モミジが寂しがっているだろうしなぁ。
「前はコクヨウ達に任せて、後ろに行こうか」
「魔法の準備はしておく?」
「ディーレさんは負傷したコボルドの治療をお願いしたいかな。任せていいかい?」
「私だけ除け者・・・」
おっと、ディーレが頬を膨らましている・・・かっわいい。
どんな我が儘でも聞いてしまいたくなるディーレの膨れっ面を前に、跳ね除けられる男がいようものか!!
「わかった一緒に行こう!」
「流石私の誓約相手、わかってるわね! (にやり)」
ダメなのはわかってるけど、かわいいは正義だから仕方ないね。
なんだかニヤッとしたような気がするけど・・・気のせいだろう。
ハルウの背中に乗って後方へと走る。
ディーレに魔力を流しながら、戦闘準備を整える。
触手を死鎌に変化させて、何十本と待機させる。
すると直ぐに、オーク達と交戦しているコボルド達を発見する。
現在コボルド達の陣形は、前衛、中衛、後衛と三つに分かれている。
前衛はコクヨウ率いるコボルド軍団、中衛は負傷者、後衛はナーヴィ率いるコボルド軍団となっている
周囲掌握で数を確認すると百余体。
内二体がハイオーク?だそうだ。
オークの上位個体か・・・俺に倒せるだろうか。今まで上位個体とは戦ったことがないからなぁ。
で、ハイオークはどれだ?
少し離れた場所でナーヴィ達がオーク大と戦っている。
あれ? よく見てみると、オーク大の名前の上にハイオークと書いてある。
もしかして俺が突き刺したり、魔法で爆発四散させてたのがハイオークだったのか?
・・・やっぱり元々が弱いから上位個体も対して強くないんだろう。
「ナーヴィ、ユキ、モミジ引け!!」
ハイオークが振り下ろす棍棒を掻い潜り、牙を突き立てていたナーヴィが俺の声で後ろへと飛びずさる。
周りのオーク達を蹴散らしていたユキとモミジは、距離をとりながらも近づいて来るオークを食い散らかしている。
爪で引き裂き、牙で抉り、物怖じせずオークに踊りかかっている。
そういえば・・・心なしか、ハルウ達が大きくなっているような?
まぁ気のせいだよな?
それはさておき、こっからは俺の出番とさせて貰おうか。
なんでかよくわからないが、さっきから異様にムシャクシャする。
別にイライラする事なんてなかったはず・・・
視線の先に地に伏したコボルドが映る。
・・・これだな。今俺の中に堪え難い感情が生まれる。
会って少ししか経ってないとは言え、訓練の時には一緒に会話して楽しんだ仲だ。
気さくに話しかけてきたコボルドがいた。忠誠を誓いたいと尻尾を振ったコボルドもいた。
なんせ今は・・・俺の配下だ。
誰だ? 俺の配下を傷つけるのは?
この感情をどうも自分は抑えきれそうにない。
てことで・・・オークにぶつけさせてもらおうか。
「死鎌!!」
数十本もの触手がオークの群れを駆け巡る。
舞い散る血飛沫、四肢が空を覆い尽くす。
オークの命を刈り取る鎌が、大地を駆け狂う。
何本もの赤い閃光が大地を埋め尽くす。
俺はあの日、愚かにも御方に楯突いたコボルドである。
後方から襲い来るオークを蹴散らしていたが、ハイオークの猛攻を止められず、押されていた。
だが、その戦況は一変した。
南部に生息する最弱種、それと同等の弱種であるはずのスライムとウルフが・・・我々を苦戦させたオークをものともせず、たった五匹でまるで赤子の手を捻るように大量のオークを屠っている。
この戦いは絶望しかなかったはずだ。負けて、我々は滅亡するはずだった。
多くのオークを沈めてきた我々だったが、その猛攻を止めるには至らなかった。
だが、御方がこの戦場に現れて全てが塗り替えられた。
特異の先輩方でさえ手を焼いたハイオークを蹴散らし、我らに力を満たし、そしてその力を示してくださった。
我らの希望は、夢は実現したのだ。
この戦いでは全員が思った。たとえ御方であっても勝てるはずがない・・・と。
ステータスで負け、数で負け、さらに上位個体が何匹もいるこの状況を覆せるはずがないと。
だが、御方は容易く我らの予想を覆した。
「これが、我らの主君か」
一匹のコボルドが漏らしたその一言に、誰もが前線で猛威を振るう御方へと視線を向ける。
尊敬、憧憬、感謝、忠誠、畏怖・・・。様々な感情がコボルドの中を渦巻く。
そう。これが我らの忠誠を捧げた者の御姿。
その身を血より赤い緋に染めたスライム。
閃光の如く触手を振るい、オークの残骸の山を築いていく。
それに続くウルフは、殺りきれなかったオークを蹴散らしていく。
戦場を舞うように駆け抜けるウルフの背に乗ったスライムが、進む道全てに死を振り撒く。
オークが振り下ろす棍棒ごと切り裂かれ、押し潰そうと体当たりを仕掛けると、微塵になるまで切り刻まれる。
集団で襲い掛かろうとも結果は同じ、それどころかオーク達の被害は増えるばかりである。
吹き飛ばされ、他のオークを巻き込みながら、吹き飛ばされ切り刻まれる。
オークが密集する地帯へは、膨大な魔力を含んだ水塊が現れ、辺りを木っ端微塵に吹き飛ばす。
肩に乗っている高位の精霊から放たれる魔法は、百匹いたオークを一瞬にして数を激減させる。
ハイオークであっても五匹の進撃を止めることはできない。
襲い来る死の触手を片手に携えた棍棒で弾くが、それを意にも介さず次々と襲い掛かる。
それに意識を取られているとウルフ達の牙と爪がオークの分厚い皮膚を抉る。
そして自己回復が終わる前に、御方の触手にて地面に縫い付けられ、最後には高位精霊の放つ魔法にて跡形も残さず消滅させる。
「御方はユガの遣わした使徒・・・いや、ユガの神そのものかもしれん」
そして、最後のオークが触手にて貫かれる。
ユガの大地に広がる無数のオークの死体。その先に、血色に染まったスライムとウルフが君臨する。
この森に古くから存在する神の如く、その御姿はとても神々しい。
御方に我らを捧げたことは間違いではないだろう。
あの日振り下ろされたのが、あの刃であったなら、我らはあの場で全滅していたであろう。そう考えると恐ろしい、しかし今目の前に佇む御方は我らの主人。我らの全てを包み込むユガより広大な強さと慈愛を兼ね備えた我らが主人なのである。
命を賭してでも付き従い、我らが生涯を捧げる御方。
我らコボルドは変革の時を迎えているのだろう。先程から体がムズムズするのはそれに違いない。
御方がこちらに振り返り、口元?を釣り上げ、告げる。
「勝ち鬨だ!!」
ユガの森に我らの雄叫びが響き渡り、大地を、森を、空気を振動させる。
オーク共との長い戦いの終わりを告げ、戦の勝利をここに宣言した
ジェネラルオークはどこいった?
次回にまたまた波乱の予感!?
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
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