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商戦:忍び寄る謀略の影でした!

多くのブックマーク・ご視聴ありがとうございます。


反撃の足音はもはや背後にまで迫っていた。




京都アニメーションで起きた凄惨な事件、亡くなられた多くのクリエイターの方々に心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 side 商人ギルド筆頭:ベルモンド


「なんだと? どういうことだ?」


広い部屋の一室、ワイングラスを片手に齎された報告を聞いて顔を険しくする。この街での商売は順調に機能している・・・目障りな魔族の流入も段々と減り、特にあの大森林などと言う地からやって来る魔族は一切この街に姿を見せなくなった。

あれには手を焼かされたが、面白いくらいに我々の搦手に引っ掛かり、結果奴らと結託した者達諸共制裁を下しておいた。


・・・そして、漸くそれらも落ち着いた時に何だというのだ。


「メルデッサの港から上がって来る筈の物資が大幅に減少しており、どうやらそれが続いている様なのです・・・」

「船の数を増やせばいいだろう。いちいち私に報告するまでもないではないか」

「そ、そうなのですが、どうやら港に停泊する船が多く船を増やすこともできず、また搬入自体も港の協会にどうやら大口の契約先ができたやらで倉庫の保有量を減らされてしまい」

「フンッ! そんなもの金を積めばどうにかなるだろう! 協会の上層部の者達に金を振りまけばいい」

「わ、わかりました」


無能を持つと嫌になる。我がカッツァ商会はこの国を中心に数多の商人を束ね、いくつもの街の商売の覇権を握る大手のギルドだ・・・金で解決できないものなどあるわけもない。金を積み上げても首を縦に振らないなら別の者達に金を積んで圧力を掛けてやれば彼方側も首を縦に振らざるをえなくなる。


取り扱うモノは多岐に渡り消費物から建築、娯楽に至るまで各種取り揃えている。今や屈指の商人ギルドと言っていいだろう・・・ここまで成り上がるのには相当な時間が掛かったと言える。

商人ギルドを設立した当初は数多の商売人達の目の敵にされ負債を抱え込む日々が続いたが、あの(・・)商売を見つけてからというものの我々の懐は急激に温まって行ったと言えるだろう。

我々を鼻で笑いふんぞり返っていた商人達をかしずけ、有象無象の商人達から土地と権利を奪って商売を行い、結果今我々の商会には莫大な資産が眠り、運営を行う商売から金を巻き上げてその資金は着々と増えていっている。


・・・だというのに、つい最近、王都で行っていた一番の稼ぎ頭だったあの(・・)商売が一瞬にして瓦解したのだ。騎士団にてあっという間に鎮圧され、商売道具達には全て逃げられ顧客は我先にと身を隠し、危うく我々商会が騎士団につぶされかねない状態にまで陥りかけたのだ。

その時はギルドの一人を身代わりとして表に引き立て騎士団による裁きを受けさせたが、今後王都内では表立った商売を行うことは不可能だろう。


まさか王都でも一番と名高いあの騎士爵の名家が出張って来るのは予想外だ・・・あれらには金の力もましてや権力も通用しない。だがしかし、その騎士爵に狙われる原因となったのは我々の商売のせいではなく、好き勝手やりおった魔族が原因だ!!

その魔族は常に三人で覆面を被っており、我々の商館へ姿を見せると突如として襲い掛かり、商売道具を全て逃がして従業員達をわけのわからない言葉を叫びながら恐ろしいまでの力で叩きのめしたと報告には上がっていた。


「忌々しい・・・」


散々暴れまわった魔族は我が商館の半分以上を制圧した後に姿をくらました・・・そして、次いでやて来たのは騎士爵による掃討団だ。成す術無く全て差し押さえられ、取り押さえられ収入源とコネが一瞬にして失われてしまった。

多くの貴族の顧客、他国に出していた商売道具による販路・・・そして信用も一瞬にして地に墜ちたのだ。


そして仕方なくこの街にやってきたらば、自分の目を疑ったものだ。疎ましい魔族共が跋扈する街を見て絶句した・・・それと同時に王都で行われた魔族の蛮行を思い起こさせ、人の住む町から魔族を徹底的に排除してやろうと思い至ったのだ。

結果は成功だ・・・方々への手回しのお陰で資金は多少減ったが、流石にもうあの魔族共も手が出まい。


「報告です!! ま、魔族の大群が街の前に・・・この街に入りたいと列をなしています!! その数凡そではありますが500以上はいるかと思われます!!」

「ど、どういうことだ!!」


窓の方へと走り、急いで窓を開け放つと街の入り口の前に大勢の魔族の姿があった。城門にいた警備兵達はそれの対処に追われて門の前にたむろする魔族達に付きっ切りになっている。

だがしかし、この街には魔族にだけ高い税を設けている・・・それを払ってまで街に入る理由などあるわけもなく、ましてやあれだけの大群が此方に来るのはおかしい。


「そ、それに加え、商売特区北部にて魔族達が多数の露店を構えており、そちらに住民が流れて行っている様です。更に、我々が管理維持している北、東部につきましては冒険者や魔族の問題が多発しておりもう手の施しようがありません。警備兵も足りず・・・」

「バカが、そんな時の為の奴等であろうが!! 即刻魔族の店を排除してしまえ!!理由はでっち上げてもいい、此方であとはなんとでもする!!」

「それができないのです・・・」

「なに!?」

「現在街の巡回に出ていたはずなのですが・・・その、傭兵達は慌てた様子で巡回から戻ってまいりまして。どうやら、街に帝都の騎士達がやって来ているようなのです」

「バカな!? この時期は隣国との戦争を行っているはず・・・クソッこんな時に役に立たない無能どもが!!」


狼狽する・・・。傭兵達が動けないのは先の戦争の勝利国である帝都の騎士達が街にやって来ているのが原因だ。もし見つかりでもすればその場で打ち首にされる事もあり得る。

それに今奴らが捕まってしまえばその雇い主である我々商人ギルドにも飛び火するのは目に見えている・・・無能と捲し立てても今は身を隠すほうが最善の手法であるのはわかっているが、こうも立て続けに自体が重なるとは・・・。


これも全部王都の・・・いや、魔族が原因だ!!


このまま魔族を野放しになどできるはずがない。我が商人ギルドが舐められているとあっては此方も黙ったままでなどいるわけがない。

あの魔族たちは十中八九森からやってきた魔族たちで間違いないだろう・・・ならば、あれらの魔族に何か言い掛かりをつけてこの街から即刻退去させてやればいい。いや、それだけではまたこの様なふざけな真似をしでかす可能性があるからして、この国にいられなくなるような重大な過失を背負わせてやればいい。


「よし・・・おい、裏の魔族を雇って誰でもいいから人間を一人殺させろ。そして、直ぐ様その魔族をひっ捕らえてあの魔族の群衆の一人だったと言ってしまえばいい」

「承知しました」


慌てて部屋を出た使用人は早速金に飢えている魔族を探しに行く・・・血の気の荒い魔族のことだ、金をぶら下げてやれば直ぐにでも食いついてくるだろう。

前回は中途半端で此方が引いてやったが、今回だけは根元から引き抜いて完全に此方に手を出せないように徹底的にやってやらねばならんな。所詮は人間様の泡銭であそばされる愚かな魔族どもだ・・・そんな泡銭を操る商人ギルドを敵に回したことを後悔させてやる。遅かれ早かれあの森の魔族達に一切関われない様にするのは決定事項だったわけで今回はそれが早まっただけのことだ・・・準備もすでに整っている。


奴らの森を行き来する行商人達には流言を飛ばし今やあの森に向かう商人は極僅かだ・・・それも魔族に襲わせでもすれば奴らの信用は一気に地の底にまで落ちる。

それに、そんな面倒な手を加えなくても奴らが何を欲しがっているかなど此方は既に把握しているのだ・・・その産業を買い叩いて、不良品を掴ませ金を吹っ掛けてやれば懐も潤い、尚且つ魔族を押し込めることもできて一石二鳥だ。


その為の招集がちょうど今日だったのだ・・・あの魔族共の最後の足掻きも無駄に終わるのは間違いない。帝都の騎士が来ているというのは計算違いだったが、それも誤差というもので気にする必要もない。


「これで魔族共に引導を」


そう呟いた瞬間、バンッ!! と勢いよくドアを開け放たれワインを持っていたグラスを危うく取り落としかけた。

驚いて開け放たれたドアの方を見つめるとそこには招集をかけた商人たちの列があり、皆が皆焦った様子で悲壮な顔を浮かべながら自分を見ていることがわかった。

招集をかけたのは日が真上を通り越し少し傾いた時にと伝えたはずであるが、今はまだ日が昇ってまだ真上にも昇っていない時間だ。


そんな時になぜ、しかも商人ギルドの長である私のこの部屋に不躾にノックもなしで入るとは・・・どういう了見だ?


「べ、ベルモンドこれはどういうことだ!! 契約と違うではないか!!」

「わ、私のところも被害を受けているのだ! ど、どうにかしてくれるのでしょうな!!」

「わ、我輩はここを断たれてはもう商売を続けるのが無理なのだ!! どうにかしてくれ」


開口一番そう大口を叩いたのはつい最近うちの商人ギルドに入った三つの商家の者達だった・・・確か『オルゲン・パーペル・ザボッグ商会』だったか、主に家財や建築の商売を生業としていたらしく、別な商人ギルドに属する者と商売で争っており、敵わないと見るや此方に泣きついてきたのだ・・・此方にとっても悪いことではなく、奴らの商売の保証と援護をする代わりにギルドへ売り上げの10%を上納する様にと言っていたな。


だが、この三人の剣幕は拾ってやった恩を忘れた様に怒りに身を任せている。額に青筋が浮かびわなわなと震えるが、その三人の他にも続く商人達の顔を見て冷静さを取り戻す・・・そも『契約と違う』とはどういうことだ?

奴らとかわした契約は家財などに使う材料の確保と販路の確保だったはずだ。奴等の邪魔になっていた商人ギルドの者には圧力を掛けて動きを遅くさせ、販路の拡大をしてやった。それが、一体なんなのだ、何が契約と違うというのだ!!


「私は貴様らの契約を守っているではないか!! 言い掛かりはやめ」

「何が契約だ!! 貴殿が確保した販路は全てカーマイナ商会に流れ、材料に至っては今年は、は、半分以下になっているのだぞ!!」

「バカな!! 販路の確保と商材の確保は契約書にしっかりとしたため、私が保管している!! 貴族の連中にも金を貢いで確保させた筈だぞ!!」

「顧客もカーマイナ商会に流れてしまって、剰え我々の商会は欠陥建築だなどと噂になっているのですぞ!!」


一体何が起こっているというのだ。

言い掛かりをつけられているとはとても思えない剣幕だ・・・今まで数多の商人と渡り合ってきた自分の目にはこの三人が嘘をついている風には見えない。本気で焦って、怒りをたたえた表情をしている・・・商人独特の駆け引きも何もない純粋な焦燥感だけが前面に出ているのだ。


それに理解が及ばず、圧倒されていると後ろからもう一人の男が歩み寄りバンと机に手をついた。


「き、貴様らの様な平民を相手取る商会などどうでもいい!! わ、私のところは貴族を相手にした嗜好品の販売を行っているというのに、今や顧客は半分以上が流れ、物流も滞るばかりかどんどんと値が上がり商売として成り立たなくなっているのですぞ!! 貴族との商売故、上納に遅れが生じてしまい、今や私のクイール商会は火の車なのですぞ!! いい、いったいカッツァ商会は何をしているのだ!!」


クイール商会までもが私に異議を申し出た・・・これには唖然とするより他ない。クイール商会は我がギルド発足時からの商会であり、王都での商売の時には第一線を担った者だ。あの商売で培った貴族との交友を使い、貴族が使用する嗜好品を取り扱っており我が商人ギルドでも高い収益を生み出している・・・しかし、そんなクイール商会の顧客が激減するなど有り得るはずがない。

我がカッツァからも貴族の連中には袖の下を多く渡し、販路の確保から顧客に至るまで全て十全に備えてきたはずだ。


「港が別なギルドに占有されちまって俺たちは停泊どころか漁業権すらも失いそうだ! こ、このままじゃ港近くに開いてる店に魚を卸せねぇ!! 店を畳むしか無くなっちまうんだよ!! は、早くどうにかしてくれねぇと俺も家内も食いっぱぐれちまうんだよ!!」


我々が半分を保有していた港が占有された・・・先ほどの使用人の報告では物資が減少したとしか聞いていない。届いた書類の方にもそんな兆候は一切見受けられなかったはずだ一体どうなっているんだ!!

港の保有率に関しては協会の者に金を積み上げ、海産物や航路に関しての融通は効く様にして合った筈なのだ。造船に必要な物資の融通や他の漁業組合との争いがあれば全面的に協力を行うとも契約書をかわしていたはずなのだ。


「お、落ち着け、我が商人ギルドにはまだ有り余る金がある。これを使用して早急に問題を解決することとする。今後の対処に関しての話し合いを進め、また今現在発生している問題の究明を始めよう」


今何が起こっているのかは不明だ。とりあえず現状できることは原因の究明のみ、恐らくはどこかの商人ギルド側が商人ギルドに攻撃を仕掛けているのだろう・・・そうでなければこうも立て続けに我が商人ギルドに属する者達にこうも不利益が降りかからないだろう。

唯、今は魔族達の対処や帝都の騎士が来ているという事で此方側も身動きが取りづらいということだ・・・帝都の騎士達に傭兵の存在を知られ、この町のあり方をに苦言を呈されでもすれば王都から直々に視察が来る可能性もある・・・それだけは阻止すべきだ。


幸いにして蓄えならばしっかりとあるのだ。契約書もしっかりと保管している・・・契約先の戯言など契約者を提示して王都の騎士に突き出すぞと脅してやれば済む話だ。それどころか、それを恐れて今現在かかっている費用がもっと安くで済む可能性もある。

貴族の方は契約者と金や利権を目の前にちらつかせてやればすぐに食らいついて肥え太る・・・そこを操って一気に我々にあだなす商人ギルドその存在を炙り出して潰してやろう。


・・・だが、帝都の騎士といい魔族といいこれは偶然と言えるのだろうか?

このタイミングで大量の魔族が街に入ろうと自警団の機能を麻痺させ、帝都の騎士達が街をうろついて傭兵達の行動を阻害し、我が商人ギルドの組員達が一堂に会する今日この機会にこの事態が巻き起こるなど偶然にしてはできすぎてやしないか?


そう考えた直後、商人たちが詰めかけたこの部屋に一人の男が大慌てで駆け込んだ・・・それは先ほど裏の魔族に人間を襲わせろと伝えた使用人だった。

使用人は大粒の汗を額から流しながら、息も絶え絶えな様子で自分の元にまで駆け寄ったのだ。


「ど、どうした!? 何があった?」

「しょ、商人・・・ギルドの連中が・・・やってまいりました」

「それは知っているここに今」

「それ・・・だけではなく!! 別の商人ギルドの連中が、お、王都の騎士を引き連れて魔族と共にやってまいりました!!!!!」


その言葉に、部屋は静まり返った。

ハーピーの観察日記

各員行動を開始。周辺の街にて配備。

顧客情報の洗い出し完了、忍蜘蛛・爪なしより契約書の奪取に成功。

傭兵の所在地を発見。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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