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商戦:帝都にてイベントを開くでした!

たくさんのブックマーク・評価・ご視聴ありがとうございます!!

最近お仕事が忙しく、投稿が早くできず申し訳ございません。


商売の先駆けは帝都にてでした。そして・・・

 帝都の街の一角・・・そこはいつになく賑わいを見せていた。いや、賑わいを見せていたというが、ざわめいていたという方が正しいのであろう。多くの人がそこに集まっており、怪訝な顔を向けている。

 そこは帝都でも随一の大広場であり、いつもは主婦の井戸端会議として使われ、子供が走り回り、朝の日課として運動する人がその広場を使ってランニングする場所である。


 そんな場所に・・・巨大な建物が立っているのだ。数日前から広場を覆う様にして天幕が張られ。周囲には帝国の騎士達がその天幕を護る様にして配置されていた。

 無論そんなことをしていれば多くの都民達から注目が集まるわけで、一瞬にして帝都中に噂が流れる事のは当然の事だろう。しかもその広場で行われていることは入念に秘匿されているのだ。城下町の人達は一体ここで何をしているのかと騎士達に問うていたが、騎士達は決まって『お答えすることはできません。しかし、今暫くお待ちください』と答えるばかりなのだ・・・しかも、その騎士達は帝都直轄の騎士達ばかりであり、胸に光る称号は騎士たちの中でも中~上位の者達を示す紋様が刻み込まれているのだ。


 中には高台に登って広場を視ようとする者もいたが・・・広場はいつもと変わらずごく普通の様相であった。しかし、広場に近付くと中からは物音が聞こえるのだ。

 そして、ある一人の冒険者が『あれは幻術か何かで広場を隠しているのではないか?』と告げ、それがまたあっという間に広がった。



 ・・・その様相から、帝都内には様々な噂が飛び交った。広場で何がしかの軍事演習が行わているのではないか、広場の地下にはドラゴンが眠っていて帝国七爪が討伐の為に動いたのではないか、軍事パレードの準備ではないかなどだ。

 無論、それは全て唯の噂に過ぎず、正直に言えば見当外れも甚だしい。


 ・・・さて、そんな噂が城下町の人を騒がせる中、密やかに貴族のご令嬢の間でもちょっとした珍事が流れていた。曰く、茶会や舞踏会に参加する為、衣服の仕立てをエリーザ・ローラに願い出たが悉くが却下されたという事だ。

 それは初め、とうとうエリーザは貴族の階級で服を売る者を選定する様になったと噂が立ったが、それも直ぐ様消え去った・・・というのも、エリーザと懇意にしていた伯爵家の令嬢が依頼していた衣服を自ら取り下げたのだ。しかも伯爵家は随分前からその服の仕立てを依頼していたそうで、エリーザはそれを引き受けていた。しかし、令嬢自らが辞退を申し出て、他の令嬢達に「ちゃんとした事情がある。時間が経てばわかる」と、告げて騒動はその『事情』とやらの噂でかき消されたのだ。

 で、現状エリーザが何をしているのかという噂が貴族の間で広まり、それと同時に広場で行われる何かと関連があるのではないかと推測も立っていた・・・鋭いな。


 さて・・・そんなある日、それは訪れたのだ。


 それがつい先日一夜にして広場を覆っていた幕はなくなり、広場の周囲にはロープが張り巡らされただけとなり、相変わらず騎士達の見張りはあるものの中の様子が見える事となったのだ。

 そこには大きな会場が設営されており、帝都に住む人間はそれを見てきょとんとした顔を隠せないでいた。それもそのはずだ、帝都に住む人がこんな変な形をした会場を・・・いや、この異世界に住む人間が『ランウェイ』など見たことあるわけないだろう。

 屋外に設置されたランウェイ・・・広場にちょこんとあるそれは、恐らくどこに人がいても見える様にして設置されたものだろう。


 しかし、ランウェイなど見たことのない者達は、その様相からそこで踊りが行われるのではないかという噂が巡り、軍事パレード説が濃厚となりそこから新たな戦争が始まるのではないかと憶測を呼び、唯の祭りだという噂も広まった。

 今のところ帝都の大半を占めているのは軍事パレード説が濃厚となっている。周囲を位の高い騎士が囲んでいる事と、祭りを行うにしてもそんなイベントごとがある日でもない。季節の変わり目でもあれば微妙に中途半端な時期に祭りが行われることはないだろう・・・となっている。

 しかし、まぁ、後者の『祭り』がほぼほぼ正解だろう。


 さて・・・では、作戦の第二段階と行こうか。


 会場をボーっと見ていた民衆に一瞬影が落ちる。一人の人間が空を見上げ、そこにある物を凝視する・・・太陽が燦燦と降り注ぐ中、目を細めながら手を前に出して太陽の光を遮りながら、それを見上げる。

 底には大勢の人が・・・いや、手が翼となった魔族達が空を覆い尽くす様にして上空を飛んでいたのだ。


「あ、あれはなんだ!?」


 一人が声を上げるとそれにつられて民衆も全員が上空を見上げ、口々に騒ぎ始める。騎士達も無論それを見上げる事となるが、知っていたと言わんばかりに会場の周りから一歩たりとも動こうとしない。

 魔族の姿に目を奪われてはいるが、その周りには帝都が誇る航空戦力である飛竜ワイバーン隊が取り囲むようにして警護している。


 うん・・・ハーピー達は俺の命令通りにしっかりと動いてくれている様だ。


 ハーピー達は肩に下げていたバッグから大量の紙の束を取り出して、空爆の如く空からそれをばら撒いて地上にいる民衆達へとそれを無差別に届けていく。

 広場全域にいる民衆へと全て行き渡る様に広場の周囲をぐるぐると何周も飛び回り何回かに分けて紙の束をばら撒いていく。


 広場の周囲を囲んでいた騎士達は飛竜隊へ敬礼を返すと、飛竜体の騎士達もそれに倣って敬礼を返す。ハーピー達はそのまま上空をぐるぐると旋回しながら紙を配り終える。民衆は空から降ってきた紙を手に取りその内容に目を通し始める。

 しかし、魔族が空を飛んでいた衝撃のせいなのか内容が全く入ってこない、中には未だに呆然と空を見上げている者もいるくらいだ。


 すると、ハーピー達は人がしっかりと自分達を視れる距離まで高度を落とす。速度を落として民衆達の上を無造作に飛び回る。

 そこで漸く気付いたのだろう。うちの里に住んでいるハーピー達がいかに美形なのかを・・・。


 一匹のハーピーが自分にくぎ付けとなっている人間と視線が合った。その瞬間・・・ニコッッと微笑んだハーピーに、心臓を鷲掴みにされた。

 民衆の中の男たちはハーピーの姿をしっかりと目に焼き付ける様にして凝視し、愛想を振りまくハーピー達に顔を赤くしていく。


 さて・・・そんな中で女性達はというと、ある一点にのみ釘付けとなっていた。男性連中がハーピー達の顔やら胸やら尻やらにでれでれになっている傍らで、ハーピー達が身につけている衣服をじっと見ていたのだ・・・さすが目の付け所が違うね。


 俺、エリーザ、ユベルタスの三人が商談に商談を重ねて作り上げた逸品だ。

 ハーピー達の数は総勢50名、その50名全員が違う服装でありエリーザの最新モデルをユベルタスさんが仕入れた最高級素材を使用して作られている。まぁ、そんなデザインの服を作れるのは一人しかいないというのは周知の事実なわけで、ハーピー達が着込んでいるのはエリーザによって作られたものだというが一気に知れ渡る。


 そこで漸く、民衆達は地面に散乱したビラへと手を伸ばす。そこに書かれていた内容は『明日の暮れの陽が沈んだ夜、この会場にて何かが起こる』というものだった。民衆達のざわめきが一体を埋め尽くす・・・その紙には騎士団直属のサインが記されてあり、その騎士団のサインの傍らには王の捺印さえもあったのだ。


 その噂は帝都全土に瞬く間に広まってゆき、迎えた当日・・・つまり今日、帝都に居を構える住民から観光にやってきた冒険者や商人、一般人が其処へと集まったのだ。

 周囲は陽が沈んだことにより真っ暗ではあり、松明から漏れる篝火だけが唯一の光源となっている。カラドウスと違って魔道具による明かりなんてものもなく、いつもなら暗闇が広がっているはずの帝都も、騎士団の全面協力の下、今日だけは街の至る所に明かりが灯っている。


 街では陽が落ちる前から、稼ぎ時と多くの酒場が前に席を出して店を構え、広場の周りにはここぞと商人達が集って露店を出し合っている。凄まじい活気が帝都全土を包み込み、普段は寝静まる人達が夜の帝都を闊歩している。

 そんなことをしていれば当然問題が起こる・・・と思えば、帝都には数千規模の騎士達が巡回を行っており、噂によれば帝国七爪までが街を巡回しているとあって、活気とは裏腹に治安はいつもより保たれている。


 会場の周りには人だかりができており、いったい何が始まるのかと無数の民衆が集っている。


 そして・・・そんな熱気が頂点に達したと同時、会場に一人の影が現れ、とうとうそれは始まった。






「ウッフン・・・あらあら揃いも揃ってまさかこんなことになるなんて思わなかったわん。まぁ、とにもかくにも落ち着きなさぁい」


 ざわざわと騒めく会場に、野太い男の声を無理やり女性っぽくしようとして大失敗した様な声が響き渡る。その声に、会場にいた民衆達の目はいっせいにその声が聞こえてくる方へと目を向けた。

 会場の上から魔力の光が降り注ぎ、舞台に立った一人の怪ぶt・・・人間を照らし出した。


 筋骨隆々、オイルを塗っているのかと思わせる程に際立ったその筋肉と光を無限に乱反射させる金髪のカツラ、原形を残しながらも素材の苦みを更に引き立てる厚化粧が施された顔に民衆の顔が引き攣った。しかし、まぁ帝都の臣民であればあの姿を見た者は少なくない、泣く子も哭き叫ぶ、顔面肉体凶器のエリーザ・ローラその人だ。

 ファンデーションが目に入ったのか血走った眼でぎょろりと辺りを見回せば、ざわざわとしていた会場がしんと静まり返る・・・あーあ、折角上等な化粧をユベルタスさんから仕入れたのにあれじゃあなぁ。ユベルタスさんもさっき会った時に卒倒してたしな。


「今宵は祭りよん。でもおかしいわね・・・今日は別に何もない日だったのだけれど、いきなりでみんなびっくりしてるわよねぇ? まぁ、ちょっとした報告があるのよ。この度、私エリーザ・ローラが商会に入ったの・・・それで、何かイベントでもできないかしらと騎士団に掛け合ったらこうなったのよ。戦争の方も状況がいいみたいで、陛下も快く引き受けてくださったわ。まぁ、少し早い祝賀会兼、式典とでも思ってもらえばいいわねぇ」


 んーまっと地獄の投げキッスを民衆達へ投げ掛ける。

 げんなりとした顔の民衆達を他所に、エリーザさんは笑いながら告げた。


「それでなんだけど、今回は私の最新作の服を見てもらいたいわけよん。年頃のうら若き乙女も、年を召して妖艶さが隠せなくなった美女も垂涎の品を用意したわ」


 フフンッと鼻息を出し、胸を張った姿はまさにレスラーだが、そんなエリーザの言葉に再び会場がざわめいた。女性連中は勿論、商人達もヒソヒソと何やらを喋りだしている・・・まぁ、それも無理はない。あのエリーザが商会に入っただけでなく、品まで用意したというのだから当然だろう。

 貴族の人達も、これだったのか!という表情でエリーザの続く言葉に耳を傾けている。


 だがまぁ、男受けはそこまでよくないわけだ。ファッションについてなんて全く興味も示していないし、殆どの男は酒を煽りながらエリーザの言葉をツマミがてらに聞いているにすぎない。


「でもねぇ・・・普通じゃ面白くないじゃない? このエリーザ・ローラが初の商会入りなんだからもっと派手なことが・・・インパクトのある事がしたいわけよ。だから、ちょっとばかし付き合いなさーい」


 エリーザが腕を組んで笑い始め、後ろへ振り返って大きく息を吸い込んだ。


「出てきなさいな。シロタエちゃん」


 エリーザに集まっていた視線が一気にエリーザの後ろへと注がれ、エリーザに当たっていた魔力光がその後ろに立っていた人物へと注がれる。

 少し前の準備は整っておりそこで待機していたのだが、如何せんエリーザの存在感が強すぎて誰も目に止めていなかったらしい。演出は成功しているわけだ。


 会場内が息を飲む。騒がしかった会場が一瞬にして静まり返り、酒を傾けていた男達もその姿勢のままでピタリと制止する。


 カラン・・・コロン・・・カラン・・・コロン


 そんな音が会場に響き渡る。エリーザの背後にいた人物・・・シロタエに一斉に注目が集まる。

 身体のラインがくっきりと現れる着物に身を包んだ絶世の美女だ・・・エリーザとサテラ、アンネ、ユリィタ、ユベルタス合同で化粧を施した大和撫子が下駄の音を立てながらランウェイを静々と歩く。

 目に引かれた紅いラインがシロタエの妖艶さを引き出し、周囲の闇を一身に集めたかの様な射干玉の長く艶やかな髪が歩みにつられてゆらりゆらりと揺れる。


 着物は新モデルだ。染める技術や反物の製造をユベルタスさんに任せ、裁縫や服飾はエリーザさんが手縫いで行った最高級の特注品だ。

 襦袢にはユガ大森林で取れる花の模様があしらわれており、右の袖には川を思わせる刺繍が施されている・・・エリーザの情熱と熱意がありありと見て取れる。

 ゆらゆらと揺れる袖口から伸びる細くしなやかな白い腕・・・長い爪には王都から取り寄せたマニキュア?を塗っている。


 さて・・・そんなシロタエを見た民衆の視線は、彼女に一心に注がれており、口をぽっかりと開けながら呆然としている者が大半を占めている。

 そして、その視線の半分以上が・・・シロタエの額から伸びる二本の角に注がれている。


 魔族だという事はみんな理解した・・・しかして、シロタエの美しさたるやそんなものをどうでもよくしてしまう程に美しい。

 現に男連中は最早シロタエの姿に目を奪われて心臓を射抜かれている。


 そんなシロタエがランウェイの一番先端まで来る。シロタエの視線が右から左へとゆっくりと動いた。


 すると、ある一点で止まる・・・あ、気付いたか。


 シロタエは優雅な動作で頭を下げる。背中から前にさらさらと流れ落ちる黒髪・・・そして、シロタエが頭を上げた時に浮かんでいたその微笑に・・・全ての男達の心臓が射抜かれた。

 シロタエはクルッと振り返り、袖をバサッと翻しながら戻って行った。


 それでもまだ、会場内はしんと静まり返っている。


 パチパチパチ


 誰かが手を合わせて叩く。すると、それが一人また一人と増え、会場全体へと伝わってゆく。それと同時に、ざわざわと会場がざわめき始め、酒に酔った男たちがさっきの娘は誰なんだと口々に騒ぎ始める。

 さぁ、やっておしまい、俺に雇われたサクラ達よ!!


 一人の冒険者が指笛を鳴らし、それに続いて民衆の中から歓声が上がる・・・先程の拍手と同じようにその歓声は次第に人々に伝染してゆき、会場全体が人々の声で埋め尽くされる。ユリィタさんとシロタエがカナンから集めた冒険者達を会場に紛れ込ませておいてはっぱをかける役目を依頼したのだ。

 それと同時に、裏に回ったシロタエの号令と共に会場全体を色鮮やかな魔力光が包み込み、空を何色もの魔法の光が走ってゆく。


 エリーザさんがランウェイから掃けると、その奥から何人もの魔族が姿を現してランウェイを歩いていく。それを見た民衆達は一斉に歓声を上げる。

 現れた魔族達は先日空を飛んでいたハーピー達だ。シロタエよりは何処か緊張している面持ちで歩む足も何処かたどたどしいが、その恥ずかしがっているそれが琴線に触れたのか男達は一斉に囃し立てる。


 で、その中の一匹に関しては会場から笑いが飛んでしまっている事に気付いた。

 そのハーピーはそれはもう、他のハーピーと比べ物にならないくらい緊張していて、顔がまるでゆでだこの様に真っ赤に染まっている。で、さすがハーピーというべきか否か、千鳥足であっちへフラフラこっちへフラフラとしている。

 それをどうにかして操作しているのが後ろにいる副リーダーのハーピーだ。


「り、リーダー、しっかりしてください」

「ばばば、馬鹿!! 私はしっかりしていりゅ」

「噛んでますリーダー!!」


 二人のハーピーはリーダーであるハーピーは露出度の高いフラッパードレスに身を包んでおり、副リーダーはハーフパンツにチュニック、上から大きめのカーディガンを着たラフな格好をしている。


 二人はよたよたとしながらもランウェイの先端まで歩ききって民衆の眼前に晒される・・・まぁ、一番注目が集まる所であり、さっきよりも視線が集中して限界を迎えたのかリーダーの顔が真っ赤を通り越して白くなってしまった。

 しかし・・・あぁ、うん、やっぱりシロタエと同様キョロキョロして俺の姿を見つけると、副リーダーは手をフリフリと俺に向かって振って来る。が、リーダーは俺に怒りの目を向けて、足早にランウェイを走り去っていく。


 他のハーピー達は里で人間に慣れているというのに、あのリーダーの子だけは一向に慣れる気配がないな。前は俺の姿を見ただけで発狂して何処か飛び去って行っちゃったし。


 すると、男の野太い歓声が落ち着き、今度は女性人から黄色い歓声が上がる。まぁ、理由は言わずもがなわかるだろう。

 コクヨウとショウゲツ、フゲン三人がランウェイをずかずかと歩いているのだ。コクヨウは持ち前の日本刀を腰に携えた侍風の衣装であり、ショウゲツは全身にちょうどいい具合に筋肉がついており、体のラインが浮き出る服装を着せている・・・で、フゲンはそのタッパにあった服がなかったからか特注で作らせた鎧を着せていて、その姿はどこかの英雄みたいだ。


 この世界はあまり男がファッションに気を配るという習慣があまりなく、それならば取り敢えずうちの男連中に関しては衣服を売るというよりも、女性受けや冒険者としての見栄えを重視して見たところ・・・うん正解だったようだ。


 ・・・で、一番人気だったのがまさかのダークホース、4番手のソウカイだ。三人と比べて歳は離れており変化をした後もその顔には多くのシワが刻み込まれている・・・が、その顔はおじいちゃんと言うよりかは『おじさま』と言い換えた方がいいだろう。

 タキシードを着込み、一寸のブレもなくランウェイを歩く様はシロタエよりも様になっており、雰囲気がTHE 大人だった・・・バーを開いてあの姿でマスターやらせたら繁盛しそうだし、今度ユベルタスさんに掛け合ってみるか。


 その後も俺直属の配下達が次々とランウェイを歩いて行く・・・が、まぁそれはさておこう。


 お気づきだとは思うがこれはファッションショーだ。

 正直、エリーザさんには断られるとは思っていた。エリーザさんは特定の商人と協力することはほぼないし、あったとしても衣服を作るための材料の取引くらいだ。流石に断られるだろうと思っていたが、企画の概要を話すと鶴の一声で『OKよ〜ん!!』とユベルタスさんが泡を吹いて倒れる中でデスウインクを放っていた。

 ファッションショーの企画がどうやら琴線に触れたのと、賄賂としてシロタエとヨウキ、ルリ等配下達全員を貸し出して着せ替え人形にしていいというあれが効いたのかもしれない。

 で、まぁ、この祭りは様々な実験を兼ねているわけだが、もう目に見えて成功しているわけだしもう何も心配することはないだろう。普段なら「あ、フラグ立っちゃった」と焦るところだろうけど、今回に関しては大丈夫だと言い切れる自信がある。

 というのも、もちろん理由がある。実はこのファッションショーだが当初はここまで事を大事にする気はなかったのだ。もっと細々と、とは言っても小さな町をあげて行うイベントをエリーザとユベルタスさんとで開催しようと思ったんだけど、そこで思わぬ情報が里からやってきた忍蜘蛛によって齎されたのだ。


 そんなことを考えていると、再び里の女性陣がランウェイに姿を現した。この後はルリ&ヨウキの二人組が現れる手はずとなっている。実は衣服に関しては俺も知らされていない。エリーザさんから、「うふふ、当日までの秘密よん。楽しみにしてなさい」と告げられている。


 そして、そんな二人の姿を見れるとウキウキしていると・・・


「あぁ、ユガさんこんなとこにいたんだね」


 そんな言葉が投げかけられる。後ろを振り返ると、そこには紫色の長い髪を後ろで一本に縛った男の姿があった。ヒョロッと高い身長に、背中に二本と腰に二本の細剣(レイピア)を携えていて、全身を騎士団のプレートメイルで覆っている。筋肉というものがあまり見受けられないその身体からして、そんな重装備で動けるのかと疑問に思うが、本人はなんて事もないように軽い足取りでひょいひょいと人混みを掻き分け俺の元まで辿り着く。


 そして、その男が普通の人間と違う部分がある・・それは頭から伸びたピョコピョコと動く猫耳と遠目からは見えなかったゆらゆらと揺れ動く尻尾だ。

 まぁ、それからわかるのはこの人は魔族だ。顔立ちなんかは非常に人に似ていることからして、もしかしたら半魔族かもしれないな。魔族であれば体格に見合っていないプレートメイルを装着しても、内部的な力は人間よりも高いわけで身軽に動けるのも頷ける。

 しかし、もう一つ簡単な理由を挙げることもできる。


「うちのアドルフがユガさんを探していてね、もうすぐこっちに来ると思うんだにゃ・・・あ」


 それは、語尾に「にゃ」がついてしまって頭を抱えて踞るこの男が『帝国七爪』の一人だというところだろう。

 そう、これがこのファッションショーの始まりだったわけだ。

ハーピーの観察日記

カナン上空より入電、敵に動きあり。即座に行動を開始する。

帝都上空にて入電、人間はどうやら私たちに興味があるらしい。

帝都ランウェイより入電、以外と楽しい。

※尚、リーダー、人前に出たこと、また主人と目が合った事による極度の緊張により病欠。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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