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商戦:商人ギルドでした!

たくさんのブックマーク・ご視聴ありがとうございます!!


敵は知略で攻めてくる。

 商戦:商人ギルドでした!


 里の見回りをしながら新しく配下になった魔物達を見て回る。初めて合う魔物達に挨拶をして回ろうと皆に手を振ったり話し掛けようとすると何故かよくわからないが、蜘蛛の子を散らす様に皆逃げて行ってしまう。なんで皆逃げるんだろうなと、俺を背に乗せて喜んでいるハルウに聞いてみるが「アルジの威に恐れをなしてのことだ」と返ってきた。

 まぁ、唯一逃げないといえばハンゾー達の部下の忍蜘蛛達やハーピー達、後は昔馴染みの配下くらいだ。背負ったままだったリーダーを他のハーピー達に聞いて家まで運んでいく・・・藁で出来た家の中に入って寝床に寝かしてあげて、ちょっとの間ハーピー達と話した。

 まだ皆慣れていないのか若干緊張気味に話していたが、徐々に慣れてきたのか色々と聞くことができた。


 ハーピー達の仕事は主に里の空を飛びながら異常が起きていないかの監視、または果物が実った木々のチェックを行っているらしい。

 取りすぎるとその木々が死んでしまうとのことで、精霊達に助言を貰いながらちゃんと管理しているらしく、最近は果物の木の栽培も始めたらしい。なんでも精霊の力で育ちも数倍に引き上げることが可能だとか・・・増えた魔物達の食料問題を解決する為に色々と試行錯誤を繰り返しているのだとか。現在は余裕を持ってどんどんと暮らしやすくなっているそうだ。


 で、なんとなんとハーピーと人間との間に子供ができたのだ! その話を聞いてハルウと一緒に喜んだわけだが、そういえばそこからどんどんとハーピー達の雰囲気が和らいでいったな。しっかし、ハーピーと人間との間の子なんて過去に例がなく、色々と不安だ・・・とりあえず金に糸目はつけずにベビー用品を買い漁るか。

 もうすでに臨月を迎えているらしく、今は巣の中で安静にしているらしいが・・・卵で生まれてくるのか、そのまま生まれてくるのはなはだ疑問だ。


 ハーピーの子供達は凄く腕白で喋っている最中に木々の枝の上から此方をチラチラと見ていたので、触手を伸ばして驚かしてやると、最初は驚いて逃げていたが今では笑いながら触手と無邪気に追い駆けっこを始めている。


 ハーピー達に別れを告げてまた里の中を歩いて見回るが・・・俺を見つけては殆どの魔物達が怯えてしまう。話がしたいと近づけばどんどんと悲壮な顔になっていくし、ある者は泡を吹いて倒れてしまうこともしばしば。

 で、増えた魔物についてだが、なんと他の森にいたゴブリンやコボルド達もやってきたようだ。今は鬼や浪武犬達に訓練を施されているらしい。

 因みに、鬼達も大鬼に進化した個体もいて特殊なものだと魔鬼という魔族に進化した者もいる。浪武犬達は侍武犬に進化してより剣術に磨きが掛かった進化を果たした者達もいるそうだ。


 ・・・と、歩いて行くと小さな赤ちゃんを抱いたエルフの女性の姿が見えた。ブンブンと手を振ると、こちらに気づいたのか手を振りかえしてくれる。ハーピー達から聞いていたが、エルフにも赤子が生まれたと聞いた。ちょうど会いに行こうと思っていたからちょうどいい。


 ハルウから降りて抱かれた赤ちゃんの顔を見る。もうすでに整った顔をしていて髪も少し生えている。親指を吸いながらスヤスヤと寝息を立てている様は本当に可愛い・・・で、試しに触手を伸ばして開いた片方の手に添えてみるとキュッと握ってくれた。うん、可愛い。


 そんなエルフ達に別れを告げると・・・


「「「「「お帰りなさいませ、我らが主君よ」」」」」

「「「「「お帰りなさいませ、我らが主人様よ」」」」」


「「「「「「「「「「ぬぅ?」」」」」」」」」」


 そこには鬼と浪武犬達が勢揃いしていた。この配下達は多分ショウゲツやコクヨウの部下達だろう。俺の姿を見ても怯えないってことはちゃんと会った事があるんだな。

 で、相変わらずやっぱり両者は仲が悪いらしく、此方の方が丁寧だったとかそっちは声が小さかったなどと言い争っている。

 まぁ、その両方ともハルウの一睨みで全員すぐに正座したけどね。そんな皆と別れ、ソウカイとシロタエの元へと向かっていく。


 シロタエはソウカイと話し合う為に里の会議室へと向かっていった。シロタエが一頻り事を把握した後に俺も交えて再度会議を開こうと言ったのだ。

 その間見回りをしていたわけだ。


 で、皆変わりないようではあったけど・・・やっぱりちょっと疲れてるな。全体的に里を見回ってみたけど、全員どこか疲れているように見えた。

 魔物達もエルフも表面的には元気そうに見えてもどこか不安があるというか、疲れているというかそんな感じがする。で何人かからはなぜか俺に対して申し訳なさそうな顔をしているし・・・うーん、なんだ?


 それに人の姿も見てない気がする。

 人間達もこの里にいる筈なんだけど、一度も見かけていない。


 ・・・特に、俺の帰りを迎えたソウカイの顔はかなり疲れきっていた。かなり無理をして俺の元まで来てくれたんだろう。


 そうして歩いて行くと・・・会議室のある巨木へとたどり着いた。


 その周りには人集りができていて、多くの人間が集まっていた。よく見てみると殆どの人間が武装していて、中には普通の服を着た人間達もいる。武装している人間たちの顔は見たことはないが、普通の服を着た人間は幾度か見たことがある。

 武装した人間たちは恐らく冒険者なんだろうか? まさかうちの配下達を殺りに来たんじゃないだろうなと、少し殺気が漏れ出たが、それを敏感に察知したハルウがフルフルと首を振った。


 それならいいんだけど、と人だかりの前まで来る。


「え、えっと、通してくれるか?」


 そう告げると、全員の視線が集まる。ハルウの背に乗った俺の姿を認めると、何故か冒険者の人間達からは歓迎されていない視線が突き刺さる。別に何もしていない筈なんだけどな・・・。


 自然と道が分かれ、その中を通って会議室へと入る。


 会議室には配下達全員とユリィタさん、サテラ、そして族長が集まっていた。全員が物々しい雰囲気で円卓を囲んでいて、シロタエに関しては眉間にシワを寄せながら頭を抱えて数十枚の書類とにらめっこしている。


「えぇっと・・・事情を説明して貰えるか?」

「主君、申し訳ございませぬ。我々は失敗してしまいました・・・」


 ソウカイが椅子から立ち上がり深く頭を下げる。

 やはり・・・何かあったんだなと、自分のうちから湧き上がるフツフツとした怒りを必死に抑えながら続く言葉に耳を傾ける。


「シロタエ嬢が此処を発ってから直ぐのことです。多くの人間がやって来たのです。豪華な馬車と大勢のものたちを引き連れてやってきた其奴らを我らが里に招いた事がきっかけとなりました。其の者達は『商人ギルド』と名乗る者に属した商人達だったのです。其の者達は・・・かなり横柄な態度でして、主君の言いつけ通り人と敵対する事は我慢していたのですが、主君からいただいた土産を見窄らしいと告げられた者がギルドの者に危害を加えてしまい・・・この事態になってしまったのです。直ぐに其の者達は人間の住まう国に帰ったのはいいものの、物資の流入に制限が設けられ物資の価格は高騰を続け、ここに出入りする我々に法外な通行税を設け、出入りすることが困難となりました・・・ウェルシュバインの者がどうにかしようと動いたのですが、商人ギルド相手には・・・」


 なる・・・ほどね。

 抑えていた怒りが爆発する直前まで湧き上がる・・・まだ理性がそれを押さえ込んではいるが、少しでも気を抜けば一気に溢れ出しそうな程にフツフツと怒りが煮え滾っている。

 そりゃソウカイやコクヨウ、ヨウキ達でも歯が立たないわけだ・・・腕っ節だけではただの人間や魔物に遅れを取るわけがない・・・しかし、こと頭を使う分野、こういう戦いに関しては此方は圧倒的に不利であろう。


「冒険者ギルドも力を尽くしましたが、商人ギルドから圧力が掛かりましてギルド長も抵抗しようとしましたが・・・今動けるのは私くらいしかいません。ウェルシュバイン家の方々は別な商人ギルドに属していますが、商人ギルドの格としては今此方へ攻撃をかけている方が高く、またウェルシュバイン家の方々しか抵抗できる者がいない状況で、手を貸そうとするものが圧倒的に少ないのです」

「・・・うん。それがお前たちが疲れていた理由か?」

「此方も死力を尽くしたのですが・・・エルフの工芸品やこの森でしか取れない物資の売買、最近では冒険者としてこの森の魔族・魔物達にも力を貸してもらっていたのですが、この森の魔族や魔物が人に危害を加えるという流言飛語を商人ギルドが流し・・・冒険者としての稼業やそれに加担したとしてエルフの工芸品に至るまでその悉くが商人ギルドに抑えられてしまいました」


 今までの様に力押しでいかないってことか・・・しかも相手は腐っても商人、相当頭がキレる。この里を作った目的は人間との交流とともに、技術を取り入れることも目的としている。

 それに、最近では魔物の数も増えていて、畑であったり農具であったりも人間の町から仕入れているし、一番重要なのは知識であったり魔物や魔族ができない技術の獲得だ。


 ・・・この里には医者というものがいない。コトヒラの刀は斬った者を癒す力があるそうだが、それだけでは解決できない問題がある。他には農具や道具の補修を行える者もいない・・・畑なども作ったはいいが、知識がないために失敗することも多く、人間の街から流れてきていた行商人達から書物などを買って試行錯誤を繰り返していた矢先に起きたのがこれだ。


 たまったもんじゃないだろう。


「ごめんなさい主人・・・私が、私のせいで」

「ヨウキ?」

「お主は悪くないぞヨウキ嬢、儂で合っても主君より賜った物を侮辱されればあぁするだろうさ」


 どうやらコトの発端はヨウキだそうだ。聞くところによれば・・・表で待っていたあの冒険者達はヨウキファンクラブ(仮)の連中だそうだ。

 いつも通りファンクラブの連中を引き連れて里の見回りを行っていた所商人ギルドの奴らと鉢合わせ、ヨウキにちょっかいを出した商人ギルの連中をファンクラブの連中が止めようと口論・・・見かねたヨウキが仲裁に入って事なきを得たが、その時に再びヨウキちょっかいを出しヨウキが軽くあしらった所、逆ギレしてヨウキ里の悪口や果ては配下達の悪口を散々吐いた後に、ヨウキが飾っていた首飾りを見窄らしいと発言した瞬間に、いつもは温和なヨウキの堪忍袋の緒が切れた。首根っこを掴み高々と掲げ、地面に叩きつけようとしたが・・・寸前で思い留まり、地面に投げ捨てたのだとか。


 ・・・はぁ。


「ヨウキ」

「・・・はい」

「大丈夫。よくやったな・・・後は俺に任せればいいから。そんな落ち込まないでくれよ・・・えぇっと、ファンクラブの奴等も落ち込んじゃうし、俺も悲しくなるからさ」

「・・・ごめんなさい」


 涙ぐんだヨウキの頭をヨシヨシと撫でながら・・・頭の中で商人ギルドをぶち壊す算段を考える。残念ながら俺は商売の知識だったり相場だったりはわからないし・・・そのまま正面切って戦ってしまえば間違いなく負けてしまうだろう・・・ちゃんとした知識を持ち合わせたもの同士でなければ、そんな戦いは敗北してしまう。既に一敗しているしそんなことは明白で、ウェルシュバイン家も力を貸してくれたのに負けているのだ。


 相手は海千山千を超えた商人達だ。生半可な気持ちで挑んでいい相手ではない。


 餅は餅屋・・・でもウェルシュバイン家の人たちでさえ負けた相手に勝つ為にはただの『餅』であってはならない。

『餅の中に入れる具材』に俺がなればいいんだ。適材適所、俺という最高級の具材とそれを包む外側の餅があれば勝機はある。


 そして俺たちが最高級の具材になれるかどうか・・・それは俺の前世の知識をふるってやればいい。そしてユリィタさんが言った『ウェルシュバイン家の方々は別な商人ギルドに属しています』と言う事はそこの商人ギルドとライバル、ないし敵対している商人ギルドの存在があるということだ。

 それを味方につければいい・・・ウェルシュバイン家に提供した『競馬』の力はかなり広くにまで知れ渡っているし、他の商人達の助力をつけることができれば十分に対抗することもできる、


 里の金の貯蓄は商人ギルドの企みでかなり減っているとは言え、それでも十分な資金はある・・・けれど、このままでは足りない。

 それにこういう中世っぽい時代の名を馳せた商人達といえば非常に商売に対して挑戦的でそれと相乗して実力は非常に高いイメージがある。ウェルシュバイン家の人達を見てもそうだと言えるだろう。


 ・・・取り敢えずまずはその商人達と会って話をしなければ始まらない。

 では、まずはウェルシュバイン家の人達と話をする事から始めよう・・・よし、じゃあ早速力を貸してもらおうか。


「アンネさん。力を貸してもらっていいかな」

「ふふふふ、腕がなるわねぇユガ?」


 ハーフエルフとの商談を終えて懐がホッカホカのアンネさんが、俺のバックにはついているんだ。


「アンネさん、新しい商売の確立とウェルシュバインが所属しているギルドの他の商人達と話がしたい」

「わかったわ。なんとかしてみせるわ・・・けれど、流通経路をなんとかしないといけないわね。私のコネを使えば王都と帝都に販路はつかめると思うけれど、相手もそれはまず間違いなく見越してると思うけれどそれに対してはどうするのかしら? さすがの私もコネがあるとは言っても、そのコネの先の人達に迷惑をかけるわけにもいかないもの・・・そこはちゃんとしてくれるのかしら?」

「流通経路か・・・あ、王都はなんとかできるかもしれない。帝都に関してはちょっとわからないけど、騎士団に入った人のコネがあるよ」

「へぇ、それは心強いわね。後ろ盾が多いに越したことはないからね」

「それに俺たちには特殊な販路もあるじゃないか」

「それもそうねぇ・・・商人ギルド達では絶対に入れない領域に足を伸ばしてるんだから、さすがの奴らでも手出しはできないはずね。当ウェルシュバイン商会は全力を持ってユガを支援するわよ・・・今日から眠れそうにないわねぇ」


 アンネさんと俺の世界が広がる。アンネさんはどこから取り出したのかインクと羽ペンと紙を取り出してサラサラとペンを走らせて何やら書類を完成させていく。

 いつもはしていないメガネを懐から取り出し、懐から算盤を取り出すと軽快に弾き始める。唇をぺろりと舐めるその様はお嬢様に非ず、一人の歴戦の商人が出来上がった。


「ははは」

「ふふふ」

「ははははははは!!」

「ふふふふふふふ!!」


 俺とアンネさんの笑い声が会議室の中を不気味に響き渡った。


・・・それと追伸。

ファンクラブの奴らヨウキはやらんぞ!!

ハーピーの観察日記

主人様のご帰還に阿鼻叫喚。

里内の主人に初めて顔を会わせた魔物が脱走を謀る。

・・・主人様にハルウ様に乗らないよう進言致します。皆、恐怖しております。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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