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森人[終章]:エルフとハーフエルフの戦後処理でした!

たくさんのブックマーク・ご視聴ありがとうございます!!

これにて終章です・・・次回からは『間章』という感じで進めていきます。短めで終わるかもしれません。




エルフとハーフエルフの戦後処理、そしてミリエラの決意でした。

 さて、時刻は正午といったところだろうか。陽は高く昇り、ちょうど俺達の頭上で燦々と光輝き、大地には一片の影も落ちておらず、僅かに残った雑草達は二度と拝めないと思っていたであろう太陽の光をその身に受け、歓喜の声をあげるかの様にゆらゆらと揺らめいている。


 しかし、そんな雑草達を尻目に非常にピリピリとした空気が戦場中に拡がっており、そんな空気と呼応して大地が脈動して凄まじい音をあげながら大地が文字通りひっくり返る。

 どうしてそんなことが行われているのだと言えば簡単だ。大勢の人の足によって踏み固められ、雑草が倒れ伏し、何らかの魔法によって黒く焼け焦げ、ガラス状に変質した大地を元に戻そうと大勢の者達が必死に耕しているのだ。


 そして、そんなことをしているのは、無論大地をこんな風に荒れ果てさせた張本人達であるエルフとハーフエルフ達だ。魔法で大地をひっくり返しながら耕して、魔法を上手く扱えない、または魔法が使えなくなるまで魔力が少なくなった者は鍬を持って大地を耕し、そこいらには芝の種を辺り一面に蒔く。

 今すぐに芽吹くわけではないが、しっかりと管理していけばこの荒れ果てた大地も直ぐに昔の様相を取り戻すだろう。


 ・・・と、そんな大地のとある一角で、作業中の二人の肩が軽くぶつかった。二人は互いをジロリと睨み合い、殺気をぶつけ合う・・・まぁ、それも仕方ないだろうな。昨日今日であの二人、引いては両種族の関係が直ぐに改善するわけもないだろう。

 例えその恨みや憎しみが、誰かの陰謀で生まれ、行き違いとすれ違いを繰り返した結果だとしても、それをはいそうですかで済ませられるわけもない。


 一色即発の気配が漂う中、二人が口を開こうとしたその時・・・二人は何かに怯えるかの様に、そこから大地を耕しながら必死に遠ざかっていった。

 無理もないだろうな。


 大地を一望できる小高い丘の上、そこにはハイエルフが長い銀色の髪を靡かせながら作業風景をニコニコと見つめている。

 その傍にはボッコボコのボロッボロになった両族長+αが静かに佇んでおり、遠く離れた場所の大地を魔法で耕している。非常に非効率ではあるのだが、そんな両者の存在が他のエルフやハーフエルフ達の目に留まることで、諍いもなくスムーズに事が進んでいるのだ。


 何も文句を言わず、唯ひたすらに魔法を行使して大地を耕す族長と王・・・そして、そんな傍で不適に微笑みながら辺り一帯を見回しているエルフを統べる正真正銘の王たるハイエルフが佇んでいれば、嫌でも言うことを聞くしかないだろう。

 そんなハイエルフ・・・ミリエラの傍には数百匹の精霊や妖精達が飛び交っており、皆が皆爆笑しながらそんな両者を見ている。


 現在行われている作業・・・実は精霊達は一切魔力を貸し出しておらず、唯の魔法か自力で耕しているかの二つに別れている。もし、精霊魔法で大地を耕せたのならば一瞬にして豊かな土壌になって、芝は蒔いた傍から青々と生い茂っていく事だろう。

 しかし、それをさせなかったのがドジッ娘エルフのミリエラ様だ。


 曰く、「精霊さんが常日頃どれだけ貴方達のお仕事を肩代わりしているのか、その身でもって知りなさい!!」と宣言して、本日からなんとなんとの一年間、精霊を扱った身の回りの仕事は禁じてしまったのである。

 無論、精霊達の力を使って国を保っているハーフエルフ達も例外でなく、水以外の物は精霊の力が一切供給を停止している。夜も明るかったハーフエルフ達の街は一瞬にして真っ暗になってしまった。

 カーティア様は必死に書類と戦って、ランプやら油やらをカナード様に懇願して輸入を取り決めたそうだ。


 魔物との戦闘時はさすがに許可をしているらしいが、もしエルフとハーフエルフ同士での喧嘩が起こった際は一切の力を貸さずに魔法を暴発するように悪戯しても良しとされており、エルフもハーフエルフもお互い手出しできない。


「サテラさん、南方面の人員が不足しておりまして、魔力切れを起こして倒れる者がもう数十人程・・・」

「水がなくて土が固くて掘り進むのに時間が掛かって・・・どうにかならないかねぇ、サテラさん」

「芝の種の量が書類と違うんですけど、サテラさん何か聞いていますか?」

「サテラさん・・・」

「サテラさん」

「サテラ」

「サテ」

「サ」


 サテラはさっきからもう右往左往と奔走している・・・どうやら非常にハーフエルフに信頼されているらしく、それはそれは一部の人からはカーティア様よりもこっちの方がいいんじゃね? と声が出るほどに今や人気急上昇中だ。

 戦場になって荒れ果て大地を元に戻せと言われても、どうすればいいのかわからなかったエルフとハーフエルフ達は、どうしようかと相談した結果あるハーフエルフが「そうだ。サテラさんなら・・・」と言い出したことでこうなってしまったらしい。


「「私達も手伝う」」


 で、いつの間にか姿を現していた双子ちゃんズはサテラからの指令を各地に伝達したり書類を整理したりと甲斐甲斐しく働いている。

 サテラは目の下にクマを作りながらもミリエラの為だから仕方がないとして必死に働いている。


 ・・・俺?

 俺は簡単だよ。ディーレと一緒に瓶に入った清涼飲料水を配りながら練り歩いている。本当ならミリエラと話してあげたいんだけど・・・どうやら今ミリエラは少々大変なことになっているらしい。


 というのも、急激に力を付け過ぎてしまったからか、その反動でミリエラの魂が休止状態に陥ってしまったらしい。別に魂が壊れるとかそんなことはないみたいだけど、一か月・・・長引けば三ヶ月はミリエラの意識は表に出てこないらしい。出てきたとしても夢現な状態でしゃべったり動いたりすることはできないそうだ。


 ・・・では、あそこで佇んでいるハイエルフであるミリエラさんは誰なのかという事になるのだが。


「エルン、あの区画は終わったよ・・・あ、あのできr」

「エルンって誰かな? あの区画が終わったなら、次はあそことあそことあそことあそことあそことあそこの整理をお願いね?」

「え・・・さすがに僕の魔力ではそこまd」

「お願い・・・ね?」

「「ヒィッ・・・はい!!」」


 そんな漫才が繰り広げられているわけだ・・・もうカーティア様とリオエル兄は恐怖政治に屈してしまっている。リオエル兄に関しては関係ないのにとばっちり喰らってるな。

 恐らくあそこに立っているミリエラは、ミリエラであってミリエラではない・・・たぶん、カーティア様の婚約者さんのエルンさんなんだろう。

 因みにリオエルだけは特別扱いで、精霊や妖精が飽きない様に何処かで歌っているらしい・・・どうせなら皆に聞こえる様に唄えば良いのになんで何処かへ行ったんだ?


 で、それはさておきエルンさんに『なんであの高位偽精霊の中にいたのかしら?』ってディーレさんが聞くと、一礼した後に「ティウルに対して色々と鬱憤が溜まってたのでそれでじゃないかな?」との事・・・頑張れカーティア様。


 しょんぼりと肩を落とすカーティア様の後姿を見ながらミリエラは・・・エルンさんはじっと見つめ続ける。多分もうそこまで怒ってはいないんだろうけど、わざと突き放してカーティア様を遠ざける。

 エルンさんがミリエラの身体を借りているのも一時的な物・・・たぶん、一か月経てばミリエラの魂と入れ替わる様にして消えてしまうんだろう。

 だから・・・もっと話したいんだろうけど我慢しているんだ。


 ・・・悪意のない悪意が牙を剥いて起こったこの事態。そのせいでエルンさんは犠牲となった・・・エルンさんは「鬱憤が溜まってた」なんていうけれど、あの後集落にあった魔法陣をディーレが見て分かったことがある。

 あの集落にあった魔法陣はハーフエルフの命を使って起動させたもので、完全に起動させるために足りなかった魔力は魔物から補っていた・・・リオエルと一緒に戦って得たフォレストシャークの鱗玉もそれに使われていたってことだ。だからこそ、あの魔法陣にエルンさんの決して屈しない強い魂が残ったんじゃないかと、ディーレが言っていた。


 そして、そんな魔法陣から漏れ出た黒い靄に取り浸かれた何らかの魔物・・・もしくはエルフがハーフエルフを殺した可能性が高い。悪意が悪意によって力を増幅させる呪われた魔法陣。


 しかし・・・一つ気になったのは、あの魔法陣はエルフが造ったものではないかもしれないという事だ。

 あの魔法陣の事はカーティア様とエルフの族長・・・トゥワルドさんに見て貰ったけど、その魔法陣は見たこともなければエルフとハーフエルフ何方の魔法陣にも当てはまらない様相をしているらしい。


 ・・・つまり、この魔法陣は誰かから伝わった可能性がある。


 それだけが心残りだった。

 ミリエラもそれは知らなかったらしく、もっと詳しく聞こうとしたら魂が眠りについてしまっていた・・・そういえば、俺があのエルンさんと話すと何故だかエルンさんがにやにやとするのは何故なんだ?


 取り敢えず事態は収拾したが、問題は山積みだ。戦争は終わってエルフとハーフエルフどちらも悪くないという結果で落ち着いてしまったけど、両者の軋轢は未だに根深く、まだ黒い靄の影響が残ってしまっているのかハーフエルフを恨むエルフも未だ存在する。

 エルフの誰もが頭の中をモヤモヤとした何かがずっと漂っているような感覚がすると訴えていて、全員を一応ミリエラの精霊『エレノアール』とディーレに見て貰ったが、呪印は根深くて二人の力をもってしても解けないのだそうだ。

 時間が経過すれば次第に解呪する筈・・・とは言っているが、それまでエルフ達に何か異変があるとまずいという事になりカーティア様とトゥワルドさんにはしっかりと監視してもらうように伝えておいた。


 トゥワルドさんはその呪いの中心にいたのだが・・・綺麗さっぱりなくなっているのだという。ハーフエルフに対する恨みや憎しみといった感情も完全に消えたわけではなく、前まではハーフエルフと口にするだけでも憎しみが耐えられない程の湧き上がってきたらしいけど、今は特に何も感じる事が無くなっているらしい。エレノアール曰く、黒い靄の全権を握っていたエルフが全て持ち去ったと言っていた。


 で、エレノアールについてだけど、ディーレと同じく無事最高位精霊に昇華したらしい。大地と風を司る精霊であり、街一つを飲み込んでしまうレベルの竜巻を数個作り上げる事ができて、大地を盛り上がらせて山を作れる程らしい。

 しかし、エレノアール曰くやっぱり精霊の格としてはディーレの方が高いらしく、ディーレが本気を出せばエレノアールは勝てないらしい。しかし、ミリエラとエレノアールが組めばディーレを倒せてしまえるほどの力ではあるそうだ。俺とディーレが組んでようやく同等くらいだそうで・・・つまり、今やミリエラの力は物凄い事になっているってことだな。


「これからいったいどうなるんだ?」


 そんな漠然とした不安がエルフ達から上がる。ハーフエルフ達には自らの国があり、自分達の道となるべき王であるカーティア様の存在がある。

 カーティア様は根っからの研究者気質であり、王と言うには頼りない気がしないでもないが、民を守る為、また民の生活を支える魔道具の開発に勤しんでいて、その性格からか多くの民に慕われている。


 しかし、エルフはと言えば今まで実力至上主義であり、ハーフエルフを滅ぼして自らの故郷を奪い返すと言う目標の為だけに生きてきたのだ。そんな彼らを率いていた族長はボーッと空を見上げながら作業に勤しむばかりで、族長と言うにも最早覇気はない。つまり、エルフだけがこれからどうするか何処に向かうか、簡単に言えば生きる道標がないのだ。

 また森に帰ってひっそりと暮らそうにも、今となっては自分達を統率できる者はおらず、このままでは森の魔物に対処することもままならないず、そのまま滅びてしまう可能性もある。


「主人様、今回の被害者の数ですが重軽傷者多数、残念ながら死傷者も数十名出てしまいました」

「重軽傷者にはとりあえずありったけのポーションと回復魔法で対応して、死傷者は・・・丁重に弔ってあげてくれ」


 シロタエから告げられたその報告が胸にズキンッと突き刺さる。戦争なんだし、死ぬ人が出るのなんて当たり前で死者が出ない戦争なんてそんなのは有り得ない。覚悟はしていたつもりだったし、仕方がないと割り切っていた。けれど、実際にそれに直面すると胸にモヤモヤとしたそれが湧き上がる。

 そして、どうしても考えてしまう。それが、自分を慕ってくれる配下達であったら、自分はそれを許せるのだろうかと。ミリエラとの繋がりが消えた時、目の前が真っ暗になって頭の中が真っ赤に染めあがった。ディーレの制止の声も聞こえずに、唯がむしゃらに力を振るおうとした。


 前世ではそんな熱い性格でもなかったんだけどな。自分を見つめる仲間の瞳が一つでも消えてなくなれば、俺は・・・。


『ユガ、大丈夫よ。私がずっとそばにいるのだから。それだけは絶対に忘れないで・・・ユガの配下は簡単には死なないし、死なせはしないわよ。それとその考えはシロタエちゃんも同じらしいわね。ほら見てみなさい』

「・・・ん?」


 首をあげると、そこには何やら顔色の悪いエルフやらハーフエルフやらが立ち竦んでいる。


「あぁ、いえ、ですので私がさっき入手致しました。エクストラスキルの『死霊呼応骸(デスレイシス)』でギリギリ呼び戻せまして、しかし申し訳ございませんが、エルフとハーフエルフではなく死霊の森人(デシスエルフ)になってしまいました」

「ふぁー」


 とうとうやっちゃったよ。異世界に来たら一度は見てみたい魔法ランキングトップ10に君臨するであろう蘇生魔法(?)だよ。

 もう、なんか後ろですっごい怪訝な顔をしているエルフとハーフエルフ達はもう成すが儘になっている。


「・・・うん。で、俺にどうしろと?」

「あれは最早、森人の様な『人』や『亜人』に分類できるものでなく、かと言って『魔族』でもない『魔物と人』との中間地点にいる何か、なので宜しければ引き取って配下に為さればいいのではないかと具申致します」

「・・・あれを?」

「はい。エルフとハーフエルフは人と比べて魔法に秀でていますし、今となっては謎の生物ではありますが先ほど実験致しました所、死霊魔法を扱えるようになっていましたので・・・上手く扱える事ができれば、利用価値はあると思います」

「・・・じゃぁ、一任する」


 もう考える事は放棄しよう。

 実質里の運営はソウカイとシロタエ、ユリィタさんに任せているし俺は取り敢えず頑張った配下の頭さえ撫でていればそれでいいんだ。

 シロタエは呆然とするデリシャス・・・じゃなくて、デシ・・・うん、ゾンビエルフに「主人様から許可が出た。これからは主人様を・・・」等と話している。


 現実逃避していると、こちらに近づいて来る人影が見える。それは小高い丘から少し無邪気さを感じさせる足取りでこちらへと向かってきている。

 可愛さと美しさを兼ね備え、白銀の髪を靡かせながらやってくるその人影は、ハイエルフのミリエラ・・・ではなくエルンさんだ。


 エルンさんはこちらへと歩いてくると、シロタエに一度礼をする。シロタエもそれに返すと一歩を身を引いてエルンさんに道を明け渡した。


「えぇっと、ユガ君でいいんだっけ?」

「あぁ・・・まぁ、ミリエラからはそう呼ばれてます」

「へぇ、そっかぁ。やっぱり、君が・・・ねぇ?」


 エルンさんはじろじろと俺の体を見回す・・・人型の形を保ってはいるけど、先の戦闘で魔力を使い過ぎたからか変化がうまくいかず、少し体がツルツルとしたスライム状になっている。

 エルンさんは一頻り俺を見ると、うんうんと頷いて口を開いた。


「えっとね。ミリエラちゃんからの伝言よ」

「え、あ、はい」

「『取り敢えずエルンさんに体を預ける。それとユガ君と里の皆には悪いけど、ちょっとの間里には戻らない。エルフ達をちゃんとさせたら戻るから・・・それまで待っていて』だそうよ」


 ・・・まぁ、ミリエラらしいなぁ。

 ミリエラとは長い間離れないといけないのか・・・ミリエラの甘くて優しい声が聞けないのは寂しいし、膝枕が堪能できないのは非常に悲しいけれど、それも仕方ない。

 今のエルフを立て直せるのはミリエラだけだろう。


「あぁ、そうそう。それとね、さっきティウルに『説得』したんだけど、あの国でハーフエルフとエルフが暮らすことになりそうなの。それと、ティウルは王様剥奪で私が王様になる。あとはミリエラちゃんが頑張ってくれると思うわ」

「おぉう・・・」


 あぁ・・・まさかそこまで発展してたとは思わなかった。エルンさんの判断かと思ったが、魂が眠りにつく前にエルンさんに言い残していったのだという。

 ミリエラらしく、二つとも守ろうとして必死に頑張るんだろうなぁ・・・そして、もう未来は見えているんだ。たぶん、必死に頑張るけど将来のドジッ娘パワーを全開にして結局はエレノアールや周りの人が甘やかしに甘やかす、そんな未来が今から見えてしまう。

 で、エルンさんの言う『説得』はきっと『脅迫』なんだろうな。


「じゃあ、ミリエラが寝ている間はエルンさんが?」

「えぇ。あ、もちろん私もよくはわからないけど、よく考えてみてよ。あのティウルが治世できてるんだから私にできないはずはないわ! まぁ、実はティウルの周りにいる人がその分頑張っているんだけどね。それを吸収してミリエラちゃんに継いで貰おうと思っているの」

「・・・それでエルンさんはいいのか? そのまま消えたら、カーティア様が悲しむと思うけど」

「えぇ、勿論。未練がないかと言われたら嘘になるし、わがままを言ったらミリエラちゃんは聞いてくれるとは思う。けど・・・私はもう死んじゃっているの。それに私っていう存在がティウルを縛り付けて、ダメにしてしまうと思うから・・・それに、悠長にしてたら取られちゃうかもしれないしね」


 エルンさんはニヤニヤとしながら俺を見る。一体なんなんだろうと考えてみるが、よくわからない・・・唯一わかるのは何故だかディーレの機嫌が少し悪くなるんだ。

 まぁ、それは置いておいて。


「エルンさん。きっと後悔するよ・・・正直ムカムカするし、腹も立つけど。ちゃんとカーティア様に想いをぶつけた方が良い」

「・・・・・・・・・うん。ありがとう」


 驚いた表情の後、少し悲しげな表情を覗かせたエルンさんそう告げると、肩に少し重みを感じそちらに視線を向ける。

 すると、そこには小さな蜘蛛・・・ハンゾーが静かに肩に座っていて、チラッと俺の方を見上げる。どうやら何かを告げたいらしい。

 俺がいいよと頷くとハンゾーは話し始めた。


「主人よ。里で何か起こったらしい。『風糸』で火急の報せが我が元へ飛来し、かなり切羽詰っているようなのです・・・如何致しましょうか?」

「・・・わかった。直ぐに向かう」


 どうやら、仲間の忍蜘蛛からスキルでなにかしらの報せが届いたらしい。急を要するとの事で恐らく良い事ではないだろうが、早く戻ったほうがよさそうだ。


「ミリエラ・・・じゃなかった。エルンさん、後は宜しくお願い致します」

「うん。ミリエラには私から言っておくから行ってらっしゃい」


 そうして俺はその場を後にした。









「取り敢えずエルンさんに体を預ける。それとユガ君と里の皆には悪いけど、ちょっとの間里には戻らない。エルフ達をちゃんとさせたら戻るから・・・『貴方に相応しい女の子になるまで』、それまで待っていて・・・って言うのは、ちゃんと自分から言った方がいいよ、ミリエラちゃん・・・それと、ごめんね。やっぱりミリエラの言った通り、あの人はいい人だったよ。貴方達の優しさに付け込むのは本当に申し訳ないのだけど・・・少し、借りるわね」


 表層意識に浮かんでいたミリエラの魂は・・・真っ赤に色づきながら、完全に眠りについた。

ハーピーの観察日記

休載・・・そして、失敗。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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