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森人:パーシラさんでした!

投稿遅れて申し訳ございません!

その代わり二話更新ですので、許してください!


パーシラさんはリオエルの・・・

「フェルメード第2中隊隊長として、貴殿には最大の感謝を捧げる。強大な魔の手から臆せずに悠然と立ち向かい、我々を救った偉業、この恩は一生忘れない。いつか必ず、貴殿に恩を返そう」


 総勢十数名のエルフ達が俺に頭を下げる。筆頭に立っているのは大盾を持っていた中隊の隊長で、キリッとした細長い目にサラッと流れるブロンドの髪を持った男のエルフだ


 あぁ、さすがエルフだ・・・なんだろうなな、前世の後遺症がまだ残っているようで、イケメンをみると無性にイライラする。

 しかし、礼をするその姿勢は本当に俺に感謝をしているようで、たっぷり数秒頭を下げて俺を見据える。


 敬意を表すその表情と心の奥底から滲む感謝の意・・・正直、申し訳なさが込み上げて穴があったら入りたい。


 このエルフ達がこんな事になったのも全て俺が責任だからなぁ。

 リオエルの捜索・・・それで無理をしてまでこのダンジョンに足を踏み入れて、こうなったんだ。


「い、いえいえ。当然の事をしたまでですよ・・・それよりも、怪我の具合はどうですか?」

「あぁ、この通りだ。もう問題ない」


 隊長は大盾を持ち上げてグルグルと腕を回す。一番重傷だった隊長がこれなら、他のエルフ達も問題ないだろう。


 あの後、全員をそれなりに回復してから脱出を試みたが、あのダンジョン・・・ボスを突破したとしても脱出が難しかった。

 ボスの隙をついて助けを呼びに行かせたという女エルフが脱出できたのは相当運が良かったのだろう。


 ミノタウロスやら、プチーモス・・・酷いものだとボスと同等クラスのキラーグリズリー何てものも出現する。


 そこから脱出を果たし、俺に助けを求められたのは奇跡としか言いようがないだろう。

 少しでも遅れていればここにいるエルフ達は全滅していただろうし、キラーグリズリーに襲われていたら十中八九命はなかっただろう。


「あ、あの・・・」

「ん? あぁ、パーシラさん、どうかした?」


 ニコッと微笑み、営業スマイル120%を浮かべると、パーシラさんはフイッとそっぽを向いてしまった。

 どうしたのか問おうとすると、ディーレが肩をポンポンと叩いてくる・・・な、なんだ?


「え、えっと、ユリエルさんも怪我はないの?」

「あぁ、それなら大丈夫ですよ。問題ないです!」

「そ、そう」


 再びニコッと笑うと、ハウッて言葉を残して余計にそっぽを向いてしまった・・・大丈夫?首取れるよ。


 このパーシラさんだが、中隊の治癒部隊を纏める人らしい。ボスを倒してからは一緒にエルフの回復と運搬、消毒やらなんやらを手伝ってくれた。


 ダンジョン脱出時は、何度か攻撃を受けた俺に回復魔法をかけてくれたし、ちょっとの間だけパーティーっぽいものを組んでいた。

 俺も何度か魔物からパーシラさんを助けたりもしたけど、(ことごと)くそっぽを向かれた・・・なんだか嫌われたみたいだ。危険だからと安全な位置に吹っ飛ばしたのがいけなかったか?


 まぁ、周囲掌握のおかげで敵がどこにいるかも把握できていたし、最低限のエンカウントで済んだしキラーグリズリーに関しては皆から『見えない様に』して倒したから問題ない。


 というのも、最近この身体について新たな発見ができたのだ。

 今までは単純な『スライム』のスキルしか使えなかったけれど、この身体はどうやら特殊な魔法・スキルが使用できるみたいだ。


 その一つが『闇・影』に関する魔法とスキル。影のある位置であれば通常の数倍の速度で移動することのできるスキルや、短距離であれば影から影へ転移できるスキルもある。

 それを応用して戦闘に活かしたのだ。


 ちょっと訓練を要したけど、かなり有用に活用することができた。

 それもこれも、ディーレのおかげなんだけどね・・・スライムとしての専有スキルを用いた魔法の扱いをディーレと一緒に考えながら色々と練り上げたのだ。


暗靄の粘液(シャルド・スライム)』・・・これは、簡単に言えば自分の身体を霞状に変化させ、黒い影として周囲に放つディーレと俺とのスキル、というよりも魔法スキルだ。

 黒い靄を放つだけならディーレの魔法でも十分なんだけど、靄に自分の身体を乗せるのは俺のスライム特有の分裂が必要だ。

 俺の身体を陰として分させることで、周囲に漂う魔力を取り込む・・・スライムの身体は水分だし、ディーレとの相性もいい。ダンジョンのように常に内部を魔力が満たしている場所ならかなりの量の魔力を内包させることができる。しかも、この身体は影との相性がいいし、ディーレのおかげで水との相性も抜群・・・つまり、いいことづくめなわけだ。


 そして、『暗渇水の欲望(ハディレ・イザーデ)』・・・暗靄の粘液で取り込んだ魔力を一定の場所へ集結させ圧縮し放つ技なんだけど、まだ未完成だ。収束が足りなくて結局ばらけてしまった・・・改良の余地ありだな。


 とまぁ、実験も兼ねて戦っていた。

 そして脱出の時は、影から影へ触手だけを転移させて、不意打ちで後ろから串刺しにして倒しまくった。


 それでもエンカウントしてしまう魔物は協力して倒したんだけどね。


「一度集落へ戻りたいが・・・さすがに、このままでは夜営をするより他ないだろう。警戒は私が引き受けるとしよう」

「隊長が一番重傷だったのです。ここは自分が引き受けます・・・ただ、この状況では、多少無理を通してでも集落へ向かった方がいいのでは?」

「そうも考えたが、ダンジョンと違ってここは森だ。一本道で奇襲はほぼないダンジョンと違う。まともに戦える者は私とユリエル殿くらいだろう。それなら夜営をする方がまだ安全だ」


 森では夜営をしても魔物が襲ってくる。夜道を歩けば夜営をするよりも襲ってくる可能性が多く、常時奇襲に警戒しなければいけず、体力も精神力もすり減る。

 そして、今はディーレのお陰で傷さえ治っていても、魔物との戦いにダンジョン脱出の強行で体力・精神力共にすり減っている。


 このまま森を強行すれば、警戒も散漫になり魔物に襲われでもすれば、対処が遅れて最悪の結果に至る可能性もある。


「大丈夫ですよ。俺・・・僕が前を歩きます」


 俺がそう告げると、皆んなキョトンとした顔をして、俺の方へ視線を寄せる。

 ユリエルがそういうのなら・・・と言う空気が漂い、隊長も頭を悩ませる。


「さすがのユリエル殿も先程の戦闘で消耗しているだろう。無理をせず、ここは休んだ方がいいのではありませんか?」

「まぁ、普通ならそうでしょうが、ここの魔物は寄ってきませんよ。誰が強いかわかっていると思いますから」


 そう告げると隊長はじっと俺の目を覗き込み、ユリエル殿がそう言うのなら、と頷いた。


 という事で、集落へ戻ることとなった。陽もくれ、周囲を闇が覆う中で先頭をきって歩く。

 怪我人が多いからか歩くスピードは遅く、全員が周囲を警戒しているが、問題ない。


『魔物達が遠巻きにこっちを見ているわ』

「手出しはできない筈だけど・・・どう?」

『完全に萎縮しているわ。出鱈目な魔力を流しながら、歩けばそうもなるわ』


 闇の中へ皆に気取られない様に魔力を流しながら歩く。ダンジョンの魔物と違って『危機感』を持っている森の魔物は俺に近付こうとしない。


 おれはどうやら『Sランク』相当の魔物であるらしく、あまり実感はないが普通の魔物であればそこの地形には寄っても来ないくらいであり、カナード様の領地でそれとなく聞いた話では人間や魔族でも『見れば死ぬ』とされるくらいなのだそうだ。


 魔力をセーブしているから魔物が近づいてくるが、自重無しで垂れ流せば虫の子一匹いなくなるらしい。

 まぁ、自重しても委縮していると言えばなんとなく分かるだろう。

 まぁ、そういった管理は全部ディーレがしてくれている。


「いつもありがとう。お礼に膝枕されてあげる」

『誉めてくれるのは嬉しいのだけど、膝枕はユガの得にしかなってないわ・・・別にいいけれど』


 この様に軽口を叩いて二人とも真っ赤になれる程度には、余裕をもって歩くことができる。


「・・・おかしい。魔物の気配がしない」

「普通ならば、もう魔物の数匹に襲われててもおかしくない筈なのですが・・・」


 二人とも俺に視線を向けるが努めて無視しよう。


「あの、ユリエル・・・様?」

「ユリエルでいいですよ」


 俺に話しかけてきたのは治癒部隊のパーシラさんだ。


「ユリエルは、聖印を持っているんだよね?」

「え? あぁ・・・はい」

「ユリエルは、寂しく・・・苦しくなかったですか?」


 パーシラがそう告げる。その顔は凄く不安そうで、俺の顔を覗き込んでいる。


「リオエルちゃ・・・リオエル様は、聖印が浮かんでからずっと、寂しそうで、苦しそうだったんです。昔はずっと笑っていて、集落の皆んなもリオエル様の笑顔にずっと救われていて、その笑顔が消えてからは皆んな変わったんです」


 パーシラは俯き、ぽつぽつと話し始めた。


「私とリオエル・・・は、姉妹のような関係だったのです。でも、聖印が現れてからは族長様が彼女を戦闘の渦中に入れてしまった。彼女の精霊魔法は他の誰よりも強く、そして戦闘においても彼女は才能を発揮して力をつけていったわ・・・彼女の兄よりもね」

『聖印を授かっているのだから当然ね』


 聖印を授かると、簡単に言えば各種ステータスに補正がかかる。そして、成長速度や才能といったものにまで影響を及ぼすのだそうだ。


「リオエルの居場所は何処にもなかったのね」

「どうしてそれを俺・・・僕に?」

「貴方も聖印があるっていうことはそうなんじゃないかなって思ったの」


 強者が故の孤独・・・って感じなのかな。リオエルはこんなもの要らなかったって言ってたな。

 自分を見る目が変わり、自分を取り巻く周囲が一瞬にして壊され、理解者もなくたった一人で頑張ってきたんだろうな。


 うん。


 腹が立ってきた。


「残念だけど、僕はそうじゃない」

「え?」

「聖印を授かろうが幾ら強くなろうが、いつも周りに皆がいる」


 じっとパーシラさんの顔を覗き込む。


「苦しいって、辛いって感じたら助けてくれる人がいる。僕を慕ってずっと着いてきてくれる人がいる。楽しいって思えば一緒になって楽しんでくれる人がいる。僕が・・・いや、俺の隣に並び立とうとずっと後ろを歩いてくれる仲間がいる。貴方達はリオエルを『リオエル』として見てないんじゃないか?」


 声が聞こえていたのか、中隊のエルフ達も一様に黙ってしまった。


「リオエルだけに背負わせるな。仲間なら、友人であるのなら、彼女に寄り添って一緒に泣いて、一緒に笑って、一緒に歩け」


 全員を見渡し、告げる。

 中隊のエルフ達は俯き、グゥの音も出ないようだった・・・や、やり過ぎたか。


「ま、まぁ、斯く言う僕は自由奔放すぎて、いっつも怒られるんですけどね」


 アハハと笑うと、少し空気は和む。


「そっか、そうだよね。なんでそんな簡単なことができなかったんだろう・・・」


 パーシラはさんはリオエルの姉の様な存在だった。しかし、聖印が現れてからは集落のエルフ達の態度が一変した・・・特に顕著だったのが族長だったと言う。

 リオエルをハイエルフの生まれ変わりだと声高に吹聴し、どちらに利があるかはこれで決したと断言したと言う。


 皆んなハーフエルフを恨んではいたが、今よりかは幾分かましだったと言う。


 リオエルがフェルメードに配属されてからは、明確な上下関係が築かれ、仲の良かった集落のエルフ達もギスギスし始めたらしい。

 そして、そんな状況もハーフエルフ達が悪いと思い込んでしまっている・・・もう手が付けられないな。


 パーシラは治癒部隊としてリオエルとよく行動していたらしいが、日に日に哀しげな顔に変わるリオエルを見ていられなかったそうだ。


「見えてきたね」

「・・・生きて帰ってこられるとはな」


 獣道を通っていると遠くに集落が見えた。周囲掌握には数人のエルフ達が集落の周りにいることもわかった。

 すると、一人のエルフがこちらに気づいたのか走って来るのがわかった。


「ウェール様、ご無事でしたか!」

「すまない。遅くなってしまったな。リオエル様は見つからなかった・・・あまつさえ、隊の者を危険な目に遭わせてしまった。ユリエル殿が来られていなかったら、今頃ダンジョンの糧になっていただろう」


 エルフはこちらに向き直ると、ペコリと頭を下げる。

 もう一度ウェールさんと言葉を交わすと、エルフは足早に集落へと駆けていった。


 どうやら、俺達が中々戻らない事で騒ぎになっていたらしい。集落の近くで気を失った中隊のエルフが倒れていたらしく、それを別のエルフが発見して、事態を知ったらしい。

 救助隊を組んでいる最中であり、このまま俺達が戻らなかったらエルフ総動員でダンジョンに突入していたのだそうだ。


 そして、また集落へ向かおうとすると・・・不意に肩に気配を感じた。誰にも気付かれない様に、視線を横に流して肩を見ると、小さな蜘蛛がチョコンと座っていた。


「・・・どうかした?」

「森の奥に不審なものを発見しました」

「不審なもの? あの魔力と関係あるのか?」

「申し訳ございませぬ。そこまではいかんとも、しかし、森の奥にありますは巨大なマホウジン? かと」

「・・・見に行った方がいいな。ハンゾーは一回カラドウスに戻って、皆に無事を伝えてくれ。俺はそれを確認してから頃合いをみてカラドウスに戻る」

「御意に」


 ハンゾーが肩から木々に飛び移り、また闇へと消えていった。

 それを確認して足を止めると、ウェールさんがどうかしたかと聞いてくる。


「たぶん、僕達を探しているエルフが他にもいると思いますので、ちょっと呼んできますね」

「ふむ・・・しかし、幾らユリエル殿と言えど一人では危険だ」

「私が行きます」


 隊長が一人でいくのは危険だと告げると、パーシラさんが俺と同行を申し出る・・・いや、あの、エルフ探しは名目だから着いてきて欲しくないんだよね。


「えっと、ごめん。僕だけでじゅうb」


 ”連れていきますか YES/NO”


 ・・・まさかここで来ると思ってなかったよ運命の選択さん。

 さて、この選択で未来がどうなるかが決まるってことか。


 じゃぁ、NOで。


 ”本当ですか”


 はいYESに決定。それしかない。


「えっと・・・では、お願いします」


 運命の選択さんが発動してしまったなら仕方がない。もう連れていくしか道はないのだろう。

 それを拒否してしまった場合、どうなるかの想像がつかない。恐らく碌な事にならないのだろう。


 こうしてパーシラさんがついてくることになってしまった。

ハーピーの観察日記

1:『ヨウキ様ファンクラブ』結束、『ヨウキ様に抱かれ隊』と敵対。

2:ヨウキ様に過剰な要求をした冒険者、ヨウキ様によって半殺し。

3:ヨウキ様「あ、主人様以外だ、だめなんだよねぇ・・・」で、殉死者多数。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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