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森人:集落への潜入でした!

たくさんのブックマーク・評価本当にありがとうございます!


主人公、単身でエルフの集落へと乗り込むようです・・・。


『誤字報告』という機能が追加されたようです。

感想に報告しないでも、その場で簡単にパパッと誤字を作者に報告できる機能が追加されたようです。

文章の一番下に『誤字報告』がございますので、是非お試しください!

 深緑の森の中に隠れる様にしてひっそりとその集落はあった。決して大きいとは言えないその集落は、周辺を巨木で作られた壁で覆われており生半可な事では侵入できないことがわかる。

 集落に通じるであろう門はしっかりと閉ざされていて、精霊魔法の力で強化されている。


 壁の周辺には特殊な結界が張られており、魔物も近づくことができないようだ・・・無論、魔族も例外じゃない。

 しっかりと手順を踏まなければ、この場所に辿り着くことさえもできなかっただろう。


 そんな集落の前に、中性的な顔をしたエルフが事も無げに立っている。顔立ちは整ってはいるが、エルフからすれば平均的なそれであり何と言うか平均的な顔であると言える。


「たのもー」


 門を三回ノックし、どこか間の抜けた声を出しながら集落から返答が来るのを待つ。


 そんな奇妙な行動をとっているエルフが誰なのかと言えば・・・まぁ、簡単なわけで一人しかいないだろう。

 うん、俺だ!


 スライムという身体は非常に便利だ。自分が思い描いた体へ変身できる。

 進化前はニュルッとドロッとした形態でしか人になれなかったけど、今となってはかなり細部まで拘って変身することができる。変化の術で多少ごまかしてる部分はあるけど。


 門の上に誰かが立った。自分が立っている場所に影が落ち、上を見上げてみれば木から生えた木の葉と陽の光をバックに一人のエルフが怪しげに此方を窺っているのがわかった。


「エルフ・・・? 集落の者ではないな・・・何処の者だ!!」

「東の森から馳せ参じた使者の『ユリエル』と申します!! 此度はこの森に住むエルフの噂を聞き及び、是非お話を伺いたいと思い族長にお目通り願えると幸いです!」


 ユガ、ミリエラ、リオエル・・・合わせて『ユリエル』とはなんとも安直だと思うが、ネーミングに悩んだ所をサテラにじれったいと即決された。


 門の上に立つエルフは俺の姿を確認すると、警戒するように目を細めて、返答した。


「東・・・か。すまない、今はそれどころではないのだ。ご足労かけてすまないが、今は引き取って貰いたい」

「・・・これでも、でしょうか?」

「ッッッ!? 」


 突然服を捲り上げた俺に一瞬動揺しながらも、それを視認すると門の上のエルフは大きく目を見開いた。


 服を捲り上げ・・・綺麗な白いお腹にはこの森のエルフであれば見覚えのあるそれが、ハッキリと浮かんでいる。

 俺の腹部に刻まれたそれは淡い光を放ち、門の上に立つエルフにも見えたのだろう。息を飲む声が聞こえ、先程とは態度がうって変わる。


「も、申し訳ない! 『聖印』を持っているとは知らずとんだ非礼を・・・直ぐに族長に掛け合いましょう!! どうぞ中へお入りください!!」


 重厚な門はゆっくりと開け放たれ、中の集落が漸く(・・)見える。実はここに来るまでに空から中を伺おうとしたんだが、結界が張られているせいか全く見えず大きな木々の葉っぱで覆われていた。


 集落は木の葉の隙間から漏れ出る陽の光を浴び、どこか幻想的な光景が広がっていた。

 ミリエラの里を見た時と同じ様に感動してしまうのは仕方ないだろう・・・あぁ、さすが異世界だ。


 一歩足を踏み入れると、柔らかな土の感触が足に返って来て懐かしさが込み上げる。

 自分でも気付かない間にホームシックになっているのだろうか?


「改めて非礼をお詫び致します」

「いえいえ、最初にちゃんとした事情を話さなかった此方にも非があります」

「寛大な心に感謝します。族長へ掛け合いますので、非礼であるとは存じますが、もう暫しここでお待ちいただけないだろうか?」


 大丈夫です、と告げると守衛を任されていたエルフは族長の元へ駆けていった。


 エルフの集落・・・配下が増えて絶賛拡張中の里と比べても、ここの集落の方がまだ大きい。

 辺りを見回すとエルフ達がいる・・・まぁ、当たり前だが、気になる所が幾つもある。


 まず、一つ目は。


「やっぱり、どこかギクシャクしてる・・・というよりも、ピリピリしてるのか」


 行き交うエルフの数は里よりも多く、誰もがせっせと何かに従事している。

 しかし、俺達の里のエルフはそう言った仕事をするにしても本当に楽しそうにしている。精霊や仲間のエルフと喋りながら、時に歌なんか歌いだしてしまくらいだ。


 それに影響されてか、配下達もそんなエルフに同調して昼夜問わずドンチャン騒ぎになったのは良い思い出だ。


 だけど、この集落は妙に空気が重い。他のエルフとすれ違うと、一言二言交わして直ぐに仕事に戻る・・・何処か辛そうな表情のそれは、しかし何か希望を抱いている。そんな感じであった。


 そして二つ目。


「ディーレ、大丈夫?」

『このくらいなら平気よ。でも何かしらねこの感覚・・・あぁ、人間で言うところの馬車酔いに似てるのかしら?』


 この集落に足を踏み入れる前から、妙な魔力が漂っていたのだ。俺は何ともないが、ディーレはその魔力に鋭敏に反応して、眉根を寄せていた。実体化していると、それが直に体を撫でる事で少しだけ辛かったらしく、俺の中に戻ってしまった・・・折角、楽しくしゃべっていたのに。このままでも喋れるけど、妖精姿のディーレは目に良いからな。


 それはさておきだ。

 その魔力がいったいなんなのか、どこから来てるのかはわからない。たった一つわかるのは最上級精霊であるディーレでも影響が出てしまう程の力だということだ。


 ミリエラの精霊も、頭がワンワンするって言ってたな。


 最上級、上級の精霊にも及ぶ力・・・それが中級と低級の精霊にかかればどうなるかわかったもんじゃない。

 ミリエラ曰く、精霊の力が抑制され自我や意識が薄れていくのだそうだ。


 そして、三つ目。


 チラリと壁に立て掛けられたそれらへと視線を向ける。


「やたら武器が多い・・・それもかなり上等な武器だよな」

『えぇ、精霊の力と特殊な鉱石が使われているんじゃないかしら?』


 集落を覆う壁に立て掛けられた武器は、明らかに狩りに使用するには上等すぎる武器が多い。


 そんなもの普通だと思うだろう。人間であればそうだろうけど、事エルフとなると話は別だ。


 動物であれば、簡素な弓や短剣であればいいし、この森程度の魔物であればそこまで威力のある武器も要らない筈だ。

 しかし、目に映る武器には精霊の力が込められており、特殊な鉱石・・・崖で見たあの鉱石が使われている。


 ・・・エルフは総じて争い事を好まないし、無用な自然破壊を拒む。

 それなのに、質の良い大量の武器がある・・・まるで、何かと戦うことを想定しているかの様で、攻められてもいつでも迎撃ができる体制だ。

 魔物に対しての準備・・・であればいいんだけど、恐らく違うだろう。


「エルフとハーフエルフの冷戦だな」


 そんなことを考えていると、さっきの守衛が戻ってくる。表情から察するに無事この集落に入れて貰えるのだろう。


「お待たせ致しました。族長がお呼びです。どうぞついていらしてください」

「承知しました」


 守衛の後に続いて歩いていく。

 集落の中へと入って行くと、大きな広場を横切った。そこには多くのエルフが集まっており、全員が武装して何やら話し合っている。その表情からかなり焦っていることがわかるが、いったい何があったんだ?


「まだリオエルは見つからないのか!!」

「も、申し訳ございません。目下全力で捜索中であります」

「ふん、アイツに聖印が出たこと事態が間違いだったのだ。この俺にさえ出ていれば・・・!!」


 あ、あぁ・・・リオエルかぁ。

 うん、聞いてないふりをしよう。


 一人のエルフが声を荒げて他のエルフを叱責している。どうやら、あのエルフ達はリオエルを探しているらしい


「そもそも、貴様らも何をやっていたのだあのハーフエルフまで逃がして!」

「ど、どうやら、精霊魔法を使われたようで」

「言い訳はいい!!」


 ハーフエルフを逃がして?

 あぁ・・・・まぁ、十中八九ミリエラの事だろうなぁ。ミリエラの精霊は上級だし、集落に充満するこの魔力も効かないだろうし、逃げられても仕方ないだろう。


「大体、最近貴様らは府抜け過ぎだ! 巡回すらろくにできないから『フェルメード』なんかに頭に乗らせるんだ!! フェルメードのエルフも選抜隊として任命されたくせに、たかがちっぽけな魔族一匹に作戦を妨害されて失敗し、ノコノコと帰ってくるなどエルフの恥だとも思わんのか!!」


 どーも、ちっぽけな魔族で悪かったね。


「・・・黙って聞いてりゃいい気になりやがって。お前は役に立たないから選抜隊に任命されなかったんだろう!!」

「な、なんだと」

「はっ! 何が俺が選抜隊に任命されていたら・・・だ。お前なんかが出ていたら今頃ハーフエルフに捕まってるだろうよ。リオエルに聖印が出て立つ瀬が無くなったからって俺達に当たり散らすんじゃねぇ!!」

「こ・・・の、言わせておけば!!」


 声を荒げていた男に、それを聞いていたエルフが食いかかる。周囲のエルフ達の表情を見てみれば、よくいったと言わんばかりの表情をしている・・・声を荒げていたエルフは日常的にあんな感じだったんだろうな。


 すると、二人の口論は更にヒートアップしていく。うちの里であればたとえ喧嘩になったとしても、他のエルフが仲を取り持ってくれるし、精霊が茶化すせいで喧嘩は全くといっていい程起きない・・・あ、配下を除く。


 しかし、この集落では里の様に心の余裕がない・・・つまりストレスの捌け口がない。それに、喧嘩を茶化す精霊も妙な魔力で意思を封じられているせいでどうにもできない。

 仲裁するものがいなければ、喧嘩はとまらない。


 まぁ、ちょっと口論すれば終わるだろう・・・そう思っていたが、声を荒げていたエルフは気が短かった。


 腰に下げていた短剣を抜き放ち、エルフへと駆け出したのだ。


 え、ちょ、まずくね!?


 陽の光に照らされ、鈍色に輝きを放つ短剣がエルフの胸を刺し穿つ・・・瞬間、硬質な音が鳴り響き、短剣が吹き飛ばされ近くに合った樹に深々と突き刺さった。


「な、なに!?」

「えっと、喧嘩はいいけど、それはよした方がいい」


 あぁ・・・やっちまった。

 ついつい体が動いて助けてしまった。


 声を荒げていたエルフの前に、腕を振り払った姿勢のままでじっと佇む。そこにいたエルフも周囲にいたエルフ達も呆気にとられていて、視線が俺に集中する。


「だ、誰だお前は」

「東の森から使者として参りました。ユリエルと申します」


 あくまで平静を保ちつつ自己紹介する・・・バレたらやばいし、目立つつもりはなかったけど体が勝手に動いちゃったんだから仕方ないよな。


 早く走ったせいで乱れた衣服を正し、そそくさとそこを離れようとする・・・が、まぁダメだよね。


「貴様、これは我々の問題である。口を挟まないで貰おうか!」

「どのような問題であっても、他者に刃を向けるものではないよ」


 男の魔力が徐々に上がっていくのがわかる。

 穏便に済ましたかったけれど、相手がそうさせてくれそうもない・・・一旦頭を冷やした方がいいな。


「だ、黙れ!! この、何が使者d」

「何事だ」


 戦うのもやむ無しかと思っていた矢先、集落の奥から眉間にシワを寄せた大柄のエルフがこちらへと歩いてきた。

 周囲のエルフから感じ取れなかった気配・・・その威圧感からして、かなり戦闘慣れしている事がわかる。


 滲み出る魔力もこの集落に入ってから見たエルフの中でも抜きん出ている。


「父上・・・」


 あ、お父さんなの?


「ッ族長・・・」


 父上と呼んだエルフをギロリと睨むと、ビクッと身体を震わせて、言い直した。

 族長なのか・・・まぁ、ここまで威圧感を放っているし、たぶん上の人なんだろうなぁ杜は思ったけど。


「お初にお目にかかります。東の森より参りましたユリエルと申します」

「わざわざ、辺鄙な集落までよくぞ参られた・・・」


 野太い声。アレデュルクに似ているけれど、凄みはこっちの族長の方が上手だ。

 そして族長は周囲を見回し、先程とはうって変わって萎縮しているエルフへと、目を向ける。


「どうやら、我が集落のエルフが迷惑をかけたみたいだな。以後、この様な事がないように尽力しよう。下がれ」


 族長が一言そう告げると、周囲のエルフ達はゾロゾロと後ろに下がっていく・・・声を荒げていたエルフは一瞬俯いた後に俺を一瞬睨んで去っていった。


 あぁ、こりゃ相当恨まれたな。


「では、どうぞこちらへ」


 さっきまで怒気を孕んでいた表情は消え去り、柔和な笑みをたたえて俺にそう告げる。

 切り替えが早い・・・まぁ、族長を務めるくらいだし、それだけの度量がなければやっていけないだろう。ただ、その笑みに違和感を感じ、偽った表情を浮かべているというのがわかる。


「此方こそ出過ぎた真似をしました」

「あの様な者を気にする必要はございません」

「・・・お父上ではないので?」

「・・・聖印も出ないような不祥の息子でしてね」


 苦笑い・・・に見える笑みを浮かべるが、その瞳の奥底から一瞬だけ殺気を感じとる。

 自分の息子にさえ殺気を向けるのか・・・エルフとハーフエルフの確執の根元は族長だとは思ってたけど、これはかなり凄まじいな。


 続きは屋内で、と会話はそこで途絶え道中は一言も言葉を交わさなかった。


 少し歩くと、眼前に巨木が見える。他の樹よりも大きなそれの根の部分に扉が設えられている。

 真っ直ぐにそこへ向かっているということは今からそこの中に入るのだろう。


 ・・・入ること事態に問題はない。俺は(・・)


 ディーレの心が少しざわつくのを感じとる。


「どうしたんだ?」

『妙な魔力の元はあの巨木から漂っているわ・・・』

「大丈夫?」

『えぇ。念の為にレジストの魔法を掛けているわ』


 精霊をおかしくする妙な魔力はあの巨木から発せられているのだという。

 よく注視しながら周囲掌握を発動させると、どこか重たげな魔力が巨木から滲み出ているのがわかる。


 さすがにここまで来て、入りたくありませんなんて言える筈もなく誘導されるがままに巨木の中へと入る。

 ディーレが心配だったが、レジストの魔法がしっかり効いていたから、ディーレはいつもの調子に戻っている。


 巨木の中に作られた部屋・・・そこにあった椅子に座り、向かい合う様にして置かれた椅子に族長も腰掛ける。


 そして、族長は一息つくと、俺に問いかけた。


「まず、我々の目的を知っているのか?」

「ハーフエルフ絡みでしょうか?」


 そう・・・なんとなしに告げた直後、途轍もない怒気が族長の体の奥底から発せられたのを感じ取る。殺気にも似たそれは部屋の空気は一気に重くなり、族長が組んでいた手には青筋が浮かぶ。


「貴方達が住んでいる村も・・・ハーフエルフを恨んでいるのか?」

「えぇ。勿論」


 ここではこう告げるしかない。エルフの目的や恨みを知るまでは・・・しかし、族長の気に当てられてか若干声が上擦った。

 下手な演技でばれてしまうかもしれないと緊張の糸が張り詰める・・・けど、族長の瞳には俺の下手な演技ではなく、ハーフエルフへのドロドロとした恨みのみが映っていた。


「・・・単刀直入に言おう。我々は、ハイエルフを生み出し、ハーフエルフを滅ぼす」


 族長から、轟々と燃え盛る恨みの炎に焼け焦がされた言葉が紡がれた。

ハーピーの観察日記

1:81階層小部屋にて、重傷の冒険者パーティーを発見・・・ワープゲート起動しておらず。

2:冒険者パーティーは瀕死の状態・・・コトヒラ様率いる医療部隊がダンジョン前で待機。

3:瀕死の冒険者パーティーを背負い、ダンジョンを引き返します。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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