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森人:誘拐エルフでした!

たくさんのブックマーク本当にありがとうございます!


リオエルを攫い返したミリエラ・・・ですが、やっぱり只では終わらないのがユガ一味です。


『誤字報告』という機能が追加されたようです。

感想に報告しないでも、その場で簡単にパパッと誤字を作者に報告できる機能が追加されたようです。

文章の一番下に『誤字報告』がございますので、是非お試しください!

 ・・・うん。どうしてこうなったんだろう?

 目の前には小脇に抱えられて・・・いや、両脇(・・)に抱えられて四肢を投げ出した状態で目を回して気絶したエルフが二匹いる。

 そんな荷物と化したエルフを抱えているのは言わずもがな俺の配下な訳で、筋骨隆々な鬼がエルフを粗雑に扱っている様を見ると・・・そういう危険な絵面の出来上がりだ。


 表通りはそんな配下の姿を見てか、ざわざわと賑わっていた街はなりを潜めてここの宿に近付こうともしない。それどころか次々にチェックアウトしていく者達まで出る始末だ。


「・・・主人よ、ミリエラを捕まえたのだが、おまけにもう一人が付いてきてしまった。敵意はないのですが、殺しましょうか?」

「ショウゲツ、よくやった。けど正座!!」


 どう鑑みてもやりすぎとしか言えない。


 ミリエラが帰ってこなかったので、俺が正常な判断を下せなかったと言えばそうなるんだけど、事の顛末は俺と配下全員で森に入って捜索を開始した所から始まる。


 ショウゲツ、シロタエ、キク、モミジにはエルフと出会った森の中に潜入してもらい、ハンゾーは最近覚えたという分身の術で森に入って危険がないかを警戒してもらった。

 俺はサテラと一緒に元来た森の入って捜索していたけれど見つからず・・・もう街に戻ってきているんじゃないかと、サテラの提案で戻ってみれば案の定正解だったわけだけど、ご覧の有り様だ。


 で・・・どうしてこうなったかを聞くと、非常に簡単なことである。


 森の奥深くから全速力で何かが駆けている音がして、それにショウゲツが気付いたわけだ。

 そのままショウゲツは駆ける音がする方へこれまた全速力で駆け出したわけだ・・・ここで想像して欲しい。


 気持ちよく走っていたら、目の前から2mを越す殺気ムンムンの筋骨隆々の魔族が陸上選手もビックリの美しいフォームで地面を蹴り砕きながら迫っている画はどうでしょう?

 どんな人だって恐怖するし、配下で少しは慣れているとは言え、そんな恐怖体験を眼前でやられてしまえば俺でも逃げ出す自信がある。


 まぁショウゲツの気持ちもわかる。森の奥深くから走ってきているのが、ミリエラだとは限らないし、もしも敵だったら自分が危ない状況に陥ってしまうからね。

 だから殺気を出して走ったんだろうけど・・・それしちゃうと、敵だろうが味方だろうがどっちも逃げるわ!


 森から走って逃げていたのは予想通りミリエラで、当のミリエラは例に漏れず、反転してショウゲツから全力で逃げ出したのだ。

 精霊の力と協力をもって、ショウゲツと互角の追いかけっこをしていたらしいが、森の知識においてはミリエラが上・・・このまま追いかけっこをしていては不利になると踏んだショウゲツはハンゾーに合図を出してミリエラを捕縛することにしたそうだ。


 ショウゲツは自らの足に魔力を纏わせ、上空に火の玉を蹴り放った。それを合図に、ハンゾーと分身達が一気に集結・・・そこで話が終わればよかったんだけど、それでもミリエラを捕らえることに四苦八苦したのだ。


 最後にハンゾーの分身が身体を張ってミリエラに隙をつくって、ハンゾー本体が糸を吐いて動きを止める。そして、それを切り裂いて逃げようとするミリエラに渾身の体当たりをした結果・・・漸く大捕物は集結した。


 それで、一番の問題はミリエラが気絶しているのではなくもう一つの方・・・いや、もう一方である。

 目を回しているのは右側に抱えられているミリエラだけじゃなく、左側にももう一人エルフがいる。


 そのエルフはどこか見覚えがある。というよりも、つい先日街中で魔法を放とうとした三人のエルフを捕らえようとした時に怪しく現れて三人のエルフを逃がした張本人であり、森でフォレストシャークに襲われていたエルフ・・・つまりは『リオエル』である。


 ショウゲツ曰く、ミリエラがリオエルを魔法で拘束して小脇に抱えていたのだそうだ。

 それを取り敢えずまとめて吹っ飛ばしたから、リオエルも伸びているというわけだ。因みに術者のミリエラが気絶したから拘束魔法はとけている。


 で、リオエルが目覚めると、どうしても問題なのがリオエルが『エルフ』だってことだ。

 この国はハーフエルフの住まう国であり、エルフとは遠い昔から続く深い因縁がある。万が一にもリオエルがエルフだとばれてしまえばどうなるかわからない。


「・・・っん・・・」


 と思った矢先にリオエルの目がゆっくりと見開かれてゆく。ボーッとした眼で周囲を見渡した後、自分の腰をがっしりと掴んでいるショウゲツに視線を向ける・・・リオエルとショウゲツの目と目が合う。瞬間に、恋が始まるわけもなく。

 こんなときに女性がとる方法は、悲鳴を上げるか声にならない声を上げて絶句するかの二つだが、リオエルは違った。


 抱え込まれた不安定な姿勢のまま腰を捻り、おもいっきり自分自身の身体を回転させる。

 そして、遠心力をもった全力で腕を振りかぶる・・・よくよく目を凝らしてみればそこには容赦のない精霊力が注ぎ込まれているのもわかる。

 あれで全力でひっぱたかれたなら、首が吹っ飛んでいってもおかしくはない・・・それどころか、消し飛んでしまっても仕方がない。


 無論、ショウゲツがそれを黙って食らう筈が・・・ないと思ったが、片手はミリエラを抱えているせいで使えない。魔力で防御壁を張ろうにも油断している時に、全力で繰り出された『ビンタ』に間に合うわけもない。


 衝撃・・・ビンタが炸裂した瞬間、衝撃波がショウゲツの頭を突き抜けて向こう側の壁にいたモミジに襲い掛かる。モミジは予想できていたのか、衝撃波に合わせて腕を振り払うといとも簡単に衝撃波を相殺できた。


 周囲に広がった衝撃波せいで空中に投げ出されたイアとメアをキクとサテラがそれぞれ回収、シロタエは瞬時に俺の前に立って、妖術の準備を整えて臨戦態勢を取る。


 さて、問題のショウゲツの解説に入りましょう。精霊力の乗ったビンタの一撃・・・遠心力というものに微弱な風魔法もプラスされて勢いが増し、かなり強めな火の魔力によって破壊力が物凄いことになっている。

 ヒットした場所はちょうどショウゲツの顔の真横・・・リオエルの小さな手はショウゲツの顔に収まり、掌全体がショウゲツの顔にめり込んだ。


「ッッッ!?」


 ミリエラが宙に放り出され、ビンタされた方へと吹き飛んでゆく・・・モミジはショウゲツをキャッチすることなくヒラリと躱して、そのまま壁に激突する。

 投げ出されたミリエラは俺の触手がきっちりとキャッチしている。


 ここまで、たった5秒の間に起きた惨事である。


「はぁ・・・はぁ・・・」

「・・・お、おはよう」

「・・・・・・・・・・・・・・・ぁ」


 かなりの精霊力を瞬発的に引き出し、それを加減もなく全力で振るったたからかリオエルは息遣いを荒げる。

 そして、さも何事もなかったかの様にフレンドリーに『おはよう』の挨拶を告げると、キョロキョロと周囲を見渡し、周囲の惨状をたっぷりしっかりと把握した後に、顔色がドンドンと悪くなっていく。


 俺の時と全く一緒だ。おでこの短剣を投げつけられるよりはましだけど、それでも容赦なしの一撃だ。

 つい先日説教されたばっかりなのに、やらかしてしまったのだ。


 リオエルは言葉よりも先に手が出てしまうらしい。


 ショウゲツはめり込んだ壁から自力で脱出し、そのままリオエルを見下ろしながら睨むけど・・・いつもより迫力が薄れているのはその顔に真っ赤で小さな掌マークがついているからだろう。

 うん・・・そろそろ助け船をいれよう。






「本当にごめんなさい」


 まぁ、正直ショウゲツにも非はある。年頃の乙女をまるで物扱いして両脇に抱え込んでいたしね・・・そのままベッドに寝かしてあげるとか気の効いたことをして上げればよかったのだ。

 それならあんな事態を招いていなかったかもしれない。


 またしても目を覚ましたミリエラにこってりと絞られたリオエルは出会った時よりも数倍近く小さくなっている気がする。


 ショウゲツは頬が赤く腫れただけで大事なかったし、本人も「ユキ様の訓練と比べればこの程度蚊に刺されたようなものだ」と言っていたので気にしてなさそうだ。

 それよりも、自分がリオエルに奇襲された事で、不甲斐ないと少しばかり落ち込んでしまっている。

 まぁ、あれは仕方ないと思うよ。


「うちの配下にも非はあったし、別にいいよ。ただ・・・それよりも、話したいことがあるんだけどいいかな?」

「・・・構いません」

「リオエルちゃん大丈夫?」


 ミリエラが心配そうにリオエルの顔を覗き込む。やはりかなりデリケートな問題なのだろう・・・話すのが少し辛そうだけど、俺はそれを知らなくちゃいけない。


「リオエルちゃんを助けてあげて」なんて金髪碧眼巨乳エルフっ娘に頼まれて断れる男がどこにいようか?

 調子にのって任せろと意気込むと、ミリエラに抱き締めて貰ってしまいました。

 その後、イアとメアから「「二人の代理」」と左右から頬をつねられました・・・いったい誰の代理なのだろう。


 まぁそれはさておき、リオエルから紡がれる言葉は予想通りといったものだ。しかし、カナード様から聞いたものと差異があるとすればかなり過剰な表現をされているという事だ。

 その事からもわかる通りどれだけエルフがハーフエルフを恨んでいるかがわかる・・・それが集落のエルフ全員の共通認識であり、例に漏れずリオエルも小さな頃からそう教えられていたようだ。


 やっぱりエルフもハーフエルフを恨んでいる。


「じゃあ、街中で魔法を放とうとしたのは・・・ハーフエルフに危害を加える為だったって事か?」

「・・・そうです。この国にエルフを送り込んで、倉庫に大量の魔導具があると情報を得たそうなの」

「それを魔法で爆破しようとしたのか?」

「・・・」


 リオエルはコクリと頷いた。

 倉庫を爆破しようとしたのは選抜された優秀な三人のエルフであり、リオエルは万が一の時の為にと外で待機していたらしい。

 そして、万が一の自体である俺が現れたわけだ・・・本当なら街からエルフが逃げてきた時には援護に入る予定であったらしいけど、俺がいたせいで出ることができなかったらしい。


「それと、ハイエルフねぇ」


 さすが異世界と言わんばかりの種族がまた一つ出てきてしまった。前世でも馴染み深いその名前『ハイエルフ』簡単に言えばエルフの上位種であり、時にはエルフを纏めるものだったりする。

 魔法に秀でたエルフを更に強化した種族・・・というイメージで間違ってなさそうだ。


 この異世界では『ハイエルフ』はエルフの王であったらしい。あった(・・・)というのも、昔に起きた魔族と人間との戦争の際に行方をくらましたそうだ・・・まあ、死んでしまっているのだろう。


 ハイエルフには精霊でさえも悪戯が出来ない程に神聖な存在であり、全ての自然を操ることのできる所謂神のような存在なのだそうだ。

 そして、ハイエルフを復活させればハーフエルフの国を乗っ取ることができるだろう・・・ってことが分かった。


「ハイエルフの証がその首元に光ってる紋様で、それを扱いこなすことができればハイエルフになったってことでいいの?」

「そう教えられました・・・」


『聖印』、それを発動すると簡単に言えば魔力や精霊力が跳ね上がる。そして精霊を支配することができる力を行使できる。で、それがリオエルの身体に浮かんでいるらしい。

 故に、幼い頃から長い間訓練を続けていた・・・と。


 聖印のコントロールは難しく、気を抜いたり驚いたりすると勝手に発動してしまう。自分の限界を超えて発動してしまえば、フォレストシャークの時の様に過剰な力を出してしまって魔力や精霊力が無くなってしまうという状況に陥るそうだ。


「もう・・・特別は嫌なの」

「ユガくん・・・助けてあげられないかな?」


 助けてあげたいのはやまやまなんだけど・・・。


「ディーレ、聖印って知ってる?」

『えぇ、精霊が自然に還る際に残すものね。よっぽど気に入ったモノにしか残さないわ』

「モノ?」

『木に聖印が宿ればその木は『樹』となり大樹となる。水に聖印が宿れば、その水は聖水となり自然に恵みを齎す。大地に宿ればその土壌は自然が育つに最高の環境となる。人に宿れば、様々な力を増幅させる事も出来るでしょうね・・・ただわからないこともあるわ』

「ディーレでもわからないのがあるの?」


 ディーレは俺の中から飛び出て肩の上にちょこんと座る・・・その視線は真っ直ぐにリオエルの聖印の


「聖印は精霊の親愛の証。それがどうして『負』の方向へ働くかがわからないの。普通なら、驚いたりするだけで力が暴走することはないわ」


 聖印は親愛の証であり、普通であれば『良い方向』にしか働かないという。

 病気を持っていればその病気は癒え生涯病気に掛かる事はなくなる。非力であれば力が強くなる。魔法が使えなかった筈が魔法が使えるようになるらしい。


 暴走なんてしない筈で、聖印の刻まれた者に『負の方向』で働くわけがないそうだ。

 しかし、どこからどう見てもそれは『聖印』であるそうで、ディーレも首を傾げている。


 因みにショウゲツビンタの件に関してはうまくコントロールできたそうだ。


「ミリエラの里のエルフ達は、聖印の話とかはしてなかったの?」

「聞いたこともなくて・・・」


 サテラがミリエラに聞くが、ミリエラも聞いたことがない・・・と。


 ・・・聖印をどうにかしないことにはどうしようもないし、それを知ろうにも里のエルフからは聞いたことがない。リオエルの集落のエルフ達はハーフエルフに非常に敏感・・・特に部外者と一緒にいると、ミリエラの様に攫われてしまう。最悪殺されてしまうことだってあり得てしまう。


「わかった。取り敢えず行ってみるよ」

「ッ!? それは危険です!!」

「まぁ、見ててよ」


 ドロリと体が溶ける。完全に人・・・魔族の形を失った自分に、口をあんぐりと開けてリオエルは俺を見る。

 そう言う俺もミリエラとリオエルの体を交互に見比べて二人の特徴を掴んでいく。


 ドロドロとした粘液が徐々に人の形をとっていく。白い肌には黒いどろっとした粘液は徐々に人の肌の色へと変化していき、その粘液がしなやかな手足を形成していく。

 身長は小さくして目はくりっとさせる・・・目立たない様に男と女の中間に位置する容姿を形成し、可愛くなりすぎない様にかっこ良くなり過ぎない様に注意を払う。


 そうして出来上がった体はどこからどう見ても子供のエルフだ。耳はピンと長く、くりっとした瞳はミリエラに似ている・・・あどけなさを残すリオエルの姿を参考に、リオエルよりも5歳年下をイメージして作った。


 これで潜入すればどうにかなるだろう。

 子供だし、俺の事を気に掛けるエルフも少ないだろう・・・よし、これでいける。


「これなら大丈夫だろう」

「・・・・・・」


 絶句したリオエルを余所目に、俺はエルフの集落に行くことに決めた。

ハーピーの観察日記

1:50〜80階層捜索。

2:第一・第二隊、80階層ボスと交戦。

3:80階層ボス部屋にて捜索中の冒険者パーティの残骸発見


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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