森人:鱗玉を手に入れろでした!
活動報告更新しました
まとめていますが、抱負と目標を書かせていただきました!
たくさんのブックマークありがとうございます。
エルフのリオエルと共にフォレストシャークの巣穴へと向かうようです。
『誤字報告』という機能が追加されたようです。
感想に報告しないでも、その場で簡単にパパッと誤字を作者に報告できる機能が追加されたようです。
文章の一番下に『誤字報告』がございますので、是非お試しください!
深い森の奥、葉っぱの隙間から差し込む光でしか大地を照らすことができない程に木々が乱立している。
おおよそ人が・・・魔族が足を踏み入れたこともないだろう未踏の獣道をゆっくりと歩いていく。
草木の良い香りが鼻孔を擽り、豊かな自然に包まれる・・・筈であったのだが、ここいらに足を踏み入れた瞬間からピリピリとした気配を察知し、そんな自然を楽しむ余裕なんかなくなった。
草木の香りに紛れ、生臭い血の香りが漂っていれば否が応にも気づいてしまうだろう。
柔らかな腐葉土に目を凝らしてみれば、所々におおよそ自然が残したものではない白い骨の様なものが散らばっている。
普通なら骨すら残らないであろう事から、これは自分達の縄張りを顕示しているのだとわかる。
それにも臆することなく先を進んで行けば、ほどなくして木々が薙ぎ倒されて平地になった場所に辿り着いた。
予想通り、平地が不自然に丘の様に膨れ上がり、出入り口の様な穴がぽっかりと開いていて、その周りには体長50cm程の鮫がウヨウヨと泳いでいる。前世で言えばかまくらみたいだな。
土の中を悠々と泳ぐ鮫の様な魔物はフォレストシャーク・・・地中に潜って奇襲を仕掛けてくるかなり厄介な魔物だ。
・・・まぁ、それも事前に対策をしていればどうとでもなるんだけどね。
便利な道具袋と化している体内から3つの香草を取り出す。
それを隣を歩いていたサテラに渡すと、腰に携えていたナイフを抜き香草をバラバラに切ってゆく。
香草の中からはドロッとした汁が出て、サテラはそれを小さな器の中に流し入れて木の枝で混ぜ合わせる。
そして、サテラがよく混ざった事を確認すると、今度はミリエラが指先に小さな火の玉を出現させ器の中に放つ。
器の中で混ざり合った香草の汁は、瞬く間に沸騰し白い煙を上げる。
その煙は上に立ち昇ることはなく、地面を這って染み込む様にしてドンドン放出されてゆく。
その煙は器の中から際限なく溢れ出し、フォレストシャークの巣穴に向かってゆく。
それに気づいたフォレストシャークが一気に煙の発生源へとやって来るが・・・まぁ、遅いわな。
巣穴の周りにいたフォレストシャークは既に煙を吸い込んでいて、土の中を泳いでいたフォレストシャークは突如として悶え苦しみ始めた。
これらの香草は単体じゃあどうにもならないけど、組み合わせて熱を加える事で有害な煙を発生させる。
特に地面を這う魔物に対して有効であり、フォレストシャークの討伐には必需品とされているものだ・・・最初期のスライム時代に大森林の薬草やらなんやらを身体の中に溜め込んでいて、偶々その香草があって良かった。
もがき苦しんでいたフォレストシャークは、やがてピクピクと痙攣し始め泡を吹いて気絶した。
無論、毒煙は巣穴にまで染み込んでいるわけで、巣穴からは続々とフォレストシャークが出て来ている。まぁ、出てきた矢先に毒煙の影響で気絶してるけどね。
エルフっ娘リオエルを追っていたフォレストシャークを全滅させたというのに、まだこれほどフォレストシャークが残っているとは思いもしなかったな。
余程、放置されていたのか巣穴も通常よりも二、三倍大きくなっているし、それに比例してフォレストシャークの数も多くなっているのだろう。
・・・・・・・・・毒煙がフォレストシャーク達を蝕み始めて数分経った所で、巣穴からフォレストシャークが出て来なくなった。
「これで大丈夫?」
「いいえ、まだ・・・」
気を抜いた瞬間、巣穴から飛び出るようにして他のフォレストシャークよりも一回りも二回りも多きなフォレストシャークが飛び出した。
鼻先からはギザギザとした刃がついたのこぎりのような物が伸びていて、それはそばにあった大きな岩を軽々と切り裂いた。
「ヒャッ!?」
不意を突かれてしまって小さな悲鳴を上げたミリエラの声を、フォレストシャークの上位種は敏感に察知し、俺達のいる方向へ向かって突進し始めた。
「どいて!!」
此方へと向かってくるフォレストシャークの上位種・・・ヴァンディットシャークにリオエルは迷う事も無く弓を構える。
即座にヴァンディットシャークを捉えると、弓から矢が放たれ・・・
ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォアアアアアアァァァァ......
「へ?」
弓から放たれた矢は、大地を抉り、周囲の空気を捻じ曲げる様に目にも止まらぬスピードでヴァンディットシャークへと突き進んだ。
さすがのヴァンディットシャークもその一撃を見てまずいと思ったのか回避行動に移る・・・が時既に遅く、矢はヴァンディットシャークの目を貫き。そのまま体を突き抜けて森の奥深くへと飛び去って行った。
矢を放ったリオエルが呆然として、弓と手元、矢を交互に見る。
まぁ、その正体は弓だ。張られた弦は風の精霊の力がふんだんに織り込まれており、弓自体からは大地の精霊の力が感じ取れる。
よく見てみれば、エルフの周りを飛んでいた精霊が弓に力を注いでいるのがわかる。
「ディーレ・・・いったい何作ったの?」
『精霊が外から干渉できる様に作った弓ね』
精霊は基本契約者にしか力を行使することができない。つまり契約していない人が、精霊の力を行使しようとしても無理だってことだ・・・まぁ、当然だろう。
フォレストシャークに追われていたリオエルのピンチに、他の精霊達が焦るだけで何もできなかったのが何よりの証拠だ。
唯一の例外は『精霊の力が宿った道具』だ。
ハーフエルフの国『カラドウス』で作られている魔道具や建物には精霊の力が込められており、そういった精霊の力で作られているものはある程度持続する。
しかし、それでも魔族と『契約』している精霊がいてこそできる芸当だ・・・ちゃんと魔道具や施設に精霊と協力して魔力を付与しているんだからな。
・・・その筈なのに、契約外の精霊が干渉できるようになるって、どうなのよ。
あれがあれば、精霊次第ではあるけれど誰でも精霊魔法が使えるってことだぞ。
『私にしかできないんじゃないかしら?』
「ユガ、多分あれが世に出回れば国宝級になるわよ・・・なんて物作ってるのよユガ!!」
サテラが俺にものすごい剣幕で怒るが、俺は無実だ!!
全部ディーレがやったことなんだから・・・と反論しようとすれば「自分と契約している精霊くらいちゃんと見張ってなさい!」と言われてしまってぐぅの音もでない。
「勘弁してよ・・・」
『人間と魔族の価値観なんてわからないわ』
そりゃそうだわな。
完全に俺の監督不行きが原因だ。
そんなことを考えていると、ヴァンディットシャークが体制を整え、再度此方をに襲い掛かってくる。どうやら急所は免れていたようだ・・・それでも身体を貫かれているのにまだ俺達に飛び掛かろうとするなんてかなりタフだな。
咄嗟に触手を槍の形状へ変え反撃しようと試みるが、ヴァンディットシャークは地中に潜り姿を消す。
お得意の奇襲だろうが、周囲掌握があれば
「お願い!」
『ハーイ』
周囲掌握を起動しようとした瞬間、地面が盛り上がり人間の頭ほどはある岩の礫と共にヴァンディットシャークは空中へと吹き飛ばされた。
何が起こったと隣を見てみれば、ミリエラが地面に手を付いていて周囲には淡く発光する魔方陣が浮かび上がっている。
ヴァンディットシャークが地中に潜ると見越して魔法を準備していたのだろう・・・で、ミリエラにその指示を出したのは
「ハァァァァッッッ!!」
サテラが裂帛の気合いと共に空中に投げ出されたヴァンディットシャークへと駆ける。
地中では脅威なヴァンディットシャークも空中へ投げ出されてしまえば単なる的だ。
重力によって落下するヴァンディットシャークの真下に潜り込むと、サテラは一度息を整え、目を閉じて全身に魔力を巡らせる。
魔力の奔流がサテラを中心に荒れ狂い始め、収まりきらなかった魔力が身体から放出される・・・しかし、それを再度取り込んでは圧縮を繰り返し、自分の中へと内包している。
サテラがゆっくりと目を開くと、そこにはアメジストの如く美しく澄んだ瞳をしたサテラが現れた。
いつもの鳶色の瞳をした人間のサテラではなく、魔人として・・・いや、『人魔』としてのサテラがヴァンディットシャークと相対する。
「ハッ!!」
左足を踏ん張り、落下してくるヴァンディットシャークを右足で思いっきり空へと蹴り上げる。
ミリエラの放った魔法の時よりも遥か上空に蹴り飛ばされたヴァンディットシャークは、身体をくの字に曲げ胃の内容物をぶちまける。
そして、そのまま自重によってまた落下を始める・・・しかし、先程とは違いヴァンディットシャークは大きな顎を地面に向け、己の真下に位置するサテラへと牙を剥いた。
サテラは落下位置から動こうとしない。このままではヴァンディットシャークに押し潰され、或いは噛み砕かれてしまう。
「恨みはないけれど、実験に付き合って貰うわ」
サテラは腰に携えていた剣を引き抜き、落下するヴァンディットシャークに向けて構える。
身体から流れ出ていた魔力を刀身に這わせ、鈍く光る刃が赤いオーラに包まれた刹那、サテラの手元からパチッパチッと静電気の様な音が走る。
次第にその音は大きくなり、手元から青く光る雷光が迸り始める。
青い雷光は刀身を完全に覆い尽くすと、雷光は不定形の刃を形成し魔力を取り込む毎に徐々に大きさを増してゆく。
圧縮された高密度の魔力は時折破裂音を伴いながら、ゆっくり刀身へと注がれる。
サテラの額からは汗が滲み出しており、剣を持つ手も些か震えている。
魔族と化した自分の力を制御しようと、ソウカイやコクヨウ、竜人達と刃を交えて訓練していたのは知っていたけど、まさかここまで成長しているとは予想外だ。
サテリフィト・ラウル・ミシェラ:人 [並列] 魔人(LV48)
称号
魔を使役し者
魔力解放
魔人化
特異魔人
魔装戦士
HP:841・・・(魔人化:2412)
MP:831・・・(魔人化:2514)
STR:981・・・(魔人化:2765)
VIT:631・・・(魔人化:1911)
AGL:899・・・(魔人化:2008)
MGI:979・・・(魔人化:2702)
LUC:18
位階:A・・・
LV上限:75
スキル:轟撃、山裂、滅魔斬、加速
エクストラスキル:紫電の一閃
専有スキル:魔人の撃鉄、魔装
魔法:ドラゴライトニング、シュツルムファイア、ヴォイドウォーター、メルトトルネード
・・・これ、対策されたら、普通に俺討伐されてもおかしくないステータスだよな。
真っ向から殴り合うだけならまだ勝てるかもしれないけど、スライムの弱点なりなんなりを研究されたら勝てる気がしない・・・まず魔法戦士だから、刀身に魔力集められたら弱点その一が完成するしな。
よし二度とサテラには逆らわないようにしよう。もし本気で怒らせたら・・・。
そんな事を考えながら身震いしていると、蒼く輝いていた雷光の刀身は既に二倍に膨れあがっていてバチバチッと魔力の破裂音が響き渡る。
「エクストラスキル:紫電の一閃・・・改!!」
ZYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!!!!!
サテラは両足に力を込めて大地をけり砕きながら空へと飛翔する。刀身を覆う雷光が尾を引き、刀身を覆いきれなかった雷光がサテラの後を遅れて走る。
サテラは剣を振りかぶり、型に嵌まった流麗な動きを持って剣を振り切った。
刹那、光と轟音が周囲に響き渡り、地面に転がって気絶していたフォレストシャーク共々全てを飲み込んでいった。
よく目を凝らしてみれば、その光は圧縮された高濃度の魔力であり、飲み込まれた矢先に全てが灰へと変わっていっている。大地諸共フォレストシャークは灰へと変わり、こんなものの直撃っを受けたヴァンディットシャークは・・・もう塵すら残っていないだろう。
衝撃波が迫り、触手でミリエラとリオエルを包み込んで護る・・・結構距離があるのにここまで衝撃波が飛んでくるっていつもの冷静なサテラはどこ行った。
光が収まり、轟音が鳴りやむとあたり一面を砂塵が覆っている。
しかし、その砂塵が一瞬で振り払われ、中心からは剣を振り切ったサテラが立っていた。
「まだ、力の抑止が難しいわね・・・もっと訓練しないと」
あれで切られたら俺でもひとたまりもないなぁ・・・当分おとなしく過ごそう。
「鱗玉は巣穴の奥にある筈よ」
「あ、ありがとう」
・・・
二人を包んでいた触手を解いて直ぐにサテラの下へと駆け寄る。
サテラを触手で包んで、横に寝かせる・・・無理しているのはすぐに分かった。
「やっぱりばれてた?」
「いつも見てるからそのくらいはわかるよ・・・あまり無理しちゃだめ」
「・・・そ、そうね。でも、貴方には無理するなって言われたくないわ」
ごもっともで。
急激に魔力を使ったからか、顔は上気している。
それにいつものサテラの顔じゃないことくらいはひと目見ればわかる・・・だてに長い間旅をしていない。というのは建前で美少女はいくら見ても飽きない。ミリエラとサテラを交互見てはいやされ、特にミリエラのおっp
「いふぁい」
『・・・』
ディーレに無言で頬を抓られてしまった。
久々に出てしまった煩悩を必死に抑え込みながら、身体から魔力を回復するポーションを取り出し、サテラに飲ませる。
リオエルは既に巣穴に飛び込んでミリエラは、リオエルの後を付いて精霊魔法の準備を開始している。
日頃サテラと一緒にいるからか、最近では冒険者の様に用心深くなってきている。
「ぁうっ!?」
と思った矢先に巣穴の出っ張った所に頭をぶつけて涙目になっている・・・このドジさえなければ完璧なんだけどな。
サテラを看病して、数分も経たない内に巣穴から二人が出てくる。
中から戦闘音も聞こえて来なかったし、フォレストシャークはあれで全部だったんだろう。
リオエルの片手には鱗の様な紋様が浮き出た水晶玉があり、それが目的の物だったのだろう安堵した表情を浮かべている。
サテラも魔力が回復したのかさっきよりも随分顔色がよくなって・・・偶然、偶々、千載一遇、必然的に胸に当たっていた触手に気が付いて魔力を纏わせた鉄拳が顔面にめり込んだ。
顔から火が出るかの様な痛みに襲われ、ディーレからも頬をつねられるんだから勘弁してほしい・・・でもまぁごちそうさまでした。
「ありがとうございます。貴方達がいなければこれは手に入れる事ができなかった・・・このご恩は必ずお返しします」
「そんな畏まらなくてもいいよ。一回首突っ込んだら最後までやらなきゃ気になる性分だから」
「それに毎度毎度振り回されている私の身にもなりなさい」
「いふぁい・・・」
さっきのをまだ引き摺っているサテラが俺の頬を魔力を込めて引っ張る・・・魔力込めたらマジで痛いからやめてくれぇ。
まぁ毎回巻き込んでいるには俺だから反論の余地もないのも確かだ。
リオエルはペコリと頭を下げ、口をモゴモゴさせるがそのままクルッと振り返り森へ走り去っていった。
結局、エルフ達がどこに住んでいるかも、何故鱗玉が必要なのかも教えて貰えなかった。
どうにかして聞き出そうと思ったけど、彼女達の傍を飛ぶ精霊が首を振っていたのを見て、仕方なく断念した。
リオエルは鱗玉を手に入れ、時間がないからと直ぐに戻って行った。
ろくに話す事もできなかったけど、「ご恩は必ずお返しします」って言ってたしそう遠くない日にまた会いそうだな。
・・・そして、不穏の影と共に会う事になるとは、この時は知る由もなかった。
ハーピーの観察日記
1:大規模な盗賊団による商会の襲撃事件発生。
2:ユリィタ様による非常召集。
3:里から救援人員を選抜予定。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
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