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現状:共同戦線でした!

ギリギリ間に合いました!!

仕事が恨めしい。遅くなって申し訳ないです・・・

次話投稿は一週間以内です!

 ジメジメとした大地と鬱蒼と茂る木々の中、耳に心地よい風の音と葉が擦れる音が周囲を支配する。


 そんな、大自然の中に俺こと「刀コボルド」は大地を踏みしめ進行している。

 大地に足跡を刻みながら、森の中を悠然と移動しているのだ。


 どうしてこうなったのかは言うまでもない。

 あの御方スライムの命令とあれば俺達は命を捨てる覚悟さえできている。

 まぁ、できてはいるが今は・・我らがコボルドの族長がいるため、命を投げ捨てるわけには行かないが・・・。


 御方の素晴らしさは私たちの価値観を大いに変化させた。

 今まで、我ら以外の種族は愚かであり、下級の存在などと思っていた自分が情けない。

 表には出していないとは言え心の隅にはそういう思いが俺にはあったのだ。


 俺達コボルドは今や「族長派」と「スライム派」の二手に分かれている。

 今回御方スライムに訓練して頂いた全てのコボルドは「スライム派」に属している。

 俺達は合同訓練のためにここに来ているが、族長の護衛・・・もとい親衛隊はコボルドの集落にて族長を守護している。


 俺達訓練コボルドは75、親衛隊の数も75と半々に分かれている。

「族長派」の連中は本当に惜しいことをしたものだ。

 御方スライムを拝謁できなかった彼らは、あの勇姿を見ることが適わなかったのである。


 俺が求めているもの全てを持ち得ているのが御方だった。

 恐れを抱くほどの強さと、仲間を思うその心、この広大な森ですらも凌駕する程に広い心を持った御方。

 そのカリスマに俺達は感化されたのだ。


 初めて御方とあいまみえた時には落胆したものだ。今その事を考えるだけでも、過去の自分を殴り倒したくなるほどに俺は馬鹿だったようだ。


 スライムが救世主などと、ホブゴブリンはおかしくなったのかと考えたものだが・・・

 この森に生息するスライムではないことは明らかだった。


 言葉を介するスライムなど聞いたことがない。最弱種族であり、知性がなく。魔法も攻撃も貧弱の一言で事足りるような最弱種とは何かが違ったのだ。


 その時は、驚きはしたもののやはりまだ素性が知れぬし、族長の言葉もあるゆえ同盟を組むことができなかった。


 一応は協力という形であったが、まだ目の前にいるスライムを疑っていた。

 それがまさか、我々全コボルドで立ち向かっても勝てないとは、思いもしなかったが・・・


 コボルドの中でも上位の者が倒されるだけでなく、俺達の心の奥底まで響いてくるような言葉に、闘争心が燃え上がった。

 何故オークに踏み躙られなければいけないのか、華々しく散っていった仲間達に今の俺達は顔向けできるのか。

 そんな思いが頭の中を満たす。


 その時には俺達は全員、前方にいる御方に何かを感じていたのだ。


 そして、気づけば大乱闘。

 幼少の頃より親しんだ、小太刀爺と薙刀嬢、無手嬢と共に御方に向かって突撃していた。


 結果は惨敗。コボルド、ゴブリン双方とも御方の御前に突っ伏したのだ。

 圧倒的なまでの強さ、魔法を巧みに使いこなし周囲の状況を完全に感知している。

 不意打ちも、必殺の技も、はたまたスキルであっても御方に傷一つも付けることは適わなかった。


 そして、御方の広大な心によって俺達は命を救われた。

 目覚めた後、御方の御自宅の前にて出てこられるまで、待った。

 無礼を働いた5匹の命で怒りを鎮めようとしたのだ。


 しかし、許された。

 下等と、愚かと罵った俺達を御方は許して下さったのだ!

 もし俺が同じ状況ならその場にいる全員を打ち首にかけるだろう仕打ちを、御方はあっさりと許したのだ!!


 勿論信じはしなかった。借りを作り、後になって皆殺しなどという悍ましい事態が起こるのではないかと、内心冷や汗を流した。


 そして、二回目の問いかけに、御方は自分の軍門に降れという。

 流石に無償で許すなどありえないのは承知の上だ。

 しかし、軍門に降れというのは、5匹のコボルド達に誇りを捨て、裏切り者になれと言っているのと同義であった。


 彼らは苦渋の決断を迫られ、コボルドの生き様を捨て、恥を背負って生きていくことに決めた。

 そう、その時だったのだ。


「自分の誇りとプライドを捨て、仲間を救う方を選んだお前達に俺は感動した。罰は、今俺がお前達に与えた、一つの試練だ。よく頑張ったな」


 ・・・これが、涙を流さずしていられようか? 無論否である。


 無礼を許し、彼らが試練を乗り越えた様を「よく頑張った」などと・・・。

 私は心に決めたのだ、もし現族長が地に腹を向けた暁にはこの方についていこうと。

 横を見やれば、爺も嬢二人もその意思を窺い知れた。


 今は御方の軍門に下ることは出来ないがいずれは・・・

 せめて今は、御方の言に従うことにしたのだ。


 そして今に至るわけである。

 御方にくだされた訓練の内容を頭の中で反芻しながら、目的地へと急ぐ。

 御方の姿を想像するだけで、尻尾が自然と動いてしまうのは仕方のないことだろう。


 だが、不満点が一つだけあるのだ。

 ここに響くのは何も俺の足音だけではない。いや、コボルドの足音だけではないのだ。

 そう。現在俺達はパーティーに分かれて行動しているのだ。

 俺のメンバーは10人と他のパーティーよりは少ない。


 横に並んで歩くのは、コボルド3匹とゴブリン6体である。ゴブリンの中にはホブゴブリンのボスもいる。


 それが、不満なわけではない。御方の命令でもある以上、それに疑問等は抱かないのだが、今回の訓練は昨日のような乱取りは行われないのだ。それが不満なのである。

 そして今回の訓練の目的は、コボルドとゴブリンの信頼関係の構築なのだそうだ。


 確かに俺達は、昨日の乱取りから少しは相手ゴブリンのことを知ることができたが、信頼などはしていない。

 長年敵対部族であり、戦闘こそしなかったもののお互い牽制して生きてきたのだ。

 簡単に信頼関係など構築できそうもない。


 そして、考え出されたのがコボルドとゴブリンからなる混成パーティーである。

 これで、訓練をこなして来いというのだ。

 その訓練の内容は・・・


「いたぞ」

「あぁ、あれだな。スライムの神様が言っていたのは・・・」


 そこにいたのは「マンイーター」だった。

 俺達は各自持ち物に問題がないかをチェックし、戦闘準備を進める。

 準備は着々と進行し、用意は終わった。


「行くぞ!」

「作戦通りに行こう!」


 俺達は猛然とマンイーターに襲い掛かった。

 ホブゴブリンは下に落ちていた拳ほどの石をマンイーターに投げつける。


 石が直撃した直後、マンイーターが身もすくむ様な雄叫びを上げる。

 すると、背後の森からジャイアントマンティスが4匹出現する。


 そう。訓練内容はマンイーターにジャイアントマンティスをわざと呼び寄せさせて、それを迎撃するというものだ。


 既に全員にマンイーターの位置を知らされており、方向感覚が狂うことがないコボルド先導の元、戦闘を開始するというものだ。


 御方と共に訓練できないのは非常に残念ではあるが、敵はこの森の上位者であるジャイアントマンティスなのだ。

 一匹相手なら俺ひとりでも充分事足りるが、それが4匹、加えてマンイーターの後方支援付きとなれば俺一人では対処できない。

 パーティーにいるコボルド達と協力するだけではこれを切り抜けることは不可能である。となれば、必然的にゴブリンにも頼るしかない。

 そうなれば自然と仲間意識が芽生えてくるだろう。信頼とまでは行かずとも、仲間としては認識されるに違いない。


 俺とホブゴブリン、コボルド1匹、ゴブリン1体が前衛にて敵の足止めを行うい、残りの者達は後方の支援を行う手筈となっている。


 ・・・しかし、上手くいかない。

 それもそうだ、まず前衛の息が合っていないのだから当然のことだろう。


 戦闘中における接触、互いの思考を読み取れずヘイトが俺やホブゴブリンに集中する。

 後衛の支援が、こちらへの阻害になる。


 まさかここまで戦闘が円滑に進まないとは思ってもいなかった。

 自分の力量だけが、戦闘における有利でないのはこちらも理解している。

 故に、息を合わせようとするのだがそれが空回りしてしまう。


 そして10分後に、一時撤退を決意する。

 敵は少しの間だけ追ってきてはいたが、すぐに諦め元居た場所へと帰っていった。


 そして現在、反省会と作戦会議中だ。

 そこでまた問題が発生したのだ。


 責任の押し付け合いが始まっているのだ。なんとか、俺とホブゴブリンで抑える事ができたが、このままでは両者啀いがみ合うままになってしまい、この訓練の意味がなくなってしまう。


 やれ、お前の支援がなっていない、おまえの攻撃が俺の邪魔になったなどと勝手な事ばかりを抜かし合っている。

 どちらも足を引っ張っていたのに変わりはないのだ。


 ゴブリンの後方支援のせいで、決定打を逃した時もあった。前衛のコボルドが前に突出しすぎ、横にいたゴブリンが相手取っていたジャイアントマンティスのヘイトが後方に向いた。


 どっちもどっちだ。

 ホブゴブリンと俺の一喝によって、どちらも力なく頷くことしかできなかった。

 これでは、俺達のようなリーダー格がいないパーティーはどうなっているのだろうか・・・。


 それにしても、このホブゴブリン中々にできる。

 まだまだぎこちないとは言えしっかりと、俺の動きに合わせている。

 俺も合わせているが、このホブゴブリンには及ばないことは確かである。


 俺が前に出れば、間隔を開けすぎずついてくる。俺が下がれば、やつも自ずと下がる。

 俺の行動とジャイアントマンティスの行動をよく観察している証拠だ。

 頭も回るようで、ジャイアントマンティスもホブゴブリンの動きに翻弄されていた。


「やるじゃないか」

「どーも」


 短い返答だったが、コイツは俺を、俺はコイツを仲間だと認めた。


 さて、次の作戦は少々賭けに出ることにした。

 俺とホブゴブリンは中衛に、ほかは前線に投入することにした。

 基本的には俺達は援護に徹するが、もしもの時は前衛に飛び出す役割だ。


 コボルドとゴブリンは格上のジャイアントマンティスを相手取らなければいけないために協力は必要不可欠である。


 そしてマンイーターの場所へと再度強襲を仕掛ける。

 先程のジャイアントマンティスも健在であり、直ぐ様マンイーターの前方へと移動する。


 コボルド一匹とゴブリン二体、コボルド一匹ゴブリン一体×2、ゴブリン二体で、ジャイアントマンティスを受け持つ。


 一斉に襲い掛かる、コボルドとゴブリンだったが以前とは違った。

 相方の出方を伺いながら攻撃に転じているのだ。

 一体でもしくじれば自分も危うい状況に陥ってしまう。そんな状況がコボルドとゴブリンの心を支配しているのだ。

 となると、自然と双方とも声が出る。


「おい、前に出すぎだ! お前に目標が移るぞ!」

「カマフリアゲタ! サガルゾ!」

「俺と攻撃を合わしてくれ! 胴体にぶち込むぞ!」

「アブネェゾ、シッカリシロ!」


 いい傾向であるだろう。このまま順調に行けば、明日の決戦までには信頼関係を構築できるであろう。

 その後も戦闘は続き、30分後にはジャイアントマンティス全てを地に沈めた。


 ここからマンイーターに攻撃・・・はしないのである。

 訓練の内容は、マンイーターの呼び出した敵を狩ることである。そうなれば、無限に敵は出没し探す手間が省け、効率よくレベリング?とやらができるのだという。

 御方の思慮深い言動は俺には理解できないが、それが最もよい行動なのだろう


 マンイーターが再び、ジャイアントマンティスを呼び寄せる。蔦の攻撃を切り裂きながら、周りに注意を向ける。


 すると、再びどこからともなくジャイアントマンティスが出現する。

 そして、また迎撃を開始した。




 あれから5回ほど繰り返し、今は小休止を取っている。

 パーティーを組んだ時には見られなかった光景が目の前には広がっていた。


 コボルドとゴブリン両者が先ほどの戦いの細かな改善点を話し合っている。

 他部族を愚かとするコボルド達が、今やゴブリンを共に戦う仲間として認識しているのだ。


「御方は本当に素晴らしい。俺達では決してできないことを、いとも簡単に覆される」

「スライムの神様を一目見たときに、俺も思った。このお方は何処か違うと」

「・・・ゴブリンの戦士よ、お前にもわかるか? 」

「もちろんだ、コボルドの戦士よ」

「「・・・」」


 ふむ。こいつと俺は無言で拳を合わせ合った。信頼の印として交わされる拳に、自然と笑みが溢れる。

 今や作戦などほったらかして、雑談に興じているコボルドとゴブリンからも、友情を感じ取れるまでになっていた。


 先ほどの戦闘での変わりようも見事だった。

 油断して一撃をもらったコボルドがよろめき、ジャイアントマンティスが鎌を振り上げていた絶体絶命の状況を、割って入り鎌を捌いたゴブリンがいた。


「ダイジョウブカ?」


 この一言をきっかけに、コボルド達はゴブリンを下に見なくなったのだ。

 共にあるべき存在とし、仲間として、互いに背中を預けあったのだ。


 そして、ジャイアントマンティス討伐7回目にして疲労がピークに上り詰めた俺達の目に、どこからか高々と打ち上げられた水柱が飛び込んでくる。


 御方が訓練の終了を伝える合図である。

 俺達は、戦闘中であったジャイアントマンティスを討伐して、マンイーターだけを残し、その場を後にした。


 俺達コボルドとゴブリンの武勇伝をネタに話しながら、道中部族に伝わる歌まで歌いだすしまつ。


 だが不快感などは決して感じない。

 それは、もう仲間だと認識しているからだ。

 御方の来訪から一日目に殴り合い、二日目に、共に手を取り合った。


 森の開けた場所に出ると、俺達の他にも打ち解け合った様子の者達が見て取れる。

 若干まだぎこちなさは残ってはいるが、会話を交わす程度には至っている。


 薙刀嬢も、無手嬢も、小太刀爺も全員笑みを浮かべてホブゴブリン、ゴブリン達と共に歩みを進めている。

 そしてウルフの上に乗って、肩に妖精を乗せた御方の下へと向かい、辿り着いた者達から膝を突き頭を垂れる。


 偉大なる御方を前にして、俺たちには決して届かぬ頂きに上り詰めている御方に敬意を表する。

 雑魚のスライムなどとは格が違う。知力も力も、すべてがこの森の頂点にあらせられるお方。


 俺達は、御方に今一度の感謝を述べて、地に膝を突いた。






 作戦はうまくいっている。

 作戦名「一緒に闘って絆を深めよう作戦」


 うん、クソだな。はっきり言おう。非常に安直な考えだ。

 なんかこう・・・もっといい案はなかったのかと思う。

 なのに、作戦は非常に順調に進んでいる。ものすごく複雑な心境に頭を抱えているのだ。


「いいじゃないの。いい方向に進んだんだから」

「うん、ありがとうディーレさん。でもね今、あいつら単純でよかったと心底ホッとした自分が情けないだけなんです。ほっといてください」

「相変わらず変なことに悩むスライムさんね」


 拳で語り合えとか、どこの漫画だよ。ジャ○プかよ。

 ノリノリになって「いい作戦思いついた」とか・・・本当にクソだな。


 後こいつらは一体何なんだよ・・・俺を神様みたいに祭り上げやがって、心臓が痛いわ!!

 俺は一般大学生であって、神様でもなければ化物でもないんだぞ! (スライムだけど)


 ほらみろよ。コボルドとゴブリン達の屈託のないキラキラ輝く目を。

 こいつら単純とか思った自分が恥ずかしいわ!!


 レベルも上がったし、信頼も得た。俺はこいつらの中ではさぞかし名軍師なんだろう。

 中身はタダの漫画知識を駆使したオタク大学生だけどな!


 眼前に、ボスホブゴブリンと刀コボルドが前に進み出る。


「御方のご命令しかとこなしてきました。俺は御方のような知恵はありません。故に、コボルドとゴブリン達の壁を取り払うことなぞできなかった。しかし、御方はいとも容易くそれを排除した・・・もはや言葉もない。感謝の極みにございます」

「スライム神様、どうか今後も我らゴブリン・・・いや、我々ゴブリン、コボルド一同の担い手になっていただきたい」

「今は忠誠を誓えない俺だが、いずれあなたのもとへと馳せ参じましょう。」


 コボルドとゴブリンの言葉にその場にいた全員が顔を上げ、その意思を俺に表明する。

 こんなもん。選択肢なんて一つしかないじゃないか・・・。

 穢れのない真っ直ぐな瞳で、でも少しだけ断られるのではないかという不安げな目で見られたら。

 元々押しに弱い俺にしては大ダメージなのだ


「そ、そうだな。だけど、俺は大したことしてねーよ。だから俺なんかについてきたっていいことは何もな『『そのような謙遜されないでください! 御方は素晴らしい支配者です』』・・・ふぁー」


 もうだめだ。おしまいだー。

 こいつらの、俺への位置づけがぐんぐんと上昇している。こうなってしまってはもう抑えられないだろう。


「ディーレさん、どうしよう助けて」

「いいじゃない。この世界でこれだけ配下を手に入れるなんて普通は無理よ。よかったわね」

「アルジハイダイ」

「ゴシュジンサイキョー」


 どうしようもない、俺には味方がいないようだ。ディーレ、ハルウとユキからも後押しされてしまった。


 よし、こうなったらヤケだ。行くところまで行ってやろうじゃないの!

 男は度胸! ここで引くところは見せれない。


「わかった。お前たちを配下に加えよう。コボルドも気が向いたら来ていいよ」


 その瞬間に、森のざわめきをも吹き飛ばすほどの歓声が響き渡る。

 抱き合って喜ぶ者、剣を俺に差し出そうとする者、礼をしたまま黙祷する者など様々な様相を見せている。


 生まれてこの方20年、普通の人間として生きてきた俺には流石にハード過ぎる展開なんだが。

 俺は神様か何かと勘違いされているに違いない。


 ホブゴブリン五体が俺の前に跪く。


「我ら一同、あなた様に命を捧げることを誓います。族長にも許可は頂いております。我らの未来を貴方様に」

「んえ?・・・あ、おう」


 驚きすぎて間抜けな声を出してしまった。

 うむ。こいつらは俺の配下に降ったようだ。なら、名前をつけれるんだよな?


「んじゃあ、とりあえず名前を付けよう」


 てことで、リーダー格の五体には名前をつけた。

 ボスは「ショウゲツ」、雄ホブゴブリンAを「フゲン」、雄ホブゴブリンBを「コトヒラ」、雌ホブゴブリンAを「シロタエ」、雌ホブゴブリンBを「ヨウキ」とした。

 これまた名前をつけるのに悩みに悩んだが、1時間格闘の末に付けた傑作である。

 桜の種類からそのまま取ってきている。


 その頃には歓声も幾分かは鳴りを潜めており、こちらに見入っている者達も増えている。


 他のゴブリン達の名前はどうするかって?

 それについては、ホブゴブリン達に付けてもらうことにしている。

 流石に一人一人名前を付けてなどいられないからだ。


 すると、ホブゴブリン達は顔を喜悦に綻ばせながら、他のゴブリン達の下へと名前を付けに行った。


 “一定の隷属を確認。「進化の系譜」を自動発動致します。ホブゴブリン、以下配下全ての系譜を取り込み、新たな器へと昇華致します”


 うおっ!?ナビちゃんの声が頭に響く。

 すると、名前を付けに行ったホブゴブリン達に変化が訪れる。


 ボスだったショウゲツは紫色の体表へ変化し、フゲン、コトヒラ、シロタエ、ヨウキは赤い体表へと変化した。


 当人達もさる事ながら、周りの者達も驚きを隠せないようだ。

 ハルウ達を配下にした時と同じ現象が起きているようだ。


 うん。こっちを輝く眼差しで見てくるのはやめようか、俺だって意図してやっているわけではないのだ。


 そうしていると、刀コボルドと小太刀コボルドがこちらへと近づいてくる。


「御方よ。この度は我らの勝手をお許し下さい。この老いぼれもまだ信心はあったようで、御方に忠誠を誓っても良いと考えたのじゃが、今は何分現族長の小童に忠誠を誓っているものでな・・・申し訳ない」

「こちらからも謝罪と礼をさせていただきたい。無礼を働いた俺達にここまで慈愛を頂けるとは、本当に感謝する。いずれ俺の命を御方に預ける日が来ることを祈るとしよう」

「お、おう。そんな日が来ればいいな」


 コボルド達は、ではこれにてと一言だけ残して、去っていった。

 今日中には族長がいる自分達の拠点に戻らないといけないそうだ。


 本当に名残惜しそうな顔をしながら、俺の方を幾度と振り返り去っていく。

 若干薙刀と無手の雌コボルドが目を合わせてくれなかったような・・・まだ信頼されていないのだろうか?


 コボルドが去った後、ゴブリン達は訓練の疲労が限界に達したのか、その場にて眠りに着いた。

 ショウゲツ達ホブゴブリンも同様に崩れるようにして、そこに寝転がった。


 そんなゴブリン達を尻目に、ハルウの背中から降りて、今の境遇を考える。

 最初の頃の身もすくむような戦いが嘘のようだ。


 肩に乗っているディーレさん、俺のペットであるハルウ達、そして眼前に広がる俺の新たな配下となったゴブリン達が俺の今の現状になっている。


 戦争なんてものに巻き込まれるとは思ってもいなかったが、この世界がだんだんと楽しくなってきたのだ。

 後ろにハルウの温もりを感じ、ディーレさんの温もりを感じる今この瞬間が。


「異世界生活も・・・悪くないかもな」

「何か言った?」

「いいや何も言ってないよ」


 こんなハードな世界でも楽しいと思えるようになった俺は、余裕が出てきたのだろう。

 そう考えていると、ハルウのモフモフの毛に包まれて、自然と眠りに着いていた






 その翌日、俺が気持ちよく眠っていると、斥候に出ていたというゴブリンから一報がもたらされた。


 コボルド族がオーク軍に向けて侵攻を開始したと。


活動報告にも上げましたが、10000PV達成致しました!

皆様拙い文章でありながらも読んで頂き本当にありがとうございます!

今後とも精進しますので宜しくお願い致します!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想なども気軽にどしどし送ってくださいね!

活動報告(私の雑談場)の方にもコメントどうぞ!

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