森人:依頼?でした!
たくさんのブックマーク・評価ありがとうございます。
依頼が舞い込んだようです・・・が。
『誤字報告』という機能が追加されたようです。
感想に報告しないでも、その場で簡単にパパッと誤字を作者に報告できる機能が追加されたようです。
文章の一番下に『誤字報告』がございますので、是非お試しください!
木の匂いが鼻を擽る。木造のドームの中を包む、精霊の力に妙な安らぎを感じながら椅子に座っている。
眼前にはこの街を収めるカーティア様が書類にペンを走らせながら俺達へ視線を向けている・・・手元を見ずに物凄いスピードで書いてるけど、書類には綺麗な字でサインが書かれているんだからさすがデスクワークの鬼だ。まぁ、外に出れば豆腐だけど。
つい先日に此処に来たばっかだけど、なにやら急用があるとかでカーティア様に呼び出されたんだけど、一体なんなんだ?
俺の隣にいるのはサテラだけ・・・本当ならミリエラにも一緒に来て貰う筈だったけど、先日の『運命の選択』からここに連れてくるのはやめておいた。
サテラにもこのこの事は伝えていないが、俺が目を合わせると何かを察してくれたのか、ミリエラを宿に留守番させた。
「いやぁ、ごめんね。実は君達に折り入って相談があるんだよ。実は、部下の子達が新しい魔道具開発に勤しんでいるんだけど、ちょっと材料が足りないんだよ。それを君たちには依頼しようと思ったんだけど、ダメかな?」
カーティア様は俺達に依頼を・・・って、でも、何で俺達に頼むんだ?
俺達はここいらの知識もあまりないし、材料の調達であれば他の冒険者達に頼めばいいのに。
と思ったんだけど、そう言えばそもそもこの国には『冒険者ギルド』はあるのか?
ディーレとのデートでもそれらしき建物はなかったはずだし、ギルドに通っている様な冒険者達の姿を見受けることもできなかった。
となれば、この国には冒険者ギルドがない可能性が高い・・・なら俺達に頼むのも頷ける。
「えっと、何を採取すればいいんでしょうか?」
「近くの森の奥に大きな崖があるんだよ。そこでしか取れない鉱石があるんだけど、それを取って来て欲しいんだ」
どうやら、俺達がこの国に入ってきた通用門とは逆の通用門から出た場所にある森、その奥にある崖にはそこでしか取る事のできない鉱石があるらしく、魔導具には欠かせないのだそうだ。
それを俺達に取って来て欲しいって事だけど、今までは誰に頼んでたんだ?
その人が俺達を案内してくれるのかな?
「案内には誰が来るのでしょうか?」
「あぁ、すまないが、案内を付けようとしたんだけど、急用ができてしまったようなんだ。地図を渡すから、君達だけで行ってきて欲しいんだ・・・」
一瞬、ほんの一瞬だけカーティア様の顔が曇った。サテラは気にしていないようだが、その顔の曇りは何故だか凄く気になった。
自分の直感が何故かカーティア様に警戒心をもて、と囁いている様な気がする。
差し出された地図をサテラと二人で確認する・・・距離はさほど遠くないけれど、森の中は唯でさえ方向感覚が狂う。
俺の周囲掌握があれば迷うことなく行けるとは思う。けれど、それがなかったら森の中を歩くなんて危険だ。
「あぁ、それと結界避けのスクロールを渡しておくよ。報酬はしっかり払わして貰うから宜しくお願いするね」
その時には表情も元に戻っていた。
一抹の不安を抱えながら、俺は指定された森へと向かった。
通用門から出てほんの数分で、目の前には鬱蒼とした森がある。
一応出入り口の様なものがあり、その場所にはあの香炉が木に掛けられているが、袋に入ったスクロールが作用しているからか魔法に惑わされることはない。
俺とサテラ、そしてミリエラとで森の中を探索することになった。
基本的に周囲掌握があれば道に迷う事はないが、森の歩き方や方向感覚なんかはエルフであるミリエラが一番良くわかっている。
正直ミリエラをつれていくのは悩んだけれど、森の中を歩くのであればミリエラの力は最大限に発揮される。
俺はスライムだから、疲れることもないし、どんな不安定な道でも大概は歩けるが、サテラはそうはいかないだろう。
他の人よりかはスタミナは遥かにあるが、素人と森に入れば足場や行程さなんかで直ぐに疲れてしまうだろう。
そこで、ミリエラをつれてきたのだが・・・大正解だった。
ミリエラに地図を見せると、難なくすいすいと森の中を歩いていけている。
でこぼことした道も、ミリエラはわかっている様で、「そこ、気を付けた方がいいよ」と注意を促している。
いつもはちょっとドジなミリエラだけど、こういう時は凄く頼りになる。
片手に精霊を出し、まるで森が彼女を導いているが如く目的地へと最短の距離を歩いていく。
サテラはこういうミリエラを見慣れているのか何ともない様子で見守っているが、サテラもサテラで周囲の警戒を怠っていない。
何かあれば俺の周囲掌握で知らせることもできるけど、これはサテラの癖であり、初心者冒険者の時代に培った癖が出ているそうだ。
そうこうしている内に森の奥、大きな崖に到着する。
大きな崖・・・その岩肌へとよく目を凝らしてみると、キラキラと輝いている鉱石が見て取れる。そして、もっと近づいてみればその鉱石は陽の光を反射してキラキラと輝いているのではなく、自らが発光しているのだとわかる。
僅かに漏れ出す魔力に反応して鉱石の表面が輝き、その輝きは様々で殆どが紫やらピンクに輝いているものだ。
他には緑色や黄色といったものもあるが、そういったものは純度が低いらしくまだできて日が浅いのだそうだ。
色が紫やピンク色になるまでそう日は掛からないそうで、二日三日あれば紫やピンク色になるらしい。
崖に上らないといけないのかとも思ったが、普通に手の届く範囲にその鉱石がある。
専用の工具なんかもいらずに、手で握って力を入れれば簡単に取れてしまう。容量が無限じゃないかと最近思い始めている体内にその鉱石をどんどん取り込んでいく。
すると・・・この鉱石はどうやら、雀の涙程度ではあるが精霊の力を含んでいるらしい。鉱石を取り込んだ端からそういった力が感じ取れる。
それを頼まれた量よりも少し多めに体内に取り込んでおく。
「すっごく綺麗~。里にもこんな場所があればいいのに」
「そうね。この鉱石を指輪か何かにできないかしら・・・」
珍しくサテラも少しはしゃいでいる。ミリエラは言わずもがな、サテラも意外と綺麗な物や可愛い物が好きなのはシロタエ・ユキ・キクから密告されている・・・デフォルメされた動物の人形がお気に入りらしい。普段は隠しているが、ばっちりハーピーに見つかって報告されているそうだ。
まぁ、そんなわけで実はひっそりと黄色の鉱石と、赤く光っている鉱石を二人のプレゼント用に確保している。二人の髪の色に合わせて、周囲掌握で探していたのだ。
かなり手間取ったが、触手を伸ばして地中に這わして密かに回収したから二人には恐らく気付かれていない筈だ。
後でアンネさん経由で鉱石を加工できる職人に依頼して指輪やネックレスにでもして貰おう。
因みに、アンネさんは相も変わらず商談の真っ最中だ。人間の領地でしか取れない資源を取引材料に、できうる限り多くの魔道具を仕入れるつもりであるらしい。
そして、あわよくば量産して自分の儲けにしようとしている。さすが商魂逞しいウェルシュバイン家の娘だ。
アンネさんには札束を上げれば喜んで貰えそうだ・・・。
「それじゃ、そろそろ戻ろう」
「なんか呆気ないね。普通ならここで魔物でも出てきそうなのに」
「大方ユガがなんかしてるんでしょう。いつもの事よ・・・」
ミリエラが不思議そうにキョロキョロと辺りを見回す・・・確かにこんな森の奥深くであれば魔物に遭遇するのは必然だ。
カラドウスを守る結界もとっくに切れているし、意識を集中させれば何匹かの魔物が様子を伺っている事がわかる。
ミリエラは気配にはあまり敏感ではないが、元々聴力が優れていて、更に精霊から力を貰っている為、音でどこに魔物が潜んでいるかを察知している。
サテラは無論言うまでもなく、気配を探って少しでも殺気を向けている方へと注意を向けている。
が、まぁ、心配ご無用だ。
サテラにはもうバレていたみたいだけど、この森は精霊の力が濃いらしく、ディーレの力で俺の気配を意図的に流す事が出きる。
俺の気配は実感こそ全くないけどSランクの魔物のそれ・・・気配を察知した魔物達はすたこらさっさと逃げ出しているわけだ。
因みに俺の気配に惹かれてやって来た精霊達は、ディーレを肩に乗せるとそそくさと木の影に隠れてしまった。
いつもなら面白がって来るのに、何で今日は来ないんだ?
『いつもは私が許可しているのよ。最上級精霊である私に無許可で不用意に近づく精霊はいないわ。反感を買えば、消滅させられてしまうかもしれないからね』
精霊は自分が楽しければ遊んだり、悪戯したりとやりたい放題なイメージだったんだけど、以外と上下関係もあるみたいだ。
・・・と、何やらディーレがにんまりしている。
一言で言えば、ハーデスもビックリな悪い笑顔だ。
『だから、こうすると』
ディーレがニコッと森に微笑み掛けると、その中から・・・大量の精霊が飛び出した。もう数えるのも億劫になるほどの精霊が俺に向かって迫って来た。
初級の精霊一匹でさえ、存在感や魔力が人の数倍だって言うのにそれが群れをなして迫ってくるのだから、それは津波をも越える物理的な圧力をもって俺を潰しに掛かってくる。
蟻の行列が砂糖に群がって来る様に俺に殺到する・・・サテラとミリエラ?不穏な気配を感知してとっくの昔に逃げているよ。
そうこうしている内にボウリングのピンのように上空へ跳ね飛ばされる。
それでも構うものかと精霊たちは向かってくるものだから、俺はもみくちゃにされてどうしようもなくなるが、ディーレはどこ吹く風、くすくすと笑いながら楽しんでいる・・・ディーレが楽しんでいるなら何よりです。
たぶん、ディーレはあのデートで全ての鬱憤を晴らす事ができなかったんだろう・・・今になってしわ寄せがくるとは思っていなかった。
『ネェネェ、アソボウ』
『ヘンナカラダァ』
『イッショニオソラトボウ』
『アハハハハ』
『ジョウキュウセイレイサマァ』
『ボクトケイヤクシナイ〜?』
『オヤマツクロォ』
『スライムサンノナカニイレテェ』
『ポヨンポヨンハズムノ〜?』
『モリニスンジャイナヨォ』
『モテモテね・・・』
あのぉ、ディーレさん・・・これやったの貴方ですよね。
何故ちょっとムスッとしているのかをお聞かせ願えませんかねぇ。
『もっとやってもいいのよ』
「勘弁してくれ、ディーレサマ!!」
再び精霊達にモミクチャにされてしまった。
色々な場所を見られて触られ・・・もうお嫁にいけない。何にも付いてないけど。
服もボロボロになってしまい、身体の中に収納していた服を着る。
袖を通して・・・触手にした腕を人間のものへと変えようとした直後、周囲掌握の中に妙な反応が多数確認される。
森の中を真っ直ぐに突っ切って走っている人? とそれに追随するように数十の反応が伺える。十中八九何かに追われているのは間違いない。
周囲掌握に魔力を練り込んでより集中する・・・そこに、映し出された情報を見て目を丸く見開いた。
ちょっとおかしいとは思った。こんな森の中を一直線に走ってこれる存在は普通の魔族や人間では無理だろう・・・方向感覚が狂っていないし、追っているのは恐らく魔物だろう。
魔物は自分の住処や縄張りを知り尽くしている・・・もしも、そんな魔物にこんな場所で追われて、方向感覚を失って走っていようものならすぐに回り込まれてしまう。
それがないという事は、逃げている者も相当この森を知っている事になる。
そして、その逃げている者・・・『エルフ』と表示されたそれは、数十のフォレストシャークに追われており、その距離はどんどんと縮まっている。
「ディーレ、向かうよ」
『わかったわ』
精霊達も何かを感じ取ったのか俺が走っていった方向へと一斉に流れ始める・・・今まで俺に纏わり付いていて楽しげだった様子は鳴りを潜め、皆んな悲壮な顔をしながら森と俺とを交互に見ている。
「大丈夫、俺達が行く」
「ユガくん、あっちの方角で精霊の力が乱れてる。それと誰かが助けを呼んでる!!」
「ユガ、私達も後で向かうから先に行って!!」
エルフが襲われている場所へと急行する。
森の木々が俺達を避ける様にして道を誘って行く。森の知識なんてない俺たちは周囲掌握で頭に浮かんだ地図の通りに進んで行く事しかできない。
そんな俺たちがここまですんなりと進んでいけるって事は、精霊達が俺たちを目的の場所まで導いてるって事だ。
ドォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!
やがて、周囲掌握に映っていたエルフの周りにフォレストシャークが群がっている。
がしかし、途轍もない爆発音と共にフォレストシャークの反応が九つ消える。どうやらかなり大きな爆発魔法を放ったみたいだけど、まだまだフォレストシャークは健在だ。
でも今の一撃の魔法で、数十匹のフォレストシャークはエルフに攻撃を仕掛ける事を躊躇している。しかし、後続からどんどんと追いついてきたフォレストシャーク達は完全にエルフの周りを囲んでいる。
精霊達はエルフの周囲に集まってどうにかしようとしているみたいだけど・・・こりゃまずいか。
『たぶん、焦ってさっきの魔法に相当な魔力を練り込んだわね』
「つまりは魔力切れってわけか。あれだけフォレストシャークが群れているのに追撃しないしな。精霊たちも周りにいるのに、練られた魔力がなければどうしようもない」
フォレストシャークは仲間が集まった事で安心したのか、エルフへと一斉に攻撃を仕掛ける。
俺も漸くその場に辿り着き、地面に触手を突き立ててフォレストシャークへと狙いを定める。
エルフは背中に背負っていた弓を取り出して、素早く一気に三本の弓を掛けて連続で斉射するが、数十匹単位で飛び掛かったフォレストシャークを射倒せる筈がない。
そしてフォレストシャークの一匹が鋭利な牙が生え揃った顎を開き、エルフへと食い付きに掛かる。
しかし、エルフは咄嗟の判断で後ろへと身を躱すが、フォレストシャークの顎はエルフの携えていた弓を捉えて、一瞬の内に噛み砕いてしまった。
「ッッッ!?」
驚愕に顔を歪めながら脚に隠していたナイフを引き抜き、フォレストシャークの脳天にナイフを突き立てた。
だがたった一匹をいなしただけでどうにかなるわけがない・・・けど、まぁ、準備は整ったよ。
次に襲来したフォレストシャークの対処の用意をできていないエルフに、人の肉や骨など意にも返さない牙が迫る。
「助けt」
「ユニークスキル:触手創造!!」
地面から数十本の触手が勢いよく射出される。フォレストシャークは地面から突如突き出された触手に気づけるはずもなく、空中に飛び出したフォレストシャークはそのまま触手に刺し貫かれて屍を晒す。
地面に潜んでいたフォレストシャークは俺の触手が地面を這っていることに気付いたのか逃げ出しているようだけど・・・逃すと思うかね?
そのまま触手をくねくねと動かし、地中を逃げるフォレストシャークを追い続ける。
フォレストシャークも早いけれど・・・俺の触手の方が早い。
次々とフォレストシャークを刺し貫いていき、地面から空中へと投げ出していく。
そして次々と刺し貫いていき・・・。
「最後の一匹だ!!」
最後に残ったフォレストシャークを触手で刺し貫いて、辺りから完全にフォレストシャークの反応が消失する。
キョロキョロと辺りを見回し、地中にも意識を向けるけどもういない。数十匹いたフォレストシャークは今や一匹さえ残っていない。
ふぅ・・・と、息を吐いて、フォレストシャークに襲われていたエルフの方へと目を向ける。
そこには、少し燻んだ金色の髪を靡かせたエルフの少女。そこら中の服が噛み千切られた様に破けていて、魔力が尽き掛けているからか凄く顔色が悪い。
体内からMP回復のポーションを取り出して、栓を開ける。
「大丈夫? これ飲ん」
「`$%"$!&!'!!!!!!!!」
ザクッ
俺の額に短剣が突き刺さった。
ハーピーの観察日記
1:爪なしハーピーつわりによりダウン。
2:競馬より、コクヨウ様凱旋。
3:エルフ使節団検討中。
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遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
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