森人:魔導国でした!
たくさんのブックマーク・評価ありがとうございます。
魔導国までの道中のお話です・・・どうやら誰かが相当ご立腹な様子。
『誤字報告』という機能が追加されたようです。
感想に報告しないでも、その場で簡単にパパッと誤字を作者に報告できる機能が追加されたようです。
文章の一番下に『誤字報告』がございますので、是非お試しください!
カナード様の治める城塞都市を離れてからはや幾日か・・・何処となく懐かしさを感じる場所に来ている。
ガラガラと音をたてる馬車から、走る道が舗装されているということがわかる。
しかし、周囲を見渡してみると、そこには一切の建物や人、魔族の気配はなく、一面を大きな木々が覆っている。舗装された道から少し離れれば、フカフカの腐葉土や落ち葉が密集している森の中になってしまう。
俺達が現在向かっているのは『魔導国:カラドウス』と呼ばれる、魔族領に位置する小さな国だ。
カナード様曰く、その国では『魔道具』の研究開発をしているらしく、カラドウスにしかいない『魔人』が住んでいるらしい。
その国の王・・・いや、王はいないんだっけ?
変な話しではあるが、『国を治める領主』とカナードさまは面識があるらしく、カナード様の治める城塞都市と懇意にしているそうだ。
そして、この魔導国・・・実は魔族でも知っている者は極小数であるらしい。
と言うのも、お国柄というかそこに住んでいる『魔人』が、内向的な種族であり、ちょっとした理由から他国・他領との関わりを避けているらしい。
つまり俺達が魔導国へ行けるのは、カナード様から特別な許しが出ているからであり、普通であれば門前払いされる・・・と、カナード様は言っていた。
で、魔導国へ向かっているんだけど、これ本当にちゃんと向かってるのか?
「えっと・・・迷ってないよね?」
周囲を見渡し、馬車から身を乗り出して先を見ても・・・そこに広がっているのは森だ。
見渡す限りの大自然、こんなところになんて魔導国なんて国があるのかと正直不安になってしまう。
「小国とは聞いていたけれど、こんな場所にあるのかしら?」
どうやら、サテラも疑問に思っているらしく、周囲を見渡しては頭に疑問符を浮かべている。
『魔導国』と呼ばれていて、魔道具の生産や研究が行われていると聞けば、もっと近未来的な都市であり、魔法によって全てが管理されている様なイメージであったが、今のところそんな気配は一切漂ってこない。
それどころか、馬車が進む度に森が深くなって来ている。
馬車の御者を任せているのは例によってアンネさんの所から派遣された人間・・・ではなく、アンネさんが城塞都市で試験的に雇った魔族である。
アンネさん曰く、何れ訪れる魔族と人間の友好の為の試験であるらしい。
「カナードに言われた通りに来てるはずなんだがなぁ・・・あの野郎一杯食わせやがったか?」
御者でさえ本当に道があっているのか不安になる始末・・・カナード様に言われた通りに進んでいるらしいが、未だに魔導国へつく気配はない。
あ、因みにこのやけに口の悪い御者だけど、冒険者ギルドで俺達に悪態をついてきたAランク冒険者パーティーの魔族で、大柄で虎みたいな魔族だ。確か、『メガロ』だったっけ?
なんでも、長年連れ添った女性魔族と結婚するとかなんとかで、冒険者稼業を一時中断しているらしい。
そこで短期でお金を稼げる仕事を探している最中に、アンネさんに拾われたそうだ。
アンネさん曰く、「ガッツがある!」とのこと。
まぁ、そんなことはさておき。
カナード様が御者に教えた通りに森へ森へと入ってしまったけれど・・・未だに到着が見えないな。
後ろをついてくる馬車に目を向けると、アンネさんも暇をしているのかミリエラとお喋りしている。
・・・と、ミリエラが森の一方に指をさし、アンネさんは首を傾げて御者に指示を出した。
「ちょっと止まって!!」
うちの馬車の方もアンネさんの声が聞こえたのか、馬車を止めなんだなんだと後ろを振り返った。
「なんだよ。こんなところで野宿するなんてまっぴらだぞ!」
「違うの、ミリエラがさっきから同じ道を通っている気がするって言ったから」
・・・どういうことだ?
周りを見渡しても何の代わり映えもない森が広がっているばかりで変化という変化は見受けられない。
俺達は森の中に続く道を辿っているが、ずっと一定で真っ直ぐにしか進んでいない筈だ。
「え、えっとね。たぶんだけど、里に張っているみたいな結界があると思うの」
そういわれてピンと来た。
ユガ大森林にはミリエラ達エルフが暮らす里・・・今では、俺達も一緒に暮らしている里がある。
その里には魔物や人間なんかが寄り付かない様にする為の小規模な結界が張られており、その結界に知らずに入ると方向感覚を失って向かっている方向とは別の場所に向かってしまうというものだ。
それがこの森・・・そしてこの道にもかけられてるとしたら、合点はいく。
ミリエラだからこそ気付いたんだろうな。
森の風景なんて俺達にとっては全く変わらないが、ミリエラだけは風景の差異に気付いたんだろう。
「んじゃぁ、どうすりゃいいんだよ?」
「ちょ、ちょっと待ってください」
ミリエラは片手に精霊を出して、何事かを伝えると、精霊は空高く飛んで指をさした・・・そっちにいけってことなんだろうな。
精霊が指さした方向はさっきと変わらない道なりではあるが、どこかで変化が訪れる筈だ。
「私が道を教えるので、それまではずっと道なりに進んでください」
ミリエラがそう告げると、御者も半信半疑ながら指示に従うことにした。
御者は精霊が見えてないだろうし、ミリエラが何をしたのかわかってないんだろうな。
・・・さて、と。
気合いを入れる。
俺には目下全力を尽くさなければならない事案が一つある。
それは魔導国に向かうことでもなく、ましてやミリエラやサテラに膝枕をして貰うことでもない。
それじゃ、いったいなんなのか・・・。
「あのぉ・・・ディーレ?」
『・・・・・・・・・』
「ディーレさん・・・聞こえてますかぁ?」
『・・・・・・・・・』
そう。
俺が目を覚まして、魔導国へと向かうってことになってからずっとこの調子なのだ。
俺を助ける為に全力を出して、魔力が底をついて眠っていたディーレがつい先日魔力が回復して起きたのだ。
そして、「おはよう」って言ったら、急に具現化して、サテラ以上の剣幕で怒られて、最終的には泣きそうな顔でちっちゃな妖精のままポカポカ叩いてきた。
さすがのサテラさんも、ディーレを止めたほどだ。
それからと言うもの、俺が何を話しても返事が帰ってこない。
相当ご立腹のようで、自分の内から凄い怒気が溢れているのがわかるから、俺も接しづらい。
ファー、ムー、ノーもディーレの怒気に当てられて何もできず、おろおろしている感情が伝わってくる。
「許して貰えると嬉しいんだけど・・・」
『・・・凄く心配したわ』
根気強くディーレに話しかけてやっと返事を貰えた。
『貴方の魔力が尽きかけて、もう少しで死んじゃうところだった』
「ご、ごめんなさい」
『貴方より強い魔物に、わ・た・しを放って一人で行くってことは私はいらないじゃない』
「そ、そんなことはないです」
『そして、私をスッゴク心配させて、あの後どれだけ私が頑張ったと思っているの?』
「申し訳ございません・・・」
『貴方が挟み込まれて、魔力がどんどん弱まっていく・・・繋がりが弱まっていく私の気持ちがわかる?』
「わからないです・・・ごめんなさい」
『・・・さようならも言って貰えずに、誓約だけ残して、目の前から貴方が去って行く姿を見つめることしかできなかった私の気持ちがわかる?』
「本当にごめんなさい」
何度も聞かされたディーレの怒りが再度ぶつけられる・・・本気で怒っているというのは、誓約で繋がっているからわかるし、本気で心配していたというのもわかってします。
サテラとミリエラからもちゃんと謝りなさいと念押しして言われ、配下達からも「これは我々の落ち度・・・されどディーレ様に至っては完全に主が悪い」と言われてしまった。
・・・・・・後々聞いた話では、泣きそうになりながら、最上位精霊であるディーレの魔力が完全になくなりそうになるまで回復してくれ、それどころか精霊力さえも使おうとしていたのだ。
精霊にとって魔力というもには生命維持の燃料であり、精霊力となれば、精霊力は生命維持の要・・・急激に失えば存在が消える恐れだってあったというわけだ。
全員が止めに入ったがディーレさんは聞かず、目を覚まさない俺に必死になって魔力を注ぎ続けていた・・・そして、後になってカナード様が上級のポーションを持ってきてくださったお陰でなんとか一命をとりとめたのだ。
・・・ディーレがここまで怒るのも無理はない。
「ごめんなさい」をループで言い続けていると、不意にディーレの怒気が治まり・・・悲哀の感情が流れ込む。
『もう二度と心配させないで』
「・・・・・・・・・うん。ごめん」
ディーレは小さな妖精の姿になり、俺の肩に腰かける。
凄く悲しそうな表情に、俺も言葉がそれ以上でなかった。
「デート・・・」
「・・・え?」
「デートしてくれなきゃ、絶対に許さない」
真っ赤になりながらそう告げた。
「えっと、それだけで?」
「最近ずっと、配下の子達にばっかり構ってデートしてあげて・・・私を蔑ろにしてた」
真っ赤になりながらも、俺の方をジトーっと見つめて言い切った。それを聞かされてる俺も体温が急に上がったような錯覚を覚え、自分の顔も真っ赤になっているのだということに気づく。
確かに、よくよく考えてみればディーレさんとデートはした事がない・・・一番身近にいるのに、ほとんどが連れ添ってウダウダしているという事の方が多い。
配下の子達とはちょくちょく街に食べ物を食べに行ったり、身につけるやつを買ってあげてたし、デートと言えなくなもない・・・な。
そして今は絶好の機会だ。
というのも、今は配下達がおらず、俺、ミリエラとサテラ、アンネさん・・・そして、ついてきちゃった双子のイアとメアだけである。因みに双子ちゃんは馬車の中ではしゃぎ回って疲れて寝てしまっている。
配下達は・・・なんだかよくわからんが、ローテーションの決まりを破ることは許されないと、全員が真剣な顔になって、アンネさんの高速馬車で一旦里まで帰っていった。
・・・ここに戻ってくるのには結構時間がかかるだろうし、ディーレさんだけと一緒に居られる時間はいっぱいある。
た、ただ・・・配下と一緒にデート?をしている時はどうも感じないけど・・・何故か、ディーレとデートと意識すると、急に気恥ずかしくなってくるというか、物凄い恥ずかしさが込み上げてくる。
「わ、わかった。ちゃんとデートする」
「それならいい。素敵なデートにしてね?」
ディーレはそう告げると、いつもの笑顔を向けてくれる。
『素敵な』を告げられて、内心焦りまくりで、これはサテラ、ミリエラ、アンネさんを総動員して助けを請わなければならない・・・ディーレの満足のいくデートにしないとダメなのだ。
そんな事に悩まされていると、上空にいた精霊の指が右に向いた・・・。
「止まって」
「んぁ? 別にいいが、まだ道は長いぞ?」
サテラが御者に告げると、馬車は止まって後ろに続く馬車も同じ様に停車する。どうやらミリエラを介してアンネさんが御者に伝えたようだ。
精霊が指差した方向をジッと見つめる・・・すると森が広がっているばかりだった場所に、一つの道ができている。
真っ直ぐに行く道と横に逸れていく道とがあり、精霊が指さした方向は真っ直ぐに行く道だ。
「な、どうなってんだ?」
俺達は今の今まで真っ直ぐに進んでいた筈だが、結界によって方向感覚を狂わせられたお陰で、ずっと横に逸れていた道に誘われていた。
横にそれた道は恐らく、緩やかな円になっており元来た道に戻されるばかりであったのだろう・・・感覚が狂っていたせいで、円形になっていた道を真っ直ぐだと錯覚していたようだ。
「軽度の幻惑魔法ね。感覚を狂わせるのと、意識しないと道がただの木々にしか見えない魔法はかけられてるわね・・・たぶんあれじゃないかしら?」
ディーレが指さした方向には道の端にある、枯れかけた木の枝に掛かっている小さな香炉の様なものだ。
そこからは微量な魔力を帯びた煙が漂っていて、それが森を抜ける風にどこへやらと運ばれている。
あれを無意識に吸い込むと、この森の先に進むことが出来なくなっているのだろう。
やっと道が見つかったと森を進んでいくと、またも空を飛ぶ精霊が指差す方向を変える・・・どうやら、こういった結界がかなり張られているらしい。
何れも木に香炉が掛けられており、そのどれもが幻惑の煙を風に靡かしている。
しかも・・・よくよく集中してみれば、香炉から漏れ出る魔力が濃くなってきているのがわかる。
「低級、中級になりたての精霊では香炉に当てられるわね」
「ミリエラの精霊だから大丈夫なだけか」
ミリエラの精霊は上級で、その中でもエルフの・・・というよりもミリエラの力の影響を色濃く受けた精霊だから、香炉から漂う魔力は全く効いていない。
たぶんファー、ムー、ノーではまだきついだろうな。
ずっと馬車で進んでいくと森がどんどんと開けていき、薄暗かった森から、葉の間から日光が入り込む森へと様相が変わり始めた。
そして・・・森が途切れる。
その先に
森海に囲まれた、大きな街・・・『魔導国:カラドウス』に到着した。
ハーピーの観察日記
1:主、所用で帰らず配下の方々だけ帰還。
2:主が帰らず、涙目の者多数・・・病状悪化数名。
3:主の元へ向かう新編成が発表、明朝出発予定。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!