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人魔:『ダンジョン』④でした!

ブックマーク・評価ありがとうございます!!


やらかしてました、主人公です。

そして・・・暗雲の予感。


次話投稿は一週間以内です!

 side 女魔族冒険者


 大地を蹴り砕く馬蹄の音と、大気を震わす馬の(いなな)きが死屍累々と化した戦場にこだまする。

 馬は己の背に乗る者の命令を聞き入れ、一心不乱に前方へ向かって走って行く。その先にある絶対的な死が待ち構えていると言うのに、それらは恐怖を微塵も感じることなく、遥か前方で化け物へと剣を向ける少女へ駆けて行く。


 背に乗った幾人もの魔族と人とが競う様にして駆けて行く様はなんとも圧巻だ・・・。


 そんな間の抜けた考えは、混乱しているウチの頭を更に混乱させることとなる。

 何故ここに援軍が来ているのか、何故彼らは眼前の化け物に恐怖しないのか、何故少女はたった一人で戦場を駆けれたのか、何故エルフがこんな場所にいる、なぜあのような少女があれほどまでの魔法を扱える・・・何故何故何故。


 答えがでないのはわかりきっているが、今しがた眼前で起きたこと、現在起こっている事は、それを考えざるを得ない状況になっているのだ。


 すると、少女へ向かっていた馬の群れの中から一頭が進路を外れると、それに呼応するかの様にそれぞれが一頭の馬を先頭にして小隊に分かれた。


 先頭の馬に跨がっているのは、一見すれば普通の人間の様に見えるが、漂う気配はどれも魔族のそれである。

 しかも、恐らくではあるがそのどれもが、ウチらでも敵わないであろう力量を持つ者であることは間違いない。


 そして、一つの小隊がこちらへと駆け寄る姿がうかがえる。そこにはつい先日ギルドの応接室で少女の隣に立っていた女の魔族・・・『ヨウキ』の姿があった。

 前と変わらずのニコニコとした笑い顔のまま駆け寄ってくるのは、あの化け物を目の前にしているとは思えない程に飄々としているその様は、異様としか思えない。


「おーい!! あねさん、ついでにメガロの馬鹿、大事ないか!!!」


 ヨウキの横からひょっこり顔を出したのは、ウチらとよく酒場で呑んだくれるパーティーのリーダーであった。

 不安を押し殺し恐怖していたウチらが馬鹿みたいに、いつもと変わらぬ様子で私の事を姉さんと呼ぶ姿にどこか安堵感を覚えてしまう。


 そいつは馬から飛び降り、此方へと駆けてくると懐からポーションを取り出しボロボロになったウチとメガロに振りかける。


「おい、『リューズ』これは一体どうなってやがんだ?」

「ん、あぁ・・・どう説明したもんかね」


 いつもなら馬鹿と言われる度にどなり散らすメガロもこの時ばかりは、冷静になり事態の把握に努める。


 ウチラを助けに援軍を出した・・・それが普通の状態であるのならば何の疑問もない。

 しかし、南では暴動が起こっていたのではなかったのか?

 マネィが伝えた情報は、暴動が起こっていることを裏付ける証拠がいくつもあり、ウチもそれを疑っていなかった。

 商人達が異常に行きかっているという情報は市民の行動を抑えきれず野放しにしているという事で、冒険者が剣を振り回している・・・つまりは一部の冒険者は暴徒化しているという事じゃなかったのか?

 防衛線を張り終えたなどというデマまで流れている・・・。


 有り得ない・・・そんな暴徒と化した冒険者を鎮圧し、事態を収拾した挙句、冒険者を数百人規模でまとめ上げ援軍に向かう。

 ましてや私達でさえやっと半分を終えたというところであったのだから。

 

「南はどうなってやがんだ! なんでお前らがここにいるんだ」

「まぁまぁ落ち着けや」

「これが落ち着いていられっか!? バケモンが出てきて、危うく俺とメフィは死んじまうところだったんだぞ!!」

「ほぉう・・・『メフィ』ねぇ。メガロの馬鹿はようやく言えたって所か」

「な、おま、なにお!?」


 真っ赤になったメガロを見た後ろの冒険者達が一斉に笑い始める。茶化されたメガロは怒り狂って毛を逆立てはいるが、考えなしに向かっていかないところを見ると少しは成長したようだ。


「まぁ、冗談はさておいてだな。俺達はあの嬢ちゃんに惚れ込んだ・・・そう言うこった」


 その言葉にウチもメガロもフードを脱ぎ去り、今や顔をあらわにした少女へと向き直る。見目麗しく、先の絶大な魔法を放った後とは思えないとても穏やかな表情をした絶世の美少女・・・それに全ての冒険者が骨抜きにされたってことか。


 だが、ただの色仕掛けだけで、命さえもなげうつ覚悟でこちらに来たというのか?

 そんな冒険者もいないことはないだろうが、半端な覚悟でやってきた者達があの化け物を前にして、戦おうとする意志を捨てないなんて考えにくい。


 それに、冒険者一人一人の瞳には信念の様な・・・いや、忠誠にも似たそれが浮かんでいる。全ての冒険者達が一つの意思の下に命をなげうつ覚悟を持って少女の下に馳せ参じているのだ。

 少女はの視線の先は常に化け物の方向だけを見据えており、己の後ろを駆ける冒険者達へは見向きもしていない・・・だが、小さな少女の背中は、ここに存在するどんな者よりも広く大きく、強大な気配を流している。


 その背中は雄弁に語っているのだ。


『己の背中を駆る者を護る』


 少女の背をじっと見つめていると、ヨウキが馬を翻し、そろそろ行きましょうと告げる。


「おっとすまねぇ。直ぐに行く」


 そう告げると、ウチらに背を向けて小隊の元へと戻って行く。


「あんなちっちぇー背中に守られるなんて思いもしなかったさ。でも彼女の言葉に嘘はないってわかっちまうんだよ・・・だから、俺らみたいな非力で小さな存在でも、ちったぁ背中を支えてやるんだ。空虚で寂しげな眼をする彼女にちょっとでも笑ってもらいてぇからな。命掛けて守ってやらにゃならん」


 去り際にボソッとそう告げた姿は、もう既に覚悟を決めているようであった。


 小隊を率いるヨウキは最後にクルっと振り返り、ブンブンと手を振って、少女の元へと急いでいった。


「あの化け物を一発で伸しやがったあのガキ・・・あのエルフはいったいなにもんなんだよ」

「わからない・・・唯、あの子はとんでもなく強い。ウチら以上にこの戦場を知り尽くしている・・・あの子の指揮能力にも驚いたが、魔族と人間とが纏まっている事がなお信じられないね」


 小さくなっていく小隊を見つめながら、メガロと言葉を交わす・・・が、さっきから目を合わせないのは照れ隠しのつもりなのだろう。でも残念だが、種族上背中の毛が逆立っているのでバレている。


 そんな下らないことを考えた矢先・・・化け物が再び動き始めた。



 -------------------------------------------------・・・



 side 金色?


 はい。どうも、金色の中の人です。


 茫然自失、目からハイライトが消えてしまった金色ことミリエラに変わって、私ユガがお送り致します。


 さて、どうしてこうなったのか。


 ミリエラの目の前には、全力で放った精霊魔法を諸に受けて、微動だにしない『ダンジョン』が横たわっている。

 普通の魔物であれば跡形もなく消し飛んでしまう筈だが、魔法が直撃した箇所は肉が弾け飛んでちょっぴり焦げているだけに止まっている。


 うん。まぁ、一応は計画通りな訳だ。


 と言うのもだ。


 サテラと俺、ギルドマスターとで作戦内容を話し合っていたわけだが、ダンジョンコアがどうのこうのの話をしていると、何故か俺が持って来ちゃっていた。


 俺達が冒険者救出に向かったあのダンジョンだけど・・・俺以外が早く戻って来ていた理由は、ちゃんと50階層から(・・・・・・・・・・)帰ってきていたからだった。


 ・・・うん。どう言うことかわからなかっただろう。


 どうやら、俺は50階層にある筈のテレポートを見逃してしまい、そのままダンジョンの深奥まで気付かないで進んでしまっていたようだ。

 当然ダンジョンの深奥にはテレポートがあるし、ともすれば財宝なんてものもあったりする。しかし、普通であれば深奥にはダンジョンを守護するボスモンスターが待ち受けている筈なのだが、魔力共鳴によるダンジョンの異常でボスはいなかったわけだ。


 それに他の階層のボス部屋は普通のダンジョンよりも強くなっていたそうだ。

 ・・・殆どナーヴィに任せてボーッとしてたから全く気付かなかったけど、後々ナーヴィに聞いてみた所・・・「そういえば強くなっていた気がする」だった。

 ナーヴィにとってはどれもがどんぐりの背比べ・・・全て殆ど一緒のような感じだったんだろう。


 まぁ、ナーヴィに全てを任せきりにしたし、全ての責任は俺にあるなぁ・・・。


 んで、ダンジョンの深奥までズンズン進んで行き、ダンジョンコアをなんだか綺麗だからといった理由で持ってくるという馬鹿をしていたのだ。

 しかも、自分は50階層から戻ってきたという勘違いをしたままだ・・・深奥にボスがいなかった事が異常とも思わなかったわけだ。


 んで、それをギルドマスターに報告して、出きればこれを利用しちゃおうって算段だったのだ。


 ギルドマスターの予想では士気は最低にまで落ち、最悪パニックや暴動にまで発展する恐れがあると聞いた。

 ダンジョンの氾濫であればダンジョンを囲って万全の準備をすれば何とかなるかも知れず、どこから敵が来るかって言うのがわかる分、気の持ちようがある。

 しかし、今回は『ダンジョンのアンデッド化』だ。史実に残っている限りではかなり厄介・・・というよりかはもはや災厄級である。

 ダンジョンの氾濫と聞いていたのに、行きなりアンデッド化ですなんて言えば、そりゃパニックにもなるだろう。


 そして、始まる演劇の時間だ。


 応接室を外に出て、見覚えがありすぎてというよりも綺麗すぎてどこに隠れても目立ってしまう金色さん・・・もとい、ミリエラを連行する。

 ちなみに応接室の前にいたらしいが、士気がどうのこうのっていう話の段階で逃げ出そうとしていた。見事俺に捕まったけど。


 やはり、ここは『金色』の力が必要だったわけだ。


 助けを請うミリエラに、サテラは目を背けて、「ごめんミリエラ、人身御供になって」と告げていた。


 で、みっちり演技指導を仕込んで、王都の騒動の時にアタライ様から貰った鎧を着させて、準備は完了。

 演技指導の段階で少しミリエラから目のハイライトが消えてしまったが、大丈夫・・・きっと大丈夫だろう。


 ・・・で、目下の目標はギルドに張り出されたダンジョン氾濫の依頼を剥がして、ダンジョンアンデッド化の依頼を張り出すことだが、ここでパニックに陥ったら元も子もない。

 それならばどうにかして回避しなくてはならない・・・だから、王都でミリエラがやった演説をしようかと思ったが、この街では『金色』という名前が知れ渡っていないからあまり効果はないだろう。


 だから、取り敢えずは場繋ぎとして、よくわからない助っ人が街にやってきた。ギルドマスターの紹介となればきっと冒険者の注目を集められるだろうし、意識を逸らすこともできるんじゃないかと。


 その日になって一応ミリエラさんに護衛として、コクヨウとヨウキを側につけて、後は誰かが突っ掛かって来てくれないかなぁ・・・と思っていれば、さすが冒険者だ。

 願い通り突っ掛かって来た冒険者をミリエラ・・・もとい、マントの下に隠れている極小化した俺がミリエラさんを操って突っ掛かって来たやつを止めた。


 で、その冒険者というのがかなり有名だったらしく、かなり上手く行ってしまった。


 冒険者達の意識は俺たちへと向いたし、何人かの人間は『金色』の噂を知っていたらしく、それが上手い事拡散していった。『アンデッド』ベヒーモスを倒した事も幸いして、今回のダンジョンもどうにかできるんじゃないかと噂が流れたらしい。


 ・・・だけど、ここで一つの大きな問題が生じた。

 今回はダンジョンの氾濫の様に、どこから敵が襲来するかわかったもんじゃない。だから、北と南の通用門を守る為に二つに分けるという案が採用されてしまった・・・俺の周囲掌握があれば探せないことはないが、万全の準備をして迎え撃ったほうがいいだろうと言われてしまった。

 確か、煌角のなんたらって名前のリーダーが北を守ることとなった・・・なんでもこの街では一番の実力者らしく、さっき突っ掛かって来た所のリーダーさんらしかった。


 それはさておき。


 ならば、北は仕方ない。取り敢えず南の冒険者を掌握し、防衛線をちゃっちゃか築きあげよう。

 そうおもって、いざ南に向かってみれば・・・みんな死んだような顔つきでノロノロと作業しているし、低ランクの冒険者なんかが恐怖でプルプルと震えだす始末だ。


 はい。

 んじゃ、ミリエラさん・・・やっちゃってください。


「怖がらなくていいよ。私が皆を守るから」


 それをボソッと告げさせて・・・ムーの精霊魔法で小さく全員に聞こえるようにすれば、全員がこちらを見るわけだ。

 そして、ここで『舞台装置』を発動させる。


 ディーレとファーで作り出した幻影の魔物を出現させ、ノーにお願いして地面をどーんとさせれば・・・当然パニックになるわけで、逃げ出すやつは出るわ剣は構えたはいいもののへっぴり腰で戦える気がしないわで散々だった。


 そして、ミリエラがフードを脱ぎ去り、その正体を・・・もう完全にヒーローショーのそれだよね。


「言ったはずです。皆を守るって」


 そう言って、ミリエラが・・・うん、今度はミリエラの陰になりすました俺がディーレと一緒に魔法を幻影に向かって放つ。

 結構ド派手に演出して、おっきなクレーターを作って幻影を消す。そうすれば跡形もなく魔物を消し飛ばしたって思ってくれるよねぇ。


 さぁ、舞台は整った。止めの言葉をどうぞ。


「私が皆を守ってみせる。大好きな・・・人間と魔族の皆さんを守ってみせます。だから、少しだけ・・・少しだけでいいから私に力を貸してください」


 冒険者達は呆気に取られて、ミリエラを見るばかり・・・あちゃー、あまり効果なかったかな?

 と思った直後、ミリエラの必殺技が炸裂した。


「ちょっと怖かったけど・・・い、一緒に頑張ってくれないかな?」


 ウウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!

 ウウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!

 ウウウウウウウウウウウウウウオオオオオオオオオオオオォォォォォォ!!!


 あかんて、そんな顔で真っ赤になりながら眉をお八の字にさせて、目を伏せながらそれを言うのはまずいって。

 予想通り・・・いや、予想以上に冒険者達が奮起してしまった。


 最悪のパニックは回避できたが、ミリエラを取り囲む冒険者を制御しきれない。どうやら最後の一言はミリエラのアドリブだったらしく、思い出す度に顔から火が出るんじゃないかと思うくらいに真っ赤になってしまっていたな。


 んで、その後はミリエラ・・・もとい配下達の指導のもと、大変順調に事は進んでいって。

 資材や物資の搬入はアンネさんに頼んで、町中の商人達に動いて貰って、配下達はまぁ脳筋が多いから資材の運搬がまぁ進むこと進むこと。

 冒険者達もそれに負けじと物資の運搬をやっている始末だ。ミリエラに言い寄ってくる冒険者達は後を絶たなかったが、次第に減って行き・・・どうやら裏でなんらかの協定ができたらしく、抜け駆けした冒険者には制裁が加えられたらしかった。


 そして、南にいる高ランク冒険者パーティーの人達と面識を持ち、非常にスムーズに事を成すことができた。防衛線が一瞬で築き上げれたから、コクヨウとソウカイ、ルリなんかは暇して冒険者達に剣や槍の振るい方を教え、フゲンとヨウキはモンクやファイターを生業とする冒険者に拳法を教えていたくらいだ。

 商人達は資材の搬入が終わった後も、商魂逞しくいろいろ売っていたなぁ。因みに一番売れたのは『異種族女性の落とし方指南』という本であった・・・下心が見え見えである。


 まぁ、そんな事があって、後は『ダンジョン』を待つだけであったのだが、俺の周囲掌握にとんでもない魔力を垂れ流す何者かの姿が写ったのだ。


 それは真っ直ぐに北門へと向かっているようで周囲掌握に写った姿を見てみれば、それは超巨大な魔物であった・・・なのに、北門の連中は動こうとしていない。まだ離れているとはいえ、ここまで超巨大な魔物であれば、視認できていてもおかしくはない。


 そう思いもう少し良く見てみれば・・・あぁなるほど。地面に潜っているわけか。


 直ぐにミリエラに告げて、出立の準備を進める。

 おそらく、北はここより準備も進んでいないだろうし、士気もここまで高くないはずだ。


 俺とミリエラのやりとりを敏感に察知した配下は、すぐに冒険者たちを纏め上げて俺たちの元へとやってきた。どうやら、訓練に参加していた冒険者たちは完全に配下達に掌握されたようで、配下達を先頭に後ろに綺麗に四列横隊していた・・・手際がいいなぁ。


 そして、北まで回ってきて・・・応接室でギルドマスター達と話し合っていた先制攻撃を仕掛けることになった。


 流石の冒険者達もあんな巨大な魔物を前にするとたじろぐのは仕方がない・・・馬を駆る手が震え、馬も怯えはじめる。巨大な魔物の姿は異様であり、アンデッド特有の見ただけで恐怖を呼び起こす見た目は、冒険者の心に刻み込まれた。

 だが・・・ミリエラと俺だけは臆せずに前へ進んでいった。


 先ずは・・・皆の士気を上げる事が重要だ。


 俺が告げる呪文の後に、ミリエラが遅れて呪文を告げる・・・無論、ミリエラが言った所で魔法は発動されないが、風の魔法が掛けられたミリエラの声だけが戦場に静かに響き渡る。


「水よ 水よ 尊き水よ」


『今も尚 不変を保つ 大いなる偉大な水よ』


「生命の全ての母よ 悲しみに満ちた水底から」


『全てを満たせし 泡となりて』


「帰れ」


『帰せ』


『「我ら末の赤児となりて 水を奉らん」』


『所詮燃えれば塵となり、やがて燃え尽き火は尽きる。せめて、その時その刹那、優雅な華を咲かせよう』


『踊り踊り狂い踊り死ぬ。自由な風は束縛を嫌う。自由が故に牙を剥き、自由が故の残酷となる』


『割れ砕け、全ての礎、母なる恵、失いし時に母の涙を思い出せ』


『『『『「蒼魂と終末の聖櫃(アエル・アークエンド)」』』』』


 発動と同時に化け物に直撃し、無駄に吹き荒れる爆煙が俺達を包み込む。後は、懐からダンジョンコアを取り出し、ミリエラに手渡す・・・そして。


 握り潰してやれば、もう恐れるものはない。


「そして、私は・・・金色は、貴方達の命を守ってみせますから。少しだけ、一緒に戦ってもらえませんか?」


 ローブを脱ぎ去り決め台詞で完了だ。

 北門を守っていた冒険者達は殆どが腰を抜かしていて、キョトンしていたが・・・俺達が率いて来た冒険者だけは士気が最高潮にまで達する。


 ウウウウウウウゥゥゥゥゥゥゥゥオオオオオオオォォォォ!!!!!!!


 掛け声と共に、化け物めがけて馬を走らせる。

 幾百の冒険者達が恐れを無くし、馬をかける姿はそれはもう圧巻だ。


 馬の蹄が大地を蹴り砕く音、鎧が擦れる音に、多くの人間と魔族が一つになって掛け声を上げる様になんだか気分が良くなる。

 そして・・・大地が突如として揺れ始めた。


 UUU......UUUUGUUO......UUUUUUOOOOOOOOOOOO!!!!!!


 ダンジョンが砲声を上げる。やはりあの魔法でも死んではいなかったか。


 ダンジョンの体が突如として紫色に変色し、魔法の直撃を受けた表面からは紫色の泡がぶくぶくと湧き出てくる・・・ダンジョンが始動を始めるのかと思った刹那、ダンジョンの体がどろどろと溶け始める。


 巨大な魔物はその体をどろどろと溶かして行き、地面へと染み込ませていった・・・まさか倒してしまったのかと思うがどうやらそんな様子ではない。


 周囲掌握に映し出されたそれは、さっきまではしっかりと『ダンジョン』と写し出していた筈なのに、突如として表示に靄がかかり始める。


 無論後ろを走っていた冒険者達もその異様な光景に馬を止め、じっと見守ることしかできないでいる。


 そして、ダンジョンが溶け・・・大地に全て沈み込んだ。


 そう。中心に一匹の化け物を残していったんだ。


 すぐにミリエラの背後から飛び出し、ミリエラに目で合図を送る。

 ハイライトが来ていたミリエラも、そこでようやくコトの重大さに気づいたようだ。ミリエラは後ろに振り返り、退却の合図を出す。


 俺とミリエラがもしもの時に定めていた合図だ。


 そう。

 俺でさえ、手が出せない様な化け物が出たときの・・・だ。




 フェイクコア・バンシー(LV 1)


 称号

 負の集合体

 まやかしの容れ物


 HP:13254

 MP:???

 STR:9349

 VIT:8921

 AGI:8019

 MGI:5435

 LUC:0


 位階:S


 LV上限:???


 スキル:???

 エクストラスキル:大喰らい(イーベスト)、???

ハーピーの観察日記

※休載※


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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