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人魔:『ダンジョン』①でした!

沢山のブックマーク・評価ありがとうございます!!


次回、ポンコツ主人公やらかす。


次話投稿は一週間以内です!

 ガヤガヤとしたギルド支部は物々しい雰囲気に包まれている。

 人間と違った様相の者達が巨大な掲示板に張り出されたギルド依頼をこぞって取り合う様は、圧巻の一言に尽きるのだが、今日のギルド内は全ての冒険者が掲示板に張り出された依頼を見上げるばかりでいる。


 いや、小さな依頼を覆い隠すようにして張り出された一枚の巨大な依頼用紙に皆が皆目を奪われている。その内容は全てのギルド依頼よりも巨額の報酬金が設定されており、一見すれば直ぐにでも飛びつきたくなるような依頼ではある。

 しかし、その依頼内容に報酬金が見合うのかと言われれば・・・率直に言えば半々である。受けるか受けないかで言えば、命の危険を考慮すれば余裕のある冒険者は「受けない」の選択肢を選ぶだろう。だが、今回に限っては「受けない」の選択肢はここにいる冒険者達にはないのだ。


 依頼書に大きく描かれた文字は・・・「緊急依頼」の文字だ。内容は「ダンジョンの氾濫の可能性あり、即刻に準備を整え、街の防衛に当たれ」である。


 ダンジョンの氾濫・・・それだけでも冒険者にとってはたまったものではないが、それに増してもう一つの噂がギルド内を飛び回っているのだ。

 ダンジョンの見張りを行っていた者数十名が一夜にして行方知れずとなった。そんな噂が冒険者の間でささやかれ、今回の氾濫は既に起こっているのではないか、数十名もの魔族が一夜にして誰一人として戻ってこなかったのかと冒険者の不安を煽る。


 この時ばかりは魔族と人とも関係ない。ギルド館内の冒険者は少しでも情報を得ようと、魔族と人族入り乱れて情報交換に勤しむ。


 そして、そんな騒然とするギルド館内の奥の応接室にて、特別な会議が開かれていた。本当に信用に値する冒険者だけが集められ、ギルド長との謁見時にも使われる応接室である。


「さて、カナード様から文面は届いていらっしゃるかと思われますが、簡単なご説明をさせていただいても宜しいでしょうか?」

「えぇ、お願いします」


 応接室に置かれた長い机を挟むようにして、ギルド長と二人の姿がうかがえる。赤い髪を後ろで一本に束ねている人間の冒険者サテラと、黒い髪に黒い瞳を持つ人の姿をとっている魔族ユガである。


「カナード様はいらっしゃらないのですか?」

「カナード様は各領主の方々に報告に向かっておられます・・・紙面での報告ではまずい方々もいらっしゃいますから。しかし、カナード様から今回のダンジョンの件について、全指揮を仰せつかっておりますので問題はございません」


 この街の領主のカナード様は現在不在だそうだ。

 ダンジョンの異常を発見し、自領のギルド支部にて緊急依頼を発布した後、自分から各領に出向き事を伝えに当たっているらしい。


 ガドイン様の領地から戻る最中に馬車の車輪が壊れ、遅れてしまったせいでカナード様とは入れ違いになってしまっていた。


「それでは、緊急依頼の内容について述べさせていただきます」


 城塞都市マルタイルのギルドマスターオズモンドさんが口を開く。その表情からは緊張のそれがうかがいとれて、今から告げる内容がどれ程異質であるかを物語っている。


「現在、魔力の噴出を確認したダンジョン・・・貴方達に救出の依頼を出したあのダンジョンが消失しました。そこに見張りとして置いていた者達からの連絡が途絶え、先日カナード様がダンジョンの場所へ向かった所、消失が発覚。極めて異質な事態です」


 ダンジョンが消えた・・・普通であればダンジョンが消えるのは、深奥にあるコアが破壊された場合である。豊穣のダンジョンなんかの突発的に現れるそれは時間経過でなくなるが、あのダンジョンは豊穣のダンジョンではない。

 つまりは、あのダンジョンに何らかの異変が起こり、その周囲で見張っていた冒険者は何らかの事象でやられたと見ていいだろう。


 で、その事象とやらが今でもわかっていないそうだ。


「ダンジョンの氾濫とさせていただきましたが、それにしては異質過ぎましてね」

「えっと、ダンジョンにあるワープの罠が暴発して、ダンジョンもろとも冒険者の人達も何処かに消えた・・・何てことはないんですかね?」


 ダンジョンには転移の罠というものがある。転移の罠に引っかかるとその名の通りどこかの場所に転移・・・ワープさせられるわけだ。

 それがなんらかの理由で暴発して冒険者もろとも何処かに飛ばされた・・・神隠しにでもあったんじゃないかと思ったんだけど。


 まぁ、ダンジョンの罠が暴発するなんてことは聞いたことはないが、あり得ない話ではないんじゃないかと思い聞いてみただけだけど。


「・・・ダンジョンが合った場所を起点にして周りは血の海だったそうです」


 その言葉に俺もサテラも息を飲む・・・転移の罠はよほどのことでなければ死ぬことはない。たまに、広い部屋に飛ばされ、上から落ちて怪我を負うくらいはあるが、血の海ができる程の現象はまず起きるわけがない。


「カナード様の調査によれば、何者かと争った形跡があるようで周囲に飛び散った血飛沫から見て、ダンジョンから出た何かに襲撃されたのではないか・・・と。辺りには血に塗れた装備品やギルドカード、金銭なども散らばっていた事から賊の仕業ではないと思われます。カナード様は飄々としていらっしゃいましたが、かなり凄惨であったようです」


 ダンジョンの周囲の地面は血の色に染まっており、辺りからは臓腑の匂いが充満していたそうで、赤黒く染まった地面には人の骨や歯と言ったものも散乱していたそうだ。

 それがダンジョン以外の仕業という線は金銭が奪われていないことからもまずない。


「カナード様が到着した時には既に数時間ほど経過していたそうで・・・カナード様の推測では、ダンジョンが崩壊に至るまで外に魔物を放出したのではないかとの事です」


 俺は成る程なぁと頷いていたが、サテラは難しそうな顔をしてギルドマスターに対して首を横に振る。


「ありえないわ。ダンジョンは『ダンジョンそのものが魔物』なのよ。外に崩壊する程の魔物を放出するなんてありえないわ」

「えぇ。私もそう申し上げましたが、その次にカナード様が申し上げた言葉が・・・なれば、ダンジョンが意志を持ち『アンデッド化』した可能性があるとの事でした」


 サテラはその言葉を聞くと同時に愕然とする・・・ダンジョンのアンデッド化ってどういうこと?

 二人の会話についていけない俺は一人残されたまま、二人の会話を聞いているがその二人の表情をみるに相当まずいことになっているということだけがわかる。


 アンデッド・・・といえば、一度ベヒーモスと戦ったことがあるが、アンデッド化した魔物は厄介な事にステータスが強化される。前のアンデッド化したベヒーモスは何かしらの力で操られていたが、普通アンデッド化した魔物は理性がなくなってしまい、攻撃やそれらが単調なものになってしまったり手当たり次第に暴れ始めるそうだ。


 でも・・・ダンジョンがアンデッド化って一体何?

 ダンジョンは魔物はいっぱい出てきて、宝物がたくさん出てくる場所のことを言うんじゃないのか・・・?

 それがアンデッド化してどうたらこうたらって一体どういうことなんだ?


「えっと、ダンジョンがアンデッド化って一体どういうこと?」

「・・・ダンジョンっていうのは『魔物』なの。人を魔物の巣窟である中に誘い込み、死んだ人間の力を吸収する。そのための餌が宝箱や魔物のドロップアイテムになるのよ」


 サテラはそう告げると、次の瞬間には額から汗を垂らし、それがアンデッドになる理由を告げる。


「ダンジョンのアンデッド化・・・大昔に一度あったらしい。人と魔族が争っていた時代、ダンジョンの近くで大規模な戦闘があって、周辺には大量の死体があったんだけれど・・・それが一夜にして全て消失し、巨大な魔物『ダンジョン』が現れたの。それを討伐するのに、被害は約2、3万人にのぼったと言うわ」


 2、3万人の被害と聞いて、さすがに俺も驚いた。


 ダンジョンがアンデッド化した要因は、ダンジョンの周辺で人間や魔族の死体が溢れ、怨念や魔力が漂っていたことが原因とされる。

 しかし、今回はダンジョンの周辺でそこまで大規模に人が死んだ様子はないし、精々が数十人程度だ。


 そして、思い出したのが『魔力共鳴』だ。前世で言う地震のそれは、周辺のダンジョンに亀裂を走らせ魔力を漏出した。その影響によりほとんどのダンジョンでは、モンスターのリポップが不定期になってしまいモンスターハウスになったり、かと思えば全くと言っていいほどモンスターが出現しなくなったりと色々と狂い出したのだ・・・そう、たった一箇所を除いては。


 ダンジョンは、人間や魔族を栄養として吸収するが、その栄養の大部分は『魔力』である。


 ガドイン様の領でも確認された魔力の『放出』が確認されたダンジョンが発見された。そんなダンジョンが長期間に渡って放置され、栄養を過分に施されたダンジョンがあったとすればどうだろう。


「・・・充分にあり得る話なのですよ。怨念の説明はつかないまでも、ダンジョンの消失と冒険者の全滅には充分な理由です」

「私も王都の図書館で物語として読んだくらいですが、その大きさは都を丸々一つ飲み込む程の大きさだとか・・・」


 アンデッドベヒーモスなんて比較にならない程の化け物が現れるってことか。

 それにしても『ダンジョン』そのものが敵だなんて正直よくわからないが、サテラの焦りようからみればそれがどれほど危険であるかを物語っている。


 そして、ギルドマスターが頭を抱えどうしたものかを首を振る。

 それもそうだろう・・・誰が好き好んで死ぬ可能性の方が高い魔物との戦闘を好むだろうか。もしその情報が齎されでもしたら一瞬にしてパニックに陥ってしまう事は想像に硬くない。

 街の住民の避難も開始しなければならないのだろうが、一番怖いのは恐慌状態に陥ることだ・・・そして、『ダンジョン』の姿がなくなったと言う事は、既にダンジョンは行動を開始しているということだ。後手後手もいいところだ。


「カナード様曰く、そのダンジョンの大きさは小さいのではないか・・・と言われています。都一つを丸々飲み込んでしまう程の魔物が移動しているとなれば、目撃情報が上がっていてもおかしくはないはずだからね」


 確かに、それだけ大きな魔物が移動しているのならば間違いなく目撃されているはずだ。それにもしも、そんな巨大な魔物が目撃されているとすればもはや手遅れになっているはずだ。


「確かダンジョンのアンデッド化では、多量の魔物も現れる筈です。それの対策はどうなっているのでしょうか?」

「此方は城門に防衛戦線を築き上げます。周囲は強固な城塞に囲まれていますから恐らく問題はないかと思われます。ポーションなどの回復薬も準備を急いでいます」


 そこからはサテラとギルドマスターが作戦式の話を整えていく・・・サテラは騎士の知識をギルドマスターに教え、戦争時の人の説明や練度についての話を行っている。

 ギルドマスターは物資の資材、人材の説明をサテラと行い入念な下準備に勤しんでいる。


 ・・・俺いる?


 二人の話が終わるまでじっと待つこと数十分、漸く準備についての話が終わり話がまとまった。


「では、全体指揮は私が行います。陣頭指揮はサテラ様に任せるとしましょう・・・今の戦力では貴方達が唯一強いと言える戦力ですから。ギルド職員は総出でサポートに回らせていただき、最大限の物資を確保するように動きましょう・・・多少の混乱は致し方ありませんが、直ぐにでも掲示板の内容を更新します」

「えぇ、お願いします。私達の一番の目標はダンジョンの周りを取り巻く魔物の討伐・・・そしてダンジョンコアの破壊を優先します」


 アンデッド化したダンジョンの肉体の表面には、普通であればダンジョンの深奥にあるはずのコアが浮き出ているのだとか。それから魔力のある限り無限に魔物が湧き出してくるらしく、それが判明していなかった当時の人達は無限に湧き出てくる魔物の対処に手を焼かされたそうだ。

 アンデッド化したダンジョンのコアを破壊しても、ダンジョンは消滅しなかったらしい。しかし、弱体化と同時に魔物の出現もなくなったそれをなんとか討伐することができたらしい。


「コアまではユガの配下達で一点突破を仕掛けます。後はユガに任せるわ・・・。それにしても援軍が望めないのはかなり苦しいわね」

「それも致し方ありません。あちらでもその事象が起こっているかもしれません・・・まぁそうでなかったとしても援軍にくることはないでしょうが」


 人間の国と魔族の国も大差ない。仲の良し悪し、因縁なんかもあるらしく・・・そのしがらみは人間よりも深いものがあるらしい。なまじ『魔王』という存在が長生き故に解消できないのだそうだ。


 ・・・まぁ、それはさておき、ダンジョンコアを潰すのが知らない内に俺になっているんだけど。一体ダンジョンコアってどんなもんなんだ?

 体の表面に出ているとは聞いたけど・・・想像するのならウルトラなマンのタイマーみたいな感じでついてるって理解でいいんだろうか?


「ダンジョンコアってどんな感じのものでしょうか?」


 そう告げると、ギルドマスターは数枚の資料を取り出し俺へと見せる・・・そこには一枚につき一つの小さな球体が描かれていた。


 それを見て・・・俺は口をあんぐりと開けるしかなかった。


「それがダンジョンコアの資料です。今までに支部に持ち込まれたものですが、その資料となっています。これが体表の何処かに浮かび上がると考えられていますが・・・どうかされましたか?」

「あぁ、えっと、あぁ・・・」


 その資料に描かれていたダンジョンコアの全てが・・・小さな色がついた球体だったのだ。そしてその資料の下に描かれていた文章に目を通せば、確信に変わったのだ。


 ボスを倒した際に天井からフヨフヨと降りてきて、部屋の中央の空中にとどまっていたとされている・・・色は赤青黄・・・様々あるらしいが、金色という報告書も上がっている。


 うん・・・どこかで見覚えがあるなぁ、と思えばそりゃそうだろう。


 持っているんだから。


「だ・・・ダンジョンコアぁ・・・なんつって」


「「・・・・・・・・・ハァ!?!?!?」」


 某国民的アニメの狸ロボットの真似をしながら体内から取り出したそれは、魔力を帯びた金色の球体・・・『ダンジョンコア』だった。

ハーピーの観察日記

1:エリーザと名乗る人物は主の知人であることが発覚。

2:エリーザ様は主人に頼まれて服を持ってきていたそうです。

3:アドルフとヴァン聴取から解放。危険性はナシと判断。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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