表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
137/271

人魔:不可解なダンジョンでした!

沢山のブックマークありがとうございます!!


次回、人魔編佳境に入ります。

災厄・・・『ダンジョン』始動。


次話投稿は一週間以内です!

 四畳半の小さな部屋には懐かしい香りを放つ畳が敷かれ、味気ない部屋にワンアクセントと掛けられた部屋の掛け軸にはよくわからない文字が筆で達筆に書かれている。

 そんな小さな部屋の中央に俺とサテラ、そして魔王ガドイン様とその秘書キュエルさんが静かに座っていた・・・無論、楽しい雰囲気なんかであるはずもなく、その雰囲気は重苦しく何かあったのは間違いない。


「ここに集まって貰ったのは少々厄介事が起きた・・・いや、『起きそう』と言った方がいいか?」

「起きそう・・・とはどういうことかお聞きしても?」

「前々からカナードと連絡を取り合っていた事なのだが、今回は少々厄介なことが起こったのだ。先程カナードから連絡が来てな、我々と共にお前達にもカナード領へと戻って欲しい」


 サテラの疑問に魔王様が答える。どうやらカナード様から速達の書状が届いたらしく、どうやらあちらで面倒事が起こったらしい。

 ・・・俺は本当に不運になる何かを背負っているのだろうか、俺が魔族領に来てからというもの心休まるひと時が殆どなかったんだけど。


 サテラが怪訝な顔を向けると秘書が懐から書状を取り出し、それを読み始める。


『以前より話していたダンジョンの不可解な現象が多数発現、ガドイン様におかれましても調査隊の派遣を願いたい。また、ユガ一行に今一度聴取承りたい。費用は此方が持つ・・・以上』


 淡々と読み上げたそれはダンジョンにて何かしらの異常が起こった事がわかる。

 またダンジョンで冒険者が迷い混んでしまったのかと思ったが、どうやらそんなことではないらしい。


 手紙には『以前より話していた』とある・・・つまりは、俺達がここに来る前から恐らく異常があったんだと思う。

 俺達が冒険者を助け出したダンジョンは・・・普通(・・)だったと思うんだけどなぁ。


 と、考えていると部屋と外とを隔てる襖の前に1匹の竜人が現れる・・・音もなく現れたそれはどうやらこちらを警戒しているようだ。

 サテラは気づいていないが・・・あ、やっぱり魔王様と秘書様は気付いているみたいだ。


「よい。入室を許可する」

「・・・失礼を、斥候の者からです」


 暗めの装束に身を包んだ竜人が襖を開け、中へと入ってくる。すると、魔王様に何かしらを耳打ちし、一礼して部屋を去っていった。


 サテラは突然入ってきた竜人に驚きながらも、その表情から何かを感じ取ったらしい。

 その竜人の表情は何か焦っているようで、額からは汗を滲ませていた。周囲掌握で見てみると、かなりの手練れであり平均ステータスは1500程である・・・にも関わらずそんな手練れが焦るような事態が発生しているってことか。


「・・・我々の方でも問題が発生した。すまないが、お前達と共にカナードの元へは迎えそうにない」

「いったい何が起こっているのかお聞きしても?」

「ふむ・・・よかろう」


 魔王様はそう告げると、一息吐きこちらを見据える。


「複数のダンジョンにて魔物の出現がなくなった。氾濫の兆候がある」


 その一言に俺もサテラも生唾を飲み込み、あの王都で起きた出来事を思い出した。数千の魔物が溢れ返り、地上に這い上がってきた地龍の姿、俺がなんとか水際で塞き止めたゴーレムと数百匹の上位の魔物・・・。


 そして最悪なことに、それが『複数』と来たもんだ。


 恐らく、それらがいっぺんに氾濫を起こせば、地上へと侵攻する魔物の数は優に万は越えるだろう。

 そしてもし、深層のダンジョンがあれば地上へ出てくる魔物は、恐らく俺と同格かそれ以上の魔物が出現することは間違いない。


 サテラは自分の顎に手を当て何かを思案している。一筋の汗が頬を伝い、目の前に鎮座する魔王の顔を覗き込む。サテラの汗には恐怖ではない・・・何かの不安が頭を過っているかの様に、いくつもの汗が伝っている。


「一つお聴かせ願いたく存じます」

「・・・申してみよ」

「それは人間の・・・いえ、聖都の者の仕業でしょうか?」

「・・・ふむ。成る程な」


 サテラが発した一言で場の空気が一気に重くなる・・・俺も勿論考えた事だ。聖都の連中がダンジョン内の至る所で氾濫を起こしているのではないかと。

 支配ドミネートの代わりとなる魔法を使用して氾濫を起こす・・・あの聖戦士でもできそうな事だ。


 それならそれで聖戦士を見つけ出して倒して仕舞えばいいだけなんじゃないかと思ったが・・・サテラが此方にちらりと視線を投げかけ、何もわかっていないわねと言った顔をする。

 すると、サテラが小さく口を開き、俺にだけ聞こえるように囁いた。


「一歩間違えば・・・人間と魔族の戦争になるわ」


 その言葉に事の重大さがやっと身に染みた。成る程、人間と魔族は不可侵の条約を締結し、侵略侵攻の類の一切を禁じている無論・・・攻撃なんてもっての他だ。

 だというのに、聖都が暴走を起こし間接的にでも攻撃を仕掛けたとなれば、それは魔族への攻撃に他ならない。


「・・・いや、聖都のそれではない」

「調査の結果、貴殿らが来る前に起きた魔力共鳴が原因だと思われますね」


 秘書の眼鏡がキラリと光る。

 魔力共鳴ってなんだ?


「魔族領特有の現象・・・突如として何の前触れもなく地面が揺れる事でしたか?」


 サテラがそう言うと、二人ともコクリと頷いた。

 えぇっと、それって地震じゃないのか?


 魔力共鳴は魔力の濃度が特に濃い大地に起こるらしく、人間の土地でも数年、数十年に一度の単位で起こるらしい。魔族の領土では細かな魔力共鳴が一年単位で数回起こり、原因は魔族一人一人の魔力濃度が人間より濃いからではないかと言われているそうだ。


 秘書の話を聞けば、俺達が魔族領に来る前に大きな魔力共鳴・・・まぁ地震のようなものが起こったらしい。かなり大きかったそうで、その時から急にダンジョンがおかしくなったそうだ。

 ダンジョンから急に魔物が減ったと思えば、突如として各階層の至る所の部屋に大量に溢れたりと、どういうわけか不可思議なことが頻発したらしい。


「カナードがいち早く異変に気付いてな・・・此方に使いの者を寄越して共に調査していたところだ」


 そしてカナード様と魔王様はそれに調査隊を送り込んでいたらしい・・・そして、調査の結果判明したのはダンジョンの構造が大きく変化しており、壁に大きなひび割れが幾つも発生していたという事だ。


 そして、調査していくこと数日、そのひび割れから魔力が吸い込まれているらしく、全てが何処かに漏れ出している事は分かったが・・・地上には漏れ出しておらず一体どこに魔力が向かっているのかがわからなかった。


「先程ここに来た者が告げたのは、こちらの魔力が漏れ出しているダンジョンで異常が発見された・・・吸い込まれているのではなく、漏れ出しているのだ。無数のひび割れから多量の魔力が漏れ出し滞留しているらしい・・・恐らく、カナードももう見つけているだろう」

「氾濫かどうかはわかりませぬが、異常事態なのは間違いないですね。そのダンジョンは同門の者達で囲っております。そして今、全てのダンジョンへの進入禁止令を発布致しました。恐らく、貴殿らをカナードが呼んでいるという事は、どこかダンジョンに立ち入った場所があるのでは? そこが魔力の漏れ出している場所だと私は推察します・・・そして、何か異常がなかったかを聴取したいのではないかと思います」


 成る程。俺達がカナード様に呼ばれたのは多分あのダンジョンについての事を聞きたいからって所か・・・でもそんなに変わってたかと聞かれれば、自分ではあまりわからなかった。

 ・・・けれど、確かにボス部屋にボスが出なかったり変な球体が浮かんでいたりはしたな。それを話せばいいのかな?


 明日の明朝にはここを出立する準備が整うそうで、それに合わせて俺達はガドイン様の魔王領を出る事になった。


 しかし・・・その時はまだ、自分に降りかかる災厄と異変に、気づく術はなかった。



 -------------------------------------------------・・・



 side ???


 ドクンッ


 大きく脈動する地面に、ミチミチとおおよそ地面のたてる音ではないそれが響きわたり、その旅に壁や天井が悲鳴の如き軋みをあげる。

 ダンジョンの地面を走る大きく脈動するそれは一本の大きな赤黒い管・・・それがドクドクと蠢き、それが一際大きく跳ね上がると同時にダンジョンが脈動する。


 壁から滲み出るようにして現れた魔物は、苦しみもがいた後に地面に横たわりダンジョンへと吸収されていく。

 何度繰り返されたかわからないそれは、例えボスであってもその例外ではない。


 大きな下位龍をもダンジョンから産み出された直後に苦しみ、口から紫色の泡を吹き出した瞬間に一気に骨の髄まで溶かされ尽くした。


 龍からドロップした下位龍のオーブは煌々とした赤色の輝きから、瞬時にドロリとした濃密な魔力を放つ紫色へと変化し、ジュワリッという音と共に蒸発する。


 パキパキパキバキバキバキバキ!!!

 フシューーー!!


 壁にヒビが生まれると同時に多量の魔力がダンジョン内に注ぎ込まれる。可視化される程にまで圧縮された魔力が吹き出ると同時に、大きな管は敏感に反応する。


 先程よりも大きく激しく脈動を開始する一本の管は、魔力の噴出孔へ這いずる様にして移動し、ペタリと噴出孔へ張り付いた。

 大きな管は魔力を噴出孔から漏れ出る魔力を吸収し、管からは新たな管が伸びていく。


 そして、赤黒く染まったそれは・・・そう、血管の役割を果たす。大きな一本の管の正体は魔力の経路であり血管だ。

 血管を追っていけば、奥になる程ドンドン太さや大きさを増し、枝分かれする血管もより多くなっている。


 そして一際大きな部屋・・・本来は最終ボスが座し、ダンジョンコアの眠るその場所には、一つの大きな肉塊が置かれている。

 その肉塊から伸びる数えきれない程の血管はその肉塊へと魔力を供給しているのだ。


 ダンジョンがあげる悲鳴を嘲笑うかの様に魔力を吸収し続け、死に絶えていく魔物達の力を吸い上げていく。


 だが、それももう終わりだ。

 ダンジョンの崩落が始まる・・・魔力と魔物の全てを失ったダンジョンの果てである崩落が始まる。

 壁中にヒビが走り、魔物達は再度現れることがなくなった。


 ダンジョンが一際大きな破砕音をたてた直後・・・それは起こった。


 ダンジョンは崩落せず、その様を異様であり異質なもはや『ダンジョン』と呼ぶことのできないそれへと変貌していった。


 壁は肉の様なぶよぶよとしたピンク色のそれへと変わり、赤紫色をした血管がそこら中を走り回る。

 ジュワッと粘液が溢れだし、濃密な魔力がもはやダンジョンと呼べなくなった場所へと注ぎ込まれる。


 肉塊の壁に人間の手が現れる・・・何かしらの豪華な鎧に包まれているであろうその手はドンドンと激しく肉塊の中から叩き、次いで細長い銀色に耀く剣の様なもので肉塊を内側から突いてみせた。


「クソが!! お、俺にこんな事をしてタダで済むと思ってやがるのか!!」


 喚く人間は肉会の中で尚も暴れ続け、しかし肉塊はびくともせずその形を不気味にグニョグニョと変容するばかりだ。


「な、なんだ、ぁぐ、あ、熱い!?」


 その直後、中にいた人間は悶え始める。

 よくよく見てみれば、その皮膚は溶け出しており、鎧は溶けたことにより自らの肌と一体化してしまっている。

 やがて人間は軽やかなステップを踏みながら肉塊の中で踊り始める・・・それもそのはず、人間の足元から滲み出てきた水はドロッとしていてゴポゴポと煮えたぎっているのだから。


「ふざけるな俺こんな場所で死ねるわけが・・・あ?」


 ジュワッと音が鳴り響いた直後、人間の片腕が下へと落ちブクブクと泡を立てながら溶け落ちていく。

 耳を劈く人間の悲鳴が肉塊を超えてダンジョンに響き渡り、バシャバシャと音を立てる血飛沫が肉塊をより赤く染め上げていく。


 痛みにのたうち回り尻餅をついた直後にその部分から溶け落ちていく・・・鎧もドロドロに溶けてそれがもはや皮膚なのか鎧なのかの判別もつかない。

 想像を絶する痛みに絶叫を上げながらも、それを聞き遂げるのは何もいなくなったダンジョンと肉塊のみだ。


 それがドンドンと人間を飲み込んで行き、人間は一頻り暴れた後、完全に肉塊へと飲み込まれてしまった。


 OOOOOOOOOOoooooooooooooOOOOOOOOOOOO!!!!!!!!!!


 直後、何処からともなく、大きく黒い岩の様な皮膚をした巨大な魔物が現れる。

 腹の部分が大きく膨れ上がっており、その中には多くの魔物が蠢いているのがわかる。


 その魔物は一度えずき始めると、腹の中に捕らわれていた魔物達が吐き出されてゆき肉塊の中へとズルズルと引き摺り込まれてゆく。

 それに抵抗する魔物は巨大生物に踏み潰され、原型を止める事なく肉塊の中に吸い込まれていった。


 肉塊は一つ脈動すると、前に佇む巨大な魔物を中へと誘う様に光り輝く。

 巨大な魔物はそれに抗うことをしようともせずに肉界の中へと足を踏み入れてゆく・・・そして、巨大な魔物が肉塊の中へと消え去った刹那。


 ダンジョンは一つの魔物へと姿を変える。


 己の・・・ダンジョンの入り口の周囲に群れた何者かを直ぐ様敵だと感知する。

 大きく口を開けて冒険者を誘っていた入り口は巨大な口と化し、周囲にいた魔族達を次々に貪ってゆく・・・。

 誰もがそれに驚き驚愕に顔を歪め、どうにかしなければと貧弱な武器を構えるがそんな物がこの化け物に有効なはずもない。


 蹂躙・凄惨・陵辱の限りを尽くし、突如として姿を現した『ダンジョン』は総勢100名もの魔族を一瞬の後に壊滅させる。

 人間とは一線を画するはずの魔族を児戯にも等しく一蹴するその圧倒的なまでの暴力に・・・しかし、ダンジョンは己の身が今だに不完全であることを知る。己の内にある筈の絶大な魔力の核がない。


 突如地上に出現した『ダンジョン』は大地を揺るがす程の咆声を上げ、己の核の気配が漂う方向へと視線を向ける。


 そしてここに、災厄の魔物が誕生した。

ハーピーの観察日記

1:爪なしと人間が結婚。

2:シロタエ様帰還・・・アドルフとヴァン様に聴取開始。

3:エリーザと名乗る者を捕縛、身元引き受け人にヴァンが名乗り出ました。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ