人魔:修行中でした!
沢山のブックマークありがとうございます!!
修行中の配下達もハプニングに巻き込まれているようです。
次話投稿は一週間以内です!
side コクヨウ
風一つなく、シンと静まりかえる周囲からは己に注がれる数多の視線を感じ取ることができる。
嗅ぎ慣れていない木々の香りが漂うその場所は、滲んだ汗と血の跡が点々と床を染め上げており、数多くの戦人がここで地獄の様な修練を積み上げて来たという事がわかる。
滲んだ汗の中には悔しさからこみ上げてくる涙も含まれているのだろう・・・この場を支配する匂いには誇りとプライド、純粋な力を求める情念がそこかしこから匂いたっている。
ギシリ・・・己の重心のブレ一つで軋みを上げる床に若干の心地悪さを感じながらも、手に握られている長い木の剣に意識を集中させる。
光を反射しないそれは、しかして己の覇気・闘気・殺気を吸い上げている様に不気味な光を発しているかの様な錯覚に捉われる。
ピリッとした気配が周囲を支配し、剣を構える手に力を込める。フゥと息を吐けば全ての雑念と油断が取り払われ、全身が一本の剣と化したかの如く己の全身が鋭利なそれへと変貌を遂げる。
そして初めて己の前に立つ竜の姿をした少女へと目を移す・・・まだ幼さが残る少女ではあるが、その手の内を見てみれば油断はできないという事が嫌でもわかる。
何度も潰れたであろうタコと皮膚が擦れて皺が無くなった手・・・血の滲む様な修練を積んできたのだろう。生半可な努力ではあの境地には達せないであろうことがわかる。
後ろでは姉弟子である魔王の娘が固唾を飲んで見守っており、己を前にした少女の背中をじっと見つめている。
「それでは、いざ尋常に・・・勝負!!」
試合開始を告げる魔王の配下の宣言を耳にした瞬間・・・内に秘めていた気を一気に解き放つ。それで気圧されたのか、ずり下がろうとした少女は歯を食いしばり踏みとどまる。
木剣を握る手に汗が滲んでおり、されど恐怖によって握る力が緩んではいない。軋みを上げる程に力を入れられた手には幾重もの覚悟と経験のそれが見て伺える。
試合開始から一歩も動かずに膠着した両者に、痛いほどの視線が投げかけられる。しかし、身内であっても応援という視線を投げかけてはいない・・・勝つか負けるかの結果を見届けようとする視線だけが己と少女とに降り注いでいる。
刃を抜き放ち鋒を己に向ける少女の覚悟は決まった・・・気をぶつけて一歩も後退しなかった少女の決意は、今ここに決したようだ。
嵐の様な剣気が少女から吹き荒び、今まで目の前にいたか弱き少女の姿は一瞬にして消え失せる。
そこにいたのは一人の武人であり、己と同じくして戦を世の常とした一介の剣士であった。
「されば、いざ参ります」
「受けて立とう」
ダンッッッ!!
と木の床を思い切り蹴る音が周囲に響いたと同時に、少女の姿は空中へと舞い踊り一息つくまも無く己の眼前へと迫り来る。
突き出された木剣を捌こうと、己の手にある木剣を這わそうとするも、次の瞬間には横合いからもう一本の突きが放たれるそれが見える。
それは一つの花弁の様に咲き乱れ舞う華の如く、刹那の間に怒涛に突き出された木剣の残像であった。
少女の持つ剣の才はここにいる武人の中でもトップ勢に入るであろう・・・こと、突きに至ればそれは極地に達していると言っても過言ではない。
あまりの早さに手元が見えず、木剣を合わせようとも突き出される木剣のどれが本体かが掴めない・・・しかしてその残像に触れようものなら己の肉体はズタボロにされるであろう。
一度飛び退り距離を離して仕切り直そうと・・・したその刹那、己の体を悪寒と命の危機を知らせる警鐘が全力で襲い来る。
ガゴンッッ!!!
咄嗟に木剣を構え、本能のままに振り抜くと・・・大凡木剣が立てる音と思えない爆音が周囲に響き渡り、打ち合った木剣の周囲を一陣の風が吹き抜ける。
それは飛び退った瞬間に少女の持てる限り全力で放たれた突きであった・・・膂力と全身のバネを利用したそれは光の如く加速され、突き出された木剣は己の心臓一直線に向かって突き出されていたのだ。
普通であれば防げなかったであろうその一撃・・・身に受けていれば致命傷は免れないであろうそれに冷や汗を流し、少女の次の挙動に目を配る。
突き抜けたその体制は一見すれば隙だらけにも見えるが、それこそ少女の罠であるのだろう・・・突きというものは本当に厄介だ。
このまま好機と懐に入り込めば、刃を返しそのまま横薙ぎ、縦薙ぎに振り抜くのであろう。
しかして、まだまだ実戦経験の甘い少女に過ぎない。
「ぅぶッッッ!?!?」
少女の顔面を己の蹴りが捉える。少女が集中したのはカウンターに移す自分の挙動と、自分に突きつけられた木剣だけだ。ここで蹴りが飛んでくるとは予想していなかったのだろう・・・それは、己の命取りになるという事を理解していないが為に生み出された完璧な隙だ。いわば弱点を理解していないというところか。
華奢の少女の体は簡単に宙を舞う・・・剣士にとって己の足が地についていないという事は最大の弱点だ。それが攻撃に使われているのであれば打ち下ろす力が加わって良いものではあるが、それが回避や防御になると最悪の一手になる。
一撃目を回避・防御できても、続く二撃目を回避することができず防御したとしても衝撃で吹き飛ばされる。
そして少女の体は蹴りで簡単に宙へ舞う・・・蹴られて隙だらけになったそれに自分の膂力を加えて、突きを繰り出す。
空気を切り裂く音が木剣を中心に響き、木剣の周囲には風の衝撃波がまとわりつく。
ドンッという鈍い音が響いた瞬間、少女の腹部に己の木剣が深々と刺さったのだと知覚する。
「・・・ァグッ!?」
そのまま壁まで吹き飛ばされて行き、少女の体は壁に強く打ち付けられる。ドサリと地面に横たわり、くぐもった嗚咽を漏らしながら、ヒューヒューと漏れ出る息をなんとかして落ち着けようと体を縮こまらせる。
それに追撃してもいい・・・が、それでは少女の深なる才能を引き出すまでには至らない。
死の境地に立ち、自分の限界と向き合う事で目の前の脅威に対して少女がどこまで己の才能を振りかざせるかで勝負が決まる。
木剣を構え直し、悶える少女に木剣突きつけジッと見つめる。
「・・・ぁだまだ!!」
木剣を杖代わりの様にして辛うじて立ち上がる。カクカクと小鹿のように震える足、フラフラとする体を支えようと己の重心を右へ左へと揺らしまたひどくフラフラとする。
思った以上に先の突きが体に響いたようだ。
「『魔化』・・・解放」
少女の体から魔力の奔流が吹き荒れる。それは道場の中心で渦を巻き、少女の力を数倍にも底上げさせる。
ギョロリとした瞳が対面する己の全身を捉え、構えなおした剣を突きつける・・・少女の吐く息からは白い蒸気が漏れ出し、口の端からは血が一筋垂れ落ちる。
「・・・」
チラリと後方へ視線を向ける・・・我が主人が座るその場所へ視線を向けると、主人は首をフルフルと振り俺へと合図を送る。
仕方なしと木剣を握り直し眼前に立つ少女へと突きつける。
「ああああぁぁぁあっぁあぁぁぁ!!!」
先ほどよりも苛烈な突きの猛攻が己の身体へと降り注ぎ、その全てをいなし躱していく。その木剣が頬を掠めた瞬間、燃える様な痛みが走り頬を一筋の血が伝う。
しかして、そんな事に気を回している余裕などはない。対峙する少女の猛攻は止まる所を知らず、突きの猛攻は勢いを増し続けている・・・息遣いが荒くなっているが最後の命の灯火とでもいうかの様に燃え上がるその闘志を全身全霊で受け止める。
斜め上から突き出された木剣をはじき返し、右方から不意打ちとばかりにくる薙ぎ払いに屈んで避け、前方から突き出されtる数十の突きを身体を軽く捻るだけで全てを躱し続ける。
「・・・ぅあ」
突如として突きの苛烈さが失われ、少女の足が縺れドダンと床に倒れ伏す。
勝負ありだな。
「まだぁ・・・まだぁ!!」
少女の唇を噛みきり最後の力を振り絞り、また立ち上がる。それに付き合おうと木剣を構えるが、少女の纏う雰囲気が別のものへと変わる。
木剣を握る手からは無駄な力が取り払われ、ゆっくりとした動きで俺へと突きつけられる。
この場・・・道場を包む雰囲気が一瞬にしてザワリと緊張したものに包まれ、誰かが立ち上がろうとする・・・が道場の主人である魔王とその娘が全員を制止する。
成る程・・・これ以上は本当に命に関わるそれだということか。
「エクストラスキル:『竜咆一閃』」
魔力が膨れ上がる・・・いや、爆発する。道場の中心をただでさえ吹き荒んでいた魔力が完全に暴走する・・・少女の身体をピシピシと魔力の本流が荒れ狂い、竜の鱗が覆っていく。口元から牙が生え揃い、木剣を持つ手には全ての力が込められる。
ビシビシと軋みを上げる道場からはゴクリと生唾を飲む音が聞こえる。
吹き荒れる魔力の嵐に木刀を構え、こちらも全身全霊を出して戦おうと構える・・・。
「コクヨウ・・・手加減してあげてね」
主人からそう言われて仕舞えば手加減せざるを得ない・・・しかし、あの少女を止めるにはこちらも少々本気を出せねばならないな。
「エクストラスキル:『瞬刀・菊文字』」
少女とは対照的に一切の魔力の反応が消え失せ、漂う気配が一瞬にして途切れる。そこにあるのは研ぎ澄まされた一本の剣、魔力の奔流の中心に佇む少女の元へと突きつけられた。
己の体から湧き上がる力に全神経を集中させ、流れる魔力を完全に制御する。全身を駆け巡る血管一本一本に魔力の管を通すイメージを構築し、木剣を握る手から直接魔力を注ぎ込む。
すると、コクヨウの姿が途端に陽炎の様に揺らぎ始め、握られた木剣からは高濃度の魔力が漏れ始める。
瞬間だった。
少女の姿がかき消えたと同時に、己の眼前に木剣の先端が写り込んだ。
瞬きした刹那の瞬間に少女が音も無く突進していたのだ。少女の周囲を飛び交っていた塵が燃え上がり、その衝撃は道場を揺るがす程に強大な一撃だ。
避けることなど到底叶わない・・・それが普通ならばだ。
パァンと軽快な音が周囲にこだまする・・・少女の手に握られていた木剣が木っ端微塵となり、己の手に握られたそれも塵芥と化してしまった。
少女が驚きに顔を歪めた瞬間、己の手から一本の刀が出現する。
それに気づき腕をクロスさせるが・・・この刀が見えた時点で雌雄は決している
もう刀は振りきっているのだから。
少女の身体がミシミシと軋みをあげ、送れてドドドドドと何かを打ち付ける音がこだまする。
空中で舞い踊るようにして少女が転げ回り、そして一際大きな打撃音が道場に轟くと同時に、道場の床をぶち破る破砕音と共に打ち下ろされた。
「・・・勝負あり。勝者コクヨウ」
気絶した少女を前に一礼をし、その場を後にした。
「うーん、もうちょっと手加減しなさい」
「あれでも抑えた方なのですが、あの少女も中々の力量だったので」
「でも、弱かった筈だよね。 んであの少女の闘気に当てられてやり過ぎたんじゃないの」
「・・・面目ない」
主君の叱責を受けてしまった。確かにあの少女は強かったが、秘技を出す程ではなかった。
あの少女の全身全霊をかけると言う思いの宿った瞳を向けられてしまい、当てられたのは事実だ。
それでも主君はよくやったと、跪いた己の頭をワシャワシャと撫でてくださる。
これだけで今回の修行の疲れが一気にとれてしまうのだから、主君はやはり偉大である。
と、話している内にルリがどうやら勝利を収めたようだ。額から流れ出る汗を拭い、持っていた薙刀を頭上でくるくると振り回した後に倒れ伏す相手を見据える。
ウォーミングアップは終わったとばかりに道場に座る者達へと視線を巡らせ、次は誰かしらとばかりに薄気味悪く微笑む・・・どうやらまだ怒りは収まっていないようだな。
というのも事が起こったのはついさっきだ。
我々はユガ様の配下として少しの間だけではあるがここの門下生となり、出稽古修行生として鍛錬に励んでいる。無論魔王の了承も得ており、入門条件である門下生との一騎打ちにも当然勝っている。
初めは我々の足元にも及ばぬ烏合の衆が集っているだけだと思っていたが・・・一度戦ってわかったが、ここの者達は強い。
ほぼ全ての試合に勝ってはいるが、この道場にいる四天王と呼ばれる四人には・・・全力を出して勝てるかどうかと言えるところであろう。
唯一、爺だけが四天王に決闘を挑んで勝っている。その死闘を見届けていたが、それは苛烈と呼ぶに相応しいだろう。爺は余裕を残しての勝利ではあったが、おそらく俺が素面で挑んだのであれば、直ぐにでも足元を掬われるだろう。
そして、そんな者達と修練を続けていたわけだが・・・。
今朝、いつもと同じく修行に励んでいた所、突如として門扉が蹴破られるようにして開け放たれたのだ。
そこには小さな幼い少女と数十人もの門下生達が立っていたのだ。少女は俺たちに目もくれず、魔王様の元へと歩み寄ると、開口一番に我々に対して文句を言い始めたのだ。
やれ私は認めないだの、やれかってに門下生を増やすだなどと散々な言われようだったわけだ。
そして、話が我々を門下生に加えた理由に至り、自分を任した相手だと主人を紹介した時だ。
「こんなナヨナヨしい男に負けるなんて有り得ないわ! どうせ手を抜いたんでしょう!!」
主君は苦笑しながら、そうですねぇなどと言っていたが我々にとっては主君をバカにされて面白い筈もない。そこで、ルリが止めに入ったのだけれど次に放たれた言葉がルリの導火線に火をつけてしまった。
「こんな情けない男に尻尾を振ってる女の言うことなんて聞かないわ!!」
道場の空気が一瞬にして凍りつき、ルリから尋常でないほどの殺気が発せられてしまった。これはまずいと爺が止めに入り、急遽俺が立ち会う羽目になってしまったわけだ。
今は魔王の隣で満身創痍の姿で正座している。頭には大きなたんこぶを作り、身体中を包帯やら絆創膏やらで覆われている・・・因みにたんこぶを作ったのは魔王の娘である。
戦闘後に聞いた話では、魔王の養子だかなんだか・・・魔物の襲撃によって両親を亡くし、街を彷徨い歩いていた所を魔王に見つかり保護されたそうだ。
以降娘さんの妹弟子となり、厳しい鍛錬に励んでいたのだとか。今ではこの道場でも相当の実力を積んだ強者らしく、先祖返りとは言わないまでも強い竜の血を引き継いでいるらしい。
出稽古の筆頭に選ばれるまでにも成長したそうだ。
しかし、精神の成長がその実力について行っておらず、自分の強さに驕りがあったのだとか・・・同門の者達への強い尊敬から、部外者を極度に嫌うのがその良い例だ。
故に我々に無礼を働くだけでは飽き足らず、主君への暴言を浴びせた結果この様だ。
少女へ視線を向けなくとも、こちらを睨んでいるのが嫌でもわかるくらいにわかりやすい闘気を向けてくる。
すると、魔王の娘がもう一度頭にゲンコツを入れ、少女は頭をさすり涙ぐむ。
ガキィィィィン。
ルリの持っていた薙刀が弾かれ、道場の冷たい木の床の上に落ちる。しかし、続いてもう一つの剣城が床に落ちる音が響き渡る。
「引き分け・・・ですか」
「吾輩が引き分けとは・・・お主やるな」
「・・・おかげで頭が冷えました。当て付けの如く決闘を申し込み、失礼致しました」
「別に構わんさ。若いのが激情に駆られるのは良いことだ」
ルリと戦っていたのは四天王の一人だ。大剣を振るって戦う様はまさに竜の如く雄々しく、その一撃一撃はルリの薙刀をいとも容易くはじき返していた。
ルリも漸く頭が冷えたのか相手に謝罪を述べ、頭を下げた。
次は誰だとヨウキとフゲンが出ようとした直後・・・道場の奥で正座をしていた魔王の娘が動く。魔王の娘はじっと主人の横で座っているナーヴィ様を見据え、一言告げる。
「失礼とは存じますが、そこにお座りになられているナーヴィ様・・・私と一つ手合わせ願えないでしょうか?」
ピクリとナーヴィ様の眉が動き、道場の真ん中に立つ娘と視線が交差する。
道場にいたもの全員が驚き、主人もどうやら驚いていた。
それもそうだろう・・・今まで修行もせずに主人の傍でじっとしていただけのナーヴィ様に決闘を申し込むとは思ってもいなかったのだろう。皆が皆、爺に決闘を申し込むと思っていたのだ。
この道場二番目の主にして門下生の中でも最強と歌われているのが魔王の娘だ。
前日も爺と決闘を行い・・・勝利を収めていた。その強さは折紙付であり、魔王は『力』、娘は『技』の最強角だそうだ。
今までナーヴィ様は主人の側を片時も離れず、只々俺たちの修行を見つめていただけ。魔王の娘はここで一番誰が強いかがわかったというのか・・・。
ハルウ様四人の中でも接近戦において最強なのがナーヴィ様だ。俺と一度手合わせした時は、その姿は一瞬たりとも見えず、気づいた時には手から刀が離れ、ナーヴィ様の手に握られていた。
全ての行動に予測がつかず、一瞬たりともその挙動や予備動作を見ることが叶わない・・・元があのウルフだったなんて信じられないくらいだ。
ナーヴィ様はフンッと興味なさそうに鼻を鳴らすと、主人の顔をチラリと伺う。
「行きたいの?」
「主に迷惑がかかる」
「うーん、やりすぎなければいいよ」
「・・・行く」
ナーヴィ様は立ち上がり、大きく伸びをした後に道場へとゆらりと進み出る。
その瞳はどこか眠たげではあるが、油断なくジッと見つめていることがわかる・・・歩いているだけで、全身の筋肉をほぐしているのがわかる。
ナーヴィ様は娘の元まで歩み寄ると、腕を一度ブンッと振り回す。
それだけで風が吹き荒れ、道場全体が傾いている様な錯覚が襲い来るかの如く、闘気の圧力が物理的なそれを伴って押し寄せてきたのだ。
その闘気の圧力は四天王でもってしても凄まじい圧力であった様で、油断していたひとりは一瞬白目を向き、気を失いかけていた。
「主が見ているからな・・・あまり手加減はしないぞ」
「望むところです」
二人が所定の位置へとつく。
娘は刀を正面に構え、その瞳からは一切の雑念と油断が抜け落ちた武人の形相へと変貌し、剣先は一切ぶれることなくナーヴィ様の重心体の中心へと向けられている。
恐ろしいまでの剣気を当ててナーヴィ様の闘気をかき消しているのだろうが、額から流れ落ちる冷や汗をみるに完全には打ち消せていないのだろう。
ナーヴィ様はゴキリと手を鳴らし、口の端を釣り上げ、今からおきうるであろう死闘に楽しみで仕方がないという様相で娘と対峙する。
体の節々が隆起し、圧倒的な力が解放されて行く様に・・・道場にいた全員が身を震わした。
「いざ」
「尋常に」
「待つがよい」
いざ決闘が始まろうとした直後・・・二人の間に魔王が立つ。
決闘に水を指すことはこの道場では厳禁な筈だ。それを魔王が遮るとは・・・非難の目を魔王に向けようとした直後、秘書が後ろからニュルリと現れ、告げる。
「此度の決闘は緊急の用件で中止とさせていただこう。ユガ殿とサテラ殿、魔王様には一度応接室まで集まってもらいます」
唐突に告げられた『緊急の用件』とやらが、主君に告げられた。
ハーピーの観察日記
1:アドルフとヴァンが森を散歩。
2:シロタエ様、湯浴み中にゴブリンが誤って侵入・・・ブルブル。
3:エリーザと名乗る化け物が森に侵入。
宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!
遠慮なくこの物語を評価して下さい!!
何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。
(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)
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