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人魔:『魔族』でした!

沢山のブックマーク・評価ありがとうございます!!


『魔族』とは一体何を指すのでしょう?


次話投稿は一週間以内です!

 魔族とは・・・簡単に言ってしまえば姿形が人ならざるものであり、しかして人間と同じ思考を持ち、感情を有する者達の総称である。

 その姿は魔物のそれであり、力は人間を優に超えている。魔物を一撃で屠る豪腕、唱えれば大地が焼き払われる様な膨大な魔力量・・・傍若無人な性格が多く群れて生活する事を嫌う。


 人間は魔物から誕生した悪しき者だと語り、魔族は我々の様な力を持たずに生まれた弱者だと語る。


 人間と相容れぬ異形の者達・・・それが『魔族』である。


 ・・・と、まぁ定型文がこれであるが。


「飲めやクソ野郎! 今日は祝杯だこの野郎!!」

「ガーッハッハッハッハ! もっと飲めや新人!!」

「親方ぁ、もっっっとじゃんじゃん酒を持ってくるんや! こんなんじゃ歓迎するなんて言えねぇぞこの野郎!!」

「ふざけんな! ルリの姉貴は俺が貰うんだ!!」

「腑抜けたことを言うんじゃねぇ! ルリの姉貴の髪一本も切れなかったフニャフニャの剣しやがって!!」

「ギャッハハハハ!! コクヨウ様ぁ、一緒に外で飲み直しませんかぁ?」

「どうですかな? 明日の明朝にでも共に鍛錬でも・・・」


 何が傍若無人で群れるのが嫌いだ?

 普通に宴会を開いて飲めや歌えやどんちゃん騒ぎしているぞ。あっている事と言えば、人間よりも力が強く丈夫であるということくらいだ・・・コクヨウをブンブン振り回す女竜人に、ルリの薙刀の柄で小突かれているのに一向に懲りない男竜人達が道場に会している。


 それにしても周囲には『人間』らしきものは配下を除いて一人としていない・・・全て『竜人(ドラグニド)』達で埋め尽くされており、その竜人達の手元には例外なく酒瓶が握られている。


「煩い道場でごめんなさいね」

「来た時のあの雰囲気よりかは充分ましですよ」


 そう背後から声がしたので振り返ってみれば、そこにはメリナ様とガドイン様、そしてサテラの三人が立っていた。


 酒瓶片手に俺の配下に絡みつく竜人達を見回し、はぁとメリナ様は溜め息を吐きながら頭を抱えている。酒瓶を手に暴れまわっている竜人達を処置なしとばかりに見てはいるが・・・その表情からは道場にいる竜人達を家族として好きでいる事がわかる。


 メリナ様はこの道場の師範代として、父であり魔王であるガドイン様の補佐をしている・・・意外ではあるが、この道場では父親に次いで二番目に剣の扱いが上手いそうだ。

 そんなメリナ様は今まで父親と一緒にサテラと話し合っていたのだが・・・どうやら話し合いは終わったようだ。


 メリナ様の横に立っているサテラの表情は・・・どこか暗く、困り果てている表情だ。これを見るに自分の悩みは解決しなかったんだろうな。


「申し訳ございません・・・私達ではお力になれなかったようで」

「すまんな。なにせ、我もサテラ殿の様な例は見たことがない故」

「いいえ、お二人は何も悪くありません。それに、『魔族』・・・いいえ、『魔人』の事が知れただけでも良かったです」


 サテラ達が話し合っていたのは自分自身についての『魔人化』の事だ。

 サテラは王都での騒動の一件から何故か『魔人化』というスキル?を使用する事ができる様になった。容姿自体は全く代わり映えはしないが、瞳の色は闇色に染まり、身体能力は人のそれを優に超えて魔族の領域にまで達する事ができる。


 しかし・・・それをしっかりと自分でコントロールする事ができれば、なんの問題もないのだけれど、不意な感情の変化によって暴発することがよくあるのだ。

 例えば怒った時に自然と発動されるのは当たり前として、転んだ拍子に発動、静電気が走った時に発動、酷い時には食事中に熱いものを口に含んだだけで発動するなんて事もしばしば見受けられる。


 これが頻発してしまい、サテラ自身は相当参っている。

 この『魔人化』は十中八九俺が原因であるし、何も言える立場ではない・・・。


 今回の魔族領の訪問にサテラが了承したのも、自分の『魔人化』について何か解決の糸口が見つかるかもしれないという希望を持っての事だった。

 しかし・・・結果はあまり思わしくなかったらしい。


「ユガさんにも一応お話ししましたが・・・『魔族』というモノが何かはお教えしましたね」


 ・・・俺は魔族というものが一体何なのかが全くわからない。自分が特異な魔族だという事はわかっているが何故特異なのか、魔族とは一体何なのかをメリナ様に聞いたのだ。

 そして・・・驚いた事に『魔族』達が『魔族』と名乗ったのはつい最近であるらしい。


 ・・・うん。何を言っているのかわからないと思うが、簡潔に言えば『魔族』というモノは人間がつけたものであって正式な名称ではないらしい。

 しかし、その名称を敢えて使っているのが魔族領の者達であるそうだ・・・そして、魔族達は本来『魔人』であったらしい。


 人間の世界で言われている『魔族』というものは大雑把なもので、人間の容姿をしていない形であり知能さえあれば全て『魔族』と言うらしい。


 しかし、魔王を名乗る者達の配下は皆、『魔人』を名乗っている・・・いや、『名乗っていた』が正しいのかな?


『メフィルトナ・ガドイン』様率いる竜人の他にも、四人の魔王がいるらしいが・・・その内のガドイン様を含めた四人が『魔人』を名乗っている。

 ここでおかしな点に気付いただろうか・・・そう、魔王は五柱、つまりは五人いなければおかしいのだ。


 そう。それこそが『魔人』と『魔族』の境界をごっちゃにしている原因の一つだ。

 人間の元で暮らしている俺達には詳しく語れないという事であまり深くは聞く事はできなかったが、その魔王は人間の姿をしておらず、姿形が強力な魔物のそれであるらしい。


 それが故に、人間達から『魔族』と纏めて呼ばれる事となったのだ。


 故に、彼等は『魔人』であるらしく、『魔族』ではない・・・のだが、大雑把であるからして自分達を『魔族』と呼ぶ事を容認しているらしい。

 それに魔族も魔人も領土に入り乱れていることからして、そこらへんは本当にどうでもいいんだろう。


 それじゃあ『魔族』とは一体なんなのかといえば・・・うん、俺達の様な者だ。魔物から、なんらかの事情を経て知能を持った者達の事を彼等は『魔族』と呼んでいる。

 例外とすれば同じ種族としか会話できないものであったり、話し合いが通じず直情的で好戦的な種族は魔物とみなすらしい。


 会話する事が出来ず、人々の害となる『魔物』。魔物から知能を経て『魔族』になったもの。生まれた時から知能を持っていた『魔人』。


 うーん。こんがらがってきた。

 因みに、ここで人間の姿に『変化』できるのは小数人だけらしく、今は俺達に合わせてメリナ様とガドイン様は出来うる限り人の姿に近づけているらしい。どうやらカナード様に言われているらしい。


 周りは・・・うん竜というか蜥蜴というか、それを無理やり二足歩行にして人型にしましたって感じだ。


 竜人ドラグニド・・・言い伝えではあるが、彼らの祖先は元は竜から生まれたとされており、知恵を得て人型となり『物』を扱うに長けた種族であるとされている。しかし、知恵を得て物を扱うが故に竜が振るう圧倒的な力は危険とされ自らに制約と封印を施し、今の形になったとされている。

 あくまで言い伝えとされているが、魔王様の『先祖返り』と呼ばれているスキルを聞くに、あながち嘘とも言い切れない


 そして、スキル・・・そう、彼女達が扱う『魔化』についてだ。


「私達が・・・特に魔物としての血の濃い者だけが扱えるスキルが『魔化』です。サテラ様の『魔人化』に似ていて、ステータスを一時的に飛躍的に上昇させるものです。その代わりに、自分でしっかりと制御できなければ、理性を保つ事ができず、暴走してしまうリスクがあります。恐らくではありますが、サテラ様が扱う『魔人化』は『魔化』の派生スキルではないでしょうか? そして、急激な体の変化に対応できず、暴走しているのかと思います」


 えっと、つまりサテラは『魔人』であり血の濃い人だけが使える『魔化』の派生スキルが使えるって事か。そして、サテラが落ち込んでいる原因は・・・何故『魔人化』というスキルが使える様になったのか、どうにかしてそれを脱する術はないのかという事であったのが、わからなかったという事だろう。


 魔人の人が使うのが魔物である力を引き出す『魔化』であれば、サテラが扱うのが魔人の力を作り出す『魔人化』かぁ・・・恐らくサテラが使っているのは『魔化』の下位互換スキルってところなのかな?


「すまんな。なんせ、人間が魔人と同等の力を引き出す事ができるスキルなんて聞いた事がない」


 これにはガドイン様もお手上げの様だ・・・。


 サテラも気落ちしてはいるが、少しでも魔人化の事について知れて幾分かスッキリしている・・・。

 ただ、気になるのがこの話をしている最中に一瞬、魔王様の顔が曇った事だ。そういえば、あれに触れていない様な気もするし、触れちゃいけない事柄なのかな?


 サテラが『魔人化』のスキルを手に入れる原因となったのは、俺の配下となったためだと思われる。その時に脳内に誰かの言葉が走り、それに無意識で答えている内にそのスキルが発動できる様になったのだ。


「お前に・・・ユガに一つ聞きたい事がある」

「え? あ、はい」

「『ひとやの護り手、往々たる柱』・・・これに思い当たる節はないか?」

「え、えっと、ひとや? おうおう・・・?」

「・・・いや、知らぬのならいいのだ」


 魔王様が俺に視線を投げ、よくわからない魔法の詠唱?の様な言葉を投げかける。それを知らないかって聞かれ、ディーレさんと一緒に唱える呪文に入っているかと考えてみたけど、ディーレさんも全く心当たりがないらしい。


 魔王様は俺が知らないとわかると、道場で開かれているどんちゃん騒ぎの中央に行き、巨大な酒樽の前に座り・・・嘘だろ。

 酒樽に口をつけ一気にそれを呷り始めると、道場内にいた竜人達が一斉に「おぉ!」と歓声を上げている。


「ふぅ。色々とありすぎて私も流石に疲れたわ」

「なんか色々とごめんなさい」

「もう慣れたわよ・・・貴方達を縛り付けるのは無駄って事はもう身に染みてわかってるわよ」


 サテラは溜息を吐きながら苦笑する・・・本っ当に申し訳ない。


 それにしても魔王様のあの表情が気になるんだけど、一体なんなんだろうか?


 そんな疑問も、サテラと話している内に消えていってしまった。




 ・・・あの魔王様の言葉がいつか自分に降りかかってくるとも知らず。



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 side カナード



 優雅にワイングラスを傾けながらフカフカの椅子に腰掛けるのが、自分の至福の一時。日々激務をこなしながら書類とにらめっこしているせいか身体中のあちこちが痛むが、それ故にこの休憩の一時がより安らぎを与えてくれる。


 この街の領主を一任されてからというもの面倒事が日々絶えないが、それでもやり甲斐自体はある。


 人間という面倒臭い事柄に関わるのは正直言ってごめんではあったが、何故故に人間とこうまで深い溝が出来てしまったのかを知る機会としてはこの上ないチャンスだと思って飛び込んでしまったが・・・研究は全く進まず、待っていたのは書類作業ばっかり。


 視察するのにも面倒な手続きをこなしていなければならず、自分が治める都市だというのに『魔族』という足枷がどうしても弊害になってしまう。

 聖都からやってくる刺客たちをどうにか水際で堰き止めて、言い掛かりを付けられない様に上手く無能を呼び込んで入るが・・・先日とうとうボロが出てしまった。


「あぁ、この一時がずっと続けばいいんだけどね」

「カナード様お耳に入れたい事がございます」

「・・・君は、私の言葉を聞いた上で面倒ごとを持ってきたよね?」


 渋々入ってきた蛇人のメイドに耳を貸すと・・・眉を顰めて、今し方聞いた内容を吟味する。聞いた内容が本当だとすればそれはあまりにも異様であり、あまりにも常識とはかけ離れているからだ。


 机の中から書類を引きずり出し、文面一つ一つに目を通していく。普段はかけないメガネをかけ、書類に集中し、頭の中で今までの出来事と照らし合わせて状況を判断する。


「情報がなさすぎるね。他に何か言っていたかね」

「はい。異様なまでに変形しているらしく、周囲の地帯からは・・・の目撃情報も多数確認されています」

「・・・最近は本当に面倒ごとが続くね」


 書類の一つにサラサラとサインを施し、引き出しから一枚の紙を取り出し直筆で文面をしたためてメイドに手渡した。

 最後に封筒に髪を入れて、爪の先で封筒の上に何かを書き記すかの様に走らせていくと、赤い文様が浮かび上がり綺麗に封筒に焼きついた。


「そして、彼方からの情報ですが・・・やはり、兆候はあるようです」

「そうかい・・・準備はしたほうがいいかもしれないね。願わくば何事もなければいいんだけどね」


 もういいよとメイドに一言告げると、長い胴体をくねらしながら書斎を後にしていった。

 飲みかけのワイングラスに日差しが降り掛かり、中で揺れ動き波紋を立てる血の如く赤いぶどう酒が不気味なくらいに光り輝いている。


「欠けた歯車の代わりが見つかった様に、目まぐるしく変わっていくね・・・」


 ぶどう酒に注がれていた太陽は分厚い雲に覆われ、空をめる様に見た瞳が赤く光り輝いた。

ハーピーの観察日記


1:ハルウ様がアドルフの動向調査を開始。

2:北部森林に人間用の施設建設予定。

3:アドルフがヴァンと接触・・・両者ともに固まりました。


宜しければ、本文下にある評価の方是非ともお願い致します!

遠慮なくこの物語を評価して下さい!!


何か変なところ、見にくい、誤字だ!などがあればどしどし教えて頂けると嬉しいです。

(言い換えでこういうのがありますよなどが合ったら教えてください。例:取得→習得、思いやる→慮る、聞こえる→耳に届くなど)


感想や活動報告の方にコメント頂けると私の気力になりますので気軽にどうぞ!

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